処理水放出に時間がかかった背景にマスコミの影響 政治家が処理水を飲んで安心をアピールすれば…中国の難癖撃退に

元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一

【日本の解き方】処理水放出に時間がかかった背景にマスコミの影響 政治家が処理水を飲んで安心をアピールすれば…中国の難癖撃退に(1/2ページ)

東電福島第1原発の処理水について、24日に海洋放出が始まった。放出開始までに時間がかかった背景はなにか。風評被害をなくすためには何が必要なのか。

この問題を考える上で、「安全」と「安心」が重要だ。「安全」とは客観性に基づくもので、根拠は科学に依存することが多く、その反対概念は「危険」である。「安心」とは、主観に基づくもので、人によってさまざまだが、その反対概念は「不安」である。

先に達成すべきは安全であり、その後、安心が形成されていく。行政でできるのは安全までで、安心には時間と説得が必要なので、マスコミの影響が大きい。安全であるにもかかわらず、不安があるときに風評被害が起こる。

これで思い出すのが、豊洲市場への移転をめぐる小池百合子都知事のかつての発言だ。「安全基準」と飲用にできる「環境基準」を混同し、合理的でない安全基準以上の無理難題を求めつつ、安心という感覚に行政が依存し、時間を浪費した

今回、行政はそこまでぬかっていなかった。処理水についてはかなり早い段階で科学的な安全性が確保されているという説明がなされ、国際原子力機関(IAEA)の最終確認も取られた。安全性の確認も慎重な手順で行われ、処理水放出はあえて急がず、処理タンクが満杯になるギリギリまで時間を使ったのだろう。

安心に対する調査も継続的に行われている。消費者庁による「風評に関する消費者意識の実態調査」では、福島産品の購入を放射性物質を理由にためらう人の割合が2013年2月の第1回調査で19・4%だった。その後、ほぼ一貫して低下し続けて、今年1月の第16回調査では過去最少の5・8%まで低下している。ただし、この結果について、メディアではほとんど報道されていなかった。

また、福島県は今でも食品の放射性物質検査を行っており、検査結果も公表されている。その結果をみても福島産について安全性の問題はないが、これもあまり報道されない。

 

一方、中国が日本からの水産物の輸入について不合理な規制強化を行うと大々的に報道する。安心につながる報道はなされないが、不安になるような報道がなされるというメディアの非対称によって、安全であるが不安がなかなか解消されないという状況になっている。

ここでの出番は政治だ。和田正宗参院議員が発言しているが、政治家が処理水を飲んで安心をアピールするというパフォーマンスがある。この方法は、中国が政治的に難癖をつけているのでその撃退にもなるという一石二鳥の策だ。

 

2011年当時にも内閣府政務官が処理水を飲んだことがあるが、いまも健在だ。今回は外相が飲むと同時に、中国の外相にも自分のところで放出している処理水を飲めといえばいい。中国の外相が四の五の言って飲まなければ政治的に負け、飲んでも日本の主張を認めたことになるので、いずれにしても日本にとって不都合ではない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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