妻と別居で毎月22万円の赤字に…「婚姻費用」に押し潰される男たち

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一読でもしておかないと 大変なことに なっても 知りませんよ

こんなことがあるから 結婚しないというのも 賢明?

妻と別居で毎月22万円の赤字に…「婚姻費用」に押し潰される男たち

あまりに不条理すぎやしないか    西牟田 靖

夫婦が別居状態にある場合、相手の生活費を支払わねばならないという「婚姻費用」をご存知だろうか。この婚姻費用の額は、夫あるいは妻の収入によって自動的に決まってくる。人によっては毎月10万円以上も払わなければならず、なかには支払いの負担で月の収支が赤字になる人も……。別居による精神的ダメージに追い打ちをかけるようなこの制度の実態を、ノンフィクション作家の西牟田靖氏がリポートする。

誰を頼ればいいのか…

「妻子に会ったり調停したりという目的のため、月2回、北海道へ行きます。その費用に毎月16万円ほど。そのほか家賃や食費、交通費や妻と子どもたちの荷物の保管代などにも毎月25万円ほどかかっています。月給は手取り30数万なので、毎月10万円前後の赤字です」

大手広告会社で働くAさん(45)はそう言って頭を抱えた。彼には6歳の女児と2歳の男児がいるが、妻が連れて行ったために離ればなれだ。

苦境にあるAさんがいま恐れているのが婚姻費用(夫婦間で別居する場合、相手の暮らしを支える生活費)の支払いである。

婚姻費用とは何なのか。

夫婦には、お互いの生活水準が等しくなるよう「婚姻から生ずる費用(婚姻費用)」を分担するという「生活保持義務」が民法760条で規定されている。

婚姻費用には、成人していない子どもが親と同等の生活をおくるための費用も含まれている。つまり、夫婦どちらか一人で働くにしろ、共働きにしろ、相手の衣食住の費用のほか医療費、子供の教育費や養育費、交際費といった生活費を分担する義務があるということだ。

同居し円満な家庭が築けていれば問題はないが、夫あるいは妻が生活費を入れなかったり、すでに別居していたり、といった理由で、夫婦間の話し合いがまとまらない場合は、調停や審判という形で「婚姻費用の分担」を請求できる。それはAさんが話すように、月々いくらという形で支払われる。

その金額は支払う側の年収、受け取る側の年収、子どもの人数、子どもの年齢によって決まっていく。夫婦間の年収に格差があったり、子どもの人数が多かったり、または子どもの年齢が15歳以上だったりすると、高額になる。

裁判所が使っている、養育費・婚姻費用算定表によると、金額は次の通りだ。(養育費・婚姻費用算定表 http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf

0-14歳の子供一人で妻の年収が0円の場合、夫の年収が250万円だと4-6万円、500万円だと8-10万円、1000万円だと16-18万円、2000万円だと32-34万円となる。

同様に妻の年収が250万円の場合はマイナス2万円、妻の年収が500万円だとさらにマイナス4万円となる。例えば、妻の年収が250万円で夫の年収が1000円だと14-16万円となるし、妻の年収が500万円で夫の年収が2000万円だと26-28万円となる。

なお、子どもが15-19歳の場合だったり、子どもが一人多ければおおよそプラス2万円となる。

Aさんの場合、14歳以下の子どもが2人で、妻は働いていないという計算なので、毎月10-12万円という計算となる。婚姻費用が決定していない現在でもすでに毎月10万円前後の赤字となっている。

そこにもし例えば、12万円が加算されると、月々22万円と赤字はさらに膨らんでしまう。とすると年間で300万円ほどが減っていく計算になる。

さて、Aさんの話に戻ろう。

子供を虐待する妻

そもそもAさんはなぜ別居することにいたったのか。

「妻はパーソナリティー障害(本人の性格に起因する精神疾患。対人関係での支障、衝動的行動、あり得ない返答などによって社会生活に困難を来す)に悩んでいました。感情のコントロールが効かないんです。

ファッション雑誌のモデルをやったこともあって、夫の私が言うのは僭越ですが、かなりの美人なんです。

そうした外見とは裏腹に、平気で嘘はつくし、カッとなると見境がなくなって暴力を振るってくる。私は体育会系ですから、怪我をさせられても耐えることはできます。しかし、幼い子どもたちへの虐待は見過ごせないものがありました。

しつけだと称して当時2歳の長女を真冬にTシャツにおむつ姿で放置したり、泣き声がうるさいと言って羽交い絞めにして窒息寸前まで口を押さえつけたり、投げ飛ばして額に大きなこぶができる怪我をさせたりしていたんです。

子どもたちはいつも妻に怯えていて、妻が自分の髪を触るだけで、『殴られる』と思って身構えるほどでした」

Aさんは日々忙しく働きながら、家では妻の暴力を受けとめ、時間を見つけては妻を診てくれる病院を探し歩いた。なかなか受け入れてくれる病院が見つからず、関東近県各地を探し回った。数ヵ月後、診療してもいいという病院をようやく見つけた。

ところがだ。診察まであと数日に迫った昨年の春、その日がやってきた。Aさんの妻が突然、二人の子どもを連れて北海道の実家へ帰ってしまったのだ。Aさんは突然の出来事に衝撃を受ける。子どもだけでも取り戻そうと思い、弁護士に相談するのだが、追い打ちをかけるように経済的な苦境に陥っていく。

「まず、痛かったのが弁護士の着手金50万円です。頼んだのは、離婚問題に大変強いと評判で、パーソナリティ障害にも詳しいという弁護士事務所です。ワラにもすがる思いでお願いし、着手金を支払いしました。

担当として出てきたのは事務所のトップではなく、若手の弁護士。調停のために東京から北海道まで飛行機での出張をお願いしたところ、プレミアムシートを要求してくるわ、『パーソナリティー障害だからと言っても裁判であなたが勝てるかどうかわからない』とか言ってくるわと散々な態度でした。

あまりにもひどいので、1週間ほどで解任したんです。まだ裁判も何も動いていないので少しぐらいは返金するのかと思ったらビタ一文返って来ませんでした」

Aさんの出費はこれだけに終わらない。千葉の実家に引っ越した分の運搬費とマンション購入のキャンセル料をあわせた約250万円という不動産がらみの出費があったり、子ども二人のために約150万円分を積み立てていた銀行口座の通帳やカードが妻に持ちだされたりもしたという。

減ったのは貯蓄だけではなかった。月々の収入も同様だった。

「離婚や面会の調停に出向くため、何かと会社を休まねばなりません。それまでの、激務だけど高給、という部署から外された結果、約700万円の年俸(支払金額)が500万円台(同)にまで減ってしまいました」

今後、婚姻費用の支払いが加わった場合、貯蓄は持つのだろうか。

「子どものことで、このまま争い続けたら3年後ぐらいにはスッカラカンになるでしょう。お金のことだけ考えたら、早く離婚したほうが楽なんです。

婚姻費用ではなく養育費となるので妻の生活費を払う必要がなくなりますし、弁護士費用もいらなくなりますから。

しかし、私を慕ってくれている子どもたちのことを考えると、離れ離れになるのだけは嫌なんです。子どもたちだって私と一緒に住むことを望んでいるんです」

ず払わなければいけないのか

Aさんのように、離婚手続きの費用や家賃などの支払いで、婚姻費用を支払う以前から赤字となっていた場合でも、婚姻費用は算定表通り、支払わねばならないものなのだろうか。面会交流などでかかる費用や妻が実家暮らしであるといったことは考慮されないのだろうか。

婚姻費用の分担の意義や運用について、離婚問題に詳しい古賀礼子弁護士に伺った。

——婚姻費用の分担が妥当なケースとそうでないケースには、それぞれどのようなものがありますか。まずは妥当なケースについて教えて下さい。

「妻の側が夫と婚姻生活を継続したいと思っているのに、夫が妻の意に反して出て行ってしまったり、生活費を入れなかったり、というときには生活費の支払いをあえて強制する必要も出てくるかと思います。

またはひどい暴力を振るう夫でどうしても一緒に住めないという正当な理由があれば、離婚までの期間に生活費をもらうというのもありだと思います。

つまり、その夫婦の置かれた個別の事情の中で、金銭を支払うという具体的な義務を認めること、そしてそれを強制することが夫婦の公平であるといえる場合には、認めることが妥当でしょう」

——どういうケースが多いのでしょうか?

「典型的なのは一方的に離婚を希望し別居をした妻が、夫を夫として扱う姿勢もなく、ただ、自身の生活費を求めるケースです。

ある日、夫が仕事を終えて帰宅したら、妻と子どももいなくなっている。そうして突然家族を失ったショックを受けている中、離婚申立てとともに婚姻費用分担を申し立てられ、別居に伴う妻の生活費の支払いを突きつけられたりするのです。

夫と妻が逆になるケースもありますが、ここでは典型例として、夫が支払う側、妻が受け取る側としてお話しします」

まさにAさんのケースがそれに当たるのではないだろうか。

——(Aさんのような)一方的だと思える請求でも、Aさんは妻に婚姻費用を支払わねばならいのですか?

「はい。出て行った妻の側が不貞をしていたなどの明確な有責性がない限り、基本的には認められることが多いです。

本来、夫婦が別居するということは民法の建前にも反した例外的な形態です。夫婦が話し合いの結果、じゃあ仕方ない、生活費はかさむけど、別居しながら夫婦で生活していこうという夫婦の方針の中で婚姻費用の決定をすべきなのです。

なのに、客観的にやむを得ない理由もないのに、ただ、妻が一緒にいたくないという理由で、2世帯分の家計を支えろ、という結論になってしまうことがあるのです」

望んでいないのに別居され、2世帯分の生活費を強制的に支払わされる。ローンの支払いなどの諸事情は考慮に入れられるにしても、その額は基本的に算定表通りに沿ったものになるというのが実情なのだ。

——自営業とかなら、強制的に支払わせるのは難しいのではないですか。なんらかの理由で収入がほとんどないという方とかも同様ですよね。

「そうなんです。大きな会社の会社員や公務員といった毎月給料が安定してもらえ、しかも収入がガラス張りの職業の人たちは立場が弱いですね。彼らなら、支払いを拒否しても、差し押さえが容易ですから」

夫が離婚を拒み続けたり、逆に妻が離婚をせず婚姻費用のみを請求し続けたりして離婚裁判が長期化した場合、婚姻費用は膨れ上がっていく。まさしくAさんはその途上にいるということだ。

幸い、まだ妻からの請求が来ておらず、婚姻費用分担のダメージはまだ受けていない。だがそれも時間の問題だろう。いくら払うことになるのかを考えると、頭が痛くなるという。

後編では実際に不当な形で婚姻費用を払わされているケースをいくつか見ていこう。それには、どういったものがあるのだろうか。

「離婚はしないがカネはくれ」婚姻費用で人生台無しになりました

前編では、大手広告代理店で働くAさんが妻に子ども二人を連れ去られた後、婚姻費用(夫婦間で別居をする場合、相手の暮らしを支えるために支払う生活費)によって、貯蓄をすべて失おうとしている様子を記した。

後編では、別居後、実際に婚姻費用を支払わされている男性たちの苦闘ぶりについて、記してみたい。彼らはいったいどのような苦難を経験したのか。

交通事故が不幸の始まり

「3年前の暮れ、妻が交通事故を起こし、死亡事故の加害者となってしまいました。事故の3ヵ月後、妻の弟の結婚式があったのですが、事故のショックやご遺族のお気持ちを考えて夫婦ともに欠席しました。

そのことにメンツをつぶされたと思ったのか、義父母は私に対し大変立腹、その後、私たち一家の分断をはかりました。昨年の3月下旬の夕方、自宅アパートに帰ると、家の中はガランとしていて、妊娠中の妻はもちろん、小学生の長男と長女までもいなくなっていました」

そう話すのは東北に住む高校教師Sさん(43)である。

昨年6月、Sさんは妻から離婚の調停を申し立てられた。夫婦別居時に相手の生活費を支払う「婚姻費用」は裁判所の算定表で即座に決まった。その額はSさんの手取り29万という月給の半分以上にあたる15万円と高額である。

「月14万円では生活を維持できません。光熱費や携帯電話代、ガソリン代、水道代そして食費と支払った上に、アパートの家賃6.2万円を払うと毎月赤字になってしまいます。思い出のこもった自宅アパートで帰りを待ちたかったのですがそれは不可能です。私は隣町の実家に引っ越さざるを得ませんでした」

算定表は子どもの年齢と人数、夫と妻の賃金という要素によってほぼ自動的に決まっていく。専業主婦だったSさんの妻は別居後に働き始めたが、Sさんの支払うべき金額は変わらない。婚姻費用は妻の給料によって左右されるべきなのだが、一度決まったものはなかなか見直されない。

「妻側は離婚が成立しなくても左うちわです。婚姻費用のほかに月給はもらえていますし児童手当や児童扶養手当などといったものも入って来ます。

離婚が成立したらしたで財産分与もあります。一戸建てを建てるために私が積み立てた1000万円などがその対象になる一方、お年玉を入れていた子供用の通帳などは調停が始まる前にすべて下ろしてしまったそうですから、対象外です。

妻は離婚訴訟を起こすという話をしてきてはいます。しかし現時点では私のところに訴状は来ていません」

「結婚はリスクですよ!」

最先端チップの開発に関わる大手エンジニアのYさん(40)も前編に登場したAさん同様、心身に変調を来した妻に暴力を振るわれた末の別居であった。

「妻は11歳の娘を産んだ後、甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンの分泌量が過剰になる疾患。パニック障害と間違われることも。バセドウ病もこの疾患の一つ)という病気になり、酒の力を借りるようになりました。

それ以来、暴言や暴力が止まらなくなり、警察を呼んで仲裁に入ってもらうこともしばしばで、私は心身ともに消耗してしまいました。そして一昨年の3月、親子3人で住んでいた3LDKのマンションを1人後にしました」

Yさんの年収は総額で約700万円(手取りは約500万円)だが、婚姻費用は5万円。というのも妻の年収300万円弱が考慮されているからだろう。

彼はそのほか現在住んでいるアパートの家賃4.6万円、生活費、弁護士費用などを支払っているため、現在の手取りの月給42万円のうち10万円ほどしか残らない。

マンションの鍵は取り替えられてしまい、家に入れなくなったが、ローン+管理費等の15万円は払い続けている。

「仕事が手につかないため、降格となり、年収は100万円以上減りました。現在は、睡眠薬と抗うつ剤を服用しています。

子どもには3ヵ月に1回程度会えるかどうかという感じです。子どもが生まれるまでは仲の良い夫婦だったというのに、産後の病気によって地獄へ落とされてしまいました。

まさかこんな事になってしまうなんて思いもしませんでしたよ。結婚そのものがリスクですよ。ほんとなら出会うべきでなかったのかもしれません。首をくくりたいと衝動的に思ってしまうこともあります」

家に帰ると置き手紙が

ロボット開発を手がける大手のエンジニア、Tさん(49)はAさんやSさん同様、帰宅後、家から妻子がいなくなっていたケースだ。

「4年前、帰宅すると14歳年下の妻と生後7ヵ月の娘がいないんです。部屋には置手紙があり、『あなたは私のことを対等に見てくれませんでしたね』と書いてありました」

5年前、中国地方にある実家に妻は里帰り出産、二人が関東に戻ってきてからは育児休暇を2週間取得し、ともに育児をした。ところが翌年の始め、妻は娘を連れて突然家を出て行った。

その後、妻からは離婚や婚姻費用の調停を申し立てられる。一方、Tさんは娘との面会交流などの調停を申し立てた。離婚は成立しておらず、婚姻費用を払っている彼は、現在ひときわひどい経済的苦境に置かれている。

「今年に入ってからは、親から受け継いだ遺産や結婚前から持っていた貯金すら尽きてしまい、いまやカードローンに頼っています。面会交流の調停のおかげで、2年間で30分ずつ合計2回しか会えなかったころに比べると、昨年10月以降、2ヵ月に1回、娘に会えるようになったのは幸いです。

しかし娘に会うのに毎回かなりの出費です。飛行機だと5、6万円、新幹線で4万円前後、高速バスで3万円前後と往復でかかりますから。ドタキャンされたこともありますよ。だからキャンセルのきかない早期割引購入チケットは手を出せません」

彼の給料は総額で600~700万円。妻はパートの仕事をしており、娘1人ということで、算定表の額面通りの12万円を支払っている。

「婚姻費用はもう4年以上払っています。合計で600万円以上払っていますが、離婚はまだ成立する見込みがありません。

娘がいなければ、親権や監護権の問題が発生しないわけだし、妻の要求していた慰謝料300万円を支払って素早く離婚していたと思います。しかし、親権の決着がつかないため離婚が成立せず、婚姻費用が膨れ上がった。結局、慰謝料以上のお金を支払っています。

今後、離婚したらしたで、様々なお金が生じますので、そのときは多額の借金をする必要がでてきそうです。

着手金しかまだ払っていませんが、離婚や婚姻費用のほかに子の引き渡しや保全処分、面会交流と様々な調停を依頼しましたから、弁護士にも報酬を支払わなければなりません。離婚が成立すれば、妻の生活費を払わなくてよくなりますが、養育費は月々6、7万円発生するでしょう」

お金が欲しいので離婚はしません

次に紹介する二人は年収1000万円を超える高額所得者のケースである。一人はメガバンク、もう一人はテレビ局勤務という、人がうらやむような職業の人たちだ。エリートだから故の大変さはあるのだろうか。

「妻とは2年交際した後に結婚をしました。4年前のことです。しかし結婚期間は2週間しかありませんでした。というのも、まだ乳飲み子だった息子を妻が関西の実家に連れて帰ってしまったからです。

私の年収は約1300万円。内訳ですが、給与所得が総額1000万円で不動産収入が300万円です。一方、妻の年収は360万円と計算され、婚姻費用は11万円となりました」

そう話すのはメガバンクで働いているFさん(47歳)である。収入の割に婚姻費用が安いのは、これが3度目の結婚で、最初の結婚で長女、二回目の結婚で長男と次女という三人の子どもがすでにいるからだ。

「長女の養育費は毎月5万円です。長男と次女ですが、当初は長男のみに5万円という双方が合意した額を払っていましたが、その後、裁判で次女の養育費を3万円支払うようにという決定が出たため、二人分で8万円となりました。二人の割に安いのは、前妻の収入が約900万円あったからです」

とすると、4人合わせて毎月24万円を払っているのか。

「長女に関しては、2年前から養育費の支払いを中断しています。元妻から『もう払わなくてよい』との申し出があったためです。

ちなみに長女とは別れてから一度も会わせてもらっていません。長男と次女に関しても現在は払っていません。前妻が再婚し、二人の子は再婚相手の養子となったからです。

それを受け、裁判で養育費は0円と確定しました。ですので今は二男と妻の婚姻費用、11万円だけを払っているということになります」

結婚生活をどう振り返るのか。

「私はさんざん結婚に失敗していますが、今からでも平和な家庭を築いてパートナーと一緒に子育てしたいし、今会えていない子供たちに対しても可能な限り関わり、成長に貢献していきたいと願っています。

同居しなくても養育費以上の金を受け取れるから、妻からは離婚の申し立てはありません。今後、彼女が金持ちで都合のいい男性と出会えば、再婚するために離婚を申し立ててくるでしょうけどね」

自転車操業でなんとかやってます…

「年下の妻と結婚したのは40をすぎてからのことでした。子どもに囲まれて暮らすのを夢見ていたので、奮発して都心に近い街に4LDKのマンションを購入して結婚生活がスタート。

定年までにローンを払い終えようと、銀行から4800万円を借り入れてローンを組みました。普通よりも短い20年ローンを組んだため、結婚前のような豊かな生活とは程遠い、節約を意識しなくてはならない生活になりました」と話すのは40代後半のテレビ局に勤務するCさんだ。

多いときには年収総額が1500万円超という高額所得者であるCさんだが、年間約270万円のローンの返済に加え、管理費や駐車場代が年60万。子ども2人の保育園代年96万、学資保険代年48万などを支払うと決して生活に余裕はなかったという。

「夜の人付き合いも大事にされるテレビ業界。仕事中心になりがちで、家族の不満が溜り夫婦関係がギクシャクするというのはよくあるようです。

ウチでは、二男を出産した後、妻の精神状態は急に不安定になりました。いつも機嫌が悪く、私が遅く帰宅するたびに激怒され、平手打ちの連続なんてこともあり、とても手に負える状態ではありませんでした」

一方、彼は小遣い欲しさで始めた株の運用が成功、夫婦関係の修復のために、株取引で儲かったお金で妻に洋服を買ってあげたり、妻の実家を二世帯住宅として建て替える計画を立てたりする。

「株の含み益が数百万円になったとき、『あなたの実家を2世帯住宅に建て替え、ご両親の助けを得ながらゆとりのある環境で子育てをしよう』と提案したところ、妻は涙を浮かべて喜んでいました」

ところがその後、Cさんの夢がもろくも崩れ去っていく。

「調子が良かった銘柄が急落して半値になったんです。家を建て替えるためにはここで損をする訳にはいかない。リスクを承知でキャッシング(カードローン)して、株を買い増したところ、株価はさらに下がっていき、最終的には1000万円の借金を抱える身となってしまいました」

Cさんは妻に、育児休暇明けで仕事に復帰したら月3万円で良いので家計に入れて欲しいと懇願する。

「疑心暗鬼となった妻は、子どもを連れて実家に帰ってしまいました。その後、弁護士を通じて、『離婚に応じよ』『月額20万円の婚姻費用を支払え』と通知してきたんです」

借金と突然の別居、婚姻費用の請求、さらには愛する子どもたちに会えなくなるという四重苦に陥った。

Cさんは婚姻費用の額をめぐって調停で争うことになるが、別居時の生活費の額は婚姻費用算定表により自動的に決められてしまう。

「『株で作った借金は家を建て替える目的で行ったものであり、失敗の責任をすべて私が負うのは不公平だ。収入から損失額を差し引くなど考慮して欲しい』と懇願したんですが、一切考慮されることはありませんでした」

こうしてCさんは毎月20万円の婚姻費用を妻に支払うことが決まった。

「婚姻費用を払うために、含み損をかかえた株をすべて処分しましたが、約1000万円の借金が残りました。婚姻費用を払うと住宅ローンとカードローンが返せなくなりました。

ローン支払日が来ると、他社から借りて返済するなど自転車操業でその場その場を凌ぎました。何のために生きているのか分からなくなり、辛くて仕方がなくなりました」

その後、Cさんは自宅マンションを売却する。カードローンの借金約1000万円をすべて完済することができたが、思い出のこもったマンションと家族を失った。

「子どもの成長のために必要なお金だというのは分かっているんです。でも、毎月20万円払って、子どもたちと会えるのは月にたったの1回1時間だけというのはあんまりです」

婚姻費用という「副作用」

夫の意見ばかりを聞いているので、妻がどう思っているかはここではわからない。しかし6人が6人とも、家族が壊れるということを望んでおらず、子どもたちに愛着を示しているという点が共通していた。

一方で、離婚裁判が長引けば長引くほど、婚姻費用の総額は膨れ上がってしまう。お金のことだけ考えると、親権などの条件が悪くても、早期に離婚した方がいいとも言えるのだ。

「夫が妻の主張に対して、DVはないとか、モラハラではないとか、逆に妻に暴力を振るわれたとか、不貞は働いていないとか、子供の親権を持ちたいとか、裁判所に申し立て、法廷で戦いたいと思っても、1年、2年さらにそれ以上の年月がたてば、婚姻費用の額が慰謝料や財産分与以上の金額に膨れ上がります。

そこに係争費や家のローンや遠方への交通費などが加われば経済的な損失は相当なものです。その場合、夫が自分の言い分を裁判所で主張したいと思っても、経済的負荷に耐えられず降参――ということが起こりえます。

本来自身の主張を尽くして判断を受けるという手続が保障されているはずなのに、事実上この機会が奪われてしまうのです。一方、性別が逆のケースも中にはあります」(古賀礼子弁護士)

通常ならば、夫婦間で別居時の相手の暮らしを支えるためのお金である婚姻費用。これが、より多くのお金を得たいとか、いい条件で離婚したいなどという別の目的で使われることで、意図しない別居、そして経済的に大きな損失を夫に背負わせることになる。

これは、結婚している男なら誰にでも起こりうることだと心得てほしい。中でも子どもがいる父親、さらには高額所得者やサラリーマン、公務員といった取りっぱぐれのない職業の人たちは、そのリスクについて特に肝に銘じておいた方が良いだろう。


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