暁の雲(平安語調平成日誌)

花をめで 鳥をうらやみ 霞をあはれびつつ
露をかなしぶこころ ここに記す
秋の月を見るに 暁の雲に会へるがごとし

奥山に猫またといふものありて・・・

2012-02-27 | 樹木・植物・動物・有職故実

 「『奥山に 猫また というものありて

 人を喰らふなる』

といひけるに・・・

『山ならねども これらにも 猫の経上がりて(へあがりて)
猫またになりて 人捕ることはあなるものを』

とも 人のいふなる」 など 弟なる人に物語する のどかなる午(ひる)に
隣家の猫の 時折 軒の境にて寝ぬる(いぬる)ことあるが・・・

なにをか見つけたりけむ・・・
にはかに おどろき立ちあがりて

つと跳び出づる・・・と見るや

あやまたず
やがて来たりける隣家のあるじなる人の頸(くび)のほど 
喰らはんとばかりに 跳びかかりたれば

あるじなる人 肝(きも)こころも失せ(うせ)て 
防がんとするに力もなくて 荒れ惑ふままに駆け出しぬ

足も立たず 池へ転び入りて
「助けよや!猫また よやよや!」と 狂ひ叫べば
怪しきカラスどもの あるじにたかり寄りて 四つ五つ飛び交ふほどに

気丈なる母君の走り来て 
こは 日ごろより おぞましき虫めづる姫君養ひたまふる いかめしき御方なれば
御顔色もうつろはせで
息巻くままに このあるじを池より引き出だし奉りて なにとも言はず 率て去ぬ 
独り身には 心すべきこと 恐ろしきことにこそ と思はる

飼ひける猫の 主(ぬし)を知りて跳び付きたりける とぞ・・・・

♪・・・深山(みやま)には 鬼もをるらし外山(とやま)なる まさきのかづら色づきにけり・・・♪〈本歌古今1077〉