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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

アトランティスの記憶②

2013-01-13 09:47:49 | 『日常』

ギャロットの中には、音楽粒子が存在しないので、端子が使えないからだ。でも情報粒子は上にあるアンテナから車内に引き込んでいる。
だったら、音楽粒子もそうやって引き込んでくれればいいのに。
と思ったりするのだけど。

ギャロットの中には、同じメンバーも何人かいて。朝の挨拶をしながら席に座る。当たり前のように隣にはヤーフルが座った。
カシェットが僕の頭をちょっと叩いて前に座る。そこにはラムンロゥスが座っていた。紫の薄い色の髪の毛を長く伸ばしている女の子で、ヤーフルよりもおとなしい感じの子だけど。僕から見たら、カシェットとラムンロゥスの性格だってかなり違うように見えるんだけど。
「隣の芝生は青く見えるものだよ。」
僕の考えを読んだのか、ヤーフルがそんなこと言ったが。
「それ、ちょっと使い方間違っているから。」
僕はそう言って外を眺めた。

力粒子で動くので、少し浮かんだ状態で道を進んでいく。だから、ゆれたりしないので移動している感じがあまりしないところはちょっとさみしいけどね。

通り過ぎる巨大な建物。一枚の結晶構造を外壁を持つそれは、1つの大きな水晶にも見えてしまう。
そんな建物の隙間を縫うように走るギャロット。

「水晶の街」、ほかの町から来た人は、この中央の街をそう呼ぶ。
遠くから見たら、丸い水路に囲まれている、巨大な水晶クラスターみたいに見えるのだそうで。水路に映り込む姿もまた美しいそうだけど。僕らはその映像しか見たことはない。
早く街の外にでて、自分の目でその景色を見たいと思っている。
夕日に照らされている街の姿を収めた映像は、僕の部屋の壁にいつも映し出されていた。

次第に、地面よりも高い場所を走っている事に気がついた。
だんだん、中央の『塔』に近付いているのだ。裾が広いのでどこから塔なのかが分からないくらい。もしかしたら、街全体が塔の上に立っているのかもしれない。
しだいに壁面を通る道に移動しているらしい。

「ねえ、今日行くところ、たのしいのかな?」
となりのヤーフルが聞いてきた。
ヤーフルは施設見学はあまり興味が薄いようで。
何かのイメージを形にするような、意識の創作を行うような。そんな芸術的な事が好きなのだ

でも、僕は街を動かしている仕組みを知るのは好きだ。
「僕はとても楽しみだけど?」と答えると。

「君は好きだからいいけど、私はもっと、こう感覚で粒子を使える場所とかに連れて行ってもらえたほうが嬉しいなあ。」

「それは、来週できるだろう?」

「だって、今週は毎日毎日施設見学だもの。芸術的な力粒子の扱い方を忘れてしまいそう。」

「ふふっ、いつも自分の部屋で好き勝手に使っているくせに。」

「むっ。君は私の部屋を覗いたのか?」

「他のメンバーから聞いたんだよ。」

「そんな事を言うのは、隣のシェルだな。」

と言って、ヤーフルはさっと周りを見渡して、向こうに座っているシェルを見つけた。
シェルはそれに気付き、ニヤッと笑って手を振っている。
彼女はヤーフルと同じ部屋の女の子だ。
髪の毛が薄い銀色で、目の色が赤っぽいから、アルビノの女の子だ。
ヤーフルは目の色は緑だし、ちゃんと肌の色もそれなりにあるけれども、アルビノの女の子は透き通るような感じなのでちょっと雰囲気がある気がする。
僕がじっとシェルを見ていると、ヤーフルは僕の脚を踏んで、
「もうっ、あいつはいつもいらない情報を君に持ってくる。」
そう言って、ちょっと膨れて見せる。
僕は、ヤーフルのそういう姿を見るのがすきなんだ、だからわざとこういう事を言ってみたりする。

そうこうしているうちに、ギャロットが目的地に着いた。
その情報は、情報粒子を通じてバンダナに送られてくる。

塔の管理施設への入口。普通であれば閉ざされている3階層の部分なので、こういうところにこられるのは貴重な体験だ。

さて、今日の勉強の始まりだ。

ギャロットから降りると、そこには数十人の、僕らと同じメンバーが居た。
今回は、家に入った時期が同じメンバーと共に、塔の内部にある『粒子』を発生させ、循環させる仕組みを見学に来ているのだ。

今週はこの施設見学が毎日あって。僕のペア、ヤーフルはだいぶ退屈しているみたいだ。

作ることが好きなメンバーには、ちょっと物足りないだろうね。

僕らの額にあるバンダナには、情報粒子によって次々とこの塔に関する情報が送り込まれてくる。

だから、初めて来たこの場所でも迷うことなく、塔の中央にある制御室まで歩いて行けるのだ。

途中、ヤーフルがささやいてきた、

「ねえ、みんな、私達見て笑っているよ。」
「そりゃあ、ぞろぞろ歩いていたら目立つからね。」

全員でぞろぞろと歩いていると、すれ違う大人はみな微笑んでくれる。
ちょっと恥ずかしい気もするが。

制御室に来ると、そこにホワイトメタルのコートを着た人物が立っていた。
この塔の粒子を扱う責任者の人だ。
ここでバンダナから情報が来る。ホワイトメタルのコートについてだ

ホワイトメタルのコートは、あらゆる粒子を寄せ付けないので。
どんな粒子の中に入っても、その粒子からの影響を受けないでいられる。
つまり、今この人は情報粒子も扱っていない事になる。

その人物は背がすらっと高く、顔は僕がこれまで見てきたどの大人よりも美しく、襟の隙間から見える髪の毛は美しい金色に見えた。
目の色が青く深い感じで、なぜかその目にちょっと懐かしい感じを覚えたのだけど。
なんでかな?
その人は僕らを見渡して、なぜか僕と目があった時に少し微笑んだような気がした。

「ようこそ、塔の内部へ。若い家族がくるのは歓迎する。」

情報粒子を使わないで情報を伝えるには、声しかないので。
その人は大声で話してきた。

「私は施設の粒子管理を行うヤベーヘだ。家族はヒトヲメンバーの一人だよ。」

それを聞いて、僕らはざわめいた。ヒトヲ・メンバーがまだ居たなんて。
僕がそれに関する情報を拾い出していると、隣に居たヤーフルが体を寄せてきてささやいた。

「なんだい?ヒトヲ・メンバーって。」

「へ?知らないのかい?」

「君のように私はマニアじゃないから。」

「そうかな、常識だと思うけど。」

そう言いながら、僕は情報粒子を使ってヤーフルにイメージを伝えた。だいたい、知らないなら自分で調べればいいのに。

直感型のメンバーは、粒子で情報を集めるのが好きではないようで。良く直接聞いてくる。

ヤーフルも、僕らとは違うところに意識がアクセスしているのかもしれない。
宇宙の書庫、という場所もあるらしく、僕らは塔の情報につながることを主にしているけど。人によっては「宇宙の書庫」につながっている人もいるとかそういう話は聞いたことがある、
直感のメンバーはそっちにつながっているのかもしれない。

で、僕の送った情報は、
ヒトヲ・という家族名の付いたグループは、200周期(500年くらい前)前に居た人達で。
このメンバーは、あらゆる事に秀でた人々が多かった。
なので、街の管理を行う仕組みを作り上げたのも、このヒトヲ・メンバーで。
粒子に指向性を持たせたり、特定の場所で使えるようにしたり。
そういう粒子技術を向上させたのも彼らの仕事であった。
そして、宇宙の書庫からの情報をダウンロードして使うことに長けているメンバーであった。

とそういう感じの内容だ。
それを受け取って、ヤーフルが一言

「へえ、おじいさんなんだ」

気にするポイントがずれている。
200周期以上現役で暮らしている人、というのは実はあまり居なくて。
たいていは100周期~150周期(200年~300年くらい)で、この肉体を離れる事になる。
なので、ヒトヲメンバーが目の前にいる、というのはすごい事なのだ。
宇宙の書庫とのアクセスをしている人だなんて。
そんな、ヒトヲメンバーの方に直接会えるだけでも、僕は感動するのに。


ヤーフルには関係ないみたいだ。

ヤベーヘは僕らのところに歩いてきて、耳に端子を取りつけた。
その端子は少し長い耳のように見えるもので、特定の周波数を出す仕組みになっているらしい。
これは情報粒子からもらった情報。

「内部では、端子で会話をする。情報粒子は使わないから、各自端子を耳に付けるように。」

とまた大声で言った。この人は声を出すのが好きなのか?
情報粒子で事足りるのに。

僕らは胸当てから端子を取り出し、装着した。

「レベルは122だ。調整して。」

ヤベーヘの声で皆はレベルを調整する。端子の中央付近にあるボタンを押すと、空間に画面が現れるので、それを見ながら周波数のレベルを調整する。端子は粒子以外の電波や周波数を数値を調整することで拾うこともできるようになるので、今回は特定の周波数を持った電波を使ってのやりとりになるようだった。

ヤーフルは調整ができずにもたもたしている。普段、こういう風に自分でレベルを調整するのに慣れてないからなあ。

なので、僕が調整してあげた。

感謝の礼の代わりに、軽く僕の腹を小突く。

「さて、これから粒子発生装置のところまで行くが。歩いていく。」

ヘッドセットから聞こえてきたヤヘーベの声に、みなが「えー」とか言っている。
てっきり、内部用のギャロットがあると思っていたからだ。

「この建物は、外へ粒子を循環させる建物だ。だから、内部には最低限の粒子しか流していない。足があるのだから、あるくのもいいものだよ。」

そう言って、ヤヘーベはシルバーメタルのコートをなびかせて、先頭を歩きだした。
皆はしぶしぶと付いていく。






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