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グリーン&オーガニック・ブログ

世界の緑の政治やオーガニックに関する情報を伝えます。

農水省「有機JAS規格に関する意見交換会」

2010-05-23 17:03:16 | 行政関連

2010_jas_031_2だいぶ時間が経ってしまったのですが、僕も委員(パネリスト)のひとりとして参加させてもらった農水省主催の有機認証制度に関する会議についてご報告します。2010年2月9日(火)の14時から17時まで、農水省の第2特別会議室において「有機JAS規格に関する意見交換会」が開催されました。http://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/yuuki_iken_100209.html

Ifoam_jas_images日本には、
有機食品の表示に関する有機認証制度(有機JAS制度:2000年~)があります。この法律により、国内で有機野菜・有機加工食品・有機畜産物等のオーガニック食品を生産、製造、販売する場合には商品に「有機JASマーク」を貼付しなければなりません。このマークを貼付するには、オーガニック食品の生産、製造、小分け(販売)、輸入に関わる事業者が有機認証団体(農水省の登録認定機関)による検査・認定を受ける必要があります。そして、有機食品を生産する方法に関する生産基準は「有機JAS規格」に規定されています(以下は登録認定機関「JONA」の有機JAS情報へのリンクです)。http://jona-japan.org/certified/#a01

2010_jas_035061_3 ■ヨーロッパ有機認証制度の歴史
日本では、2000年に有機JAS法と呼ばれる「有機農産物及びその加工食品に関するJAS規格」が施行されて、2001年にオーガニック食品の検査認証制度が実施されました。2005年には「有機畜産物及び有機飼料のJAS規格」が制定されました。これは、1999年の国際的な「オーガニック基準(有機食品の生産、加工、表示及び販売に係るコーデックスガイドライン)」の制定を受けてのことです。「コーデックス(国際食品規格)委員会(本部:イタリア・ローマ)」とは、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が設置した、消費者の健康を保護し、食品の公正な貿易を確保するための政府間組織です(※以下はコーデックス有機ガイドラインの農水省による邦訳です)。
http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/codex/standard_list/pdf/cac_gl32a.pdf

069Soil_association_2ヨーロッパでは、1980年代からEU加盟各国の有機農業団体が自ら有機認証団体を作って、有機農業が環境に優しい農業であることや有機農産物やオーガニック食品の優位性に関して、自らの有機認証マークの宣伝活動を通じて消費者にアピールしてきました。代表的な有機認証団体は、イギリスのソイルアソシエーション(英国土壌協会)やドイツのビオランドやデメター、フランスのエコサートなどが挙げられます。これらの有機認証団体が有機農産物やオーガニック食品の安全面・健康面・環境面での貢献を消費者に対してPR活動やマーケティング活動、普及啓発活動を積極的に展開してきたことが原動力となってヨーロッパのオーガニック食品市場を盛り上げてきました。

Ifoamimages_2上記のような有機農業団体の連盟として設立された「IFOAM(アイフォーム:国際有機農業運動連盟)」は、1980年に各構成団体のオーガニック基準と有機認証に関する現場で豊富に蓄積された経験をベースに「IFOAMオーガニック基礎基準」を策定しました。このオーガニック基礎基準(有機基準を作るための基準)は、世界各国の政府や有機認証団体による基準や検査システムを構築するための国際ガイドラインとして尊重されてきました。
http://blog.goo.ne.jp/masayakoriyama/d/20080907

060Logo_demeterの後、オーガニック市場が発展するにつれて、有機表示のある商品が高く売れる状況になると、有機食品の偽装表示が横行するようになりました。そのような事態を受けて、消費者と生産者を守るために、EU加盟各国において法律で検査認証を義務付けるオーガニック食品の表示規制が導入されました。例えば、フランスでは1988年に有機認証制度がスタートしました。

Ifoam_euimagesこのことは、1990年代に入って、EUレベルでも実現しました。それがEUオーガニック基準に基づいて1992年に施行された「農産物の有機的生産ならびに農産物及び食品の表示規則[EEC/2092/91]」の導入です。この法律により、商品の生産過程がオーガニックであることを検査し、認証された生産物しか有機農産物と表示できないことを規則で決めた有機認証制度が導入されました。そして、この制度による生産工程の保証が消費者のオーガニック食品に対する信頼を獲得して、オーガニック市場の急成長の後ろ盾となったのです。そして、90年代には生協や大手のスーパーマーケットなどが有機食品を積極的に販売してオーガニック市場の拡大を牽引しました。特にイギリスでは、90年代後半から2大スーパーチェーンがそれぞれ独自のオーガニックブランドを立ち上げて数百アイテムの有機食品を販売しています。このように、EUでは民間のオーガニックセクターが有機認証制度の導入などを通じて有機食品の普及啓発と市場開拓をしてきたのです。

このEUのオーガニック食品表示規制の導入にはIFOAMが大きな役割を果たしました。そして、EUのオーガニック基準も上記の「コーデックス有機ガイドライン」もIFOAMのオーガニック基礎基準を参考として策定されました。IFOAMはコーデックス委員会の公式なオブザーバー資格を持ち、有機ガイドラインの策定過程からその後の定期的な改訂にも関与しています。http://blog.goo.ne.jp/masayakoriyama/d/20080907

2010_jas_030_2有機JAS規格に関する意見交換会
前置きが大変長くなりましたが、意見交換会には、農水省から消費・安全局 表示・規格課長小川良介さん(当時)、同有機食品制度班課長補佐の島﨑眞人さん、有機農業推進法を担当する生産局の農業環境対策課から有機農業推進班 課長補佐の堀川昌昭さん(当時)と畜産部畜産規格課の野方博幸さんが参加されました。オブザーバーとしてオーガニックコスメやコットンを担当する経経済産業局繊維課の方なども参加されていました。また傍聴席には、有機農業に関わる生産者や加工メーカー、マスコミ関係者や研究者、有機認証団体の方などが列席されていました。

032この意見交換会に、有難いことに僕もIFOAMの国際理事として参加させてもらいました。そして、なんとお隣は東京の表参道で長らくオーガニックショップの「クレヨンハウス」を運営されている作家の落合恵子さんでした!クレヨンハウスでは30年前から、有機野菜やオーガニック食品、オーガニックコットンやコスメやシュタイナー教育のおもちゃなども販売しています。店内にはオーガニックレストランもありますし、子どもの本や女性の本、環境問題などオルタナティブなテーマの書籍が並ぶ書店も併設しています。実は個人的にクレヨンハウスのファンだったので、うれしくて思わず初対面の落合恵子さんにあれこれ話しかけてしまいました。http://www.crayonhouse.co.jp/home/index.html

今回、検討会への参加の打診をいただいた時には、通常の会議のように「委員」という名前でしたが、より多くの人に参加をしてもらい、会議を公開のものとするために、意見を聞かれる委員は「パネリスト」という名称(位置づけ)になったようでした。この手の会議には関係者が傍聴できるパターンが多いのですが、今回は関心の高いテーマだけにかなりの応募があったようで、知り合いの有機農家の方は、「事務所の5人で応募してやっとひとり参加できた」と話されていました。何倍の競争率だったかはわかりませんが、マスコミの取材を含めて100人弱の参加者があったと思います。検討会に参加されたパネリスト皆さんは以下の通りです。

【パネリスト】
(社)栄養改善普及会 理事 粟生美世氏
消費科学連合会 井岡智子氏
(財)自然農法国際研究開発センター 認定事務局長 今井悟氏
(独)農林水産消費安全技術センター(FAMIC) 規格検査部長 植木隆氏
クレヨンハウス 代表 落合恵子氏
IFOAM(国際有機農業運動連盟) 世界理事 郡山昌也氏
毎日新聞生活報道部 編集委員 小島正美氏
光食品株式会社 代表取締役社長 島田光雅氏
JA加美 よつば有機米生産部会長 沼太一氏
(特活)日本オーガニック&ナチュラルフーズ(JONA)協会 理事長 松本憲二氏
(特活)日本オーガニック検査員協会(JOIA) 理事長 丸山豊氏
主婦連合会 会長 山根香織氏
ワタミ株式会社 代表取締役会長 渡邉美樹氏

2010_jas_036今回の「有機JAS規格に関する意見交換会」のテーマは以下の4つでした。
【課題1】「世界の先進国に比べ、日本の有機生産が伸びない理由は?」
【課題2】「2005年に導入した有機畜産物がほぼ生産されない理由は?」
【課題3】「有機JAS規格の名称の表示の規制は充分か?」
【課題4】「同等性認定について、今後どのように実施するか?」


検討会では冒頭に消費・安全局 表示・規格課長の小川良介さんから会議の趣旨の説明がありました。小川課長は、ヨーロッパなど海外のオーガニック事情にも通じていて、この間はEUとの「同等性認定」に関して尽力されてきました。それに続いて有機食品制度班課長補佐の島﨑眞人さんから、配布資料を使って①「有機JAS制度を巡る現状について」②「有機JAS制度における課題」について報告がありました。主な内容は以下の通りです。詳しい報告内容については、配布資料を以下のページから見ることができます。http://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/yuuki_iken_100209.html

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
①有機JAS制度の現状については…

・日本の有機食品市場が非常に小さい(※以下、1ユーロ=160円で市場規模を計算:約150億円、ドイツ約8500億円、アメリカ約2兆1300億円、ヨーロッパ約2兆6000億円)。
・日本の有機圃場面積は非常に小さい(※全農地の0.18%:日本約9万ha、中国155万ha、ブラジル177万ha、アルゼンチン220万ha、EU776万ha)
・格付けは外国産の有機農産物が多い(※格付け量=輸入量ではない)
・格付けは外国産の有機農産物ではサトウキビの割合が高い(約7割)
・オーガニック加工食品は外国産と国産が同程度の量
・国内の有機畜産の現状(有機牛、豚、鶏)
・日本が有機農産物に関する有機農業認証制度を同等と認めている国
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/hyoji/100623.html

②有機JAS制度における課題については…

○2008年度の有機農業総合支援対策による「消費者調査報告書」から。

・消費者の有機JASマーク認知度はまだ低い。
・有機農産物を購入している消費者は、「値段が高い」「品揃えが少ない」と考えている。
・有機農産物を購入していない消費者も、「価格が高い」「どこで買えるかわからない」と考えている。
○2007年
度「有機農業や環境保全型農業に関する意識・意向調査」から。
・流通加工業者は、有機農産物を「安全な農産物」、「消費者が求めるもの」と考えている。
・5割の農業者が有機農業に取り組みたいと思っている。


第1回全国有機農業モデルタウン会議

2009-08-31 00:49:00 | 行政関連

2009_005_37月21(火)、農水省の7階講堂で第1回「全国有機農業モデルタウン会議」が開催されました。農水省では、2006年12月に施行された有機農業推進法に基づいて、2008年度から有機農業総合支援対策を実施しています。その地域レベルの取り組みとして、有機農業の新規参入希望者に対する技術指導、販路開拓のためのマーケティング、消費者との交流、有機農業の広報(普及・啓発)、技術実証圃場の設置などの支援により、全国に有機農業の振興の核となる「モデルタウン」の育成に取り組んでいます。

Photo有機農業モデルタウンは、公募によって決められます。まず市町村や県などの行政機関、有機農家、農協などで地域で有機農業推進のための協議会を設立して、有機農業の振興計画を策定します。この計画が農水省に認められるとモデルタウンの指定を受けられます。指定協議会には、例えば有機農業の専門家を講師にした技術研修会、消費者との交流イベント、マーケティング活動の費用などが補助されます。またモデルタウンのうち2カ所には、有機種苗の生産や栽培研修の拠点となる技術支援センターも建設されることになっています。http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/model.html

Japanese_organic_model_town_map

2009年度は、全国47地区に加えて補正予算で追加された12ヶ所の計59ヶ所でモデルタウンの取り組みが行われています。この日は、全国でモデルタウン事業に関わっている有機農業者を中心に、地方農政局などの行政関係者や流通業者、有機農業団体など(登録参加者だけでも)262名もの関係者が集まり、農水省の広い講堂がいっぱいになりました。僕は今回、Radixの会(らでぃっしゅぼーや)として参加しました。
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/y_model_town/index.html

2009_040個人的には、ここ最近はIFOAMジャパン関連の打ち合わせなどで、有機農業推進法の担当部署の農業環境政策課がある農水省の2階に何度か行く機会がありました。また、15年近く有機農業の広報に関する仕事をしてきたので、農水省記者クラブのある3階にもよく来ていましたが、さすがに(きっと新入省員の入省式の訓示などをやるのであろう)7階の講堂には今まで入ったことがありませんでした。その講堂が、有機農業関係者でいっぱいになる日が来ようとは、まだ有機農業推進法が施行さていない3年前には誰も想像しなかっただろうなーと思うと、なかなか感慨深いものがありました。
http://blog.goo.ne.jp/masayakoriyama/d/20090716

2009_041奇しくも衆議院が(歴史的な政権交代に向けて)解散された当日に第1回目が開催された「全国有機農業モデルタウン会議」は、そのことにも触れた農水省生産局の本川局長のあいさつで始まりました。それに続いて、生産局農業環境対策課の別所課長から有機農業推進法に関するこれまでの経緯とモデルタウンを巡る全国の動きに関する報告がありました。事務局の資料を基に、有機農産物の生産量(有機JAS格付数量)は、2008年で53,446tになったこと。これは国内農産物生産量の0.18%に相当するとのこと。モデルタウン事業の効果で、基本的には慣行栽培から有機農業への転換者数、有機(JAS)の栽培面積、有機(JAS)農産物の収穫量、販売量ともに一定程度の増加傾向にあるという報告でした。そして、有機農産物の認定事業者数は約2000名になったことなどが報告されました。詳しい資料は以下のリンクからご覧いただけます。http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/pdf/4_1_model_town_meguji.pdf

【モデルタウン活動の事例報告】
2009_038その後、農業環境対策課の有機農業推進班、堀川班長の司会で全国5ヶ所の有機農業推進協議会から、以下のテーマでモデルタウン活動の先進的な事例報告がありました。各地での特色ある貴重な発表は、1人10分間の持ち時間ではなかなか十分に伝えきれないようでした。印象に残ったのは大雑把ですが以下のような内容でした。※詳しくは発表資料をそれぞれのリンクで見ていただけます。

2009_008山形県鶴岡市有機農業推進協議会会長、志藤正一さん(庄内協同ファーム代表)
からは、水稲(お米の)有機栽培に加えて、その種子栽培も有機でやろうとしていることが報告されました。他に印象的だった報告は、「一番大事なのは隣人(村人)たちの(有機農業に対する)理解」であるということ。また、「学校給食では、大規模調理場向けに大きさや形状の揃った有機農産物を大量に調達する必要があるが、これはなかなか難しい。」「有機野菜の値段が慣行栽培の野菜に比べて高いため、給食費の値上げにつながる可能性があるから保護者の理解を得る必要がある。」という現実的な話がありました。

2009_014JAとして1988年に有機部会を作った千葉の山武農協。それをベースに2005年に設立された「さんぶ野菜ネットワーク」。すでにベテランではなく若手の担当者が発表しているこの団体がテーマにしたのが後継者の問題です。「新規就農者に半年の長期研修をさせて独立を支援しているが、独身の新規就農者は住居(や資金)を確保することが難しいこと。」「仕事も家事もやらなければならないことから、人手が足りなくて苦労している。」以上のことから、行政の支援が必要であることを報告していました。

2009_015兵庫県のコウノトリ共生推進協議会からは、コウノトリをシンボルにした環境保全型農業で栽培したお米のブランディング「コウノトリの舞」のお話が印象的でした。これは、有機農業と環境保全型農業による生物多様性の確保というテーマの具体的な事例としてとても面白い取り組みだと思いました。小学生に田んぼの生き物調査への参加も推進しているそうです。

2009_0171983年から学校給食に有機野菜を導入してきた愛媛の今治市。有機農業推進協議会事務局の渡辺敬子さん(今治市農林振興課地産地消推進室)からは、2005年に市議会が“食料自給率の向上と必要以上の農薬や化学肥料や抗生物質や家畜医療品の使用を抑えて、有機農業による地産地消を推進する”「食料の安全性と安定供給体制を確立する都市宣言」を採択したことや、子供たちへの食育という観点も含めて、学校給食への有機野菜の導入を積極的に推進していることが報告されました。

「新たな技術開発について」鶴岡市推進協議会(山形市)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/pdf/5_1_turuoka.pdf

「新規就農者の問題」山武市推進協議会(千葉県)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/pdf/5_3_sanbusi.pdf
「消費者との交流」喜多方市推進協議会(福島県)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/pdf/5_2_kitakata.pdf

「米を中心に」コウノトリ共生推進協議会(兵庫県)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/pdf/5_4_toyooka.pdf
「学校給食への導入」今治市推進協議会(愛媛県)http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/pdf/5_4_imabari.pdf

Photo_3今回の会議は、たまたま会場で会った金沢で有機小麦や有機大豆、有機米の大規模生産(とその加工)に取り組んでいる第一人者である㈱金沢大地の井村辰二郎さんと隣に座れたので、各地からの報告を聞きながら、わからないことがあると井村さんに詳しく教えていただくことができて理解が進みました。http://www.k-daichi.com/

【全国モデルタウン20ヶ所の課題と意見】
2009_022その後、「モデルタウン事業の課題と問題点」として全国20ヶ所からの発表がありましたが、こちらは持ち時間がそれぞれ3分間しかなかったので、活動の概要報告が精一杯という感じでした。でも、個人的には「東京にいながらにして全国の皆さんの活動の一端に触れることができるとても貴重な機会だ」と思いました。意見として出ていたことから、一部をピックアップすると以下のような内容でした。

2009_035「最初は後ろ向きだった人たちが、だんだん熱心になって町全体が燃えてきた。」(北海道)「消費者の関心が高まってきているが生産者の方がいまひとつだ。」(岩手県)「壁にぶち当たっている。有機JAS米はダブついている。転換中はプレミアがない。販促につながらない。でも参加者は増えている。点から面を目指したい。」(宮城県)「有機農業は初めてという人が集ってくれた。」(茨城県)「若い市長さんが引っ張っている。有機JAS取得農家が増えている。」(神奈川県)「“無農薬”と言えないのが辛い。有機野菜の良さを伝えるのが難しい。(お茶はダブついているので)慣行栽培と同じ値段でもやれるように頑張る。まだ技術が安定していない。カナダなどへの輸出も考えている。」(静岡県)

Photo_2「協議会ができたことで、いろんな団体が集れた。でも若い人は自分のことしか考えていない。」(山梨)「消費者の有機農業に対する啓蒙(普及・啓発)は県や国にお願いしたい。」(兵庫県)「事務局を農家がやっているのに事務経費がでない。金が出るのが遅い。」(和歌山県)「有機認証の負担が大きい。」(島根県)「古い有機農家は若い農家と同じ言葉を持っていない。」(徳島県)「技術的なギャップをどう埋めるかが課題。資材の使い方も含めたマニュアルが必要。」(福岡県)「生協などは有機JASも減農薬野菜も同じに扱う。ユーロGAPもやっていく。有機農業の導入時の5年間を環境直接支払いで支えて欲しい。」(熊本県)

各地の報告で共通するのは、「有機農業への過程としての環境保全型農業の技術向上などにも取り組んでいる。」「地域の生物多様性を意識している。」「行政が熱心なところはうまく行っている。」ということではないかと感じました。以下のリンクで現在までに活動している全国47の有機農業モデルタウンの概要を見ることができます。http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/pdf/6_model_town_dayori.pdf

【会場との質疑応答】
2009_044その後の質疑応答では、ある関係者からは有機農業をやっていると受けられない助成制度があることや、(これはモデルタウン事業だけのことではありませんが)「行政からの補助金が後払いであること(立て替える資金がない)」に対して、強い調子で改善を要請する一幕もありました。会場からは、日本有機農業研究会理事の魚住道郎さんが、有機農業における堆肥作りの重要さについて紹介されていました。

2009_045有機農業技術会議代表の西村和雄さんは、研修先の受け入れ調査のお願いなどをされていました。最後は、日本有機農業学会会長で全国有機農業推進委員会会長でもある茨城大学農学部の中島紀一教授が講評とまとめをされました。

【次回の会議に向けて】
いずれにしても今回は第1回目の開催でした。全国各地でモデルタウン事業に取り組む関係者が一同に集って、「他の地域でどんな活動がされていて、どんな悩みを持っているのか、何がうまくいっているのか」などの情報を共有できただけでも意味があったと思います。でも、せっかく全国から交通費をかけて(多くは泊まりで)集っているのだから、次回は集った協議会の関係者同士でお互いに話し合う時間をとって、情報交換や交流が図れる時間もあるといいのではないかと思いました。個人的には、会議の後、小雨の降る霞ヶ関から近くの虎ノ門の居酒屋までの道を傘もささずに歩いて、北海道や和歌山、埼玉、鹿児島など全国各地から参加したお馴染みの生産者の皆さんとしっかり飲みに行って、情報交換に花を咲かせました。

【有機農業モデルタウン事業のメリット?】
Photoまず第1に、これまでは地域で孤立しがちだった有機農業の生産者が、行政が関わる有機農業推進協議会(モデルタウン)ができたことで、いろいろな立場の関係者と同じテーブルにつくことができたのはいいことだという意見を少なくない関係者に聞きました。同時に、長い経験のある有機農業者が推進協議会に加わることは、栽培技術の面からも地域における有機農業の発展にとっても大きなメリットがあると思います。また、若手の新規就農者の共通の悩みとして、住居や農地、運転資金が借りられないという問題があります。そして、なんとか就農できたとしても売り先がなかなか見つからないことも悩みの種です。各地域の有機農業推進協議会はこういう問題の受け皿になりつつあるという話も聞きました。もちろん、まだ始まったばかりでいろいろ問題もあると思いますが、この仕組みをできるだけ前向きに活用していけるといいのではないかと思います。

031これまで有機農業は技術的に体系だった研究が国でも自治体でもなされてきませんでした。ヨーロッパ(EU)では、1992年に環境保全型農業や有機農業を財政的に支援する「農業環境政策(環境直接支払い)」を導入しました。それに加えて、環境保全につながる有機農業の栽培技術、農法や肥料に関する調査研究に一定の予算をつけて情報を蓄積してきましたが、これがEUの平均で4%という有機農業の発展に貢献してきました。翻って日本の有機農業推進法でも、2009年から5年間、有機農業の研究開発費として 毎年2億1千万円を予算化しました。

Photo_3今回の有機農業モデルタウン会議に参加して、有機農業推進法の関連で活動を続ける消費者への普及啓発を担う「NPO法人 全国有機農業推進協議会」、有機農業の技術開発・体系化・普及に取り組む「NPO法人 有機農業技術会議」、それに全国各地の地域に根ざして新規参入希望者に対する技術指導・販路開拓のためのマーケティング支援等を担う「有機農業モデルタウン事業」がうまく噛み合って動いていけば、時間はかかるかもしれませんが日本の有機農業の発展も夢ではないかもしれないと思いました。
「NPO法人 全国有機農業推進協議会」
http://www.yuki-hirogaru.net/
「NPO法人有機農業技術会議」
http://www.ofrc.net/


農政改革特命チーム!?

2009-05-05 16:34:54 | 行政関連

Photo_21

3月にさかのぼりますが、霞が関の中央合同庁舎4号館1219~1221会議室で24日(火)夕刻(18時~20時)に農水省主催で開催された「農政改革特命チーム第7回会合」に呼ばれて参加してきました。農政改革特命チームとは農業政策の抜本的な見直しに向けて、農政改革関係閣僚会議の下に設置された関係省庁の実務者(審議官、課長)や有識者による組織です(チーム長・針原寿朗農林水産省総括審議官)。農政改革関係閣僚会合は内閣府が2009年1月27日に設置した会議で、世界の食料需給が中長期的にひっ迫が見込まれ、国内農業の脆弱化が進むなかで、食料自給率の向上や国際化の進展に対応できる農業構造を確立するために、農業政策の抜本的な見直しを検討する会議です。http://www.maff.go.jp/j/nousei_kaikaku/index.html

Photo_332008年は、バイオ燃料の世界的な普及や国際的投機マネーにより食料価格が高騰しました。また、経済成長の著しい中国やインド、ブラジルなど新興国の消費増大などにより世界中で穀物をはじめとした食料争奪戦が始まったとも言われています。今後は、経済力のある国であっても海外から食料をいつでも輸入できるとは限らない状況になりつつあります。それに伴って、食糧安全保障の問題(国民の食べ物を確保できるかどうか)が注目されました。日本は食料自給率が40%を割り込んでいるからです。

Photo_24 同時に、昨年は日本の農業や食品の安全を揺るがす大きな問題が起きました。日本人の主食であるお米に関しては、価格維持のための減反政策と並行して海外産のお米を入れないために維持しているWTOによる高関税の代償(1994年~)として輸入されたミニマム・アクセス米のうち、農薬やカビで汚染された一部の輸入米が一般市場に流通してしまった事故米事件です。また、輸入された中国産の冷凍餃子から高濃度の残留農薬が検出された事件も起きました。

Photo_38それに加えて日本の農家は高齢化が進み、65歳以上が6割以上を占めていますから後継者不足も深刻な問題です。また耕作放棄地も、農地の約一割(埼玉県と同じ広さ)に達し、農地面積は609万ha(1961年)から467万ha(2006年)へと大幅に減少しています。環境問題や食の安全について言えば、日本の農業は農薬や化学肥料の使用量が他の先進国に比べると少なくないと言われています(日本の農薬使用量はアメリカ・フランスに続いて世界第3位だとか)。その意味では、環境保全型農業や有機農業の早急な拡大も重要なテーマだと思います。とにかく、日本の農業には消費者からより強い支持を受けるために、また小規模農家も大規模農家も農業を続けていけるように、やる気のある新規就農者や企業の参入(出資)などを迎え入れるために政策的にやれることがいろいろあると思います。

Photo_34 農政改革関係閣僚会合は、河村建夫官房長官と農政改革担当相に任命された石破茂農水相が主宰し、鳩山邦夫総務大臣、与謝野馨財務大臣、ニ階俊博経済産業大臣に内閣府特命担当大臣(経済財政担当)を加えた6閣僚で構成し、首相の発言を受けて各閣僚は政府全体の取り組みとして議論を進めています。閣僚会合は6月を目途に、農政改革特命チームによる「農政改革の検討方向」の報告を受けて2009年の「骨太の方針」に反映させる方針だといいます。

Photo_28現場の関係者や当事者の意見を聞いて検討して、「農政改革の検討方針」を策定して閣僚会合に答申する特命チームのメンバーは、大内内閣官房内閣参事官(内閣官房副長官補付)、梅溪内閣府大臣官房審議官(経済財政運営担当)、鈴木総務省大臣官房企画課長、迫田財務省主計局総務課長、石黒経済産業省大臣官房審議官(経済産業政策局・地域経済再生担当)、針原農林水産省大臣官房総括審議官の6名です。アドバイザリーメンバーとして、大泉一貫氏(宮城大学大学院事業構想学研究科研究科長)、鈴木宣弘氏(東京大学大学院農学生命科学研究科教授、中村靖彦氏(東京農業大学客員教授)の3名が参加されています。
Photo_26特命チームでは、2月までに5回の会合を行い、第3回目までに地方公共団体、生産者、生産者団体、消費者、食品産業の各関係者からヒアリングを通じて農政の現状と課題について議論を行ってきました。その後、第4回(3月3日開催)の会合で、追加で流通関係者などからも意見を聞くべきだという意見が出たそうです。そこで、流通だけでなく有機農業等にも詳しい者として、有機・低農薬野菜と無添加食品の宅配会社、らでぃっしゅぼーや㈱に長年勤務していて、IFOAM(国際有機農業運動連盟)の国際理事も務めている僕にも意見を聞きたいという旨のご連絡をいただきました。

Imagesこの会合への参加依頼のメールを見た時は、なんというか話しの構えが大きいので正直少しビビりました。でも、環境保全型農業や有機農業を広げてそれに関わる生産者を増やしたい、有機野菜やオーガニック食品などのより安全な食品流通の発展を通じて消費者に強く支持される農業を広げたいと思ってこの業界で20年近く働いている者としては、その実現に向けて大きな影響力を持っている政策決定に関わる方々に、直接意見を伝えたり提案できる機会はめったにないと思い、ご依頼を受けさせていただきました。

Photo_37 また、これまでの会議の議事録を読むと、生産者の高齢化に伴う後継者問題や消費者のニーズとのかい離など重苦しく難しい問題が山積していることが書かれていたので、自分が17年間関わってきた「らでぃっしゅぼーや」の取引先には、若手でやる気のある生産者が多く、元気な後継者がしっかり育っている点や、消費者の求める環境保全型農業や有機農業の拡大に貢献できているなどといういくつかの点で、未来に向けた明るい事例を紹介できると考えたことも依頼を受けた理由です。http://blog.goo.ne.jp/masayakoriyama/d/20081020

「特命チーム」の皆さんにお伝えしたかったふたつのテーマは①自分の研究テーマでもある約15年間でヨーロッパ(EU)の環境保全型農業や有機農業を大きく躍進させた政策「農業環境政策(環境直接支払い制度)」の導入と②リクエストのあった消費者のニーズにあった流通としての「有機・低農薬野菜と無添加食品の宅配企業らでぃっしゅぼーや」の事例紹介でした。プレゼンのために作成した資料は以下のふたつです。http://www.maff.go.jp/j/nousei_kaikaku/n_kaigou/07/pdf/data3.pdf「eu_agrienvironmantal_policy2.ppt」をダウンロード

【農政改革特命チーム第7回会合の参加者】
小田林徳次氏:全国農業機械士協議会 会長
門脇武一氏:㈱イソップアグリシステム 代表取締役社長
河合義雄氏:㈱ニチレイ取締役執行役員 技術担当品質保証グループ担当
久留原昌彦氏:㈱イトーヨーカ堂青果部セブンファーム開発担当チーフディストリビューター
吉村孫徳氏:NPO法人 阿蘇エコファーマーズセンター 事務局長
鈴木誠氏:㈱ナチュラルアート 代表取締役社長
郡山昌也:らでぃっしゅぼーや㈱ 環境保全型生産者団体Radixの会事務局
http://www.maff.go.jp/j/nousei_kaikaku/n_kaigou/07/pdf/program.pdf

Photo_11会合の当日はかなり緊張して霞が関の中央合同庁舎に向いました。参加者は全部で7人。早めに集合して、別室で事前の打ち合わせと発表者同士で名刺交換。それぞれの分野を代表するような方々で、自分がここにいてもいいのかなと一瞬思いましたが、逆にそんな人たちと同じ場で発言させてもらう機会はとても貴重なので、自分しか伝えられない内容を頑張って伝えようと思いを新たにしました。でも、意気込んで臨んだわりには発言は1人10分。短い時間しかないので、個人的に提案したかった農業環境政策の件は今回はなしということになりました(残念!)

Photo_9時間になって会議場へ移動。議論は公開だと聞いていたものの、驚いたことにマスコミ各社の記者さんをはじめ、大学の研究者や民間シンクタンクの研究員、メーカーや流通等の業界関係者など80名近い人たちが傍聴しているではないですか!会議室には事務局の農水省の職員の方を含めると約100名が入っていたことになります。用意したプレゼン用の資料はヒアリング(意見交換)する特命改革チームのメンバー以外に、傍聴者の皆さんにも配布されていました。そして定刻の18時に会合は始まり、順番に発表者による10分前後のプレゼンが行われました。さすがに、それぞれの分野で新しい取り組みで成功している皆さんの発表は聞き応えがあり、今後の農業や流通のあり方を考える参考になりました。発表の後は、各省庁の特命チームの方々からの質問も交えた全体での議論が行われました。この会議の内容は、発言内容(議事録)も配布資料も全部、農水省のサイトにアップされていますので、ご興味のある方はご覧下さい(第7回)。
http://www.maff.go.jp/j/nousei_kaikaku/index.html

Photo_20会議に出た感想ですが、まずは発表のための持ち時間が短いことが残念でした。もちろん、会議は時間が限られているから成り立つ訳ですが、全国各地から忙しい人たちがせっかく集まった貴重な機会だったので、2時間のテーマの決まった会議の後に30分だけでもフリーでディスカッションできる時間があれば、もっといろんな話ができて農政改革にも役に立つアイデアが生まれるのではないかと思いました。そして、様々なジャンルで注目される活動をされている人たちが一堂に会している訳ですから、そこでの参加者同士の議論や横のつながりから面白い取り組みが生まれる可能性もあるのではないかと思いました。

Photo_30個人的には、会議の後にアドバイザーの鈴木宣弘東京大学大学院教授に、発表できなかった「農業環境政策(環境直接支払い制度)」に関してのご意見をお聞きすることができました。そして、らでぃっしゅぼーやの活動を評価していただくと共に、そのような成功している企業の関係者が提案するなら、環境保全型農業や有機農業への補助金提案も説得力があるのではないかとうれしいお言葉をいただきました。また、石破大臣はヨーロッパの事例など積極的に取り入れる柔軟性があるからどんどん提案して下さいと言っていただき、とても励みになりました。