八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚184

2022-09-26 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

やっと脱童貞っつー時に、なんで邪魔が入るんだよっ!

しかも、シンガポールに出張ってなんだよっ!!

 

「行ってくる。」。

不機嫌全開の俺の声に、つくしが顔を曇らせた。

 

つくしが悪いんじゃねー。

こんなヘビの生コロガシなんてねーだろっ!!

 

そんな態度の俺を気にしながらも、つくしは外を確認した。

西田が先に行ったことを気にしてるのか?

あいつのことなんて心配いらねー。

寒い中、いつまでも俺を待ってろっつーんだ。

 

つくしは、俺を見上げ言ってきた。

「行ってらっしゃい。気を付けてね。」

 

『あぁ。』って返事は出なかった。

俺から出た言葉は、まさかの「おわっ。」だった。

つくしが、ネクタイを思いっきり引っ張ってきたからだ。

 

思わず、前かがみになってしまう俺。

この瞬間─────。

俺の唇にやわらけーモノが触れた。

 

つくしからのキスっつーのに、気付くのが遅れた俺。

気付いた時には、つくしの唇は離れて─────。

 

顔を真っ赤にしたつくしが、

「待ってるね…。」

なんてスゲー小さな声で言ってきたんだ。

 

この時の俺の顔は、締まりのねー顔をしていたと思う。

つくしからのキスに、待ってるの言葉だぞ!

 

すぐさま、俺はつくしを力の限り抱き締めた。

これ以上力を入れると、つくしの骨が折れるかもしんねーって不安に思った瞬間─────。

 

胸に閉じ込めているつくしから、くぐもった声。

「苦しい…。」

 

力を緩めると、つくしは

「もう、バカ力…。息できないじゃない!」

なんて、ブツブツと俺を見上げながら言ってくる。

 

そんなつくしの首筋に顔をうずめた俺は、つくしの耳元で囁いた。

「絶対、28日の夕方には帰る。」

 

コクンとつくしが頷くと─────。

つくし自身の香りとサラサラの髪が、俺の顔や首をくすぐった。

 

 

邸に向かう車の中で、

「年内に間に合ってよかったです。」

なんて、クソ真面目な表情で言ってくるクソ西田。

 

殺意を抱く。

やっと、俺の脱童貞の歴史的瞬間を邪魔した罪は重いぞ!

 

ジト目で西田を睨んでみたが…。

「いやー。良かったですね。これで正真正銘のご夫婦ですね。司様も、ようやく、やっと、遅いくらいの脱童貞となり、誠におめでとうございます。」

こんなことを言い出した。

 

あ"?

こいつ、今なんつった?

おめでとうございますじゃねーっつーんだよっ!

脱童貞の邪魔をしてきたのは、お前だっ!!

 

「いやー、それにしてもめでたい。実にめでたい!これで私は、これからも牧野さんと共に、司様の異常な生態を語り合えることが出来ます!!同じ悩みを持つ、同士がいるというのは実に素晴らしく心強いですね!!」

こんなことを、西田は話している。

 

あ"??

俺の異常な生態ってなんだ?

 

「そして!司様には、一日でも早く、結婚という墓場体験をしていただきたい!これに関しては、西田も司様の味方になれます。」

西田は力説している。

 

・・・・・。

このバカ秘書はなにを言ってんだ?

結婚という墓場?

つくしと結婚して墓場になんてなるわけねーだろっ!

 

「お前、今さっきから何言ってんだ?」

「は?」

俺の質問に、マヌケな返事をしてきたクソ西田に俺は話した。

 

「いいか?西田。俺は、あいつとマダ何もシてねー。」

この俺の言葉に、西田はバカ面をしながら言ってきた。

「はっ?今…なんと仰いました?」

 

「なにもシてねーっつったんだっ!なにが、脱童貞だっ!なにが、おめでとうございますだっ!!その邪魔をしたのは、お前だっつーんだよっ!」

俺の怒鳴り声に、西田は目を見開いた。

 

そして、ニンマリ笑いながら言ってきたんだ。

「あー、マダでしたか。そうですか。それは、仕方がないですね。仕事と同じで、そっちもすることが遅かったのですね。」

 

あ"?

仕方がない?

仕事と同じで、そっちもすることが遅い!?

コイツ…。

俺の秘書の分際で言いたい放題かよ?

 

俺がジト目で睨んでいると、西田は話し出した。

「日本に帰国した、その翌朝。司様は私をペントハウスに呼びつけました。覚えていますか?」

 

そんなの一年以上も前のことだろ。

覚えてねーっつーんだよ。

 

「私が妻と─────。その当時は、付き合っていたのですが…。久しぶりに過ごす貴重な朝を、司様は一通のメールで邪魔をしてきたのです。」

明らかに恨み節の西田。

 

「あの日、私を呼び付けたというのに…。司様は、まだ寝ていらっしゃいました。」

西田は静かに話しているが…。

 

怒っているのだけは伝わってくる。

やべっ。

一年前の俺は、そんなことしていたのか?

やべぇ。

流石(ナガレイシとは言わなくなった!)の俺も、西田と嫁に悪かったっつー思いが出てくる。

 

そんな俺に、西田は─────。

「恋人たちの貴重な時間を潰した罰です。司様の脱童貞の邪魔をすることが出来て、西田としましては最高に幸せです。いやー。まさか、脱童貞は昨日に済ませているとばかり思っていたので…。今日はタイミングを見計らって、司様のイきそびれを狙ったつもりだったのですが…。まさかの脱童貞だったとは(笑)」

なんてことを、嬉しそうに言ってきたんだ。

 

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (春の嵐)
2022-09-26 17:53:38
もぅ、西田さんのい.け.ず(笑)
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Unknown (はるとも)
2022-09-27 16:11:39
復活お待ちしてました。
毎朝、楽しみにしています。
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