魚のきもち

魚に痛みはあるか？調べてるって本に書いてあったけど　
なんてつまんないことやってるんだろ
あるに決まってるじゃん・・生きてるんだから・・・

母島のバイト先の厨房での出来事
いじめられっこの緑ちゃんとアタシのふたり

夜遅くまで薄暗い厨房に残されて雑用をしていたら
ゾワゾワと激しい悲しみが背後からせまってきて部屋をつつんだ・・・

なんのことだかさっぱりわからない
気持ちを無視して作業を続けていて、ふっと厨房の隅に目をやる

波止場に針さえたらしていればむやみに釣れる魚
なんかこしらえて！って泊り客が置いていったさまざまな魚たち

ミンナ面倒くさがって
放置しっぱなしで忘れられてたバケツいっぱいの雑魚ども

これは、魚の悲しみなんだ・・・

そうなんだ・・・
緑ちゃんと二人で雑魚の身の上を自分たちに投影させた
二人は涙ぐんで無言で同意する・・・

みどりちゃんがバケツをもって海に走った
逃がしてやるために・・・
暗い海に向かって・・・

ほどなく空のバケツを持って帰ってきた緑ちゃんを待ちかねて聞く
間に合った？
・・弱弱しくクビをふり、みどりちゃんは、必死に唇をかんだ
アタシは、うつむいてぽたぽた涙をこぼした・・