おやじの遊び道具。

  シケたおやじも、愛されたいのだ!

1000円バー”BUREIKO“

2005-02-04 | ショウセツ&しなりお
お小遣い1日千円という亭主にはありがたい、飲み屋がある。
かもめゴールデン街を抜け、吐瀉物が付着したポストを左手にみながら、
昼間は酒屋夜は焼き鳥屋と、節操なく早代わりする店の3軒隣に、
1000円バーBUREIKOはある。
民家のようなアルミ扉に、
BUREIKOと白抜き小さな文字で書かれた看板と
「会員制」とプリントされたプラスティック板。
暖簾やでかでかした目立つ看板もなく、
その場所を口頭で伝えられても、たどり着くことはなかなか難しい。
バーBUREIKOのシステムは少々風変わりである。
メニューはマスターのお任せ。
付き出しの柿ピーに始まり、デカンタ1本のウィスキー、
フライドポテト、そして最後は特製具入りインスタント麺。
平均滞在時間は1.5時間くらいだろうか、勘定は一律1000円。
わずか3坪の店内は、
肩が擦れ合うほどきつきつに入って9人のカウンターのみ。
ここにやってくる客は実に珍妙雑多である。
モヒカン頭の栄養士、黒魔術を崇拝する神主、
筋肉オタクの中年会社員、味覚音痴のラーメン屋店主、
ウクレレ漫談士になりたい初老の婦人、
人間嫌いの心理カウンセラー、計算音痴の信金マン、
見栄っ張りの零細企業社長などが入れ替わり立ち代り集まっては散っていく。
不思議なことに、客のすべてが自尊心高く自意識過剰な面々である。
むろん内に秘めたる者もいれば、言葉と態度の端々に顕す者もいる。
全員の共通項が災いして、時折口論となることもある。
このバーではごく世間一般の説教・自慢・威嚇などが飛び交う。
あるとき、耳毛の生えた恰幅のいいおやじが、
実は高校生だったことが判明する。
煙草を咥え、ウィスキーのデカンタ1本を平気で空けて、
大人と対等に交わる未成年。
大人と半分大人からみて、
常識やモラルや法律や人生や家族や世間体とは、
一体なんだろうと考えさせるテキスト。

みなさま、
書店でそんな小説を見かけたら、
立ち読みじゃ、なく買えよな。



最新の画像もっと見る