声欄とえくれあと眼鏡とへそのごまと…

大人と社会について、自らの考え思いで腐していきます。社会への抵抗ではなく挑戦。

村上龍『インザ・ミソスープ』

2009-01-25 12:05:34 | 読んで欲しい度☆☆
この本は暴力だった。
いや暴力は何も伝えないが、村上龍は確かに何かを伝えようとしている。
だから、暴力的な本だったと書くべきか。

しかしどちらも的確ではない。
やけにリアリティーを持った恐ろしさがある。
想像力がそうさせるのだ。
例えばそれは、見知らぬ生身の人間が自分の家のベランダに立ってこっちを見ているのを想像するのに似ている。
幽霊がベランダに立ってこっちを見ているのを想像するのとは恐さが異質だ。
前者は現実に起こり得る可能性を孕んでいるために、その後の出来事までも強制的に想像させる。
そういう本だった。

間違いなく子供には、読ませたくない本だ。
子供は、想像力と現実また理性と好奇心の均衡が保たれていない。
高校生でもどうかと悩むところだ。
『めちゃイケ』?『クレヨンしんちゃん』?、この本に比べるとまるで無害だ。

また、今までの考えがクリアになった恐ろしさもある。
新聞やテレビで〇人(人数)が死亡というニュースを聞く事があるが、そこにはリアリティーがまるでない。
しかし実際には、当事者であるその〇人の人には、各々に数人の家族がいて数十人の友達があって数百人の知り合いがいるのだ。
そのリアリティーのなさと現実に起こっている事のギャップをはっきりと認識させられた。

とにかく想像する事を脅迫する。
この本はアダルトビデオと犯罪の関係と同じく、単純に善か悪かという風には論じる事が出来ない。
だからこそ、子供には見せたくはない。


ただこの本を読み終わった時、寝不足のためだけではなく、頭が冴えていた。
なぜか自分の部屋がいつもより明るく見えた。