プラマイゼロ±

 某美少女戦士の内部戦士を中心に、原作、アニメ、実写、ミュージカル等問わず好き勝手にやってる創作、日記ブログです。

ストレンジピープル

2010-03-10 23:58:32 | SS




 今日は学校の後いつも通りの会合、うちの神社での集合だったので、私は鳥居の前で箒片手にぼんやりと来訪者を待っていた。気配で誰が来るかは姿を見る前に分かる、今日一番乗りは―

「こんにちはーレイちゃんっ!」
「・・・美奈」

 金髪赤リボンがトレードマークの、凡そリーダーと言う肩書きの似合わないスチャラカ少女だった。遅刻魔の彼女が一番乗りとは珍しい、と口を歪めていると、当の彼女は石段をあっという間に駆け上がり鳥居をくぐり、挨拶もそこそこに私にまくしたてた。
 恐ろしくテンションが高い。

「レイちゃんレイちゃん、あたし昨日すごい夢見ちゃった!」
「・・・美奈、いきなり何?」
「まーそういわずに聞いてよ!夢の中であたし、部活でくたくたになってへろへろで家帰ってきてね。で、ドア開けたら、何故か亜美ちゃんが出てきてね」
「ふーん」
「そんな興味なさそうに聞かないでよー。話はここからよ!でねっ、あの亜美ちゃんがよ?」

 その時点で美奈の目は血走っていた。正直怖かった。

「・・・何?」
「は、裸エプロン猫耳で『おかえりなさいにゃんにゃん』ってっ・・・!」

 私はその言葉を聞いて傍の鳥居に頭をぶつけた。言葉の方が衝撃的だったせいか痛みは感じなかった。鳥居の方はダメージを受けたらしくべっこりと私の頭をかたどるように凹んでいたけど。

 夢の中とはいえ、亜美ちゃん何やってるのよ。

 そんな、うっかり頭に浮かんだ「猫耳裸エプロンにゃんにゃんな亜美ちゃん」を消すべく私は心の中で九字を切り、ついでに校舎のそばにあるマリアさまに祈りを飛ばしながら実際に胸の前で十字を切った。鳥居の前ながら統一性がないのを気にする余裕はない。
 美奈はそんな私はどうでもいいらしく単に話したいだけらしく、更に一方的にまくし立てた。

「で、玄関先だってぇのに『可愛がってくださいお嬢さまにゃんにゃん』っあたしにじゃれついてきててぇっ・・・!」
「全力でキモいわね」
「ちょっと人の彼女キモいとか言わないで!」
「あなたがキモいのよ。亜美ちゃんじゃないから」
「ひ、ひどっ!」
「で、じゃれ付いた亜美ちゃんをどーしたわけ?」
「ふふふ聞きたい?」
「聞きたかないけど言うんでしょうから、円滑な会話のために聞いてあげるわよ」
「さっすがレイちゃん、亜美ちゃんと比べると空気読めるわね!まあ亜美ちゃんを比較対象にしてるからであって、別にレイちゃんが特別空気読めるって訳じゃないけど!」
「・・・あんたね・・・」

 私が暴言吐かれてるのか、それとも亜美ちゃんが暴言吐かれてるのかの判断に迷って反論のタイミングを逃した。しかしながらばかばかしすぎて悔しさより呆れが私を支配していた。
 いずれにせよ亜美ちゃんは何故こいつと付き合ってるんだろ。私には理解できない。

「・・・・・・・・・・・・で、どーしたの?」
「鳩尾殴ってノックダウンさせて、119番したわよ」
「・・・は?」
「だって亜美ちゃんが猫耳裸エプロンよ!?あたしにじゃれつくのよ!?いくら普段頭おかしい人とはいえ、そーゆー風になるなんて普通じゃないもの。壊れてる上にキモいじゃない!」
「さっきは私がキモいって言ったら怒ったくせに」
「亜美ちゃんをキモいと思っていいのはあたしだけよ!」
「清々しく歪んでるわよあなた!」
「何よー。でも実際亜美ちゃんが猫耳裸エプロンであたしににゃんにゃんじゃれつこうもんなら脳か精神が壊れたか洗脳されたとしか思えないもん!そんなのあたしの好きな亜美ちゃんじゃないっ」
「まぁ・・・確かに・・・」

 ぶりっ子嫌いの亜美ちゃんが「猫耳裸エプロンにゃんにゃん」(長い)状態になったら確かに私も119番するけれど。それにしても喜ぶかと思いきや意外とまともな行動。酷い夢と暴言とはいえ、こいつ案外優しいのかも?
 ドン底に等しかった美奈の評価が少しだけ私の中で上がったところで、美奈はまるで演歌歌手のサビ前の『溜め』のようなポーズをぐっと取り更に熱弁をふるった。

「亜美ちゃんはね、亜美ちゃんはね!『猫耳裸エプロンして!』って頼むあたしを、当に氷のような目線で一瞥した後、涼やかに暴行を加えるのよ!で、トドメの踵落としの際に僅かにパンチラサービスしてくれる、それが亜美ちゃんの愛の形なのよ!」
「・・・あなたそれで幸せなの?」

 前言撤回。どうしようこいつ本気でアブない。亜美ちゃん側の主張を聞いてないので真実かどうかはなんとも言えないけど、彼女たちは本当に大丈夫だろうか。
 そしてこんなのをリーダーと呼んでいる私の行く末は大丈夫だろうか。

「おーっす!」
「レイちゃん、こんにちは」

 するといつの間にかまことと亜美ちゃんがやって来ていて。この二人は同じ学校だから一緒に来たんだろう、揃って石段を駆け上ってきた。

「美奈、先に来てたのね。盛り上がってたみたいだけど何話してたの?」
「えっとねー、猫耳裸エプロンにゃんにゃんは是か非かって!」
「Σちょっとその言い方だと私が楽しんでそれに関して話してたみたいなニュアンスじゃない!」

 美奈が亜美ちゃん本人にしかもこんなに即効でこの話を持ち出すとは思っていなかったので本気で焦った。もしや美奈、今すぐ亜美ちゃんに踵落とししてほしいんじゃ・・・そう思ってはらはらしていると、意外やこの言葉に反応したのはまことの方で。

「・・・レイはあたしの猫耳裸エプロンにゃんにゃん見たいのか?」
「Σはぁ!?何言い出すの!?」

 そんな話してない!と大慌てで首を横に振ると、まことはどこか悪戯っぽい表情でスカートの裾をぴらりとつまんだ。

「見たいんならやってあげるけど?」
「ばっ・・・ばかじゃないの!?」

 微かに頬を染めるまことの言葉を即効で却下する。人前で一体何を言ってるのだ、この人は。

「あっそ。ま、見たくないんなら・・・いーけど・・・」
「何で残念そうなのよ!!?」
「だってレイが・・・」

 まことはそこでしゅん、と肩を落とす。え、何? 私が悪いこと言ったの?猫耳裸エプロン着たいの?そしてそれに私が嬉々として食いつくとでも?
 頭がごちゃごちゃして九字印も浮かばない私を尻目に、亜美ちゃんはおろおろしながらもまこちゃんに寄り添った。こういうときはむしろ彼女の方がまともなフォローを入れてくれるんじゃないだろうか、と期待に私は顔をあげた。すると亜美ちゃんはまことの手を取り、確認させるような口調で言った。しかも、やたら熱っぽい視線で。

「だっ・・・大丈夫よまこちゃん!わ、私は猫耳裸エプロンまこちゃん見たいから・・・っ」

 大丈夫って何!!?

「フォローになってないのよ亜美ちゃん!!」
「フォローじゃないわ、本音よ」
「なお悪いわよ!猫耳裸エプロン見たいなら美奈で妥協してよ!」

 妥協と言う言葉は流石に失礼とも思ったが、向こうも大概失礼だし今はそんなことに構っている場合じゃない。しかし亜美ちゃんは参考書に向かうときと同じ真面目で深刻な顔をして言った。

「美奈の猫耳裸エプロンなんか見ても面白くないんだもの」
「Σって、仮にもあなたの彼女でしょ!?面白いかどうかの問題!?」
「彼女だから猫耳裸エプロンが見たいって言うのは違うと思うわレイちゃん。あなたがそうであるように・・・わたしはまこちゃんだからっ・・・まこちゃんだから見たいの!」
「だからそれが悪いのよ!!さもいいことを言ってる風にしかも確固たる態度で言わないで!」
「ぐすっ・・・亜美ちゃんありがとう。あたしの猫耳裸エプロン、需要があって嬉しいよ」
「って、嬉しいの!?そして需要の問題なの!?」
「だってレイがあたしの見たくないって言うし!」
「そういう問題じゃないでしょう!!」

 どうしよう、全員頭おかしい・・・・・・・・何で今まで気付かなかったんだろう。誰か助けて。

「ちょっと亜美ちゃんにまこちゃんは渡さないわよっ!」

 美奈がそこに、暴走特急のような勢いで割り込んできた。変な人が更に変なこと言い出した・・・ 変なこと言うから変な人なのかもしれないけれど。
 いずれにせよ美奈の参戦発言は私にとって油断ならない事態となってしまった。

「あたしだってね、亜美ちゃんの猫耳裸エプロンにゃんにゃんは嫌だけどまこちゃんなら見たいっ!」

 美奈と亜美ちゃんの論争は続く。お互いに失礼なカップルだ。本当に付き合ってるんだろうか、この二人。いや、そんなことはどうでもいいし猫耳裸エプロンにゃんにゃんが愛の証とは思わないけど・・・

「よかった、レイは分かってくれなかったけど・・・あたしの猫耳裸エプロン・・・」
「だからなんでそんなに残念そうなのよ!!」
「だってあたしはっ・・・レイはあたしの乙女心が分からないのか!?」
「猫耳裸エプロンが乙女心って言うなら一生分かりたくないわよ!」

 水掛け論とは当にこのことだ。普段は美奈と亜美ちゃんがよくやってる。そして普段私はそれを傍観の立場を保って見ていたけれど。
 今回ばかりはこのままでいいはずはない。私はまことに背を向けると美奈と亜美ちゃんにきっぱりと向き合った。

「まこと本人が何と言おうとあなたたちの前でまことにそんな格好させない!」
「・・・レイちゃん?あなたにそんなこと言う権利あるの?」
「権利がなかろうがなんだろうが言わせて貰うわよ!まことはっ・・・」
「自分のものだから、とでも?」

 亜美ちゃんが先ほどと一転、冷ややかな口調で問う。この人に舌戦で勝てる自信はないが、それでも譲れないものがある―私は、軽く頷いた。

「・・・そうよ。誰が何と言おうと」
「ふふ、レイちゃん、正直ね」
「・・・悪い?」
「悪くはないわ。褒められたものでもないとは思うけど」

 人の猫耳裸エプロンを見たがる人に言われたくない。

「でも確かにレイちゃんが止める権利はないわよね~?まこちゃん本人は構わないって言ってんのに」
「あなたたち全員おかしいわよ」
「それはレイちゃんだけの常識でしょ?本来常識とはマジョリティに属すものよ?」
「まーでもあたしたちも鬼じゃないし、本気で嫌がってんならやめてあげるわよ」

 何故上から目線?そして私が全面的に悪いみたいなこの空気は何?
 まことはこの論争の最中何故かぼけっとして、特に誰に賛同するわけでもなくいる。それだけでも私の不機嫌さを煽り、常識が通じない恐怖が内臓をざわつかせるには充分だったが。
 そんなまことに気を取られてか、既に充分すぎる不穏さに私は気付くのが遅れた。

「じゃあ―レイちゃんが猫耳裸エプロンすればいいんじゃない?」

 普段見慣れた友人たちの残酷で無邪気な提案に、私は再び派手に鳥居で頭を打った。今度は痛みを感じる前に意識が遠のいていった。










「・・・レイ」

 まことの声に遠のいた意識が戻ってくる。ぼやけた天井の光が眩しくて二三度瞬きをすると、まことがその光を遮るように覗き込んできた。

「大丈夫?」
「・・・・・・ま、こと・・・」
「すっげーうなされてたぞ、レイ」

 思わず目を擦り彼女を改めて見つめなおす。その姿はエプロンであったが猫耳もなくエプロンの下は裸と言うハレンチな姿でもなく、いつも通りの彼女特有のセーラーだ。慌てて周囲を見直すと、いつもの自分の家ほどではないけれど見慣れた彼女の家だ。俄かに頭がぼけて混乱する私は体を起こしシーツを剥ぎ取るようにめくると、順に頭の中で何が起こったかを組み立てなおす。確か私は鳥居で頭を打って気絶して、結果としてそこから介抱されて解放されて―え?

「・・・ん、ん?」
「おーい、寝ぼけてるのか?レイ昨日からあたしの家泊まってたんだよ、覚えてる?」
「・・・えー・・・」

 彼女の声に呼応するように急速に現実が戻ってくる。確か昨日は放課後集合はかかってなくて私はまことの家に泊まって―

「・・・ゆ、め?」

 美奈が夢を見たと報告してきたことから、猫耳裸エプロンまで、全部―夢だ。頭を打っても鳥居をへこませても痛みを感じなかったのだから間違いなく夢だ。

「やっと現実戻ってきた?レイいつも早起きだから寝坊なんて珍しいなとは思ってたけど。お弁当も作ったし朝食も出来たからそろそろ起こそうと思ったらすっげーうなされてるし」
「・・・・・・そう」
「どんな夢見てたんだ?」

 まことは無邪気な表情で私を覗き込んだ―言えるわけない。夢の中さんざ友人たちを失礼で頭おかしい連中だと思ったが、実は、一番失礼で頭おかしいのは誰よりもこんな夢を見た私だったわけで。
 そんなオチいらない・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 沈黙で返す私を、まことは一瞬目を細めると頭をなでてくれた。こういう言葉のない優しさは、私は嫌いではない。しかしその優しさは私の胸の奥の友人たちに対する罪悪感を刺激した。

「待ってな。タオルと水持ってきてあげるから」

 ふわり、と薔薇の甘い香りを微かに流して、彼女は背を向ける。その佇まいはとてもきれいだけど、離れたくない、と一瞬思って思わず声をかけようとした。
 でも、それも一瞬だけ。

「それまで、これかぶってな」

 そう言ってまことが私に放り投げたのは―今しがた彼女が着ていたエプロンだった。

「・・・え?」
「隠しといてくれ。すっぽんぽんのままだと目のやり場に困るから」
「・・・え、あ!」
「昨夜さんざ見たんだから今更だけど、朝からそんな気分になったら困るだろ?」
「・・・なっ・・・」

 彼女の言葉で再び現実が戻ってくる。夢に気を取られていたが、昨夜私と彼女は―私は今更ながら慌ててそれを引き寄せ胸元を隠したけれど、それがエプロンであるという不快な偶然に眩暈がした。
 でも、そのエプロンを手放すことは出来なかった。服が無いとかそういう意味ではなく、エプロンからはいい匂いがしたから。料理の匂いと微かな薔薇の匂い、彼女の家に来るたびに感じていたけどもうすっかり慣れてしまった、その家特有の匂いとかが入り混じっていたから。夢と現実の境さえあやふやだったほどの寝起き、まだ完全に覚醒したわけではない体に、匂いがしみこんでいく。
 流石に袖を通すまではしないものの、そんな風にとろとろと匂いに酔っていると、まことは立ち去り際に顔を半分だけこちらに向けにやりと笑った。その横顔はやはりとてもとてもきれいで見とれるほどだったけれど、あからさまに何かを含む笑み。そのまま彼女はとんでもない言葉を吐いた。

「あ、猫耳もすぐ作ってやるから待ってな」
「・・・・・・・・・!」

 何で知っているのか。寝言で猫耳裸エプロンとでもわめいていてそれをまことに聞かれていたのだろうか。だったら何でもっと早く起こしてくれなかったのか。
 それとももしかしてまだ私は夢を見ているのか。衝撃やら何やらで一瞬だけ迷ったけど、私は即座にエプロンをそのふやけた顔面に投げつけた。

 自分を棚に上げて、一番失礼なのはまことなんじゃないかと、ほんの少しだけ思った。




          **********************


 まさかの夢オチ。亜美ちゃんの「まこちゃんの猫耳裸エプロン見たい!」は流石に夢だから出来たシーンですけど、どこまでやっていいのか正直悩みます・・・(なやむだけでじちょうしない)美奈の夢は書いてて自分でKIMOIと思いましたほんとごめんなさい。

 皆さんは誰の猫耳裸エプロンが見たいですか?(おい)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 浮気宣言 | トップ | 化石の花も生き返らせる »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

SS」カテゴリの最新記事