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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

レムリアの記憶 第一章 <第11話>

2013-05-24 08:46:09 | 『日常』



宿泊研修の当日。
学校の前に、大きなデシロックルが2台停車している。
一台50人のれるらしく、最初の移動は男女分かれての移動になる。
街に入ってから小グループに分かれて行くみたい。

移動中の車内は賑やかだった。
それぞれが端末を使ってやり取りしていたり、誰かが歌を歌い出すと、それが車内で合唱になったり。

先生は別のデシロックルでやってくるので、車内はある意味やりたいほうだい。
モノは食べるわ飲むわ騒ぐわ。

「セティファムにお土産買えそうにないんだが、どうしよう。」
と隣に座ったシェラットから相談を持ちかけられたが。
「そんなの、行ってみなけりゃ分からないだろう?宇宙港にも店くらいあるだろうし。」
と言ってやると、
「どういうのが好みか、聞いてないか?」
「セティファムは紫が好きだから、そういうの選べば?あとは自分が会うと思うのを買ってあげればいいんだよ。」
「それが難しいからお前にきいているんじゃないか。」
「僕に聞いたら、僕が選んだ事になってしまうだろうに。」
「そう言われればそうだな。」
なんて会話をしているが、これは端末を通じての会話。
車内はうるさくて普通に話ができない状態になっているからだ。
端末にヘッドセットをつけて、それをつないで会話している。

誰かが端末から音楽を飛ばして、デシロックル内にあるスピーカーに送り。大音量で最近はやりのダンスミュージックが流れ出すと、そこで車内がダンスホールと化す。
一方、片隅ではこうやって端末を使って会話をしていたりして。
自由にそれぞれが道中を楽しんでいる感じ。

「さて、ちょっとおどってから、自分の感覚を磨いてみたらどうだ?」
と僕が言うと、シェラットも頷いてヘッドセットを外して。
踊りの輪に入っていった。

車内には椅子があるけど、すべて可動式なので中央部分は綺麗に折りたたまれて広い空間になっている。

ダンス、踊り、そういうものは自分の意識と肉体の意識。そのバランスを取るのに最適、と言う事で結構みな音楽に合わせて体を動かす事が多い。
今日なんかは、宿泊研修なんで、無駄に盛り上がっているだけのような気がするけど。

ダンスに一息ついて飲み物を飲んでいると、端末からサラッティのメッセージが

「今どう?」
「ダンス中。」
「こっちも(笑)」

という感じで。女子のところもダンス中か。
セティファムはどうしているんだろうか。

と思ってセティファムにメッセージ入れると
「ちょっと寝てた。」
と一言。
踊り疲れて眠くなったのだとか。
そんなに踊っているのか。

女子の車内の様子も気になるところ。
とセティファムにメール送ると、すぐに動画が送られてきた。
こっちもお返しに男子車内を撮影して送る。

確かに、みな踊っている。しかも重力を切っているみたいで、全員浮いているじゃないか。
こういう大きな車は、いざという時に人を多く運べるように、車内だけ重力を切ることができる。
ただ、それをやるとバランスが取れなくなってあぶなくなるからよほどの事がないとしないのだけど。
「女子、やるなぁ。」
みんなその画面を見て感心していた。男子はぶつかったりする事を考えると危なくてやってられないからね。
女子ならではの発想なのかもしれない。女子は上手い事互いの動きを見ながら、ぶつからないように互いに調整しながら踊っている感じ。あと、女の子は抱きついたりしてもそんなに抵抗がないみたいで。
ここが男子には無理なところだな。
それに、おしあいへしあいしている男子の映像、というのもなんとなくげんなりするところはある。
僕の端末映像を男子皆に配信していたので、それぞれが見たり、踊ったりしているなかで。
「いやぁ、しかし、これは良い眺めだな。」
なんて鼻の下を伸ばしてみているメンバーも増えてきたところで、ちょうどいい感じに画面がカットされた。
セティファムもこれ以上はまずいと思ったみたい。
無重力なので、いろいろとめくれたりしてしまうので。
だんだん激しくなってくると、服も脱げてしまうのが無重力の時の注意点。
男子にとっては「すばらしい」眺めになりつつあったのだが。

「良いもの見せてもらいました。」
とセティファムにメールを送ると
「バカ」
と一言。

そうやって異常に盛り上がっていても、
目的地が近付いてくると、いそいそと皆片付け始める。
そのあたりのメリハリはあって、これからちゃんとしないといけない時はちゃんとするのだ。
その分、ハメを外す時は思いっきり外す。
だから、デシロックルの中に先生は乗りこまない。

目的地の町まで、デシロックルで4時間。
その道中は皆で飲んだり食べたり踊ったり。であっという間だったけどね。

公共の交通機関ではこれができないので、研修旅行ならではの楽しみだったりする

目的地の街が見えてきた。
今度セティファムが引っ越すアシュレイの街のその先。ラフルシェルトにやってきた。
このラフルシェルトは、宇宙人の言葉らしくて、「収穫の喜び」的な意味なんだそうだ。
収穫の喜びの街、宇宙人からしてみればそうなんだろうね。

そこで一度大きなドーム状の施設に入り、そこで全員デシロックルを降りる。
そこでは街に関する説明と、街のゲートシステムに入りこむためのスキャン(ウイルスチェックみたいな事)をされてしまう。
肉体と、端末と、その両方を行っていく。
僕らは白いゲートのあるところを通り過ぎて行くだけ。端末は何かの装置のなかを通されていく(飛行機の搭乗ゲートをイメージしていただけると近いです)。中には数人捕まってしまうメンバーもいたけど。
そう言う人はウイルス解除のプログラムか、肉体の場合は薬をもらってもう一度通過する。
全員、それで問題なかったので、一度集められて。
そして、これからがグループごとの行動になってくる。

何気にセティファムを探すと、すでにシェラットがそっちに居るのを見つけて。
これから数日、どうなるものやら。と眺めていると、
サラッティが笑顔でこっちに駈けてきていた。

サラッティが駆け寄ってきて
「今日からよろしくね。」と言う。
他のメンバーとも合流し、僕らのグループ全員がそろった。
これからまる2日間はこのグループで行動する。
グループにはそれぞれ名前をつけてあり、僕らは「ソレフス」。セティファムとシェラットのところは「アルイフォフ」と言いう感じで。
このあたりの名前の由来はレムリアの創世記神話に出てくる神々の名前をもじって使っていたりする。
先生がやってきて、全部のグループメンバーを把握する。
これは端末を使ってやるので、きちんと全員並んでいるわけではなくて、グループが固まっているその間を先生が歩きながらチェックしていく感じ。

1人の漏れがないか、顔と端末の情報を確認しながらおこなっていく。
僕らが使っている機械、端末やデシックルなんかもだけど、動力は重力の差異を電力に変換するシステムを使っている。
そこに粒子と呼ばれる技術も少し入るけど、基本は重力を扱うことが僕らの技術の根幹になっていて。
それは宇宙船などで使われている技術の応用だそうだ。
そして、僕らはグループごとの「ギャロット」に乗って移動することになる。
街中は、この粒子といわれるもので導かれている乗り物に乗っていく。
デシロックルのように自由に走れるわけではなくて、ギャロットは決まったルートを行き来するだけの乗り物。
僕らが町で動く歩道に乗っていくのと同じような感じかな。
これは、塔のある国から来た技術とかで、一定の場所で動かすにはとても効率のいいシステムなんだとか。
端末からの情報に眼を通して関心していると、よこからサラッティが覗き込んでくる。
「何?調べてるの?」
「このギャロット、と言う乗り物について。」
「男の子は機械がすきなのねぇ。」
「こういうのを調べるのも今回の研修の目的じゃないのかい?」
「端末に全部記録させてて、後で必要なの検索すればすぐじゃない。」
「そういう大雑把なこと考えていると、後で泣きをみるんだよ。」
というような会話をしつつ、まったく揺れないギャロットに不思議な感覚を覚えていた。
重力の制御とかでないのに、この安定感はなんなんだろう。

高い建物と、見たことの無い建物と、ギャロットの天井一面のガラス越しに見える世界に、みな眼を奪われていた。

金色のように光る建物。そして、透明なカバーに覆われたような建物。
それらの間にある天をつくような巨大な木々。
端末からの情報を見ながら、聞きながらの移動になるのだけど。
その巨大な木は、町の中にある浄化システムの一環らしく。
排水や雨水を循環させる場所に存在しているのだとか。
町全体が金色なのは、内部からの発熱を抑えて、外部からの熱吸収を良くしいてるからだとか。
いろいろと情報が下りてくる。
その必要なところをコピペして保存していく。
サラッティのように後日派の人たちは、そのまま全部ダウンロードしていたりするけど。
この人たちは、後でどうせ僕の資料を見に来るんだろうなぁ。

そんな感じで街中を移動して、これから農業地帯のスペースシードを集積する場所へと移動する。





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