Practice Makes Progress

~ナースえいや三十にして立つ~
アメリカでCNA→ICU RN→NP

ARDSは水晶

2020-05-25 06:41:23 | 【アメリカ】RN(看護師)
長女:5歳 Pre-K4(年中組)
次女:1歳 Toddler1歳児クラス
私:30代後半 ICUナース/ナースプラクティショナー


COVID-19(新型コロナウィルス)で人工呼吸器に繋がれた元同僚のK(イニシャルは仮です)。Kはつい最近まで一緒に働いていたICUナース。もちろん、医療知識があるので自分で出来る術は全て尽くした上で、それでも呼吸困難に陥ったので古巣である我が病院のER(救命救急)へ来ました。

一緒に働いていたKは家族も同然。我が病棟でもお墨付きの優れたナース達が配属され、幸いなことに快方へ向かい、やがては抜管されて無事に自宅へ帰ることが出来ました。

大変光栄なことに、私はKを2回ほど担当させてもらいました。最初はKの入院初日。この頃はCOVID患者が増えている時期、かつ、誰も快方へ向かっていない私の中でのCOVID絶望期。(この辺とかこの辺の時期ですね)。PEEP 14、FiO2 100%という数字を前にKの命を大変心配し、その夜は全然眠れませんでした。

ICUナースでさえ生死の境を迷うウィルス。このウィルスを前に恐怖で慄いたのは言うまでもありません。Kの命を脅かすのであれば、私がこのウィルスに倒れてもおかしくはない。これは今でも思っています。とにかくKを案じた私は、勤務している日は必ずKの元へ立ち寄り、ガラスドア越しにKの回復を祈りました。私はクリスチャンでもイスラム教徒でも無く、特に宗教は信仰していないのですが、祈らずにはいられなかったのです。

Long story short...Kは回復して人工呼吸器を外れ、ICU最終日(一般病棟へ移っていた日)に再度担当させてもらいました。まだまだ回復途中で、気管挿管されたトラウマもあっただろうし、人工呼吸器に繋がれていた間に投与されていた鎮静剤の影響もあって、その日のKは虚ろ気味ではありました。それでもKが私に教えてくれたこと。





ARDSは水晶のように硬くて痛い





ARDSとはAcure Respiratory Distress Syndromeの略で、日本語では急性呼吸窮迫症候群と言います。息を1回吸ったり吐いたりする度に、カチコチになった肺が水晶になってバリバリと割れるがごとく、胸部を刺激して鋭い痛みが走るのだそう。

確かに、ARDSになる患者さんってAmbuBagで酸素を送り込もうとすると、通常よりも力を入れないと酸素が入りにくいです。固い肺というのは抵抗力が大きいので、空気も酸素も入りにくい。例えて言うならば、通常は普通の風船(空気を入れやすい)だけど、ARDSの肺はフラスコを吹いて大きくしようとしているようなもの。

 

医療者として患者さんの体験談は大変有用な情報で貴重だし、何年医療に携わっていても、日々勉強になる事があるなぁとつくづく感じます。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ちり)
2020-05-25 14:29:44
ER勤務の看護師です。

貴重なお話を共有していただいてありがとうございます。
ERで受け入れ後の患者さんとコンタクトを持つ事が基本的に無いため、とても興味深いお話でした。
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Unknown (えいや(管理人))
2020-05-28 23:14:49
ちりさん

普通の患者さんであれば痛い理由など知る由も無いのでしょうが、同僚は自分の置かれた状況をよく分かっていたので大変貴重な知識を得ました。もっと色々聞きたかったんですが、まだまだ回復途中だし、PAPRを着ているし、あまり長く病室にいるのは推奨されていないCOVID病棟だったので、それ以上は聞けませんでした。
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