ホテルの前に人一人が通れるほどの細い突堤がある。いつもはその先端で3,4人が釣りをしている。昔からある三角錐の編み笠をかぶり、足を海水に浸してひねもす釣竿を垂れている。
「あまり魚を釣り上げてるのを見ませんね」と誰かが言っていたが、しかし仕事にしている以上は小魚を魚籠にいっぱい釣っているのだろう。ワルンで鰺ほどの大きさの魚をから揚げにしておいてあるがそういうところに買ってもらうのだろう。
一度仲間入りして釣竿を垂らしてみようと思うのだがなかなか実行に移せないでいる。バリにいてもある程度の仕事をこなしていかなければならないので、時間がとれそうでとれない。
今日は満ち潮で突堤が海水につかっている。いつもの漁師は突堤には進めず、堤防の岩に座って竿を垂らしている。のんびりとタバコをふかしながら海を眺めている。彼らは退屈というストレスに滅法強いのだろう。何かの動きがないと気が済まない私のような現代人には見えない世界が彼らには見えているのではないかと、ふと考える。ちと穿ちすぎな気もするが、あながち的外れでも無い気もしてくる。