All my loving ♪

短歌と猫とポールマッカートニーを
こよなく愛しています

啖呵さん 10首選

2005年05月10日 17時28分58秒 | 10首選
004:淡
リスボンでファド歌う歌手年配で誰が名付けし淡谷のり子と

009:眠
四尺を隔てて眠るいとし君抱(いだ)けぬ故に余りの遠さよ

022:弓
どの国もどの民族も狩猟には弓矢使いし文明のあり

042:官僚
数年で担当変わる官僚は責任感もプロ意識なく

044:香
香りよき紅茶の味も苦きかなセイロン茶にてその名もリストラ(ristora)

047:大和
今わずかパチンコ屋にて曲残す撃沈されし戦艦大和

060:影
太陽も涙を流すこともある明治以来の金星の影

063:鬼
「フェーベ」なる土星の衛星天邪鬼他の衛星と逆回りする

076:リズム
カーニバル、リオのサンバは日本ではリズム軽やかマツケンサンバ

095: 翼
暗闇を飛び立つ灯り遠望す主翼の二つとんぼの目玉



かすいまことさん 10首選

2005年05月10日 17時14分58秒 | 10首選
010:線路
この線路伝え歩けば故郷に 帰れる思い帰れぬ思い

031:盗
丹精の花は悲しや盗人の 庭に栄えよ花を咲かせよ

046:泥
バイクにて人里離れた道を行く 泥跳ね行くもリズムのごとく

051:泣きぼくろ
本当の思いは笑顔の奥底に 知っているのはこの泣きぼくろ

061:じゃがいも
じゃがいもの 青き芽さえもいとおしき 一時帰宅の療養の身に

069:花束
退職の 花束抱いて終電の 眠る身に良き線路の響き

072:インク
まだ若き祖父が求めしインク壷 明治大正昭和と生きる

074:麻酔
言いたくも無い嘘をつき電話切る 麻酔のあとの痺れにも似て

077:櫛
櫛の歯が欠けていくよな切なさに 話す言葉も虚ろに響く

096:留守
意を決し ダイヤル回して繋がれば「ただいま留守にしております」か

やそおとめ さん 10首選

2005年05月10日 16時51分34秒 | 10首選
002:色
ちちふさのふつくら透ける色をもて雪餅草の雄花序(ゆうくわじよ)は呼ぶ

003:つぼみ
筆竜胆の花のつぼみをほぐしては空の高みをうづめゆく 濃く

011:都
鎌倉の都忘れの巴ぐさ子を尋めゆきてその骨を得ず

025:泳
泳ぎたる頭を抱き寄せてちちふさが表面積をひろげてゐたり

043:馬
半人半獣のピルエットなすサテュロスの耳は駿馬の尖りをもてり

053:髪
てんでんの蓬の髪を恥らふに起きがけの躰(たい)引き寄せられて

069:花束
水汲みのやそのをとめの垂れ髪に堅香子の花束ねありしも

077:櫛
つゆじもの昭和大正置きて去(い)なば林檎畑の花櫛も消(け)ぬ 

082:罠 
シナプスの欠落の罠ゆふすげのあの日あのときたしかに恋は

094:進
ふぢつぼを咲かせ千尋を進みゐん戦後六十年の胸に「大和」は
 

林義子さん 10首選

2005年05月10日 16時37分12秒 | 10首選
006:時
不恰好な手指は母の置き土産時のしじまにぼんやり見入る

007:発見
恐竜の卵を発見したという孫に従き行き見る飛行船

017:陸
大陸は戦場のるつぼ宇宙より地球は碧かったなんて嘘だろう

025:泳
西口のホームの端より人波をぬって君の体躯が泳ぎくるなり

040:おとうと
父亡きしのちの付きあい無くなりしおとうとの継ぎたる店もはるけし

059:十字
深闇に白き十字のどくだみが濁世(じょくせ)清めよと慈悲もちて咲く

079:ぬいぐるみ
ぬいぐるみ百個のなかに埋もれて満たさるるなき冬の心音

082:罠
笑いつつ誘導尋問かけてみる罠にあらねど心理合戦

087:計画
人生の峠すぎれば先々の計画なべて現実味おぶ

092:届
公共の施設借りるに使用届出だしその上抽選を待つ

畠山 拓郎さん 10首選

2005年05月10日 16時25分48秒 | 10首選
010:線路
ローカルな線路を歩く僕がいる気分だけでも空を飛びたい

016:陸
もはやもう手遅れかもしれないね南極大陸融けて氷河期

026:蜘蛛
捕獲する勇気もないのに蜘蛛の巣をはっている俺 無責任だぞ

056:松
例えれば複雑骨折松葉杖歩行訓練理学療法

057:制服
制服にソックス検査管理主義「自主性尊重」ぬかせ偽善者

064:科学
未来への望みを科学に託しつつ欠落するな倫理哲学

066:消
「よっこいしょ」消化試合を投げているタイトル争い残したままで

075:続
俺たちが拓いた場所に後輩が続いているよ部報が届く

089:巻
主語述語かみあわない日本語で煙に巻くぞ回答拒否だ

098:未来
未来へと希望を託す無理するな名称じゃない何を得たかだ

風花さん 10首選

2005年05月02日 20時07分26秒 | 10首選
007:発見
エウロパの氷の下の海の中発見された二人の化石

011:都
雲間より光の帯は伸びて行きアトランティスの都を照らす

022:弓
湿度濃い密林被う浮島の二人の裸身弓なりになる

023:うさぎ
たった今寂しいうさぎは死にました浜辺近くの月見が丘で

036:探偵
月面の静かの海に残された老探偵に降る流れ星

046:泥
死の海の慈愛の泥に抱かれて眠る少年テロリストA

065:城
万博の危うい城の連なりに海上(かいしょ)の森は嗚咽している

078:携帯
携帯の「TSUNAMI」の歌を遮断して携帯されぬ夜を泳ぐよ

080:書
たつぷりと墨ふくませて書く「海」の筆の勢い紙をはみ出す

097:静
静かなる死があるならば心からあの日の海の蒼になりたし

スナフキン さん 10首選

2005年05月02日 20時07分02秒 | 10首選
005:サラダ
古本のサラダ記念日 余白には 戀うる想いの鉛筆画あり

014:主義
矛盾ある主義主張を眺むれば ナチュラリストという不自然さ

031:盗
銭形も案外粋な奴だねえ 「ルパンはあなたのハートを盗んだ」

050:変
変わり行く全ての中に変わらざる 真実(まこと)の言葉 胸に刻まん

063:鬼
「どう生きる」 それ自体には善悪なし 理由が科学も鬼にするなり

068:四
大亀が小亀に変わる雪の跡 三寒四温を肌で感じる

071:次元
”異次元の強さ”といえど三次元の土俵で白星重ねる横綱

091:暖
暖色が日に日に増える風景に引かれて外に 人も虫も

095:翼
”どう生きる”の両翼あれど ”なぜ生きる”の眼を持たざれば 危うき航路

096:留守
居留守した 僕の気持ちは分かるまい 何百軒を売り歩く君

天藤結香里さん 10首選

2005年05月02日 20時06分27秒 | 10首選
001:声
深き森ゆれる幻木々の声もうひとたびの笑みを湛えて

015:友
友だちの友だちだから日暮れには行き着かぬくらいの距離がいい

028:母
母なる大地母なる言葉見すえて踏みしめて今日という日を

029:ならずもの
ままならずものの力に負けている異動の日だけ片づく書類

034:背中
いつになく背中を押してもらえそう春何番と名のつかぬ風

040:おとうと
おとうとが夢で拾った自転車を碓氷峠で乗り捨てたとか

041:迷
ひとつだけ迷路を作っておきました平らに見えるあしたのために

058:剣
伝説の剣は置いてゆきますねここから独りで歩けますから

066:消
消しゴムで消せないような青空の汚点はきっと人のいとなみ

080:書
ゆっくりと書くなら思いをこめた字でそこから空気が生まれるように


鈴木貴彰さん 10首選

2005年05月02日 20時06分01秒 | 10首選
002:色
そら色のズボンを下げる チャッくんと虹かかるまでションベンとばし

016:たそがれ
たそがれの「誰」でも「彼」でもかまわない どうせぼくらも失う輪郭

022:弓
洋弓を定めるような父の目だ ぼくのどこかに的をさがして

024:チョコレート
チョコレートを溶かした夏の陽は落ちて成型されるあらたなかたち

038:横浜
横浜と聞いた気がする 蜃気楼の海にひびいた汽笛の果ての

054:靴下
イブの夜のダンボールハウスは静まれり白旗めきて吊らるる靴下

065:城
不夜城にネオン輝くかがやけば濃くなる影の占める面積

070:曲
自動ドア開くつかのま楽曲は友を殺しし路地に溢れぬ 

078:携帯
発信をゆるさぬベルに縛られて携帯されぬアスタ・マニャーナ

099:動
山頂に動かぬ猿の影のびて岩となりゆく静かなり山

大西蒼歩さん 10首選

2005年05月02日 20時05分26秒 | 10首選
002:色
陽の色は金 葡萄食ふ一語一語先人の句は幾何の補助線

014:主義
主義主張漢字練習主義の上○○にいくつ熟語入るか

025:泳
バリの陽は鉄のトマトや平泳ぎ十掻きせぬ間一気に沈む

027:液体
飛び込みて腹を打ちけり八月にこの固きもの液体だとは

030:橋
歩道橋秋刀魚鯖雲曼珠沙華なぜ大阪はまだ熱帯夜

050:変
変に乱世界大戦人類はいま七度目の説に諾ふ

066:消
オルガンの音の響きて消えていく新樹の通り手製の表紙

087:計画
地上には明日のおかず決めるごと戦争をする計画が充つ

093:ナイフ
新聞を右から読みし昔よりバターナイフの置かれてをりぬ

096:留守
留守宅に回覧廻し振り向けばいつも決まつて春の満月