鬼、いや鬼畜か?
鬼畜っつーのも『鬼』があるな。
俺は西田の新しい名前を考えながら、いつの間にか車内をウロウロしていた。
妖怪だとタマとかぶる。
悪魔、怪物、悪党、性悪、曲者、へそ曲がり、根性悪…。
西田にピッタリな言葉はっつーのは、スゲーたくさんあるんじゃね?
ま、単純にクソにしておくか…。
ババアと一緒っつーのも問題か?
でも、あいつらはクソ同士だから調度いいのか?
あのクソ、ありえねーだろ!
俺と牧野の気持ちが通じたっつーのに、仕事ってなんなんだよ。
しかも!
俺は一睡もしてねーから眠いんだよ。
好きな女と─────。
ようやく気持ちが通じた牧野と、一緒のベッドに入って寝るっつーのは、スゲー幸せなことだった。
ただ、これには大問題が生じたんだ。
気持ちがいくら満たされてもだな…。
俺の体の一点が、満たされなかったんだ。
時間と共に、その一点は、絶妙な角度どころか絶好調な角度になってしまったんだ。
絶好調な角度な上に、隣には初めて好きになった女。
せめて絶妙な角度までと、俺は頭を仕事モードに切り替えた。
が、俺の一点は、仕事くれーじゃ自己主張を止めなかった。
次に親父とババア、西田、三人まとめて失脚への道のりっつーのを必死になって考えた。
が、これも無理だった。
まぁ、仕方ねーよな。
好きな女と一緒に住んでいたっつーのに、11か月も何もできなかったんだ。
俺、すげー我慢したんだな。
よく頑張った、俺!!
スゲーぞ、俺!!
その我慢も今日までだっ!
俺は、今夜、脱、童貞!
2021年前に産まれた奴のことなんて知らねーっつーんだよ。
クリスマスなんかじゃねー。
道明寺司の脱童貞記念日!
俺と牧野の初夜記念日だっ!
道明寺のお邸を出た私は、天草主任と会う為に、道明寺ホールディングスの屋上まで来た。
天草主任は、今日の午前中はデスクワークをしているらしい。
待つことも無く、天草主任は屋上へ来てくれた。
そして、私が話し出すのを待ってくれた。
「本当にすみませんっ!直ぐに返事をするべきだったのに…。私、す、好きな人がいて…。
天草主任とお付き合いすることは、出来ないんです。」
今の私が言える精一杯の言葉。
この言葉を言った後、私は天草主任に頭を下げた。
そんな私に、天草主任は思いがけない言葉を言ってきた。
「返事のことは気にするな。つくしが悪いんじゃない。つくしから断られるってのがわかっていたから、俺がつくしを避けていたんだ。つくしの好きな奴って道明寺だろ?」
えっ…。
天草主任、なんて言ったの?
思わず私は、天草主任を凝視してしまった。
「気付いていたんだ。」
天草主任の言葉に─────。
何に気付かれていたの?って、焦る。
背中にじんわり変な汗。
そんな私に、天草主任は話し出した。
「夏に道明寺の熱愛報道があっただろ?街中で、道明寺が女と一緒だった時の報道。」
あっ。
美作さんのお宅から帰る時の…。
「あの報道の時に気付いた。道明寺の好きな女が、つくしだってことに─────。
あの道明寺が締まりのねー顔しながら、女に笑っているのは衝撃的だった。道明寺は、女にあんな顔なんてしない。大河原との報道はガセだ。あの後ろ姿の女は、つくしだろ?」
天草主任が話すたびに、私の目は見開いてくる。
「道明寺の好きな女がつくしでも、つくしの好きな男は全く分からなかった。まさか、告白しようと誘ったパーティーで、つくしの好きな男が道明寺だと気付くとは思わなかった。
それでも、少しでもチャンスがあったらって思いで俺は自分の想いを伝えた。
つくしに告白したのは、後悔していない。俺が後悔していなくても、つくしには辛い思いをさせてしまって悪かったな。」
こう言った天草主任は、私に頭を下げた。
「そんなっ。主任、頭を上げてください。私の方こそ…。本当にすみませんでした。」
ごめんなさいって気持ちを込めて、私も、もう一度頭を下げた。
パーティーのパートナーなんて、軽々しく引き受けるんじゃなかった。
告白してくれた時に、その場で断るべきだった。
こんな後悔ばかり。
「つくしが謝ることじゃない。道明寺とは、上手くいったんだろ?」
天草主任の言葉に言葉が詰まる。
なんて返事をするべきなのかな?
頷いた方がいいのか?頷かない方がいいのか?
そんな私に、天草主任は話し出した。
「俺が用意したワンピース────。」
あっ…。
うっかりしてたっ。
ワンピースのお金、渡さないと。
『ワンピースのお金、おいくらですか?必ず払います。』
私がこう言い出す直前─────。
天草主任は、信じられないことを言い出したの。
「パーティーの翌朝。道明寺家の執事が、あのワンピースの代金を持ってきたんだ。一円の位まで、ピッタリの金額だったんだぜ。」
思わず私から漏れた「へっ?」って、変な声。
そんな私を、天草主任はいつもと同じように優しく笑ってくれた。
そして、私の髪をクシャってしながら、言ってきたの。
「この時に、つくしが断ってくるのはわかっていた。だから、つくしは謝らなくていい。さっきも言ったように、返事を聞きたくない俺が、つくしを避けていただけだ。」
お読みいただきありがとうございます。
長い間お休みさせていただき、本当に申し訳ございませんでした。
そして、その間も応援していただき本当にありがとうございます。
まだ最終話まで書けていませんが(書くのが遅い上に、休んでしまうと感覚が鈍ってしまって。本当にすみません。)ある程度ストックも出来ましたので再開させてもらいたいと思います。
再開させてもらうからには、更新を止めたくないと思っているため、しばらくは隔日更新とさせていただきたいなと思っております。
転校生つくしちゃんも止まっていてすみません。
これも頑張りますね。
また、本日よりよろしくお願い致します。