10月24日
バスが来たのはいいけれど
不安のなかで、メキシコにもパンノキがあるんだ、などと目の前の景色を見ていた。
10分位した時、バスのお姉さんが何か言っている。どうやら私たちの乗るバスが来たみたい。意外に早かった。でも何しろ地面がデコボコなので、スーツケースを持ってそう早くは動けない、と思っていたら、さっきからその辺にいたおじさんが、なんとNと私の2つのスーツケース(かなり重いよー)を持ってどんどん道路沿いに歩き出した。道路には2台くらいのバス、というより7人乗りくらいのバンが止まっていて、その内の1台の運転手が窓から首を突き出して、私たちに「ヤポーン?!」と叫んでいる。これに乗るのか、と思ったら、スーツケースのおじさんが、「ノ、ノ」と言う。もう一台のほうらしい。でもどうして日本人ってわかったんだろう?この辺では日本人すごく少ないと思うのだが。スーツケースのおじさんに、チップ2ドルあげる。すんごく助かりましたぁ!
とにかく無事、目的のサンクリストバルへ行くらしい、バスならぬバンに乗ることができた・・・のだが、これでもか、というほどのギュウギュウ詰め。一番後ろの席に押し込まれた感じで、出発。85キロもあるのに、この状態で2時間?
ここにいたってわかったのは、どうやら私たちは一番安い乗り合いバス(1等バスとかもあるのに)に乗ってしまったようだということ。でもこれもメキシコ、と思いがまん(するしかないし)。
バスはどんどん山を登って行った。耳が少し詰まったような感じ。道沿いには見たこともない美しい黄色やピンクの花々、旺盛に生い茂るツタや樹木。いいなあ。ちょっと降りてここで1時間くらい、虫探ししたいよぅ、キノコもあるかも、と外の景色を見ているとギュウ詰めの苦痛も忘れる。
次第に視界が白い霧のようなものに囲まれて、車もライトをつけている。ずいぶん高く登っているに違いない。
やっとサンクリストバルに着いたが
そして、1時間45分くらいのうちに、他の人はどんどん降りてしまって、私たちだけになった。あれ、と思っていたら、ここが終点だよー(たぶん)と運転手に言われ、降りる。
でもさ、ここって道路の真ん中よ!!!前の車道には車がビュンビュンだし、後ろはさびれて閉店した自動車屋みたいでシーンとしてるし、まわりは石ころだらけで、動きようがない・・・。目をシロクロさせている私たちをおいて、バンは走り去った。
出かける前、旅行代理店の人やメキシコに住んでいた人たちから、くれぐれも道路を渡る時には気をつけるように言われていた。メキシコの道路は歩行者を考えに入れていないので、全く減速してくれないからすごーく危ないと。それに流しのタクシーも絶対ダメ、と「地球の歩き方」にも書いてあった。
滞在予定の「ホリデーイン」まで、もう近いはずだけど、でもこの荷物もってよたよたと道路を渡るなんて、轢かれに行くようなもの。すると道路の向こうから、ぱらぱらと4人ほどの若い男子が走りよってきて、口々に「サンド?」とか言っている。ダメダメ、こういうのを相手にしてはいけない。
4人に2ドルのお礼で窮地脱出
私たちが相手にしないので、男子たちはまた道路の向こうにもどって行った。しばらく思案した結果、にっちもさっちも行かないことがわかった私たちは、さっきの男子たちに手を上げて呼び戻すことに。4人の男子は切れ目のない車の間を素早くすり抜けて戻ってきて、また口々に「サンド?サンド?」。
「タクシー、ホリデーインホテル」というと、通じたみたいで、あっと言う間に一台のタクシーを止めてくれ、運転手にホリデーインまで行くように言い、トランクにすべての荷物をさっと積み込んでくれた。お礼に2ドル上げる。キャッホー、みたいな声が聞こえた。2ドルといえば200円以下だから、この窮地を脱するのには安いけれど、ほんとは彼らはお金というより、単に困っている私たちをみて助けてくれるつもりだったのかも。こういうところの判断はすごーく難しい。
ホテルは期待どおり
すぐにホリデーインに到着。ふう。なんだかんだあったけれど、だいたい予定通りの2時半に着くことができたし、メキシコではこうやって、いろんなことが何とか進んでいくんだろうなあ、とNと話す。
ところで旅の宿泊に求めるものはひとそれぞれだと思うが、私はホテルを寝られればいい場所、とは考えていないので、ホテル選びにはかな迷う。治安の良さ、その土地ならではの美しさのある建物であること、部屋で写真を撮るとき絵になること、清潔であること、人のサービスがちゃんとしていること、などなど。
うれしいことに、サンクリストバルのホリデーインは、期待とおりのホテルだった。ここは18世紀に建てられたお屋敷を利用した植民地時代風建築。緑したたるパティオ(中庭)に茶系の建物が美しい。
かわいいメキシコタイルのベンチもある。
ここに2泊する予定。
(つづきます)