八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚 180

2022-09-18 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

デパ地下のケーキ売り場で思ったことを─────。

私は、なんとなく恥ずかしい思いをしながら話した。

いつも私のどうでもいい話なんて、追究なんてしないのに…。

どうして、今夜に限って聞いてくるかなー?

 

しかも、この話。

私たちの間に、家族が増えることだよ。

赤ちゃんが産まれることなんだよ。

その行為をこれから初めてしますって時に、こんなこと言わされるなんて…。

 

恥ずかしいっ。

『やる気満々!』とか

『誘ってる。』なんて思われてないかな?

 

やる気が無いわけでないけど…。

だからといって、誘っているわけでもない。

 

正直…。

私、耳にキュウリも、鼻にナスも無理―。

そもそも、あんな大きいのが入るわけなんて無いじゃないっ!!

絶対に、体、壊れるし裂ける。

 

それに…。

道明寺の今までの女の人と比べられたりするのも嫌だな。

あいつの歴代の女の人の中で、私が一番、胸が無いはず。

こんな小さいおっぱい見られるのヤダ…。

 

こんなことを必死になって考えている私に─────。

「俺も、同じようなこと思った。」

こう言った道明寺は、ニッて笑って話を続けた。

 

「俺、ずっとガキなんて欲しくなかった。興味も無かった。遺伝子なんて残さねーって決めてた。」

・・・・・。

道明寺って、子供欲しくない派だったんだ。

興味も無かったんだ…。

遺伝子を残さないって決めていたって…。

ズキンって胸に刺さったような痛みと同時に、凹んでしまう。

 

でも…。

今のって、道明寺は全部過去形で話していたよね。

じゃ、今は…?

 

「昨日の夜、邸で俺のガキの頃の写真をあーだこーだ言ってるお前を見て、俺によく似たガキを産んでもらいてーって思った。お前に似たガキも欲しい。」

へっ…?

ガキが欲しくなったの。

 

「ガキじゃないでしょ?赤ちゃんとか、子供って言ってよ。」

私が口を挿むと─────。

 

「あぁ。俺、つくしとの子供が欲しい。いつか、スゲーデカいクリスマスケーキ、子供たちと一緒にホールのまま食おうぜ。」

なんて笑いながら、道明寺は言ってきてくれた。

 

大きなケーキをホールのまま食べる?

なんて思ったけど…。

 

今日、私が感じたことを─────。

何年か先にも同じことを…って言ってくれる道明寺の気持ちが嬉しかった。

 

大きいケーキを食べるのは─────。

きっと、私と…。

いつか産まれてきてくれるかもしれない子供達。

そして、顔を引き攣らせながら一口だけ食べているのは道明寺。

そんな日が、いつかきっと来てくれますように。

私は心の中で、そっとサンタさんにお願いした。

 

この時─────。

道明寺が、私に差し出してきた真っ白なA4サイズの封筒。

デカデカと英徳学園大学部の印刷が入っている。

 

「見ろよ。」

封筒の中を見るように、道明寺が急かしてくる。

 

私が封筒の中から、厚い紙を取り出すと…。

そこには─────。

道明寺を、英徳大学・経営学部の客員教授に任命するってことが書かれてある。

 

道明寺が英徳の経営学の客員教授!?

「へっ!?なんでっ!?」

思わず出てしまった私の変な声。

 

そして、道明寺を見上げると─────。

「なんでって、お前の夢なんだろ?教師と結婚するっつーの。一年前のお前が言ってただろ?『理想の結婚相手は公務員。』ってな。」

なんて言い出した。

 

ビックリしすぎて頭が付いていかない。

そうだった。

確かに、私は教師と結婚するのが夢だった。

 

「私の夢だったから…?」

思わず呟いてしまった言葉。

 

その私の呟きに、道明寺は笑いながら返事をしてきた。

「あぁ。さすがに、俺には会社があって、社員もいる。だから、公務員はなれねー。わりーんだけど、客員教授で手を打ってくれ。『先生』っつーのでは一緒だろ?」

 

道明寺の言葉に、私は首をコクコクして頷いた。

教授でも客員教授でも先生は先生だ。

 

客員教授になるとしても、昨日や今日でなれない。

何か月も前から、道明寺は英徳と話し合いをしていたってことだ。

実際、道明寺は英徳とは、何か月も前から話し合いをしていたらしい。

 

この一年、ずっと一緒に暮らしたからわかる。

道明寺は、ずっと仕事を頑張っていた。

それなのに、私の夢の為に先生になろうって思ってくれたんだ…。

道明寺の気持ちが嬉しすぎて、目の奥が熱くなってくるのがわかる。

 

私が知らなかっただけで─────。

私は道明寺に…。

すごく大切に思ってもらっていたんだ。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。



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