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俺が欲しかった以上の言葉を、恥ずかしそうにつくしは言ってきた。
これ以上の我慢なんて無理だ。
今直ぐ、つくしを寝室に連れ込むっ!
ガタン!!
俺は席を立った。
が、次の瞬間。
俺の動きは、完全に止まった。
俺の気付かねー間に(ベッドに連れ込むことばかり考えていたからか?)
何故か、つくしが隣に来ていた。
そして、満面の笑みで言ってきたんだ。
「ね、道明寺。ケーキ、食べよ。」
なんでこの流れでケーキになるんだ?
絡まり合いながらベッドに移動だとか(お互い初心者だから無理か?)
お姫様抱っこっつーのでベッドに移動するのがフツーだろ!
忌々しい気持ちで、テーブルに視線を落とすと─────。
デザートプレートには、つくしの片手くれーの小さなホールケーキと、フォークが2つ。
ナイフや、ホールケーキを分けて入れる皿がねー。
「ケーキ、切らねーの?」
「うん。切らない。」
「このまま食うのか?」
「そうだよ。このまま食べるの。はい、道明寺も早く座って。」
なんて言いながら、つくしは俺にフォークを渡してきた。
男女の関係になってなかった俺たちは─────。
食い物のシェアなんて殆どしたことなんてねー。
それなのに、急にどうしたんだ?
どっちかっつーと、つくしはそんなことを自ら進んでする女じゃねーはずだ。
「なんで切らねーんだ?」
俺の疑問に─────。
つくしの目が不自然に動いた。
そして、明らかに変なこいつからの返事。
「なんでって…。えっと、そのまま食べた方が、より一層美味しいかなーとか思ったりしたんだっけ?それより、早く食べよ。」
俺が、そんな返事で納得するわけねーだろ。
なにが『より一層美味しい』だ。
お前は、いつも、どんな食い物も『美味しい』って言いながら食ってるだろっ!
ジト目で睨んでみても─────。
そんなことでビクともしねー、こいつは、
「いただきまーす。」
なんて言いながら、ホールケーキに一口目のフォークをさした。
つくしが、美味そうにケーキを食いだした。
そして、俺に話しかけてきた。
「おいしー。道明寺が甘いの苦手なのは知ってるけどさ…。一口だけでもどう?」
目の前のつくしは、美味そうにケーキを食い続けている。
つくしが、ケーキをフォークですく─────
った、瞬間、俺はこいつの右手を固定した。
一瞬で目をデカくしたつくしが、俺を見上げてきた。
ここまでは、いつかの鍋の日と同じだ。
つくしと目線を合わせた俺は─────。
そのままつくしのフォークを、俺の口まで運んだ。
その間もつくしは、
「えっ?あー!ちょっ、自分で食べてっ!」
なんて言ってるが、無視だ。
俺の口の中に入った瞬間、ふわふわした生クリームの甘さと、フルーツの甘みと酸味が重なった。
と、同時にスポンジがなめらかに溶けていく。
この甘過ぎるケーキを食った後、つくしを見ると…。
つくしは、明らかに恥ずかしそうな顔をしている。
ここまでも、いつかの鍋の日と同じだ。
この次に─────。
あの鍋の日には言わなかったことを、俺は口にした。
「間接キス。」
たったこれだけの言葉に─────。
つくしは顔だけじゃなく、耳や首まで真っ赤にさせた。
おい…。
間接キスくれーで、なんで真っ赤になってんだよ?
今夜、俺たちはそんなモノじゃすまねーことするだぞ!!
こんなことを思いながらも、男慣れしてねーのに顔がニヤけてくる。
「間接キスの次は、口移しで食ってみるか?」
っつー俺の言葉に─────。
一瞬で半泣きになったつくしは、必死になって言ってきた。
「くっ、くくく、口移しっ!?ムリ。そんなの絶対無理っ!」
「そこまで嫌がるんじゃねー。凹むっつーんだよ。」
ジト目で言ってみれば…。
「あっ、ごめんなさい。」
なんて素直に謝ってくるつくし。
「俺とのキスが嫌なんじゃねーよな?」
確認するように聞いてみると…。
俺の顔を上目遣いで見てきたつくしは、小さく頷いた。
ホッとしながら、俺は気になることを口にした。
「なぁ。なんでホールのままだったんだ?」
「願掛けって程でもないんだけど…。なんとなく切りたくなかっただけ。私がそう思っただけで、道明寺が気にするようなことじゃない。」
つくしの言ってきたことが気になった。
願掛けで、ケーキを切りたくねー?
しかも、俺が気にするようなことじゃねーって…。
俺は、お前の旦那なんだ!
旦那に言えねーことなんて、許されるわけねーだろ!
「言えねーんなら、口移しな。」
俺の言葉に、つくしが困った顔をした。
つくしの視線を感じながら、俺はケーキを口に含んだ。
そして、つくしの両頬を固定しながら、顔を近づけていくと─────
「ちょっと、待ってよ!!言う!言うからっ!!」
焦ったつくしの声。
そして、恥ずかしそうに話し出した。
「今日、ケーキを選んでいる時に…。今は小さいけど…。いつか、家族が増えたりして…。大きなケーキを選ぶ日が来るのかなって思ったの…。だから、そう思ったケーキを切りたくなかったというか…。」
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