Journal de Tsurezure

雑多な日常、呟き、小説もUPするかもしれません。

最終回 イシュヴァールでの、その後  バツイチで○女ですからと言われて

2021-10-17 16:33:50 | ハガレン

 イシュヴァールに帰ると仕事に追われて、数日、一週間などあっというまに過ぎてしまった。
 その間は以前と変わらない生活サイクルだったが、時折、見られているなあと視線を感じ、顔を向けるとぱっと視線を逸らされてしまい、多少なりとも気まずさを覚えてしまった。
 

 薄暗い天井を見上げながら目を閉じるのだが、なかなか眠ることができないことに正直、参ったなと思ってしまう。
 今のところ、寝るのも別々で彼女の方から何かを言ってくる訳でもないが、期待しているのだろうかと思ってしまう、だが、そのときのことを考えると自分のほうが落ち着かないのだ。

 
 夕食後に紅茶を飲むのは彼女の好みだ。
 仕事中、日中はコーヒーなら、何倍でも飲めるが、気分が落ち着くのは紅茶だと思ってしまう。

 「なかなかですね」
 「なんだい」
 「帰ってきてから進展というか、何もないですよねー」

 間延びした声で言われ、内心、マズイと思いつつ、言い訳を考える。
 
 「ああ、色々と、その、準備というか、すまない」
 「そうですか、準備って避妊の用意とか」
 
 生々しい話に思わずどきりとする、歳の差があろうが、男と女だ、余程の事が限り妊娠、子供ができる可能性はあるのだ。

 「子供なんて、この歳で欲しいなんて思いません、それよりマルコーさんが側にいてくれた方がいいですよ」
 
 彼女の言葉に、ほっとしながら長生きできるように頑張るよと答えるのが精一杯だ。

 「贅沢は言いません、でも一緒に寝るぐらいはセックスはしたくないならいいです、でも、同衾はしたいです」
 
 一緒に寝る、か、同衾、頷きながらも少し不安になる。
 
 「なんだか、悩んでいる様子だし、凄く困ってません」
 
 そんな事はないと思いながら、いや、端から見たら、そんな封に見えていたのかと思いながら視線を移して、おいでと手招きをした。
 少し緊張しながら、これぐらいならできると思いつつ、目を閉じる。

 唇のチューじゃないんですねと言われて、マルコーは、ああ、まあと言葉をの濁した。

 「膝に、乗っていいですか」

 返事を待たずに自分の膝の上に乗ってくる重みに慌てたのは無理もない、小さな子供なら余裕だが、ずっしりとした重みに落としたらと両手でしっかりと支えると首に腕が回された。

 「振られなくて良かった」

 ほっとしたような声に自分も助手がいなくならなくて良かったと呟いたが、その瞬間、しまったと思った。
 慌てて言い訳がましく訂正すると、いいんですよと笑いを含んだ声が返ってきた。

 「大人でバツイチですからね、許します、大抵のことは、でも、振られたり、捨てたりするのはなしですよ、あと浮気もできたらしないでください」
 「いや、私は、そんなにモテないというか」
 「ノックスさん、飲みに行くと美女が、いつもセンセーって集まってくるし」
 
 その言葉に、ふと友人の顔を思い出した、客商売というのもあるが、確かに女受けはいいなと。
 
 「ところで、降りてくれないか」

 重いですかと聞かれて、すぐには返事できない、女という生き物はこういうとき、素直に頷けば怒るか、気分を悪くするんだろう、そのどちらかではないのかと思ったからだ。
 
 「気持ちが、何というか」

 「いいじゃないですか、バツイチ女なんですから」
 「なんだね、それは」
 「甘えたいんです、それに○女ですよ、この歳で」

 その言葉に、えっとなった、今のは聞き違いかと思ってしまう。

 「まあ、途中まではいっても、なんというか、結果、最後まではいかなかったんですよ、肉を食べる女とセックスなんてできないと言われたんですよ、ショック、でした」
 
 いくら菜食主義のベジタリアンとはいえ、どういう理屈だと思いながら、自分の肩に頭を持たせかけている女が気になった。

 「恥ずかしい事、言ってしまいましたね」

 いや、そんな予想外の発言を聞かされる自分の方が、別の意味で恥ずかしく感じる、しかも、この体勢でと思いながら、マルコーは息を吐いた。


 「大丈夫かね」
 
 ベッドの上でうつ伏せになった女の背中、いや、腰をマルコーは摩りながら尋ねた。

 マルコーさんは平気なんですかと聞かれて、彼女ほどではないと思いつつ、大丈夫だよと返事をすると、恨めしそうな目で見られてしまう。

 「足の間が、ひりひりというか、大きいんですか、マルコーさんのって」
 「い、いや、普通だよ」

 他人とアレを比べるなど、この歳では滅多にない。

 「今更だけど、週末にすれば、ううっ」

 こうなったのは、自分からだ、悪いと思いながら明日の午前中は休んでと言うと女は、いいえと首を振った。

 「助手が休むなんて、しかも戻って来たばかりなのに」

 こういうところは真面目なんだなと思いながら、自分の腰に手を伸ばす、やはり、少しは疲れを感じるなと思いながらマルコーはベッドに体を横たえた。
 眠気を感じる、自分も疲れているのだ、だったらいいだろう。

 
「明日は午前中、休もう、私もだ、たまにはいいだろう」

 医者にも休みが必要ですねと言われてマルコーは頷いた。


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