リニア「不正な受注調整」問題 これって、何か問題なのですか?

三橋貴明

リニア「不正な受注調整」問題

 

 さて、リニア中央新幹線の、いわゆる「入札談合」問題

『大林・鹿島・大成で先行協議 工費5兆円、利益を確保
http://www.sankei.com/affairs/news/171222/afr1712220003-n1.html
 リニア中央新幹線建設工事をめぐるゼネコン大手4社による談合事件で、大林組の幹部が東京地検特捜部などの調べに対し、「工費が圧縮された中で利益を確保するため大林組、鹿島建設、大成建設の3社で協議を始めた」と説明していることが21日、関係者の話で分かった。特捜部などは、発注元のJR東海がリニア先行開業区間の総工費を約5兆円と試算した平成22年以降、具体的な工事割り振りに向けた協議を重ねたとみて実態解明を急ぐ。(後略)』

 

 まず、奇妙なのは本件が「談合事件」として報道されている点です。
 元々、問題になっている独占禁止法の「不当な取引制限」には、二種類あります。
 一つ目が、中央政府、地方自治体などの公共工事の物品や公共調達に関する入札に際し、事前に受注事業者や受注金額を「相談」「合意」で決めてしまう行為、すなわち「入札談合」です


 とはいえ、今回のリニア中央新幹線の建設工事は、「公共工事」ではありません。発注元であるJR東海は民間企業で、資金もJR東海が借り入れで賄うため、税金は投入されません。
 無論、財政投融資は入りますが、あれもまたJR東海の借入金であり、利子付きで返済されるものです。
 今回の件は、いわゆる「談合」ではないのです。「不当な取引制限」には、談合の他にもう一つあります。                              


いわゆる「カルテル」です。
 カルテルとは、事業者や業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売、生産数量などを共同で取り決める行為になります。
 つまりは「不正な受注調整」と表現するべきなのですが、なぜか「リニア入札談合」と報じられている点に、極めて違和感を感じます。
 大林組は不正を認めましたが、それはあくまで「不正な受注調整」であり、「入札談合」ではありません。


 上記を踏まえた上で、あえて書きますが、
「これって、何か問題なのですか?」
 リニア新幹線建設は、総工費9兆円の大プロジェクトです。しかも、人類史上最長のトンネルを掘りぬかなければならない、未知のプロジェクトでもあります。
 当然ながら、受注する各社は「数年前」から工事開始に備え、技術開発、人材確保、設備購入等、様々な「準備」を投資として行わなければなりません
 しかも、大手ゼネコンはそれぞれが得意分野があるわけで、一社で担えるプロジェクトではない以上、各社が事前に相談し、
最も品質が高いリニア新幹線を、工期に間に合わせるように建設する
 ことを目的に、受注を調整する。
 繰り返しますが、これって、 何か問題なのでしょうか。


 受注調整の結果、人類史上初の超電導リニア新幹線が建設される。工期に間に合い、JR東海もハッピー。きちんと「利益」を確保することができ、建設会社もハッピー。日本の技術水準が一気に上がり、日本国民もハッピー。
 それでも、「不正な受注調整」ということで、刑事事件の対象になってしまうのが我が国というわけです。
 あえて断言します。独占禁止法は、もっと「現実に即した形」に改正するべきです。
 さもなければ、我が国の土木・建設業は、「日本国民のため」の行動について刑事処分を受ける羽目になり、供給能力や技術力がひたすら衰退していくことになるでしょう。

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