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世界の環境ホットニュース[GEN] 597号 05年08月07日
発行:別処珠樹【転載歓迎】意見・投稿 → ende23@msn.com
枯葉剤機密カルテル(第13回)
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暑中お見舞い申し上げます。今年はまだヒグラシもツクツクホウシも聞きません
。
明日が立秋ですから、明日だったら「残暑」とするところですね。お見舞い状を
頂戴した方にはお礼を申しあげます。私は、暑いのに強いのかどうか、ともかく
暑いとますます元気になりますので、どうぞご心配なく。 編集者
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枯葉剤機密カルテル 原田 和明
第13回 PCPではなかった「除草剤PCP」
秋の臨時国会でも、PCPを肥料に混入することを合法化するための肥料取締法
改正案が上程され、1961年10月13日に衆院、25日に再び参院を通過して成立する
や否や翌26日に公布、施行令の一部を改正してPCPの混入を認めるとの政令は
30日、施行規則の一部を改正する省令は11月25日にそれぞれ公布(1961.12.8 農
林水産委員会)という超スピードで実施されることになりました。この慌しさに
は農林省の焦りさえ感じます。
6月の通常国会で PCP混合肥料を 合法化できなかった農林省にとって 62年の
「集中豪雨」は誤算だったことでしょう。肥料取締法改正案は成立したものの、
遅れを取り戻すことはできず、PCP混合肥料の製品化は62年春の「田起こし」
に間に合わなかったと思われます。それでも農林省は、梅雨時の水田で10日間排
水しないという実現不可能な「対策」を設けてまで「PCPの使用」を強行しま
した。
農林省は空梅雨となることを祈っていたかもしれません。しかし、集中豪雨とい
う「天災」により巨額の漁業被害をだしてしまったのです。農林省は「知ってい
てやったこと」であり、さすがにPCPは無関係と強弁することは不可能だった
ようで、「大雨で海水が淡水化し、貝などが弱っていたときに流れ込んだPCP
がさらに作用して被害をだした」(1962.8.11 朝日新聞)という苦しい解釈をだ
しています。
そのように農林省の全面的支援を受けて、PCPの需要は急拡大しました。農薬
全体の生産も1952年からの十か年間に 金額にして91億円から338億円へ急増しま
したが、特に除草剤は農薬のうちで一番伸び率が高く、全農薬に対する除草剤の
割合は4.7%から20%に増加、金額にして4億円から67億円に増加という成長ぶり
を示しています。さらに、除草剤の中でもとりわけPCPは1961年度の除草剤の
登録件数 78件中 82%にあたる64件を占め、PCPの国内生産量は59年148トン、
60年2441トン、61年8763トン、62年には2万5百トン(1963.3.29 参院農林水産委
員会)と60年以降のPCPの突出ぶりが目立ちます。しかし、その需要急増も実
現不可能な「対策」を設けてまで強行した農林省の「国策」のお陰という印象は
否めません。
このように 超ベストセラーとなったPCPですが、藤野 繁雄(二院クラブ)は
PCPの意外な問題点を指摘しています。除草剤PCPの成分がPCP(ペンタ
クロロフェノール)ではないというのです。(1963.3.29参院農林水産委員会)
「農薬の抜き取り検査状況を調べてみると、昭和36(1961)年度の検査件数が
PCP除草剤は 5件であって、全部不合格になっている。全部不合格という理
由はどこにあろうか? 全部不合格だったらば、これに対して、政府はいかな
る対策をとったか?」
農薬も種類が増えて・・・と逃げる農林省農政局長・齋藤誠に藤野は「いろんな
種類じゃない、PCPだけに限っている。」と一喝して答弁を迫りました。齋藤
は
「不合格になりましたその主要な内容は、大体は経時変化――時間がたつにつ
れまして成分が変わってくるというようなことで、つまり有効成分が表示当時
の成分と異って参るというようなことが主要な原因になっておると承知いたし
ております。」
と回答、「除草剤PCP」は本来の成分「ペンタクロロフェノール」から変化し
ていることを認めたのです。それにしても抜き取り検査ですべて不合格とはどう
いうことでしょうか? 齋藤は成分変化の理由に「時間」をあげましたが、保管
中に成分が変化してしまうようでは効能も失われるのではないかと思われますし
、
そもそもペンタクロロフェノールは通常の保管中に変化してしまうような不安定
な物質ではありません。ということはひとつの仮説として「除草剤PCPはもと
もと 本来の成分であるはずの ペンタクロロフェノールではなかったのではない
か」と考えることができます。
それを裏書きするように、農林省が「除草剤PCP」は本来の成分とは異なるこ
とを認めたのはこれが初めてではありません。「漁業被害はPCPが原因である
と農林省は認めたのか?」との稲富稜人(民主社会党)の質問に対する答弁の中
で、農林省振興局長・斎藤誠は
「現実にPCPがどのようにその海水面にあったであろうかということで、こ
れもまた調査いたしました結果、PCPだと言うことは必ずしもできませんけ
れども、いわゆるPCPに包含されるところのフェノールの薬剤がやはり有明
海から検出されておるということもございます。」
と答えています。(1962.8.28衆院農林水産委員会)「PCPではないけれども、
いわゆるPCPの概念に含まれるフェノール」とは何でしょうか? 斎藤誠の答
弁の意味するところは、「PCPは抜き取り検査で不合格になった検体だけでは
なく、水田から流出した、つまり水田にまかれたほとんどの『除草剤PCP』が
ペンタクロロフェノールではないが、全く別物というわけでもない。(というこ
とはおそらく、塩素の数が異なるクロロフェノール類である)」ことを農林省が
白状したということです。
小規模ながら枯葉作戦が既にベトナムで始まっていたこの時期、農林省が「国策
として需要拡大を図り、PCP混合肥料が合法化できなくても敢えて漁業被害の
発生リスクを犯してまで拙速に売りさばこうとした「除草剤PCP」の正体とは
いったい何だったのでしょうか?
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読者から
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こんにちは、山形の荒木と申します。いま山形県で「森林環境税」という負担を
全県民に課そうとしています。「環境を守るため」という錦の御旗のもと、個人
の里山や公有林など、戦後の営利主義に走った林野行政の失敗のつけである荒廃
した森林を復活・保護するためといいつつ、「年間数億円」に上る「特別会計」
をものにしょうと、全県民に負担を課そうとしています。
しかしこのような「小手先」のことで「地球規模」の環境破壊が止められるとは
思いません。原田和明さんの「枯葉剤機密カルテル」を毎回読ませてもらう内に
一つの疑問が湧きまして、御迷惑とは思いましたが、メールを致しました。
日本の林野庁は、ベトナムで使われるはずだった「枯葉剤」を、人員不足を理由
に「山奥にヘリコプター」で無差別に散布したのではないか? ということです
。
近年「くま」「さる」「いのしし」等が山郷どころか街中へまで進出している原
因は、「えさ」となる木々の「循環作用」が、枯葉剤散布によって極端に阻害さ
れているからではないか?
また「酸性雨」の高濃度化による「耐性植物」、特に「つる系」植物の繁殖が目
に付きます。広葉樹の林に行きますと特に目立ちます。近所の空き地等も得体の
知れない「つる系植物」が、立ち木に覆いかぶさっています。枯葉剤散布と高濃
度酸性雨によって「日本の山は、死の山」となっているのでは無いでしょうか?
ヨーロッパのアルカリ土壌と違い、もともと酸性土壌の日本では、気が付くのが
遅れてしまったのでしょうか。それとも?!!
現在・山奥の土壌は、どうなっているのでしょうか? 以前、「ツバメの巣」が
粘着度を失い、子ツバメの成長に耐えられなくなって、途中で壊れる。これがツ
バメが激減している要因の一つだと読みました。同じような事が、「微生物の減
少した」「死の土壌」と成っているのでしょうか? 少しずつ環境破壊が起きる
のではなく・何時の日か突然に・一気に壊滅するのかも知れません。
私たちの知らない所で、環境破壊が、国策の名の下に進んでいくことは実に恐ろ
しいことです。(北朝鮮のミサイルよりも)!!
では、またの機会に!! 2006/7/30
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世界の環境ホットニュース[GEN] 597号 05年08月07日
発行:別処珠樹【転載歓迎】意見・投稿 → ende23@msn.com
枯葉剤機密カルテル(第13回)
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暑中お見舞い申し上げます。今年はまだヒグラシもツクツクホウシも聞きません
。
明日が立秋ですから、明日だったら「残暑」とするところですね。お見舞い状を
頂戴した方にはお礼を申しあげます。私は、暑いのに強いのかどうか、ともかく
暑いとますます元気になりますので、どうぞご心配なく。 編集者
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枯葉剤機密カルテル 原田 和明
第13回 PCPではなかった「除草剤PCP」
秋の臨時国会でも、PCPを肥料に混入することを合法化するための肥料取締法
改正案が上程され、1961年10月13日に衆院、25日に再び参院を通過して成立する
や否や翌26日に公布、施行令の一部を改正してPCPの混入を認めるとの政令は
30日、施行規則の一部を改正する省令は11月25日にそれぞれ公布(1961.12.8 農
林水産委員会)という超スピードで実施されることになりました。この慌しさに
は農林省の焦りさえ感じます。
6月の通常国会で PCP混合肥料を 合法化できなかった農林省にとって 62年の
「集中豪雨」は誤算だったことでしょう。肥料取締法改正案は成立したものの、
遅れを取り戻すことはできず、PCP混合肥料の製品化は62年春の「田起こし」
に間に合わなかったと思われます。それでも農林省は、梅雨時の水田で10日間排
水しないという実現不可能な「対策」を設けてまで「PCPの使用」を強行しま
した。
農林省は空梅雨となることを祈っていたかもしれません。しかし、集中豪雨とい
う「天災」により巨額の漁業被害をだしてしまったのです。農林省は「知ってい
てやったこと」であり、さすがにPCPは無関係と強弁することは不可能だった
ようで、「大雨で海水が淡水化し、貝などが弱っていたときに流れ込んだPCP
がさらに作用して被害をだした」(1962.8.11 朝日新聞)という苦しい解釈をだ
しています。
そのように農林省の全面的支援を受けて、PCPの需要は急拡大しました。農薬
全体の生産も1952年からの十か年間に 金額にして91億円から338億円へ急増しま
したが、特に除草剤は農薬のうちで一番伸び率が高く、全農薬に対する除草剤の
割合は4.7%から20%に増加、金額にして4億円から67億円に増加という成長ぶり
を示しています。さらに、除草剤の中でもとりわけPCPは1961年度の除草剤の
登録件数 78件中 82%にあたる64件を占め、PCPの国内生産量は59年148トン、
60年2441トン、61年8763トン、62年には2万5百トン(1963.3.29 参院農林水産委
員会)と60年以降のPCPの突出ぶりが目立ちます。しかし、その需要急増も実
現不可能な「対策」を設けてまで強行した農林省の「国策」のお陰という印象は
否めません。
このように 超ベストセラーとなったPCPですが、藤野 繁雄(二院クラブ)は
PCPの意外な問題点を指摘しています。除草剤PCPの成分がPCP(ペンタ
クロロフェノール)ではないというのです。(1963.3.29参院農林水産委員会)
「農薬の抜き取り検査状況を調べてみると、昭和36(1961)年度の検査件数が
PCP除草剤は 5件であって、全部不合格になっている。全部不合格という理
由はどこにあろうか? 全部不合格だったらば、これに対して、政府はいかな
る対策をとったか?」
農薬も種類が増えて・・・と逃げる農林省農政局長・齋藤誠に藤野は「いろんな
種類じゃない、PCPだけに限っている。」と一喝して答弁を迫りました。齋藤
は
「不合格になりましたその主要な内容は、大体は経時変化――時間がたつにつ
れまして成分が変わってくるというようなことで、つまり有効成分が表示当時
の成分と異って参るというようなことが主要な原因になっておると承知いたし
ております。」
と回答、「除草剤PCP」は本来の成分「ペンタクロロフェノール」から変化し
ていることを認めたのです。それにしても抜き取り検査ですべて不合格とはどう
いうことでしょうか? 齋藤は成分変化の理由に「時間」をあげましたが、保管
中に成分が変化してしまうようでは効能も失われるのではないかと思われますし
、
そもそもペンタクロロフェノールは通常の保管中に変化してしまうような不安定
な物質ではありません。ということはひとつの仮説として「除草剤PCPはもと
もと 本来の成分であるはずの ペンタクロロフェノールではなかったのではない
か」と考えることができます。
それを裏書きするように、農林省が「除草剤PCP」は本来の成分とは異なるこ
とを認めたのはこれが初めてではありません。「漁業被害はPCPが原因である
と農林省は認めたのか?」との稲富稜人(民主社会党)の質問に対する答弁の中
で、農林省振興局長・斎藤誠は
「現実にPCPがどのようにその海水面にあったであろうかということで、こ
れもまた調査いたしました結果、PCPだと言うことは必ずしもできませんけ
れども、いわゆるPCPに包含されるところのフェノールの薬剤がやはり有明
海から検出されておるということもございます。」
と答えています。(1962.8.28衆院農林水産委員会)「PCPではないけれども、
いわゆるPCPの概念に含まれるフェノール」とは何でしょうか? 斎藤誠の答
弁の意味するところは、「PCPは抜き取り検査で不合格になった検体だけでは
なく、水田から流出した、つまり水田にまかれたほとんどの『除草剤PCP』が
ペンタクロロフェノールではないが、全く別物というわけでもない。(というこ
とはおそらく、塩素の数が異なるクロロフェノール類である)」ことを農林省が
白状したということです。
小規模ながら枯葉作戦が既にベトナムで始まっていたこの時期、農林省が「国策
として需要拡大を図り、PCP混合肥料が合法化できなくても敢えて漁業被害の
発生リスクを犯してまで拙速に売りさばこうとした「除草剤PCP」の正体とは
いったい何だったのでしょうか?
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こんにちは、山形の荒木と申します。いま山形県で「森林環境税」という負担を
全県民に課そうとしています。「環境を守るため」という錦の御旗のもと、個人
の里山や公有林など、戦後の営利主義に走った林野行政の失敗のつけである荒廃
した森林を復活・保護するためといいつつ、「年間数億円」に上る「特別会計」
をものにしょうと、全県民に負担を課そうとしています。
しかしこのような「小手先」のことで「地球規模」の環境破壊が止められるとは
思いません。原田和明さんの「枯葉剤機密カルテル」を毎回読ませてもらう内に
一つの疑問が湧きまして、御迷惑とは思いましたが、メールを致しました。
日本の林野庁は、ベトナムで使われるはずだった「枯葉剤」を、人員不足を理由
に「山奥にヘリコプター」で無差別に散布したのではないか? ということです
。
近年「くま」「さる」「いのしし」等が山郷どころか街中へまで進出している原
因は、「えさ」となる木々の「循環作用」が、枯葉剤散布によって極端に阻害さ
れているからではないか?
また「酸性雨」の高濃度化による「耐性植物」、特に「つる系」植物の繁殖が目
に付きます。広葉樹の林に行きますと特に目立ちます。近所の空き地等も得体の
知れない「つる系植物」が、立ち木に覆いかぶさっています。枯葉剤散布と高濃
度酸性雨によって「日本の山は、死の山」となっているのでは無いでしょうか?
ヨーロッパのアルカリ土壌と違い、もともと酸性土壌の日本では、気が付くのが
遅れてしまったのでしょうか。それとも?!!
現在・山奥の土壌は、どうなっているのでしょうか? 以前、「ツバメの巣」が
粘着度を失い、子ツバメの成長に耐えられなくなって、途中で壊れる。これがツ
バメが激減している要因の一つだと読みました。同じような事が、「微生物の減
少した」「死の土壌」と成っているのでしょうか? 少しずつ環境破壊が起きる
のではなく・何時の日か突然に・一気に壊滅するのかも知れません。
私たちの知らない所で、環境破壊が、国策の名の下に進んでいくことは実に恐ろ
しいことです。(北朝鮮のミサイルよりも)!!
では、またの機会に!! 2006/7/30
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