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小池都知事の前に立ちはだかる「ドンと利権」の深い闇 はたしてメスはどこまで届くのか
なるほど 関係者全員が うまい汁をすっている そこに 新米が・・・
これまでの経緯を おもしろく解説
伊藤 博敏 2016/9/1
小池都知事の前に立ちはだかる「ドンと利権」の深い闇
はたしてメスはどこまで届くのか
「ドン」の権勢、いまだ衰えず
「都政刷新」を掲げる小池百合子都知事が、改革の象徴として選んだのは築地だった。8月31日の記者会見で、11月7日に予定していた築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転延期を表明した。
小池都知事が重視するのは、築地移転や東京オリンピックなど巨額予算が計上されるビッグプロジェクトで、当初予算が2倍、3倍と膨張することだった。
「お豆腐じゃあるまいし、1兆、2兆と予算が膨らむなんて……」
これは2兆円を超すといわれる東京オリンピック関連予算への不満だが、築地移転にしても計画額から4割増の5884億円に達している。資材高騰や人手不足など仕方がない面はあるものの、問題はそれが公にされていないこと。
誰がどのように意思決定し、どのような過程を経て予算増が決まったのか――。それがまったく見えないとして、9月1日、都政の情報公開を進め、東京オリンピックの招致過程まで含めた調査を行うための「都政改革本部」をスタートさせた。
* * *
1999年、都と市場の団体が作る「築地市場再整備推進協議会」が、移転整備の結論を出して以降、築地はさまざまな勢力によって翻弄され、方向性もスケジュールも二転三転してきた。最終的に制するのは力が強い者であり、彼らが握っているのが利権である。
東京都利権の所在を示したのが、8月24日に開かれた「都議会のドン」こと内田茂都議(77)の「政治活動40年を祝い励ます会」である。
菅義偉官房長官、二階俊博幹事長ら大物政治家、石原伸晃経済産業相、丸川珠代五輪相などの閣僚や国会議員、市長に区長、都議、区議、市町村議、都庁幹部、各種業界団体幹部など約2000名が集まったパーティーは、内田氏の権勢を示すと同時に、利権構造の奥深さも伝えた。
かつての「宿敵」も駆けつけた
利権は一朝一夕に築けない。人間関係の集積であり、票とカネと仕事のバーターである。
政治家と官僚と業界が、それぞれに水面下で手を握り、ある時はケンカしながら事業を推進、その信用を築くには時間が必要で、内田氏はドンの座を揺るぎないものにするのに40年の歳月を要した。
また、都議会の義理人情が支配する古めかしい風土を、私は本コラム(東京都政、その「巨大利権」と知られざる歴代のドンたち)で伝えたが、内田氏のパーティーでもそれが確認できた。
パーティー会場の正面に、かくしゃくとした姿を見せていたのは92歳の藤井富雄氏。都議会公明党のボスで国会議員が束になっても敵わない実力者だった。内田氏の前の「ドン」で、その姿を目にした内田氏が、真っ先に駆け寄って頭を下げ握手を求めたのが印象的だった。
さらに話題だったのが、宿敵だった浜渦武生元副知事が、姿を見せて祝ったこと。小池氏とは家族ぐるみのつきあいで、都知事選では小池陣営に姿を見せ たことから「内田との怨念対決」とハヤす向きもあったが、両者の“激突”は11年も前のこと。浜渦氏を百条委員会にかけると内田氏が脅して副知事辞職に追 い込んだ。しかし、以降、関係を修復し利権を分け合う“大人の関係”が続いており、それを証明する出席だった。
築地移転問題の経緯
築地移転は、その浜渦氏から始まっている。
石原慎太郎氏に心酔、学生時代から石原氏を担いできた浜渦氏は、99年、石原氏が都知事になると副知事として都庁に入って権勢を振るい、ビッグプロジェクトも手がけるようになった。
その最初が築地移転である。当初、移転候補地の豊洲は、芝浦工大の誘致など街づくりが計画されていたが、01年4月、浜渦氏が持ち主の東京ガスを説得する形で移転用地約37ヘクタールを確保した。
東京ガスの都市ガス製造工場跡地で、ベンゼンなどの土壌汚染が指摘されていたものの、改良工事を行えば大丈夫という専門家の意見を得て計画を推進。
市場内反対派の存在、09年に移転反対の旧民主党が都議会で勝利、と曲折はあったものの、石原都知事と内田氏が率いる都議会自民党が、仲卸業者の懐柔、民主党都議の一本釣りなどあの手この手を使って工作、11年度予算に経費を盛り込んで、豊洲移転にこぎ着けた。
そこには、ビッグプロジェクトを願う業界の思惑もあった。築地移転は東京五輪とセットであり、16年招致活動の際には、移転跡地約23ヘクタールにプレスセンターと国際放送センターの2棟を中心としたメディアセンターを建設することになっていた。
16年招致に失敗して20年招致に成功。築地のメディアセンター構想はついえたものの、晴海の選手村と新国立競技場を結ぶ環状2号線は、五輪のスムーズな運営には欠かせないとして建設工事に拍車がかかり、11月7日の築地移転は、市場内がルートの一部のため、20年東京五輪から逆算したスケジュー ルだった。
それが、都民の目にふれる形で行われたとはいい難い。
突破するのは容易ではないが…
「政」「官」「業」のトライアングルが、内田、浜渦の両者に代表される大物たちの調整によって機能、予算案が作成され、スケジュールが決定、業界の不満を吸い上げる形で不足があれば上乗せされる。
内田氏のパーティーは、「築地」に代表される東京都事業に関与する者たちの集合体である。それぞれが汗を流し、票とカネと仕事をバーター。このインナーサークルに入らなければ“恵”は得られない。
豊洲市場の本体建設工事は、14年2月13日、入札が行われて、青果棟を鹿島JVが約259億円で、水産仲卸売場棟を清水・大林JVが約436億円で、水産卸売場棟を大成JVが約339億円で落札した。
落札率は99%を超え、限りなく100%に近いから談合が確実視される。それは、スーパーゼネコン4社が、仲良く汗をかき、調整役の内田氏や浜渦氏など石原氏周辺に挨拶を欠かさなかった証明である。
小池都知事がメスを入れる改革は、こうした世界である。
右腕となる都政改革本部リーダーの上山信一慶応大学教授は、国交省官僚、米コンサルタントのマッキンゼー共同経営者、米ジョージタウン大学教授などを歴任した再生のプロで、橋下徹前大阪市長のブレーンとしても知られる。
その上山氏が公言しているのは、徹底した情報開示。会議の様子などはオープンにし、情報や資料は可能な限りネットで公開。「密室での調整や談合」を許さない。
因習や慣習に反することが多く、都議会や都の役人の反発は必至。自分たちの権益が犯されるからで、そこを突破するのは容易ではないが、小池都知事は、「築地から始める」と宣言したのである。
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