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【能力開発】図形センスを磨き、難問に挑む-高校への数学「レベルアップ演習」編§7-

2013-12-09 21:48:48 | 大学への数学ほか
 中学の時、図形問題が苦手であると、高校、大学入試時まで引きずってしまうことがある。

 そして、図形問題を解くセンスは、知覚・認知過程の変容も必要となるため、短期間では、なかなか容易に身に着けることはできない。

 難関大学の入試において図形問題が出ることから、早期に着手して苦手意識を克服し、図形力をUPしておくことが望まれる。

 ここで、まずは東京出版の「高校への数学」の別冊では登竜門的な位置付けである、「レベルアップ演習」に取り組み、図形問題を解くセンスを身に着けていきたい。

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【★7・1】(すべては直角と平行線から始まった…)
(問題文は当該問題集を参照して下さい)【この本へのリンク】

 この問題自体は、息子・娘ともに瞬殺で解いてしまい、かなり平易なものだったが、関連してあれこれ考えだすと、とても深みにはまりこんでしまった。

【問題の解法の流れ】

「三角形の外角の定理(内対角の和は外角に等しい)」
  ↓
 x+15°=110°、40°+y=x
 より、x、yを求めてO.K.

 もしそれが思い浮かばなくても

「三角形の内角の和は180°(2∠R)の定理」
 ↓
 x+15°+a=180°
 110°+a=180°
 40°+y=x
 より、a、x、yを求めてO.K.


●しかし、問題は、「三角形の内角の和は180°(2∠R)の定理」の証明について突き詰めて考えていくことから始まって行った。

 まず、「三角形の内角の和は180°(2∠R)の定理」(Rは「直角」(right angleの頭文字)を表す)であるが、以下の手順で証明する。

(step1)
 下図の三角形ABCにおいて、辺ABに対する平行な補助線CEを引いて、
 「平行線の錯角は等しいという定理」と「平行線の同位角は等しいという定理」を適用し、
その補助線CEの周りに三角形の各角を集める。
 ↓
(step2)
 集めた∠BCA+∠ACE+∠ECDは底辺BCDの角と等しく、
「直線上の角180°(2∠R)に等しいという定理」と一致。

(了)

【図】



+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-+:-+:-+:-+:-+

 ここまではよかったのだが・・・

●そこで、さらに突き詰めると、「平行線の錯角は等しいという定理」と「平行線の同位角は等しいという定理」は、「ユークリッド原論」(以下「原論」という)に命題29(定理)があるが、どのように証明するかということである。

 「対頂角は等しい」ということが示されていると、「錯角」と「同位角」は、それぞれ等しいことになる。
 よって、「平行線の錯角は等しい」ということが示せれば、「平行線の同位角は等しい」ということが導ける。

●最初に、「対頂角は等しいという定理」を証明したいのだが、
 そのためには、その前の段階があって、

 「直線上の角は180°(2∠R)」という、「原論」の命題13(定理)が必要となる。

 それを以下のように証明する。

 【下図】において、



 ①もし、∠DBA=∠ABCならば、∠DBA=∠ABC=∠R(「原論」定義10より)

 ②もし、∠CBA≠∠ABDならば、

 ∠CBE=∠EBD=∠Rとなる垂線を引く。

 ∠EBD=∠R=∠EBA+∠ABD

 ∠CBE+∠EBD=2∠R=∠CBE+∠EBA+∠ABD
 よって、∠EBA+∠ABD=∠R

 一方、∠CBA+∠ABD=∠CBE+∠EBA+∠ABD
 ∠CBE=∠R、∠EBA+∠ABD=∠Rより、
 ∠CBA+∠ABD=2∠R

(了)

●続いて、「対頂角は等しいという定理」を次の手順で証明する。

 【下図】において、



 ∠DEA+∠AEC=2∠R(命題13より)

 ∠AEC+∠CEB=2∠R(命題13より)

 ∠DEA+∠AEC=∠AEC+∠CEB

 両辺から∠AECを引くと、対頂角同士は、∠DEA=∠CEBとなる。

 同様に、∠DED=∠AECが示される。

●ようやく、「平行線の錯角は等しいという定理」の証明を行っていく。

 そのためには、「原論」の第1巻にある、「第5公準」と、先に証明した「直線上の角は180°(2∠R)」という命題13(定理)を用いることになる。

 「公準」とは、数学上の言葉で、証明の出発、前提の要請(命題)となるものだ。

 これは一般的に自明なものとして使用するものだ。

 そして、「原論」の「第5公準」は、
 「1直線が2直線に交わり同じ側の内角の和を2直角より小さくするならば、この2直線は限りなく延長されると2直角より小さい角のある側において交わること」
だ。

●「平行線の錯角は等しいという定理」の証明は、背理法(高校数学で学ぶ)を使う。

【図】



(step1)2つの直線ABと直線CDが平行である時、図の「錯角である∠AGHと∠DHGが等しくない」(∠AGH≠∠DHG)と仮定する。結果、どちらかの角が大きいことになるが、仮に∠AGH>∠DHG…①とする。
  ↓
(step2)①の両辺に∠BGHを加えると、∠AGH+∠BGH>∠DHG+∠BGHとなる。
  ↓
(step3)∠AGH+∠BGHは直線上の角で、上記の「命題13」より、2∠Rとなる。
  ↓
(step4)よって、∠DHG+∠BGH<2∠Rとなる。
  ↓
(step5)「第5公準」より、直線ABと直線CDは交わることになる。
  ↓
(step6)このことは、直線ABと直線CDは平行であることに矛盾する。
  ↓
(step7)結局、「錯角の∠AGHと∠DHGが等しくない」という仮定は誤りとなり、2つの直線が平行な時は、「その錯角は等しい」ことになる。

(了)

●しかし、話はここで終わらない・・・(ユークリッド幾何学を超えて)

 以上に見たように、
 「三角形の内角の和は180°(2∠R)の定理」は、「原論」の「第5公準」を前提とした場合に成り立つ。

 では、この「第5公準」を前提としない場合や、成り立たない場合は、「三角形の内角の和」はどうなるのだろうか?

 そして、その場合、どういった幾何学になるのだろうか?

 結論を言うと、それは「原論」で展開される「ユークリッド幾何学」というものに対し、「非ユークリッド幾何学」というものになる。

 「第5公準」が成り立たない場合である「非ユークリッド幾何学」においては、3次元球面上では「三角形の内角の和は270°」となったり、負に曲がった平面上では「三角形の内角の和は180°以下」となる。

【非ユークリッド幾何学】の発見まで

「第5公準」は他の公準に比べ、表現が複雑
  ↓
「第5公準」は定理であり、これ自体が証明可能?
  ↓
 2000年間の証明の試み
  ↓
「第5公準」⇔同値「三角形の内角の和が2直角に等しい」(ルジャンドル)

「第5公準」の否定⇔同値「三角形の内角の和が2直角より真に小さい」(サッケリの理論より)
  ↓
「非ユークリッド幾何学」の発見(ガウス、ボヤイ、ロバチェフスキー、関連してリーマン)

【今回参考にした図書】
・「ユークリッド原論追補版」共立出版(2011/5/25)
・「ユークリッド『原論』とは何か―二千年読みつがれた数学の古典」斎藤憲:岩波書店(2008/9/17)
・「現代幾何学の流れ」砂田利一:日本評論社(2007/10)

【最後に】

 普段、当たり前に受け取っていた物事や知識などについて、改めて原点に立ち返って突き詰めて確認してみたことは、思った以上に大変だった・・・

 今後も図形問題を解くにあたっては、「原論」を随時参照して、立ち返って考えて行きたい。

 ※なお、各定理の証明は、「原論」の記載通りに再現せずに、自分なりにアレンジした。

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