漫画家を目指す人へ

漫画家を目指す人へ参考になれば。

絵を「描く」お仕事あれこれ(アニメーター)

2012-01-26 23:09:00 | ■絵に関するお仕事って

●アニメーター…アニメ制作にかかる作画を担当する人

 

さて、こちらも完全に門外漢です。

とはいえ、ちょっとネットで調べることすらせずに目指そうというチャレンジャーな人もいるので、一応少し触れようと思ったんですが、結局ネットで調べたことの丸写しになるだけなので、おとなしくリンクを張ることにしました。

本気で目指してるんだからとっくに、ネットで調べるくらいのことやってるわ、という人にはまったく役に立たない記事ですので、とばしてください。

 

ウィキペディア

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC

アニメーターになるには、そしてアニメを制作するには

http://animaman.blog.shinobi.jp/

アニメーターweb

http://www7a.biglobe.ne.jp/~animation/

 

なり方としては、とりあえず「アニメーター会社に採用される程度に絵が上手であり、採用されたらそれでいい」ということなので、学歴などはほとんど関係なく、純粋に画力勝負のようです。画力さえあれば中卒・高卒でも・・・という感じのようですね。ただ、採用条件は会社によって違うのが当然ですので、ちゃんと会社ごとに調べてください。

ある程度の画力さえあれば、専門や美大を出る必要はないようです。

 

ただ、会社によって待遇にかなり差があるようですね。

ウィキペディアにある「契約社員で歩合制、福利厚生がない」というのが本当だとすると、社員というより身分はフリーターに近いと思います。というか、固定給がなく完全歩合だとすると、とりあえず店にいれば時給がもらえるコンビニのバイトよりキツい待遇と思います。会社員であるメリットがほとんどありません。

ですので、「アニメーターなら会社員だから、自営業の仕事より安心」という考え方はやめた方がよいでしょうね。「会社員だから安心」にあたる待遇がほとんどありません。

※あとから調べたら、どうやら「会社員」ではなく漫画家などと同様「個人事業主」扱いとし、会社とは請負契約を締結しているという扱いにしている・・・・というようなこともあるようです。理由としては「会社員としての最低限の待遇を用意したら会社がつぶれる」。もしそのような扱いにしている会社があれば会社員ではありません。自営業です。

http://blog.goo.ne.jp/manga_michi/e/3d0a425704866a07e36972bed32d19da

 

私のいた大学からもアニメーターを目指す人はいましたが、有名な話では「ジブリ以外では食っていけない」ということでした。これはジブリが、アニメ会社の中ではほぼ唯一といっていい、「会社員としての待遇」がきちんとある会社だからということらしいです。(唯一と言いましたが、他にもあるかもしれません。ただ多くはないのでしょう)

 

そして、どのページを見ても、アニメーターは薄給、食べていけない、という内容が書いてあります。

アニメーターの年収については、こういうデータもあります。

http://heikinnenshu.jp/creative/anime.html

これが本当だとしたら、はっきり言いまして、ほぼ職業として成り立っていません。

http://bau-bau.at.webry.info/201209/article_7.html

 

まず、20代の年収100万というのは、ウィキペデイアなどにあるように、月に数万円というレベルです。とりあえず一人暮らしは無理です。「貧乏暮し」ってレベルじゃなくて、どう考えても生きていけない収入です。

「収入が低いのはわかっていますが、頑張ります」という人がいますが、頑張ってどうこうなる範囲をはるかに超えています。真剣にホームレスになるレベルです。

 

アニメーターならおそらく東京に会社が集中していると思われるので、東京で一人暮らしをすることになる人が多いと思うのですが、東京で一人暮らしをしようと思ったら、最低でも年収200万いると思います。

ちなみに、これは本当に「最低」です。福利厚生なければ、年金も国民年金自分で納めて、保険も自分でしょ?ってことは手取りは150万もないんじゃないでしょうか。風呂なし四畳半築30年以上のボロアパートに住んで、一か月一万円生活みたいなことをやるハメになると思います。それが「30代」の年収です。


いやいやいや・・・ないでしょ(汗)。


これが本当だとしたら、とりあえず東京に通勤できる範囲に実家があり、20代の10年間くらい実家にパラサイトし続けられる人か、実家から毎年100万、10年間仕送りしてもらわないと、まず20代は極貧生活すらできないという話になります。成人して職についてから、合計1000万親にたかるって、普通の家庭じゃ無理でしょう。

そしてその悲惨な20代をようやく乗り越えて、30代、周囲は家をたて結婚し、子供を持ち始め、人によっては親を養い始める年齢で、上記の「一か月一万円生活」です。結婚とか子供とかありえないというか、友人の結婚式や出産のお祝いすら出せないです。

ちなみに、この年収のサイトでは「全職種平均」が出てますが、これって地方全部ひっくるめて、下手すれば非正規社員まで全部入っている金額だと思います。たとえば、東京で専業主婦と子供2人を普通に育てようと思ったら、世帯年収は40代では600万代後半でないとキツいです。なので、「他の職種と比べてそんなに変らないじゃん」とは思わない方がいいですよ。

すみませんが、ドン引きしました。世の中のアニメーターさんはどうやって生きてるんですか。

 

というところで、なぜこんなにもアニメーターさんの給料が安いのかというと、「完全歩合」の会社があるからだからだと思います。

完全歩合というのは本当に描いた分しかお金をもらえないということです。

進路のところに「会社員は会社いってりゃとりあえず給料もらえる」みたいなこと書きましたが、アニメーターはそういう「固定給」がある会社が多くなく、固定給があっても少ないのでしょう。

だいたい動画で単価200円くらい(もっと安いところもあるらしいですが)らしいので、月に10万円もらおうと思ったら、500枚描かなければならない計算になります。もちろん、プロの仕事として売れるレベルの絵を。

福利厚生とかがなくて、月10万円で、そこから税金とか自分で払うんでしょ・・・?

普通の新卒社員くらいの生活をしようと思ったら、月に1000枚近く描かなければならないことになります。

一日30枚以上、休みなく、プロレベルの絵を描き続けなければならないことになります。

10時間働いても、1時間に3枚以上。1枚20分弱で描かなければならないわけです。本当に鬼のように絵がうまく早くないと無理ですね・・・。

これでは副業もできません。というか、やろうとすればできるでしょうが、副業をやればやった時間だけ、アニメーターとしての収入もヘリ、絵の鍛錬の時間も減るので、やればやるほど、アニメーターとしての成長が遅くなり、生活できない状態から抜け出せなくなるだけなので、ドツボにはまってしまいます。

 

そりゃ、大半の人は続けられないわけですね。

 

というわけで、アニメーターを目指す人は、まず、「実家から通える」こと。「実家に何年もおいてもらえる」ことが非常に重要なことだと思います。

そのうえで、なるべく待遇の高い、良いアニメ会社に所属することですね。ジブリとか京アニあたりだと、大分待遇が良いというかマシだそうです。

どうしても、実家から通えないという人は、実家から仕送りを何年もしてもらうことになると思います。実家に余裕がないと厳しいでしょう。

あと、自分でできる限りお金を貯めておくこと。ただ、一年分だけですむなら、100万貯められたらなんとかなるかもしれませんが、20代いっぱい年収100万だとすると・・・・100万じゃすまないです。数百万単位です。ちょっと無理がありますね・・・。実際にアニメーターになった方の助言によると、一年目さえ乗り切れば、あとはなんとかなりそうな書き方に見えるのですが、平均年収を見ると、とてもそうは思えない・・・。個人差も大きいのでしょうか。

そして、上記リンクにあったように、少しでも早く上手になって、原画にあがることでしょうね。

ただまあ、知人というほどでもないですが、ちょっと関わったことがある人で、30代で原画まであがったけど、原画でもどう頑張っても生活できないので、30代から結局工場派遣になったという人がいます。原画でも食べていけないんだ・・・と思いました。厳しいです、ほんと。監督になってようやく、って感じでしょうか。

 

しかし、この年収だと、そもそも、貯金がまったくできないです。貯金ができないと何が困るかって、家を買ったり車を買ったりしないにしても、絶対に困るのは老後です。福利厚生がなけりゃ、ほぼ自営業とリスクは同じです。厚生年金がなけりゃ国民年金になりますが、国民年金だけじゃとうてい老後生きていけませんし、そもそもこの収入では国民年金すら納められません。

以前、「あしたのジョー」とか有名な作品をてがけたアニメーターさんが老後ホームレスになってしまったというニュースを見ましたが、そりゃそうなりますよ・・・。

 

なんかもう、調べれば調べるほど、すさまじい業態ですが、それでもアニメが好き、アニメが作りたいの一心で、頑張り続ける人がいるから、日本のアニメはレベルが高く面白いのでしょうね・・・・。

というかクールジャパンとかいうなら、最低限アニメーターさんが生活できるくらいの待遇は必要ではないでしょうか。こんな状況では、正直、ある程度社会を知ってる大人は「好きなことなら頑張れるはずだから大丈夫!」とか子供に言えないです、すすめられないです。

 

 

あと、

こんなこと言ったらアニメーターさんには怒られると思いますが、アニメーターに「なる」だけならそれほどの画力は不要で、アニメーターの現場に出れば、すごい勢いで鍛えられるようです。

ということは。

イラストレーターや漫画家になりたい人は、アニメーターとして修業したら、短期間ですごく絵が上手になるかも・・・・。

 

なんて。

 

 

 

 

 


平面デザイナー

2012-01-25 15:48:34 | ■絵に関するお仕事って

平面デザイナー(グラフィック、WEB、エディトリアルを含む)のお話しです。

ちなみに私がやっていたのは一応肩書はグラフィックデザイナーでした。WEBやエディトリアルになるとけっこう違うとは思いますが、進路的には同じ方向に進むのもあるので、ここに入れてしまいました。おそらく業務状況や必要なことも、そう変わらないと思います。

デザイナーも、絵に関係がありそうな仕事の中では、一番現実的な仕事なので、「絵が好きだけど、漫画家とかイラストレーターとかはちょっと無理そうだから・・」という人が、目指すことが多いのではと思います。

絵に関係した?仕事の中では、唯一私が実際に就職して、それで生計をたてていた職業でもあるので、他の職業に比べれば、比較的具体的なことが書けると思います。

ただ、私もけっこうすぐやめてしまったので、たいしたことは書けないですが・・・。

 

 

 

まず、デザイナーになりたい場合の進路はわりとシンプルです。

できるだけ上位のレベルの高い美大・芸大に進み、そこでも良い成績・良い作品をつくり、早くから自分がやりたいデザインはどういった会社に勤めればできるのか調べ、そこに向けて就職活動の準備をするといいでしょう。
面白い仕事、華やかな仕事をしたければ、やっぱりそれなりの会社や事務所に入らなければならないですから、早くからちゃんと調べておきましょう
私はそのへんぼけっとしていましたねー。ムリに大企業に入らなくても、デザインの仕事ならとか甘ったれたことを考えていたのも、下記のようなことになった敗因の一つかもしれません。

なお、デザイン専門学校でも就職がないわけではないですが、厳しくはなります。
あと、大卒以上でないと応募できないという会社はやっぱりあります。(大企業に多いです)
応募できたとしても、美大・芸大出身者と競うことになるので、同レベルの作品が作れないと難しいでしょう。
学校まかせにしないことをおすすめします。
また、就職先の待遇によっては、同じ仕事をしても大卒より給料が低いということもあります。(私のいた会社はそうでした)

美術系以外の大学・専門学校からでも、実力さえあれば絶対ムリではないですが、かなり苦戦することにはなると思います。

どうしても事情があって、美術系の進路をとれなかった場合は、ダブルスクールで週末だけでもデザイン系の専門学校に通うなりして、学歴に美術系の経歴を入れた方がいいと思います。完全独学でも無理ではないですが、新卒から入るのはけっこう遠回りの道になるでしょう。

 

なお、美大や芸大、あるいはデザイン学科の専門学校を出ても、デザイン事務所や広告関係などの会社への就職はそう簡単ではありません。
倍率20~1000倍くらいの覚悟はいります。
私が入社した中小企業でも、やっぱり50倍近くはありました。
今から10年以上も前の話ですから、今もそれほどかは不明ですが、人気業界なのは間違いないと思います。

漫画家やイラストレーターとして成功するのに比べれば簡単かもしれませんが、ただ学校を卒業すればなれるという種類のものでも、やっぱりありません。

 

 

さて、このカテゴリの最初の記事に書いたように、デザイナーは絵は描きません。

デザイナーの仕事というのはざっくり言ってしまうと「情報伝達」です。
エンドユーザーに情報を、クライアントの意図に沿った形でより効果的に伝えるために、企画をたてたり、情報の整理をつけて配置したりするのが仕事です。
企画部分を担当するのはデザイナーというよりアートディレクターになりますので(小さい仕事なら末端デザイナーでも全部やっちゃったりします)、デザイナーの実際の作業としては「レイアウト」がほとんどです。

伝達のために絵が必要となることもありますが、絵を描くのは「イラストレーター」の仕事です。予算や時間の都合でイラストレーターに頼めない場合に、デザイナーが代理対応することはありますが。

 

私もぺーぺーのうちに辞めてしまったので、あまり偉そうに語れないですが、そのぺーぺー期間の感想としては、デザイナーで大切なのは、とにかくクライアントの要望を読み取るコミュニケーション能力、その要望をできるだけ効果的な形でかなえる提案力、そして対クライアントも対社内も、うまく意思を調整しながら納品期限までに仕上げる遂行能力


まあ、どんな仕事にも共通して必要な能力かもしれませんけど・・・。漫画家にもイラストレーターにも共通して必要な能力です・・・。

そして後述しますが、とにかく体力と根性・・・。


やっていて意外?と重要だったなと思う能力は「情報整理とストーリー作り」でしたね。

たとえば、クライアントの目的が「お店にきてほしい!」ということなら、誰をターゲットに、どういった切り口で、何から伝え、そこからどうお店に誘導させるのか、というストーリー構成をし、その誘導導線にしたがって、各要素を取捨選択し、配置してゆく、というような作業が必要になるわけです。

特にwebデザインの場合、ディレクションもデザイナーがやることがけっこうあるため、全体の編集能力・ストーリーと誘導の能力の比率がかなりあがると思います。

で、その作業上に、配色やレイアウト、タイポグラフィといった造形能力を載せて、デザイン物として仕上げることになります。そのへんがグラフィックデザイナーのお仕事のメインです。

 

造形能力でいえば、とにかくバランスです。上記のとおりデザイナーの作業は「レイアウト」です。
特に文字組みと色彩ですね。デザイナーの能力は文字組みを見ればだいたいわかるといいますが、そのとおりだと思います。
文字と文字のわずかなバランスを0.01mm単位で調整するような感覚が必要となります。

あと、もう一つ非常に重要な能力は「情報を正しく伝達すること」です。
デザインの目的が最初に書いたとおり「情報伝達」です。情報を間違っては何の意味もありません。

商品を売るチラシで、値段を間違って伝えていたら、あとから賠償問題にまで発展することがあります。

情報を正しく伝えられない、というのはデザイナーにとって致命的な欠点です。
絵がうまいとか、色彩センスがあるだとかより、よっぽど重要なことなのです。

 

 


ここまで読んでも「絵を描く」という仕事とは大分違うことがわかると思います。

ただ、けっこう楽しそうなお仕事だと思いませんか?
私は少なくともそう思いました。
で、実際に楽しいお仕事だとは思います。

 

・・・・拘束時間があんなに長くさえなければ・・・。

 

デザイナーの仕事というのは、会社によるとはいえ、たいていは毎晩深夜、時には徹夜という業務状況が「普通」です。

こういう仕事をやろうと思ったら、とにかく体力と、あと仕事のためにすべてを犠牲にできる精神力が必要です。
私の同僚や後輩、友人のうちかなりの人数が体、あるいは心を壊して辞めることになりました。

私の場合、途中で漫画家になりたくなったため、「仕事のためにすべてを犠牲に」できなくなってしまいました。

 

漫画家を目指すのとデザイナーの両立はさすがに限界がありましたね・・・。
深夜0~2時くらいに帰ってきて、そこから3時くらいまで漫画を描いて、朝7時半には家を出るという生活でしたので。

漫画の新人大賞の締め切り直前に、会社に泊まりになったのがこたえて、結局転職しました。
そのころには体もけっこう壊れていまして、駅で動けなくなったりして駅員さんにご迷惑をかけたりなどもあったので、漫画家を目指していなくても、少なくとも転職はしたと思います。

 

けっこう、「職業としては就職しやすいデザイナーになって、好きなイラストや漫画は趣味や副業で描けたら」と考える人はいるようですが(私もそんな感じで考えていたのですが)、なかなかそういう余裕のある就業状況のデザイナーというのはないです。
まったくないわけじゃないのですが、非常に少ないです。
運次第ということもあって、そういう会社を探して入社するのはけっこう難しいと思います。

あとお給料もたいてい安いです。これだけ残業していても残業代は出ないのが普通です。ヘタすれば生活できないレベルで安いです。私のいた会社は一応、普通の会社並みの待遇はあったので、そこは良かったです。残業代はなかったですけど…。
最近はブラック会社という言葉が流行していますが、一般的な観点からだと、デザイン関係の会社のほとんどがブラックにあたると思います。

まあそれでも、デザインという仕事自体が好きならば、もっと自分のやりたいことができそうな会社にステップアップするなり、独立を目指すなりして、デザイナーとして上を目指してゆくことができます。
私の元同僚や後輩のうち数人はそうやって今もデザイナーとして頑張っています。まあ大半はなんだかんだで辞めてしまいましたが・・・。続いているのは比較的大きい会社に就職or転職できた人だけですね。


私が途中で漫画を描きたくなったように、「他にやりたいこと」がある人は本当にキツいと思います。

家族や友人や恋人との時間を大事にしたいという人も、相手に相当の理解がないと難しいでしょうね。

女性の場合は、結婚して子供をもうけた場合に、やはり辞めざるを得ないことがとても多いですね。
結婚生活、まして育児との両立はほぼ不可能な会社がほとんどだと思います。
よほど大企業ならどうか不明ですが・・・。


とりあえず、デザイナーを目指したいという人は、他の記事にも書きましたけど、自分が好きなのが「自分の作品をつくること」なのか、「仕事としてのデザイン」なのか、よくよく考えてみるといいと思います。
前者だとしても後者だとしても、ちゃんと自覚していれば、進路にしても会社選びにしても、考えやすくなると思いますし、入社してからこんなはずじゃなかった、ということも少なくなると思います。

また、自分が仕事のために、何をどこまで犠牲にする覚悟があるのか、そのあたりもある程度考えておくといいと思います。


お金を「もらう」話か、「払う」話か

2012-01-24 19:11:34 | ■絵に関するお仕事って

絵を仕事にしていこうと思っていろいろ調べたり、いろんなサイトに登録しますとね、「あなたにお金を払います」という人より「あなたからお金をとります」という人や団体の方に、圧倒的に多く出会います。

このことについて、書いておこうと思います。

「あなたにお金を払います」はつまり「仕事の依頼」です。
「あなたからお金をとります」は有料の各種セミナーや講座、学校、展覧会等(こちらがお金を払って出展する)等の「宣伝」です。

当たり前ですが、絵で生活していこうと思ったら、「あなたにお金を払います」という人を増やさなければなりません。
そのために、必要な勉強・活動であると判断したら、お金を払ってセミナーに参加したり個展を開いたりすることも大事ですが、対費用効果…コストパフォーマンスの見極めについては慎重にしましょう。

人間は、「お金をくれる相手」にはとことん優しいです。「お客様」ですから。
甘い言葉だっていくらでも言います。だってお金をくれるんですもの。
ですから「あなたからお金をとろうとしている人」が、いくらあなたに甘い言葉を言っても、鵜呑みにしないように注意してください。
相手の目当ては、あなたの絵でも、あなたが絵で生活できるようになることでもありません。「あなたのお金」です。
あなたの絵を本気で良い、欲しいと思う人なら、あなたにお金を払うはずですから。

何か、「美味しそうな話」がきたときには、自分が「お金を払う側」なのか「もらう側」なのかをまず確認してください。
そして、「お金を払う側」になるときには、相手の美味しそうな宣伝文句や、自分への美辞麗句はいったん忘れてください。そんなものはただの勧誘文句ですから本気にしちゃダメです。
それより、本当にその話が、どこまで自分のメリットになるのか、自分でも調べ、他人にも相談して、客観的に考えてください。

中には、有料の講座やセミナーに通い、有料の展覧会に出品し、有料のイラストレーター登録サイトに登録しただけで、「絵の仕事をする人間」になった、あるいは近づいたような自己満足に陥ってしまう人もいると思いますが、冷静になってください。あなたはお金を払っているだけです。

お金をもらう人間にならなければ、「絵の仕事をする人間」にはなれません。
そういった有料の投資が、どれだけ「自分がお金をもらうこと」につながっているのか、冷静に判断して、不要なものは切っていくことも大事です。

中には詐欺まがいの話もあると思います。「うまい話にはウラがある」は、たいていそのとおりです。
慎重になりすぎて、まったく自分に投資せず、閉じこもったまま出てこないというのも問題ですが、額によっては「勉強代」ですまないですから、よく考えることをおすすめします。

個人的にその最たるものが「漫画専門学校」ですね。
詳しくは「漫画専門学校について」に書いていますが、あれはコストパフォーマンスが相当に悪いうえ、進路として選んだ場合には最終学歴をつぶしてしまうというかなりのデメリットがあります。
漫画家という職業、業界について本気でよく調べ、自分で考えて行動していれば、あんな学校に何百万のお金を払うことにはならないと思います・・・。


本気で漫画家を育てようとしているのは、なんといっても編集部です。
編集部は新人や志望者にお金を払う(賞金など)ことはあっても、お金をとることはありません。

どんな志望者でも、無料で応募(投稿)することができますし、担当がついたときも、受賞できたときも、デビューできたときも、すべて無料です。
むしろ、編集部が志望者に賞金や原稿料を払ってくれます。

編集部が志望者に求めているのは「漫画の能力」であり、「漫画家として成功すること」です。
「志望者のお金」ではありません。

そこまでして編集部が無料で漫画家を育てるのは、当然、売れっこの漫画家に育ってくれたら、雑誌が売れ、単行本が売れ、編集部にお金が入るからです。
逆にいえば、そうなってくれないとお金にならないので、それは必死で育てます。

それは「金さえもらえば、志望者なんかどうなってもいい」という学校とは大きく違います。

もちろん、無料で育てるということは、ある程度「将来的にお金になる」と見込まれた志望者しか対象にはしません。
だから投稿して受賞できる等、ある程度自力で結果を出せる人間しか相手にしないのです。

お金はとらない。むしろ資質がある者にはどんどん投資する。

これが本気で、本当のプロを育てようという現場だと思います。

だから、私は、変な学校とか通信教育などの「お金をとろうとするモノ」に頼らず、まっすぐに持ち込みすることをおすすめするのです。


画家、漫画家、イラストレーター、いずれもほとんどは個人事業主、自営業となります。
自分で調べ、学び、判断しましょう。お金は大切に。使うべきところは考えましょう。


心身の健康と周囲の人を大切に

2011-01-25 12:57:17 | ■絵に関するお仕事って

自分の記事を読み返していてちょっと思ったのですが・・・。

絵の関係の仕事というのは、ここまで書いてきたように激務が多いです。

私もこのブログに、体力と根性がある人しかできない、というようなことを書いています。

 

ただ、けっして「心身をボロクズにして、プライベートを全部犠牲にして、働き続けるのがエライ」わけではありません。

 

そこにちょっと誤解があるといけないと思いまして・・・。

 

結果的に、心身の健康やプライベートはどうしても犠牲にしなければもたないことが多い仕事なので、これらを絶対に第一優先に大事にしたい、という人は正直こういった仕事は最初からやめておいた方がいいと思います。

でないと結局、すぐにやめることになってしまいますし、やめて次の仕事に就ければいいですが、美術系の学歴や経歴しかなければ、そこから別の仕事に就くのは大変ですから、進路選びのときに、美術系以外を選ぶというのもアリだと思います。

どうしても、ある程度の無理は必要になる仕事です。

 

でも、できる限りは心身・プライベートともに大切にした方がいいに決まっています。特に心身大切にしなかったら仕事を続けることもできなくなります。

体は当然として、心の方も壊したらヤバいです。うつ病などになると完治も難しく、ヘタすれば社会復帰自体できなくなってしまいます。

なので、けっして壊しちゃいけないし、壊れないように働かないといけないのです。機械ですら休ませないと壊れます。

 

今、これを読んでる方は、「そんなの当たり前じゃん」と思うでしょう。

 

これが、こういった業界に浸かっていると、だんだんその「マトモな感覚」が鈍っていくんです。

 

私がデザイン事務所で下っぱデザイナーをやっていたとき、20代前半の若いデザイナーが過労死するという事件がありました(私の事務所じゃないですよ)

そのデザイナーの残業時間などもテレビのニュースでとりあげられたのですが、そのときのうちの事務所内の反応としては、

「残業少なっ!?」「そのくらいで死ぬか?」「そんな程度で死ぬ人間はデザイナーになるなよ」「これ、上司や会社の人も気の毒になあ。事故だろ」

という感じでした。

これは、上層部だけじゃありません。この過労死したデザイナーと同じ年くらいの、我々下っぱデザイナーの感想もこういった感じでした。

そしてそのあと、ベテランデザイナー達の「俺が若いころは月300時間残業していたもんだ」「3徹くらいは当然だったな」「家になんて月数度しか帰っていない」「それくらい仕事して、一人前になっていくもんだ」という、苦労自慢が始まり、それを新人デザイナー達は神妙に聞き、「やっぱり今程度の残業でキツいなんて言っている自分たちは甘えてるな、もっと頑張らないと!」と、自らにハッパかけて意識を新たにするわけです。

これは、10年以上昔の話ですが、今もデザイン業界に残る友人に話を聞くと、基本的に今も変わっていません。

残業は100時間単位でこなして当たり前。

残業時間や徹夜が多いほど「一生けんめい働いている」自慢になる。むしろそれを受け入れられないような人はクリエイター失格。意識なさすぎ。

過労死しても「死ぬ方が悪い。死ぬくらいならこの業界入るな」。

そういう話を、「武勇伝」「自慢」として話すような人がうじゃうじゃ今もいるわけです。

 

これだけ「ブラック会社」という言葉が浸透し、そういったことはよろしくない風潮になってきているにも関わらず、まだまだデザインなどの業界はそういう感じです。

絵の関係の仕事で、特にそういう状況になりやすいのには理由があります。

 

ほとんどの人が「その仕事を好きで、自分でその仕事を選んで入ってきているから」です。

なので、新人・若手であっても「自分の夢だから」「やりたいことだから」と言って頑張りますし、上司や先輩も「この業界に入ったからには、その覚悟あってのこと」とみなします。

「寝食犠牲にして好きな仕事に打ち込んでるクリエイターな自分カッコイイ」な人がほとんどなので、そこに疑問をもって改革しようとする人もあまりいません。「クリエイターってそういうものだ」と思ってるからです。

「好きなことをやっているんだから」の一言で、かなりのことを強いられることになりますし、「強いられる」ではなく「自ら選択してやっている」自負に支えられ、他の業界より無理をする人が多いのだと思います。

 

でも、心身壊れるときは壊れます。

 

そのとき、会社はあなたの人生を守ってくれません。

 

私の友人は、本当に24時間拘束に近い形で働かされ、ドクターストップがかかってようやく辞めましたが、お医者さん曰く「ドクターストップで本当に辞められる人は稀」だそうです。

この友人は、もう社会で働いて生きるのはきっぱり諦めて、すぐに婚活し、専業主婦になりました。20代と若い女性だったから、できた選択だったと思います。

しかし、本当に危ういところで、彼女の体はかなり壊れており、もう少しで子供が産めない体になるかもしれなかったそうです。(無事子供さんも生まれ、今は家族幸せに暮らしています)

 

漫画家の安野モヨコ先生が、「どんなにがんばって、いろいろなものを犠牲にして仕事しても、編集さんにしてみれば、自分がいなくなっても代わりを探すだけなんだ」ということに気がついてから、ちょっと仕事をセーブするようにした、とおっしゃっていましたが、本当にそのとおりです。

仕事は代わりがいるのです。社長でさえ替えがききます。代わりがきかないのは、家族や友人、恋人などのプライベートな関係だけです。

 

「長時間無理して働く人がエライ、カッコイイ」という価値観は捨ててください。

どうしても長時間働かなければならないことは、こういう仕事なら絶対にあると思います。

でも、心身壊れると思ったら、心身を優先させてください。心身壊れたら、その仕事も続けられません。

いかに効率化できるか、いかに自分を守れるか、という視点も仕事では忘れないようにしてください。

 

そして、あなたのことを、何の損得もなく、愛し心配してくれる人を大切にしてください。

家族、友人、恋人…、そういった人たちです。

 

仕事にために、犠牲にしてはいけないもののことは忘れないでください。

 

自分のブログを見ていると、やっぱり「何もかも犠牲にできる人しか無理」というようなことをあちこちに書いてはいたのですが・・・。確かにそれくらいの覚悟は必要になることは多いのですが、本当に犠牲にはしないようにしてください。