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学んでいきます。

管理人 まりあっち

第17回 林野庁からの委託研究

2006-09-29 13:39:17 | Weblog
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     世界の環境ホットニュース[GEN] 602号 05年08月26日
     発行:別処珠樹【転載歓迎】意見・投稿 → ende23@msn.com     
           枯葉剤機密カルテル(第17回)     
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 枯葉剤機密カルテル                    原田 和明

第17回 林野庁からの委託研究

枯葉剤国産化に林野庁も一役買っていたという疑惑についても触れなければなり
ません。米軍がベトナムで枯葉剤を散布していた時期に、日本では林野庁が国有
林に塩素酸ソーダを中心とする除草剤を散布していました。そして三井東圧化学
が枯葉剤245Tを生産しはじめると、林野庁もまた245Tを国有林に散布し
はじめたのです。林野庁の一連の行動は「日本版枯葉作戦」と呼ばれ、林野庁は
省力化を口実に労働組合を敵視し、住民を欺き、大臣の発言を無視して散布を強
行しました。そのような暴走はベトナムでの枯葉作戦が中止された後も続き、林
野庁が残した負の遺産はあまりにも大きなものでした。

ミミズ研究で有名な中央大学名誉教授・中村方子の「ミミズに魅せられて半世紀

(新日本出版社2001)の中に「人間として許せない出来事」という項目があり、
ここに林野庁からの「委託研究」に関する記載があります。(以下引用)

  その出来事は、アメリカのベトナム侵略戦争のさいの枯葉作戦との関わりで
 あった。「枯葉剤は人畜無害であって、これを用いるのは敵の隠れ場所をなく
 して友軍の安全をはかるだけの作戦であり、非常に人道的な作戦である。」と
 報道しながら米軍は連日多量の枯葉剤をベトナムで散布し、その結果がもたら
 した人命や自然に対する計り知れない破壊行為は今では弁明の余地はない。
 
  こうした中で、日本でも多量の枯葉剤が森林の下草管理を目的として散布さ
 れ、東北に住んでいる分布北限のニホンザルに多くの奇形児が生まれ問題にな
 った。この散布が実施される前に、この枯葉剤散布を是とするための「研究」
 が求められたのである。それはかつて水俣において有機水銀中毒患者が発生し
 たとき、工場排水に原因があることの真相追及をはぐらかすために複数の御用
 学者が関わったこととも類似していた。東北のブナ林の下草管理を人手に代わ
 って、枯葉剤散布に切り替えようとした営林署が、事前に枯葉剤散布は環境に
 悪影響を及ぼさないというデータを出してくれることをK先生に頼んできたの
 である。そのデータを学会誌等に発表しないことも含めてK先生は引き受けら
 れたのである。私は当然協力を拒否して批判した。(引用終わり)

K先生の怒りはいかばかりだったでしょう。中村は幸い教育公務員特例法によっ
て解雇を免れたものの、15年間研究者として「干された」状態にされました。文
中に「出来事」の時期は明示されていませんが彼女の経歴から逆算すると1963年
のことと推定されます。当時 林野庁が国有林に散布していた除草剤は ほとんど
塩素酸ソーダでしたから、林野庁が委託した試験は枯葉剤以外にも複数の薬剤が
リストアップされていたと思われます。

営林署が塩素酸ソーダの散布を始めてから、この薬剤に由来する事故が多発、青
森では死亡事故まで起きていて、国会でも塩素酸ソーダ散布の是非が問われてい
ます。(1962年10月30日参院決算委員会)

 北村暢(社会党)「除草剤は市販品をそのままいきなり事業化して使っている
 のですか?」

 林野庁長官・吉村清英 「そうでございます。」

 北村 「軽率ではないか?20年近く林業試験場で研究されている除草剤と市販
 の除草剤とどんな比較検討をして市販品を選択したのか?」

 林野庁長官 「いろいろな試験をして塩素酸ソーダが適当だということになっ
 た。」

 北村暢 「農薬検査所や、林業試験場に確認したところ、塩素酸ソーダを使う
 のは危険であるとの意見があった。枯れ草に付着すると引火の危険が高いとい
 う。山林除草剤に使うなら引火性のない塩素酸石灰を奨励するのが普通だ、こ
 ういう意見があることを承知しているか?」

 林野庁長官 「塩素酸石灰があることは承知しているが、その方が適当だとの
 意見までは聞いていない。」

 北村 「林業試験場の長年の研究成果がどう生かされて塩素酸ソーダを使うこ
 とになったのか?経済効果はあるのか?」

 林野庁長官 「一度の散布で比較すると除草剤使用の方が高くつくが、一度散
 布すると2年間は草がはえないという前提で考えている。効果の確認には試験
 面積を広げる必要がある。」

 北村 「植栽木には害はないのか? 実際には植栽木のまわりは鎌で草きりを
 してから散布していると聞いた。それで合理化効果はあるのか? 試験なのに
 技術的にそのやり方でいいのか? 鉄道沿線では5m離れた桑の木が散布で葉
 が落ちたということがあった。」
 
 (この件については回答なし)

 北村 「試験散布といいながら、死者が出た青森では、監督もいない、使い方
 の指示もない、ただ作業員に撒けというだけで、彼らに手で撒かせている。試
 験の体制でもない。いったいどういうことか?」

 林野庁長官 「予め十分な注意をしたと報告を受けている。事故があったので
 さらに厳重に注意をした。」

 北村 「林野庁は昭和電工の塩素酸ソーダを使っているが、青森営林局の経営
 部長の指示を書いたプリントを見ると、メーカーの昭和電工が出した宣伝ビラ
 を文書にしただけではないか? 林業試験場の結果に基づいて使用方法を決め

 その方法ならばこんな効果がでるというものがなければならないのに、市販で
 あるというだけで林野庁は使っている。使うことになったから、しゃにむに使
 うというやり方は軽率ではないか? 私には理解できない。」

ここで委員長が速記を止めさせていて その後どのようなやり取りが あったかは
わかりません。質疑もここで終わっています。営林署が都立大学K先生に「散布
薬剤は安全だとの試験結果」を要請したのはこの後まもなくのことと見られます


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