雑多な引き寄せ書から、引き寄せ書世界一の『ザ・シークレット』まで、共通して書かれているのが、
「いい気分でいれば引き寄せが出来る」
である。
嘘である・・・ということは、皆、気付いているはずなのだ。
どれとは言わないが、引き寄せのビデオで、成功者として出演している派手な雰囲気の女性が、
「いい気分でいることが大切なのです」
と言うのを見て、誰もが心の中では嫌悪感を感じている。
彼女が嘘つきであることは、直観では分かっているからだ。
しかし、現代社会では直観が重視されないので、そんな心の声を無視してしまうのである。

少し考えれば分かることだ。
いい気分になることは、最終目標なのだ。
最終目標を達成することが、下位の目標の達成のためなんて、馬鹿げた話だ。
それは、100番目に好きな女の子を彼女にするために、一番好きな女の子を彼女にするって言うようなものだ。
素人ボクシング大会で勝つために、プロボクシング世界チャンピオンになるなんて言うようなものなのだ。

どんな伝記、自伝を見ても、最終的に目標を達成していい気分になった人って、ずっと嫌な気分だったことが分かる。
むしろ、いい気分でいると、悪い状況に転落する。
『太陽がいっぱい』という映画の最終シーンが印象深い。
それは、私がまだ、「いい気分でいれば引き寄せが出来る」と思い込んでいた時ですらそうだった。
逮捕される直前のトムがこう言うのである。
「いい気分だよ」
アラン・ドロン演じるトムは、心から良い気分でいることが分かった。
しかし、彼に待っているのは絞首台だったのだ。

藤平光一によれば、中村天風が亡くなる時、天風は弟子に、「俺が言ったことは全部忘れろ」と言ったらしい。
あの世界一真実を語ったと信じる人が沢山いる中村天風が、自分の教えは完全に間違っていたと認めたということと思う。
そして、天風は、「今後は藤平光一のところに行け」と言ったという。
私は、藤平光一も間違いはいっぱい言ったと思う。
個人的には、8割は間違いと思う。
しかし、正しいことも言ったと思うのだ。
引き寄せが出来る条件は、気分などではなく、やはり、氣が出ているかどうかだろう。
そして、藤平光一が言う気の出し方は、7割までは抽象的、曖昧で意味不明だ。
別に、深い意味があるのではなく、単に、気分で言っただけのいい加減なことなのだと私は思っている。
なぜ、そんなことが言えるかというと、藤平自身が、師の植芝盛平についてそう語っているからだ。
自分がそうでなければ、他人の、それも、師のことを、そうは言えないものである。
しかし、藤平は、やはり卓越した人物で、良いやり方も語っている。
例えば、「氣が出ていると思うだけで出る」「当たり前のことを言う」「好きだと言う」などである。
あくまで私の見解だが、藤平の本で読む価値があるのは『氣の威力』だけだと思う。
『氣の確立』は、参考にはなるかもしれないが・・・読む意味はないと私は思う。