グリーン&オーガニック・ブログ

世界の緑の政治やオーガニックに関する情報を伝えます。

銀座ミツバチはオーガニックがお好き?

2009-07-31 01:28:45 | 生物多様性

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7月18日 土)に、銀座3丁目の紙パルプ会館で「都市・里山・奥山・海」をつなぐサスティナブルネットワークフェスタ「ファーム・エイド銀座/農業環境フォーラム」が開催されました。主催はファーム・エイド銀座実行委員会とNPO法人銀座ミツバチプロジェクトです。Photo_10

2009_007僕も農業環境フォーラムの実行委員のひとりとして、企画作りから関わらせてもらいました。その大きなテーマは「生物多様性と有機農業(環境保全型農業)」です。当日は、基調報告者のひとりとして「ヨーロッパ(EU)の有機農業やオーガニック市場と農業環境政策」について報告させていただきました(写真は活動報告をする企業と生物多様性の協働に関する専門家、足立直樹さん)。

Fa_2【開催趣旨】主催者による開催趣旨は以下の通りです。「銀座は街路樹や花に囲まれミツバチが飛び屋上では野菜やハーブ、稲が稔る農業でおもしろい街です。私たちは『銀座里山計画』と呼び、この街を自然を取り入れた21世紀の環境モデル都市にしたいと考えています。今回この銀座に“生物多様性と有機農業を志す仲間”が集まり、先祖から受け継いでいるはずの「人と自然との共生」思想にたち返り、どう日本を立て直すか、何を子孫に伝えるか参加者全員でトコトン討論します。」
【イベント概要】
http://farmaid-ginza.com/main/modules/d3blog/index.php?cid=9
【話題提供者】
http://farmaid-ginza.com/main/modules/pico/index.php?content_id=8

Fa フォーラムのテーマは、「いのちでつながるおいしい生活」。ミツバチやメダカなどの“生物多様性とそれを守る有機農業”や環境保全型農業、そこから生み出される食材をどうやっておいしく楽しく食べて拡げていくかについてメディア関係者やレストラン経営、流通、ロハス、オーガニック、養蜂家など各業界で活躍されている皆さん30人が一同に会して参加者と共に話し合いました。話題提供者の皆さんのプロフィールとテーマは以下の通りです。
http://farmaid-ginza.com/main/modules/pico/index.php?content_id=8

Fahara_3

Fainaba

Faadachi 

Faisiguro

Fafujiwara Fanakamura

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午前中の報告者はミツバチにちなんで8人。田んぼの生き物調査を進める(農協の幹部としても長らく務めてこられた)原耕造さん(生物多様性農業支援センター理事長)。企業と生物多様性の協働に関する専門家で理学博士の足立直樹さん(株式会社レスポンスアビリティ代表取締役)。有機稲作のスペシャリストで指導者の稲葉光國さん(民間稲作研究所理事長)。持続可能な環境保全型農業を進める石黒功さん(本来農業ネットワーク代表理事)。消えたミツバチの原因として農薬の害を主張しているベテラン養蜂家、藤原誠太さん(日本在来種みつばちの会会長)。無農薬の田んぼを広げてトキの保護活動などに取り組む中村陽子さん(メダカのがっこう理事長)。環境と健康、食と農をテーマに都市の農的環境作りに取り組む藤崎健吉さん(藤崎事務所)。それに不肖私、郡山昌也がヨーロッパの有機農業とオーガニック市場の発展とそれを支えた農業環境政策と有機認証制度について(国際有機農業運動連盟(IFOAM)世界理事)としてお話させていただきました。Oguro_4 Saigou_3Kiuchi_3_3午後のセッションには、エコでロハスなライフスタイルを提案する雑誌『ソトコト』編集長の小黒一三さんと、農業と環境に詳しい農水省大臣官房環境バイオマス政策課の西郷正道課長も参加されました。西郷さんは、写真の通り西郷隆盛の曾孫さんだそうです。今回の企画立案から、多くのお仲間に呼びかけて多様な話題提供者を集めて下さったのはNPOフューチャー500理事長でイースクエア会長の木内孝さん。司会はファーム・エイド銀座2009実行委員長の高安和夫さんに務めていただきました(以下は農業環境フォーラム2009報告書)。「agrienvronment_report.pdf」をダウンロード

Photo_3 Nakamura_2 Koriyama_masaya_2

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活動報告は、ひとり15分という短い持ち時間でしたがこれま での活動写真を満載したパワーポイントで紹介する人、パソコンには頼らずにこれまでの体験を話す人とそれぞれのスタイルで報告がありました。共通するのは、皆さんあまりに熱心でなかなか時間以内に終らなかったことです(笑)。そのため最後の僕は、早く終らせなきゃならないプレッシャーが相当ありましたが、なんとか時間内で終らせることができました。

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Photo_2結果的に、それぞれの分野で活躍している皆さんが、とても魅力ある実践の報告をしてくれました。特に有機農業の田んぼに、いかに多様な生き物が戻ってくるかを長年の実践に基づいて紹介された民間稲作研究所の稲葉さんのプレゼンでは、「有機稲作は正しい方法でやれば、そんなに難しくないし、収量もあがります。」という力強い言葉が印象的でした。
http://inasaku.or.tv/kenkyujo/

Photo_7【生物多様性って?】
普通 「生物多様性」と聞いても、自分の生活とどう関係があるのかあまりピンとはきませんが、例えば有機農業の田んぼには、赤とんぼを筆頭にメダカやフナ、どじょう、カエル、イモリ、アメンボ、タガメ、ヤゴ、ミズスマシ、ホタル、ゲンゴロウにザリガニなどなど多種多様な生き物が繁殖して小さな生態系を形成します。これこそがいわゆる「田んぼの生物多様性=田の生き物の賑わい」です。これに加えて、それぞれの地域で(農薬などの影響により)絶滅が危惧されている種を紹介した本「レッドデータブック」に載っているような希少な生物が戻ってくることが報告されています。つまり、有機農業は安全で安心な食べ物を生産する農業であるだけでなく、豊かな生態系を維持・提供し、生物の多様性を守る環境に優しい農業でもあるのです。らでぃっしゅぼーやの取引先でもある山形の稲作生産者団体「ファーマーズクラブ赤とんぼ」では、毎年消費者に大人気の産地ツアー「田んぼの生き物観察会」を開催しています。
http://akatonbo.cside5.jp/Crea_6.html

Akatonbo_03_ll_3子供たちが実際に有機の田んぼに入って、いかに多様な生き物がいるかを体験するイベントですが、昔子供だったお父さんたちも童心に帰って大はしゃぎする人気のイベントです。代表の伊藤幸蔵さんは、有機の田んぼはお米だけでなく赤とんぼも生産している誇りを込めて、団体にこの名前をつけたと言います。
「いのちを大切にする暮らし!生物多様性」:http://www.cop10.com/

2009_009_2Photo_5 【ミツバチはどこへ消えた?】 養蜂家の藤原誠太さんは、ここ数年日本を含めて世界各地でミツバチ達が大量死している現象「蜂群崩壊症候群:CCD(Colony Collapse Disorder)」に触れて、農薬(ネオニコチノイド系)に被爆したミツバチが巣に戻れずもがきながら死んでいく光景を目の前にして何もしないことが許されないのではないかと話されていました。この農薬は、2006年からフランスで原則的に使用禁止になっているそうです。フォーラムの直前には、英国で最大の有機農業団体「ソイルアソシエーション」も、この農薬の使用禁止を政府などに求める「救え!ミツバチキャンペーン」を開始したというニュースも飛び込んできました。
http://www.soilassociation.org/Takeaction/Savethehoneybee/tabid/434/Default.aspx

【沈黙の春?】世界各地で大量のミツバチが消えている現象の原因はまだ特定されていません。でも、カボチャやきゅうりなどの野菜やりんごやイチゴなどの果物が実をつけるのはミツバチが花から花へと花粉を運んで受粉させてくれるからです。農産物以外の植物も同じです。ミツバチは生態系の重要な媒介者でもあるのです。私たちは、ミツバチが身を挺して伝えてくれている重大なメッセージに、謙虚に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか?
http://www.jimbo.tv/videonews/000539.php

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【銀座プチマルシェ】午前中の活動報告が終った後は、お待ちかねのお昼の時間。参加者の皆さんは、会場の周りを囲んだプチマルシェで、全国各地から集ったお店でお昼を買って楽しんでいました。プチマルシェは、各地で頑張っている生産者の皆さんや、まだ知られていない地域の名産品にスポットを当てて、それぞれの物語を都会の生活者に直接触れて知ってもらうことで、地域や生産品を評価してもらい、都会と地域が支え合う関係を作ることを目指しています。

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銀座紙パルプ会館ビルの前を通行する人たちも、日本各地から大集合した新鮮で取れたての有機野菜や焼きたての牛肉、冷たく冷やしたトマトやきゅうりなど、安心でおいしいものを買い求めていました。2009_080

とても蒸し暑い天候でしたが、さすが銀座だけに、海外からの観光客や素敵な絣の着物を着たお客様なども立ち寄られていました。プチマルシェには、農業環境フォーラムのテーマに沿った有機栽培あゆみの会や有機野菜の宅配らでぃっしゅぼーや、無農薬の田んぼと都市の消費者をつなく「メダカのがっこう」の有機米を使った“おむすび茶屋”なども出展していました。

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2009_018【ミツバチ体験!】お昼の後は「銀座の屋上農業体験」。①ミツバチ養蜂②田んぼの稲作③ハーブ野菜畑の3つのグループに分かれて銀座の屋上で実践されている農業の現場の見学に行きました。僕は、ここで初めての「銀座ミツバチ体験」をすることができました!半年近くフォーラムの打ち合わせで月一回はこのビルに通いましたが、会議はいつも19時スタート。21時過ぎに終わるのが常だったので、今日の今日までミツバチを見る機会がありませんでした。

2009_025初めて上がった銀座紙パルプ会館の狭い屋上のスペースに、「いました!」本当に日本みつばちの巣箱が3つ並んでいます。その場でこの道30年、日本在来種みつばちの会会長で東京農業大学客員教授でもある藤原さんの、ミツバチへの深い愛情が溢れる説明を聞くことができました。

2009_029_2 ハチに刺されないようにネット付きの麦藁帽子を被っての見学でしたが、なんと指の背で巣のミツバチたちの背中に触らせてもらうことができました。日本みつばちは、急に動いたりしなければ、ほとんど刺すことはないそうです。藤原さんに言われて、指の背をミツバチの体にそっと触れるとと温かくで少しふわふわした手触りで振動するように動いている!当たり前だけど、生きている!この高貴な感触は例えようがないと思いました。ミツバチ一匹が一生の間に作る蜜の量は、ティスプーンにたったの半分だけだそうです。ハチの命の温かみに思わず感動してしまいました。

2009_048【参加者とパネリストとの大討論会】午後のメインイベントは「バズセッション」。16名の話題提供者を迎えて、その皆さんの話を聞くだけでなく、8つのテーマのセッションで生物多様性を守る有機農業や環境保全型農業、おしくて楽しい食の安全を拡げていくにはどうすればいいのか?について参加者の皆さんにも議論に参加してもらって一緒に考えてみようというこれまであまりなかった試みです(話題提供者)。http://farmaid-ginza.com/main/modules/pico/index.php?content_id=8

テーマは【生き抜く】~命をいただく~【正す】~私たちと自然の法則~【やる】~有機農業への挑戦~、【気付く】~本来農業を行く~【治す】~ミツバチ目線~【つなぐ】~田んぼにいこう~【創る】~自分で耕す~【変える】~政策を作る~の8つです。人の集り具合も含めて、一番心配されたのがこのバズセッション。16ものグループでの議論をまとめる記録係には、なんと農水省の若手スタッフが30人近くもボランティアで参加してくれました。200人近い参加者が食、農業、環境についてそれぞれの視点から自分の言葉で熱心に議論する様は、お昼にミツバチの巣箱を見ていただけに本当のバズ音(羽音)のようにも聴こえて感動的でした。各グループの議論の結果は以下の通りです。「agrienvironmental_forum_buzz_session.ppt」をダウンロード

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2009_051Fa【銀座G8セッション】
丸一日のフォーラムを締めるのは、最後のG8セッション。これはもちろん政府代表が参加するサミットなどのG8ではなく、「銀座とミツバチの“G8”」です。8名の報告者とその周りを囲んだ参加者の意見を、テキパキと裁く名司会は、持続可能な社会をつくる元気ネット理事長、環境ビジネスウィメン代表の崎田裕子さん。前日に開催された持続可能な社会の実現に向けて“エコビジネスの芽を見つけ育てるコンテスト”『eco japan cup』の主催者でもあります。http://www.eco-japan-cup.com/

Fa_3午前中の8名の報告者からの活動報告を受けて、8つのテーマで16人の話題提供者ごとのグループに分かれて議論した「バズセッション」の成果を受けて、最後に8名の報告者がレポート。参加者からの声で共通していたのは、現代における食の安全と環境の問題は、「作る人と食べる人があまりにも別々に分かれてしまっていること」や、「生産者と消費者の距離が離れ過ぎてしまっていること」が大きな原因ではないか、という意見が多かったように思いました(写真は質問に答える西郷課長)。

Photo_6無農薬の田んぼに都市の消費者を連れて行って、両者をつなぐ活動をしているNPO法人「メダカのがっこう」の中村陽子さんは、有機栽培の田んぼには本当に多様な生き物が戻ってくることから、これからは自然の法則や生きものの声を第一に考え、「迷ったら生きものに聞く」という新しいルールを検討してはどうかと提案されました。http://www.npomedaka.net/

【農業環境フォーラム参加のきっかけ】
2008_011_2今回、このイベントに関わらせてもらったきっかけは、銀座ミツバチPJの理事長で、らでぃっしゅぼーやの取引先でもある有機栽培あゆみの会の高安和夫さんと、2008年10月に日比谷公園で開催された自給的農業や半農半Xな若者などを応援する「種まき大作戦(土と平和の祭典)」で偶然に会ったことでした。http://blog.goo.ne.jp/masayakoriyama/d/20081020

そこで「新規参入して有機農業に取り組む若い人たちを応援するためにも、ヨーロッパやお隣の韓国で有機農業や環境保全型農業を躍進させるきっかけになった“農業環境政策(環境直接支払い制度)”をなんとか日本でも導入してもらいたいですよねー。」「そのためにも、有機農業の大事さ(大変さ)を消費者の皆さんにも知ってもらって、環境直接支払い制度を導入する必要性を消費者や政策担当者にも伝えましょう!」と盛り上がったのがきっかけでした。その後、多彩で多様な顔ぶれのボランティア実行委員会メンバーが仕事の終った後に銀座に集って、フォーラムの企画 内容に関する打ち合わせを月に1~2回のペースで重ねてきました。

Photo農業環境フォーラムは、2008年4月に国連大学のウ・タント国際会議場で開催された、「持続可能な農業に関する調査委員会(事務局:㈱イースクエア)」が主催したシンポジウム「本来農業への道」に触発されて企画されました。このシンポジウムには、環境的・社会的・経済的に持続可能な「本来あるべき農業」について考えるために、有機農業・環境保全型農業・自然農法などに関わる多くの関係者が参加しました。この時に提起された10の提言のなかに、環境直接支払い制度の試験的導入を含む持続可能な農業の普及を推進する政策の策定も含まれています。
http://sas2007.jp/project/pdf/program.pdf
http://sas2007.jp/index.html

【第2回農業環境フォーラムへ】
Photo_5Photo_7今回の第1回農業環境フォーラム(ファームエイド銀座)は、多くのボランティアスタッフやプチマルシェの出展者の皆様に支えていただき、無事開催することができました。当初の目的であった「農業環境政策(環境直接支払い制度)」に関しては、あまり深い議論をすることはできませんでしたが、生物多様性を守り、地域の環境を保全する有機農業(環境保全型農業)の必要性やおいしさ、楽しさを多くの参加者の皆様にも知っていただけたことで、日本型の農業環境政策の導入を議論するためのいい土台を作ることができたのではないかと感じています。今回の成果と不備だった点の反省から、第2回の農業環境フォーラムの開催につなげていけたらいいなーと思いました。事故もなく無事にイベントを成功に導いて下さった、銀座ミツバチプロジェクト副理事長の田中淳夫さん、高安和夫さんと事務局の皆様、大変ご苦労様でした。参加させていただきどうもありがとうございました!

Pj 2009_060【銀座ミツバチプロジェクト】
銀座ミツバチプロジェクトは、2004年から食や農業についてのシンポジウムを開催してきた「銀座食学塾」と、銀座の街の歴史や文化を学んできた「銀座の街研究会」の有志たちを中心に、銀座3丁目紙パルプ会館屋上でミツバチを期間限定で飼っている特定非営利活動法人です。http://www.gin-pachi.jp/top.html

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2009_061_2【ファームエイド銀座】2006年の春に発足した銀座ミツバチプロジェクトは、都会の真ん中でミツバチを飼うことで、おいしいハチミツを味わい、自然を感じ、仲間と楽しみながら活動しています。その中で「人と自然の共生」を学び、様々なつながりの大切さに気がついたといいます。銀座ミツバチPJは、そんな地域と人を銀座から応援するために2008年から、毎年4回農業と環境とおいしい食を考えるイベント「ファームエイド銀座」を開催しています。
http://farmaid-ginza.com/main/

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第4回 全国有機農業推進委員会

2009-07-16 17:25:37 | 国際・政治

2009_0202009年6月8日(月)14時~武道館にほど近い東京千代田区の閑静な場所にある三番町共用会議室(農林水産省分庁舎)2階大会議室で、第4回の全国有機農業推進委員会が開催されました。僕もオブザーバーとして参加してきました。昨年7月の第3回の委員会に続いて2度目の参加となりました。

有機農業推進委員会の事務局は、農水省の生産局農業環境対策課に置かれ、全国農業協同組合中央会(全中)と全国有機農業推進協議会(全有協)が、事務局の運営に協力することになっています(全有協HP)。http://www.zenyukyo.or.jp/index.html
これまでの配布資料と議事録は以下のリンクで見ることができます。
http://www.maff.go.jp/j/study/yuki_suisin/04/index.html

Photo【有機農業推進法成立の経緯】
有機農業推進委員会は、2006年12月に議員立法として成立した法律「有機農業推進法」に基づいて召集される委員会です。有機農業推進法は、全国有機農業団体協議会(理事長:霜里農場代表 金子美登)や日本有機農業学会、IFOAMジャパンなどの長年、日本の有機農業に関わってきた利害関係者が、超党派の国会議員で構成される「有機農業推進議員連盟」(160名超)の事務局長を務める参議院議員ツルネン・マルテイさんを中心に議員立法で作った日本では珍しい現場の声を反映したボトムアップ型の法律です。
http://blog.food-trust.jp/archives/50103963.html

Photo有機農業推進法は、「国、地方公共団体=都道府県・市町村が、有機農業を推進する責任を負う」という、これまで長年にわたって有機農業に関わってきた人たちにとっても、今後の日本の農業にとっても画期的な法律だと思います。有機農業推進法は、その対象を有機JAS法に基づく取り組みに限定せず、化学肥料や農薬を使用しない、遺伝子組換え技術を利用しないなど、農業生産に由来する環境負荷の低減や自然循環機能の増進、消費者が有機農産物を入手しやすい環境づくりなどを定めています(写真は2008年当時、全有協とIFOAMジャパンの事務局長を務めたポラン広場の今井登志樹さん)。http://eco.goo.ne.jp/word/life/S00276.html

有機農業は、1970年代に民間の有機農業団体や消費者と生産者の提携運動によって始まりました。しかし、農薬や化学肥料を使わない有機農業が、国が推進してきた慣行農業との方向性に大きな違いがあったために、地域の中でもなかなか理解を得ることが難しく、政策的な支援も長い間受けることができませんでした。http://www.biomarche.jp/blog/biostyle/log/eid133.html

Ph_hirei_turunenその後、1980年~1990年代にかけて共同購入や個別宅配という流通システムが導入されて、有機農業や環境保全型農業で生産された農産物が全国的に広く流通するようになりました。そして今でこそ、有機農業や環境保全型農業、オーガニックが「安全であるだけでなく環境にも優しい」という理解も進み、消費者や生産者からも肯定的な反応が得られるようになってきました。しかし、これまで地域で有機農業に取り組んで来た生産者の中には、長年強い向かい風の中で頑張ってきた人も少なくありません(写真はお米の生産者と稲穂の実り具合を確認する民主党参議院議員ツルネン・マルテイさん)。

Photo_2それが、この有機農業推進法では、2011年までに全ての各都道府県で市町村において50%の地域で有機農業の推進計画と推進体制を持つことが目的として謳われています。また、国民の50%が有機農業の意味や意義を理解するように普及・啓発活動を展開することも謳われています。これは、70年代から有機農業に取り組んできた生産者にしてみたら、本当に信じられないような変化だと思います。ちなみに僕がこの業界に入ったのが1992年でしたが、その当時でさえ、広報担当として専門紙の日本農業新聞に有機農業(環境保全型農業)のことを書いてもらおうとずい分頑張りましたが、結果はかなり難しかったことを覚えています。その意味では、農水省がこのような会議を開催すること自体、この約15年で時代が大きく変わったことを表しているように感じました。

2009_022【第4回有機農業推進委員会】
今回は、全国の有機農業者をはじめ、消費者、その他関係者の理解と協力を得て、平成20年度に取り組んだ有機農業総合支援対策の成果を踏まえて今後の有機農業の推進策等について検討されました。司会進行は、茨城大学農学部教授(日本有機農業学会会長)で全国有機農業推進委員会の中島紀一会長が担当されました。http://www.maff.go.jp/j/study/yuki_suisin/index.html

最初に、事務局から2008年に全国45の地域で実施された総合支援対策の目玉事業である「地域有機農業推進事業(モデルタウン事業)」に関する調査結果の報告がありました。基本的には、有機農業者(有機JAS取得者)数、慣行栽培から転換者数、有機(JAS)の栽培面積、有機(JAS)農産物の収穫量、販売量ともに、一定程度の増加傾向にあるという報告でした。http://www.maff.go.jp/j/study/yuki_suisin/04/pdf/data6.pdf

2009_025その後の地域の農村で現場を持っている委員の皆さんからは、現実的な厳しい現状も報告されました。各地からの意見として、若い人を含めて新規就農者で有機農業を目指す人は増えているのに、地域の中に入っていっても耕作用の土地や住む家を簡単には借りることができない。もしくは、なんとか農業を始められても、売り先があまりない状況だという報告がありました。でも、すでに先行して有機農業に取り組んでうまくいっている農家のいるところでは、住民の信頼があるから、その人を軸に新しい人にも土地や住居の情報が入り易いという報告もありました。今後のモデルタウン事業では、これらの現状を踏まえた取り組みが必要なようです。

それにしても、2006年までは食品の表示制度(有機認証制度)の導入を決めた法律「有機JAS法」はあったものの、国が有機農業を推進する法律を作って、予算をつけるということありませんでした。今回のモデルタウン事業では、まだ地域で顕著な成果が上がっていないとしても、また(ヨーロッパなどに比べて)その予算規模(約4億5千万円)は必ずしも大きくないとしても、政府が有機農業を推進するという姿勢を示したことは大きいと思います。各自治体が参加して有機農業団体と行政、地域によっては農協も加わって有機農業推進協議会を作り、協力してモデルタウン事業を実施することには今後の有機農業の発展にとって深い意味と大きな影響があると思います(以下は、2009年7月の第1回有機農業モデルタウン会議の報告です)。
http://blog.goo.ne.jp/masayakoriyama/d/20090831

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Photo_4僕も今年の1月に地元の鹿児島で長年有機農業に取り組んでいる、かごしま有機生産組合が主催した有機農業シンポジウムに呼んでもらって、ヨーロッパとアジアの有機農業やオーガニック食品市場についての講演をさせてもらう機会がありました。その際に、「有機農業推進法」の影響を感じる機会がありました。それはこの有機農業シンポジウムには、多くの消費者や有機農業関係者はもとより、市町村や県の行政関係者や政党関係者、マスコミをはじめ、地元の農協だけでなく民間企業や銀行関係者なども参加していたことです。これまでは、関係者が中心だった有機農業関係のシンポジウムに、これだけ幅広いセクターからの参加者があったことに、法律が施行されたことの影響の大きさを感じました(写真は、かごしま有機農業推進協議会総括責任者の大和田世志人氏)。http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/y_model_town/pdf/kagosima.pdf
http://www.chikyubatake.jp/sympo.html

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【どうすれば有機農業が広がるか?】
委員の報告のなかで、有機農産物の専門流通事業体である大地を守る会の戎谷さんと、大手スーパーチェーン、イオンの寺嶋さんの意見には、個人的に共感を覚えました。

Photo戎谷さんは「大地の扱う有機JAS認証商品の割合は全体の約13%で、最近は増えていない。」と断わったうえで、「新しい販路を求めている生産者などで、新たに有機JAS認証を取得する農家もいるが、かかる手間とコストの割りにメリットが少ないからと取得を止める人も出ている」と報告されていました。流通のバイヤーからは「有機JASの野菜は一般栽培の野菜との違いがわかり易い」から引き合いがあり、卸の場合は一定の効果はあるが、そんなに高く売れている訳でもないとのことでした。そして、この景気の悪い時代に消費者に有機野菜を選んでもらうために必要なのは、「有機農業が広がることで水源地が守られるなど環境保全の具体的な効果や、健康にいいから広い意味で社会全体の医療費が減るなど有機農業の社会貢献面を広くPRすることではないか」と話されていました(他にも重要なことを話されています)。
http://www.daichi.or.jp/blog/ebichan/2009/06/post-241.html#more

【環境にも優しい有機農業をPR】
最近では環境や健康を意識したロハス(LOHAS)な消費者も増えているようなので、消費者に有機野菜やオーガニック食品を選んでもらうためには、有機農業が環境にも優しいことや地球温暖化の防止にも広い意味で役立つなど社会貢献についてアピールすることは不可欠ではないかと思いました。これは、ある意味でパブリック(公益的)な価値なので、これを政府が広報することの正当性はあるのではないかと思っていますし、実際にドイツやデンマークなどオーガニック先進国やEUでは1990年代後半から行われています。

Imggreeneyeイオンの寺嶋さんによると、イオンは「グリーンアイ」ブランドで、有機農業や環境保全型農業で栽培された農産物を販売しているけれど、この世界的な不況の影響で、消費者が生活防衛に走っている状況なので、ビジネス的にはなかなか厳しいそうです。でも、ネットのアンケートなどによると消費者には「①ロハス層が約25%と②生活堅実層と呼ばれるロハス予備軍が45%」存在すると認識されているのこと。この層を合わせると全体の7割が有機(低農薬)野菜の購入層になる可能性があると考えているとのことでした。この層が、何かのきっかけでスイッチが入れば動く(有機を買う)ことは間違いないと考えているそうです。そして有機農業を拡げるためには、「有機農業が(手間がかかって)難しいこと。」「(慣行に比べると)収量が減ること。」「(その結果)価格が高くなること。」を消費者にしっかり伝えて、「有機野菜を買うことは環境(保全への)投資でもある」と伝えること。「有機農業を支えるライフスタイルが素敵だと伝えることが小売業としての役割だ。」という意見には思わず「その通り!」と思ってしまいました。イオンとしては、消費者のニーズが動き出す時のために「すぐに該当商品を提供できる準備をしっかりしていく」と話されていたのが印象的でした。ちなみに、スーパーチェーンの「ライフ」と生協の「パルシステム」は農水省に社員を派遣して、有機農業の推進に協力しています。

【流通と生産者が共に成長】Logo_4 ただ、大手の流通と例えばらでぃっしゅぼーやなどの専門流通事業体の違いは、生産者との関係の深さではないか思っています。具体的には、僕がいま仕事をさせてもらっているRadixの会では全国各地で、農産・水産・畜産・加工とそれぞれの分野の生産者の皆さんが必要とされる栽培技術交流会や農業経営勉強会、後継者育成のための交流会などを1996年から毎年続けて開催してきています。
http://www.radix-jp.org/dantai/index.html

つまり、大手スーパーのように、需要があれば買い付ける(厳しい価格交渉もある)という一般的な関係を超えて、流通と生産者が一体Lse_056
僕は1990年後半からの最近までのイギリスで、大手の2大スーパーチェーン(TESCOとセインズベリーズ)が競い合うようにプライベートブランドのオーガニック食品を導入して、他のマーク&スペンサーなどの高級スーパーも有機食品の扱いを増やしていき、その売り上げがシェアの8割近くを占めるまでになる状況を消費者として体験しました(有機食品のシェアは全体の2.5%)。その結果、英国の遅れていたオーガニック市場がこの10年間で一気に拡大して、EU最大のドイツに次ぐ第2位にまで躍進しました(ドイツと英国で約1兆円のマーケット:2007年)。そして、2007年にはイギリスの有機農業の割合はEUの平均4%に追いつきました。この例を見ると、大手の流通企業が本気で動けば、こういう状況は日本でも起こりえるのではないかと思いました。
2009_023【農業環境政策(環境直接支払い制度)】
また、個人的に最も重要だと思ったのが、有機認証団体AFAS(アファス)の渡邊さんが前回に引き続き提案された「有機直接支払い」制度の導入です。この件については、僕も先だっての農政改革特命チームのヒアリングの際に「EUの農業環境政策(環境直接支払い制度)」の日本型モデルの導入として提案することを予定していました。
http://blog.goo.ne.jp/masayakoriyama/d/20090505

詳しくは、別のエントリーでも取り上げますが、渡邊さんの提案は「欧米の有機農業(オーガニック)が、この約15年間で0.8%から4%へ約5倍に躍進した大きな理由としての有機の直接支払い(圃場への転換助成と維持助成、有機認証料の助成)の日本への導入」です。労力と経費が増えるのに、収量は減る可能性のある有機農業への慣行農業からの転換を支援するためには不可欠な「有機直接支払い」を有機農業推進計画に盛り込むことを提案されました。有機農業だけでなく、環境保全型農業も対象にした「環境直接支払い制度」が、この両者の生産面での支援となり欧米で飛躍的に発展していることは、国内外の多くの研究者も指摘しているところです。僕も是非、早期の導入を検討してもらいたいと思います。以下は、農政改革特命チームへのプレゼン用に作成した「EUの農業環境政策(環境支払い制度)」に関する資料と、日本の有機稲作をリードしてきた民間稲作研究所の「環境直接支払いに関する第3次提言書」です。
「eu_agrienvironmantal_policy2.ppt」をダウンロードhttp://inasaku.or.tv/kenkyujo/seisaku_teigen/seisaku_teigen_3.pdf

他に、事務局からの報告で特記するべきだと思ったのは、2009年から5年間、有機農業の研究開発費として 毎年2億1千万円が予算化されたことと、有機JAS制度の見直しが来年の2010年に予定されているということでした。有機農業関係者の皆様、有機JAS法をよりよくするための機会が近づいています!

2009_027では、以下に全国有機農業推進委員の皆さんをご紹介します。委員は、歴史ある有機農業団体、有機生産者団体、農協、生協、流通企業などの代表者、作家、学識経験者、消費者代表などで構成されています。これまで2年の任期が終わり、この日から引き続いて2期目も同じメンバーで委員会が開催されていくことが確認されました(写真右は霜里農場の金子美登さん)

2009_020

今回も大手スーパーチェーンの仕入れ担当責任者や外食産業の関係者、生協や有機農産物の専門流通事業体の関係者や農協、各地域の生産者や有機認証団体の関係者から地元や現場の状況を踏まえて、現実的で貴重な意見を聞くことができました。

【全国有機農業推進委員メンバー】(敬称略)
日本有機農業研究会 理事 魚住道郎
有機農業技術会議 代表理事 西村和雄
兵庫県有機農業研究会 事務局長 赤城節子
全国有機農業推進協議会(全有協) 理事長 金子美登
全国農業協同組合連合会(全農) 常務理事 神出元一
全国農業協同組合中央会(全中) 常務理事 前嶋恒夫
茨城大学農学部教授(日本有機農業学会会長) 中島紀一(※会長)
ノンフィクション 作家(スローフードなイタリア) 島村菜津
有機のがっこう土佐自然塾 塾長 山下一穂
安全な食べ物をつくって食べる会 前代表 若島礼子
大地を守る会会長 藤田和芳(代行:戎谷徹也)
パルシステム生活協同組合連合会 理事長 若森資朗
㈱モスフードサービス 取締役上席執行役員商品本部長 中井順
イオンリテール株式会社 食品・デリカ商品本部生鮮商品部長 寺嶋晋
㈱アファス認証センター 代表取締役社長 渡邊義明

2009_0582009_060_2有機農業推進法は、政府による閣法ではなく議員立法で作られた法律です。これまで、有機農業に長年関わってきた全国有機農業団体協議会(理事長:金子美登)や日本有機農業学会、IFOAMジャパンなどの利害関係者が、超党派の国会議員で構成される有機農業推進議員連盟(2004年設立)の事務局長を務める民主党参議院議員のツルネン・マルテイさんを中心にした、有機農業の発展を望む国会議員と一緒になって現場の声を大きく反映して作られました。http://tsurunen.cocolog-nifty.com/nikkann/2004/11/post_4.html

有機農業推進議員連盟は、自民党の大物農林族でもある谷津元農水相を会長に迎えて、現在160人を超える大所帯となっています(写真は2009年3月に開催された議連の定例勉強会で挨拶される谷津義男議員。話題提供者側のかごしま有機生産組合、大和田明江さん、有機農業技術会議の西村さん、IFOAMジャパンの松本さん、他)。
http://tsurunen.cocolog-nifty.com/nikkann/2009/03/26-3597.html

2009_031 【有機農業推進法】 趣旨
(1)有機農業は、農業の自然循環機能を増進し、農業生産に由来する環境への負荷を大幅に低減するものであり、生物多様性の保全に資するものである。また、安全かつ良質な農産物に対する消費者の需要に対応した農産物の供給に資する取組である。
(2)一方、現状では、有機農業の取組は少なく、また、消費者の有機農業に対する理解も必ずしも十分とは言えない状況にある。
(3)このため、有機農業の推進に関する基本的な方針(基本方針)に基づき、有機農業者や有機農業の推進に取り組む民間の団体等と連携しつつ、農業者その他の関係者及び消費者の理解と協力の下に有機農業を推進することを目的として、全国有機農業推進委員会を設置する。
http://homepage2.nifty.com/yugatsuru/yuuki/yuuki2.html

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