まさおレポート

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「それぞれの芥川賞 直木賞」 読書メモ

2010-04-14 | 小説 音楽
一読してこの著者豊田健次さんは言霊の人だと感じた。野呂邦暢氏との往復書簡や山口瞳の「男性自身」を時間の流れと記憶の整理に紹介しながら向田邦子の直木賞受賞と飛行機事故死へと話が収斂していく。

そのとき、遺影が私に話しかけてきた。
「あなたがいけないのよ。私のことを五十一歳なんて言うから」

本著の前段に直木賞選考委員会で、向田氏はもう少し作品を見よう、と受賞見送り寸前になったとき豊田氏が司会の機転で「もう五十一歳なんですよ」と言った。この言葉に触発されて一転受賞が決まった下りがある。

豊田氏には、この言葉が向田氏を早死にさせたとの思いがあるのだろう。さらに山口さんに「担当作家で、名前にクニのついているひとはいないでしょうね。野呂邦暢の次は、向田邦子・・・・・・」といわれてぎくりとしたものです。

その前の昭和五十五年五月に野呂氏は心筋梗塞で四十二歳の生涯を閉じている。このあたり、山口瞳といい豊田氏といい相当な言霊信者だ。

この著作は向田邦子へのレクイエムとみた。



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