プラマイゼロ±

 某美少女戦士の内部戦士を中心に、原作、アニメ、実写、ミュージカル等問わず好き勝手にやってる創作、日記ブログです。

11月第三木曜

2016-11-24 23:59:58 | SS





 毎年11月の第三木曜日がボジョレー・ヌーボーとかいうワインの解禁日だなんてことは、レイは少しも知らなかった。外国の文化だし、そもそも未成年だからワインというものに縁がないし、なにより興味がない。仮にニュースや新聞などで流し見たとしても、自分に関わりのないことだから意識に留まらない、だからその日はレイにとっていつもと変わらない一日のはずだった。

 ただ、前も後ろも平日の木曜日なのがわかっていて、それなのに熱心にまことが泊まりに来てほしいと言っていた、それくらいで。
 
 だが、それは少し珍しいと思う、ただそれだけのこと、だった。断る理由はなく、会いたいと思ってもらえるのはうれしいし、呼んでもらえるのもうれしい。口には出さねどそうも思っていた。だからなにも考えずに放課後そのまままことの家に向かったのだ。






「・・・いいかげんにして」

 そもそもレイが11月の第三木曜日がなんの日か知ったのは、まことが出した夕飯と、そのときに聞かされたうんちくによるものだ。

 牛肉の赤ワイン煮込み。

 レシピを見てどうしてもやってみたかったというその料理は、確かにおいしかった。素材もだがおそらく調理にもいろいろ気を遣ったのだろう、舌が肥えたレイでも、お世辞でなく素直においしいと思えたのだ。肉は箸でたやすく崩れるほど柔らかく、骨からなんの抵抗もなく外れる。ともに煮込んだ野菜の滋味が口の中でほどけていく。直接飲んだわけではないにせよ、ワインというものがこういう味なのかうなずくこともできた。そして明らかに洋食なのに和食の配膳で出されたのも、まことの配慮が感じられた。

 だからって素直においしいと言ってあげるほどレイは甘くない。箸は止めないにしても無言でまことを見据えていたら、気まずさを紛らわせるためかわざとらしいくらい多弁にボジョレーのうんちくを語っていたまことは、がっくりと頭を垂れたのだ。

 未成年なのにアルコールを買ったことは、そのときのまことは素直に謝った。知り合いに見られないように買ったとも言ったし(レイとしては問題はそこではなかったりするにせよ)アルコールは料理にしか使っていないとも言った。レイに謝って済む問題でもないが、レイがいい顔をしないのをわかっていて、敢えてレイにアルコールを使った料理を振る舞うのがいじらしくもある。ほんとうに料理が好きで、それを振る舞うのに喜びを感じていて、それで呼んでくれるのが自分でうれしいと、やっぱり口には出さねどそう思っていた。アルコールのことは感心しなかったが、おいしいという一言で花開くような素直な笑顔が見られたのだから、まあそれはそれでもいいか、とレイは思っていたのだ。

 だがまことが素直でおとなしく従順だったのは食事中までの話である。

「いいかげんにして」

 ベッドの中でレイはもう一度、きっぱりと言った。だが、レイの言葉はまことに届いていない。

 アルコールは料理でしか使っていないと言っていたはずだったのに、レイの知らないところでこっそり口にしてしまったのか、それともまことが実は極端にアルコールに弱い体質で煮込んだワインでも酔っぱらってしまうのかはレイにはわからない。だがあからさまにとろとろになってしまったまことは、今ベッドで後ろからレイを抱きすくめうなじにキスを繰り返している。

 食後あたりからなんとなくまことの言動が怪しいと思っていたので、レイはさっさとまことにベッドに入るように促したが、素直に寝るかと思いきや、あろうことかレイを引き込んできた。だが、元々早寝習慣があるレイにとってそれはさほど困ったことではない。まことに着替えを促すため自分も寝巻き用の浴衣に着替えていたし、お風呂は普通に貸してもらえるとわかっていて、それでもつい家を出る前シャワーを浴びてきた乙女心が今日はこのまま眠るには役に立った。抵抗する理由は案外見当たらない。
 ただ、ベッドに入ったらまことにもとっとと眠ってもらわないと困る。未成年のくせに生意気にもワインなど買ったのだから、早く寝る良い子になることで少しはマイナスを埋めるべきだ。
 しかしそんなレイの理屈は、酔っ払いには通用しない。力では間違っても勝てないので、レイはまことに後ろから拘束されたままだ。

 抱きしめただけでは飽き足らず、もそもそと長い腕がレイの体を這い回る。おもちゃを舐める赤ん坊のような拙い舌の動きが伝わってくる。それ以上のことはしてこないにせよ、眠る気配もない。レイはいらいらしていた。

「もう寝なさい」
「・・・しよ」
「酔っ払いはお断りよ」
「やだ」

 会話自体は成立しているが、意思の疎通がお互いにできているとは言いがたい。レイが振り返ってひと睨みすると、まことはまことは赤い顔で、ふっと息を吐き出す。

「ひとりで寝るのやだ」

 まことの目はとろとろしている。だから正気で言っているのかはわからない。ひとり暮らしのくせにひとりで寝たくないという理屈もレイにはよくわからない。酔っているのでしばらく放っておいたらいつか眠ってくれそうな気もするが、酔っているからこそ放置したら危険な気もする。
 とにかくこちらにはその気はない。レイはまことの狼藉を止めるべくまことの口を手のひらで覆った。

「寝るのよ」

 有無を言わせない。そのつもりで口を覆って、至極短く告げた。まことは少しだけそのままでいて、やがてゆるりと目を細める。眠りに落ちる寸前の小さな子どものような表情にレイは安堵する。が、手のひらにぬるりとした感覚が走ってレイは震えた。
 手のひらを舐めあげられて、指に到達する。中指の先から咥えこまれて、指の股まで舌を伸ばされる。

「・・・っ」

 灯りも消していないベッドで、まことはレイに舌を見せつけるように突き出して指をしゃぶっている。やることはまるで赤ん坊なのに、レイが正面を向いた今、まことの舌は明確な意図を持っているように動く。先ほど感じた拙いキスとは違う、もっと、いやらしいもの。情欲を誘う仕草。
 指の一本一本を丁寧に舐めあげる。まるでなにかを待ちかねているような動き。本当に酔っているのか、とレイは疑った。
 しかし、そんな思考回路とは裏腹に、刺激を与えられる体はじんわりと熱を持つ。いつも上からの視線が、見上げてくるように向けられる。

 指の股の深いところをなぞられて、背骨が痺れた。まことの舌の色が、肌の色の対比もあって妙に毒々しい色付きに見えて脳髄を刺激する。レイの中に警戒の信号が灯る。これ以上好きにさせてはいけない、と思った。咄嗟に手を引いてその勢いで背を向ける。

「レイ」
「・・・寝なさい」
「レイー」
「ちゃんと隣にいるから、ひとりにしないからおとなしく寝て」

 明日は学校で、相手は通常の思考回路ではない。レイは理性を手繰り寄せ心を平静に保つ。これ以上許したらだめだ。まともに相手にしてもだめだ。自分は眠れそうにないほど心臓が昂ぶっていたが、それはまことに知られてはいけないことだった。

「ちえー」
「ちえーじゃない。寝なさい」
「レイ、起きてるじゃないか」
「・・・もう寝た」
「うそだー」
「・・・・・・・・・」
「レイー」

 不毛な会話である。だが、よく考えれば、相手にしてあげているから相手も図に乗るのだ。こっちが先に寝てしまえば、やがて飽きて眠るだろう。レイはさなぎのように体を固くしつつ、頑なにもう相手にしない姿勢を取った。背後からしばらくまことの視線を感じたが、レイは全力で無視した。
 居心地の悪い時間は数分で、やがて諦めたようにまことがそっぽを向いたのが気配でわかってようやくレイはひと息ついた。

 だが、事態はまだ終わらなかった。

「じゃあいいよ。あたし、勝手にするから」

 ざ、と毛布が擦れる音がする。収まりつつあったどきどきが一に跳ね上がり、痛みさえ伴うほどに心臓がずきりとしてレイは息を飲んだ。勝手に、と言われて、力ではどうあっても勝てない現実に咄嗟に固く目をつぶり腕で自分の体を抱いたが、いつまで経ってもまことからの接触はない。しばらく構えていたが、レイの背中越しには布の擦れる音しか聞こえない。動いている気配は感じるので、寝ているわけではないのに。そんな気がなくても聴覚に意識が向かう。

 する、というシーツを掻く音。まことが大きく動く気配がして、ベッドが軋む。ぷち、と言う音は服のボタンを外した音か。意識しないようにと思いながらも結局完全に背後の動向に意識を持って行かれたレイは、それでも自分にはいかなる接触もないことに気付いた。そして、ある可能性に思い至った。

「(・・・え、まさか、勝手にって・・・自分で)」

 もう眠れない。眠るなんて、できない。

 レイはなにもしていないのに、敢えて言うなら正しいことしかしていないのに、この場にいることになぜか罪悪感がわいてくる。盗み聞きなんて趣味の悪いことはしたくないのに、とても無視なんてできなくて背後にある熱の動向を全身が追っている。心臓がドラムのようなリズムを刻んでいた。
 ここはまことの家でまことの部屋だから、レイになにかするというのならともかく、まことが自分ひとりでなにをしようがレイに文句を言う権利などない。未成年の飲酒と違い禁止されているわけではないその行為を、レイに咎める権利もない。明確に拒否をしたのは自分の方だから。

「・・・っ、ふ」

 それなのにレイの本能は必死に音を拾おうとしていて聴覚ばかりがやたらと鋭敏になって、唐突に漏れたまことの声にもならない声に、もう隠しようもなく体が跳ねた。それでベッドを軋ませてしまって、静かな部屋には思いのほか大きな音が響いて、そのこともどうしようもなくレイを動揺させた。レイに聞かせる意図があるのかないのかは知らないが、レイが起きて聞いていることも、まことは気づいているだろうし。

 明日は学校で。相手はおそらくまともな思考回路が働いていない酔っ払いで。だから断った。次の朝正気に戻ったまことが後悔したらと思うと、自分が理性的でいなければ、と思っていた。例えレイが今どれだけ動揺し、汗を滲ませ、体を火照らせているにしたって、一度断ったことを自分から誘う勇気などなかった。服の中がじんわりと湿り気を帯びてくるのがわかって、苦しくなって胸を押さえる。なにもしていないしされてもいないのに、気持ちも頭も体も、レイの意思の支配下に置けない。

「・・・・・・あぁ」

 断ったのは間違いなく自分なのに、だからまことはそれに応じているだけなのに、こんなに近いところにいるのに置いて行かれそうになっている気さえして。

 よくわからないものにつぶされそうだった。

 レイは皮膚から血管がぶっくりと浮き上がるくらい拳を握りしめて、得体のしれない衝動に耐えた。まことも変だが、自分も変だ。アルコールのせいだと思うには、すでに理性はすり減りすぎている。もう、どうすればいいではなく、とにかく衝動と必死で戦った。なんの意地なのか、誰のための戦いなのかもわからなかった。

 終わりの見えない戦いに片足を突っ込んでいたレイを引き戻したのは、背後の熱。ずるりとシーツを引きずる音を伴って、背中にぴったりくっついてきた。

 体に長い腕を這わせて、細い指がレイの唇にたどり着く。紅を引くように動く指は卑猥で、それが描く軌跡が甘くぬるついて感じるのはレイの期待か、それとも。

「・・・・・・たべて」

 背後からの声。なにを、なんて言われなくてもわかった。思考より、返事より、舌がはみ出てまことを迎え入れていた。

 理性など、ワインでくたくたに煮込んだ肉より脆く柔い。








 浅いくちづけを繰り返す。唇そのものは離さないまま、お互いに口先にゆるく吸いつく。まことはレイの体を迎え入れるように仰向けになって、レイに覆いかぶさらせ、下からレイの髪を耳にかけレイの行動を妨げないよう、しかしもう片方の手でレイの腰を抱き込んで離れないようにしながら、レイのくちづけを受け入れる。

「・・・ん」

 知らずレイの鼻から声が漏れる。まことが下から誘うように舌を出してレイを煽る。思考を挟むまでもなくとても自然にその舌を自分の舌先に絡ませたレイを待ちかねたように、まことがレイの舌を食む。文字通り、口の中に食いつくように含み離れないように歯を立てた。

「・・・ん、ぐ」

 舌を歯で挟まれる硬質な感触に咄嗟に引いたレイの頭を、まことは逃がさないで手で押さえる。噛みちぎられるんじゃないかと本能的な恐怖に腰が引けたが、そこもまことが下からがっちり押さえたままだ。痛みこそないものの不自然な姿勢と、離れることを許さないというまことの態度が、レイの思考を日常から逸脱させていく。体勢だけで言えば自分が上にのしかかっているというのに、主導権はまことに奪われたままだ。それなのに、舌を捉えられて、固定された舌の裏をべろべろと舐められて、得体のしれない感覚に腕の力が緩くなる。口の端から唾液が不可抗力でだらだらとこぼれまことの口の周りを汚したが、それでもまことは離してくれない。

「・・・ん、む、ぐ」
「ぷは」

 解放は唐突だった。歯での拘束が無くなって、呼吸の苦しさや中途半端に曲げた肘の痛みからレイは体を跳ね起こすように上げた。だが、苦しさより痺れより、舌を引き抜いた時にずるりと粘膜同士がすれ合う感覚がなによりも鮮やかに体に残る。ぬるぬるの唇を開いたまま肘をまっすぐ伸ばした距離でレイは息をつく。見下ろしたまことの頬はワインのせいかじんわり染まっていたが、レイと違って呼吸はほとんど乱れていない。やわらかく細めた目はレイから視線を少しも反らさず、レイもまた囚われたように目を反らせない。視線で犯されているような錯覚すらする。

「・・・は、ぁ、はぁ、はぁ・・・」
「ふ、ふふ」

 まことはあふれた唾液をレイに見せつけるように指で拭い、レイの唾液で赤く濡れた自らの唇に引く。狙っているのか知らないが、わざわざ薬指でやるあたりがどうしようもなく卑猥だ。そんないやらしい仕草とこの状況に相反して、子どもが笑うようにはにかむから、レイは爆発しそうになった。

 なんとか耐えた。

「・・・な、に、笑ってるのよ」
「んー、うれしいなって、思って」

 普段はきっちり結った髪がシーツに広がっている。ふにゃふにゃでとろとろで、ワインで煮込んだような笑顔。紅を塗ったみたいに染まりやわらかくぷっくりとふくれた唇は、下腹部のさらに奥、内臓がめくれ濡れそぼる場所を連想する。自分でどこまでしたのかは不明だが既に乱れている衣服、体の下で呼吸し微かに上下する肉体。触れ合うことでさらに高くなる体温。

「・・・まこと、酔ってる?」
「レイに酔ってる」

 まことの言葉は明瞭である。冗談か本気かはわからないが、いちおう会話も成り立っている。そしてさらりと返された言葉はレイの心を掴むのに充分で、いまさらになって実は酔ってなんかいないんじゃないかという疑念も湧いてきた。
 でも、それなら、なおさら。

「・・・いいわよ、そういうの・・・」
「レイ、もっと、よって」

 よってとは、寄って、という意味か、酔って、という意味なのか。まことの言っていることにこちらが気恥ずかしさを感じ顔を背けたレイの返事を聞く前に、まことは、肘を張るレイの腰を抱き込んで簡単に距離を詰める。
 からだが触れ合う面積が多くなって、かける体重が多くなって、ベッドが軋んで、まことの力ならレイが体重をかけたところでなんてことはないのだろうけど、それはレイの心情とはまた別だったりもする。同い年とは思えないほどの身長差や、戦士として見せる力強さとは裏腹に、こうやって寝そべって触れていればとてもやわらかくてしなやかな女の子のからだ。
 体に体重をあまりかけたくないと思いながらも、あまりの心地よさにそこに沈み込みそのままでいたくなる。しかも、薄い衣服越しの体の形に意識が行ってしまえば情欲の炎が灯る。距離が近すぎて鼓動が直接まことの体に伝わりそうで、苦しい。

「レイ」

 でも、抱きしめるだけでは、足りない。レイも、そしてまことも。
 さっきより近い距離で呼ばれて、ほんの少しだけ体を離される。またくちづけをされるのかとレイは少し顔を浮かせたが、まことは顔でなく手を伸ばしてきた。体と体の隙間に挟み込むように、両手でレイの胸を覆う。
 衣服越しとはいえ、胸の肉にまことの指が食い込む。体勢的に持ち上げられるようなかたちで、やわやわと揉まれる。痛みなど感じさせない力でいたわるように触れる。意外な行動ともどかしい心地よさに身をよじったレイを、まことはやはりふにゃふにゃ笑いながら見つめた。

「ふふ、かわいい」
「・・・っ、どういう意味よ」
「そのままの意味だけどなあ」

 比べるまでもなくレイよりまことは胸が大きい。そのことを特に気に病んだことなどないが、それでも当のまことにかわいいとか言われても嫌味にしか思えない。うれしそうにしてる顔にもなんとなく腹立たしさを感じて、レイは自分の胸を触り続けるまことの両手首を掴んだ。そしてそのままベッドに貼り付けるように押し付ける。

「・・・して、ほしいんじゃなかったの」

 ぐっとそのまま手首を抑え込んで。まことの力なら、本気で不快なら簡単にはね飛ばせるはずだという打算と拒絶してほしくないという思いを込めて。そしてもし、言葉ではああ言っても、さっきからのまことの行動を鑑みて、ほんとうはまことがしたいと思っているのなら。そんな思いを込めて。レイは、まことを見つめる。
 まことはレイの行動が意外だったのか少しきょとんとした顔をしていたが、やがて合点がいったようにふっと笑顔が消えた。そして、ほんとうに難なく片手の拘束を解いた。レイの力など無意味と言わんばかりのその態度とその表情、そして腕が離れたことにレイの心が軋んだのはほんの一瞬のことで、その腕はまっすぐにレイの頬に伸びてきた。

「だから、はやく、たべて」

 そのまま、下からくちづけをされる。未だに固定されたままの側の手首をそのままに、肘の力で体を起こして一瞬だけ触れる唇のやわらかさ。ちゅ、という水音が脳内でがんがん反響した。まことの頭が再び枕に落ちる。同時にレイの理性も落ちた。

 落ちて爆発した。今度は耐えられなかった。

「・・・・・・っ」

 そのまま、まことの襟元を掴んで、前のボタンを弾かせるように強引に胸を開く。先ほど身を寄せ合ったときに気づいていたが、やはり下着はつけていない。横になったところで膨らみを失わない乳房は、生々しい質量をレイに見せつけてくる。灯りを消していない部屋で、つやつやと光を反射する肌と、赤く尖った乳首が視覚を埋めて、レイの脳髄にくまなく爆弾をばらまいた。

 そうなればもう体が先に動く。ふう、と漏らした息はすでにまことの首筋にかかるほど。ほとんどなにも考えず、誘われるように首筋から鎖骨、乳房に舌を這わせた。焦らしてゆっくりかわいがってあげるなんて考えない。自分がもうまことに触れたくてたまらないからだ。柔い皮膚に、肉に、歯を立てた。ほのかに汗が浮く肌を舐め歯触りの良さを堪能する。お行儀のよさなど忘れてしまったかのように音を立てて、欲望に突き動かされるように食む。

 もともと、舌は肥えていても食事の楽しさを知らなかったレイを変えたのはまことだ。料理を作るうれしそうな笑顔を見て、打算や惰性や金銭のためではない料理を食べる喜びを、それまでの食事で当たり前にもたらされていた味蕾への刺激を自覚し意識することを、食べるということが生きるということにつながることを覚えた。食べたものが自分を構成するのなら、それはまことによってもたらされるものでありたいと思った。そして、普段はなに食わぬ顔で隠しやり過ごている欲望は、今まことの肉体に向け隠しようもないほどの衝動となってレイを苛む。本能的な飢餓と、それを回避するために食べる、という行動が、性的な欲求から現れレイを捕食者に変える。

「・・・んっ、ぁ・・・」

 頭上でまことの声がする。言葉ではないそれは、背中で聞いていた声よりもずっと濃厚にレイの体内に熱をもたらす。
 体温を保つには食事が必要だ。とても単純だ。だからこの行為はやはり食事に似ている。先ほどまことの作ったものがレイの動力源となって、今はまことの声が、体が、反応が、レイにもっと激しい熱を与えている。ぐずぐずと爛れるような熱は体内でふくれあがってとなってさらにまことに向かう。放ちたいのか、取り入れたいのか、それすらもよくわからないままレイの舌は乳首にたどり着いた。

 むしゃぶりついて、口の中で転がす。舌で押しても歯で挟んでも形を失わないそこは、柔いのに尖って、レイの脈拍と連動し脈打っているように感じる。なにかが出るはずもないのに、レイは命をつなぐ糧のように吸いついた。

「・・・っふ、ぅ」

 じゅ、と音を立てて強く吸いつくと、鼻にかかるような声がレイの頭上で漏れて、レイの劣情を煽った。ほとんど無意識のうちに、欲張るようにもう片方を手のひらいっぱいに掴んだ。植物の根が這い伸びるように指がまことの乳房を滑る。まことが息を飲むように震えて、なだらかな腰のラインが少し反って、レイに胸をやや突き出すような形になる。手のひらをさらに滑らせれば、胸の皮膚の下の肋骨の形がふつふつと浮き上がっていて、いくら力強さを感じたところでまだ中学生の華奢な女の子だと実感する。

 もっと大事にしたい、とも思う。やさしくしたい、とも思う。それなのにあばらまわりの肉がおいしそうだなんて本当に肉食動物みたいな気持ちも湧いてくる。骨と骨の間の窪みに舌を這わせ、骨の浮いた皮膚の薄いところに歯を立てた。肉と骨の触感。檻のような肋骨の中の臓器の脈動を口の中で感じる。

 食卓でも食べたのに、今もたべてとまことは言った。自分も食卓でしたみたいに咎めるような目は、美しい作法はもうできない、必死に、だらだらとよだれをこぼしながら肉の味を確かめた。その間、手が肉のふくらみを、取られてはいけないもののように握りしめていた。

 レイが必死に舌を動かす間、まことの膝が開いていつの間にかレイの体を挟み込んでいた。苦しくはないが、腹部あたりに足の筋肉と骨の形を感じレイは包まれているような心地を感じる。動きにくくなった半面、触れる面積の増えたことに熱がさらに注がれる。もっと触れたい、もっと食べたい、正気に戻りがたい衝動がさらにレイを支配する。

 それなのに、まことはゆるやかにレイの頭を髪を梳くように撫でだした。この状況にそぐわないやさしい手つきは、レイを震わせる。

「・・・レイ」
「・・・っ、う、ぅ」
「・・・腰、ずっと動いてる」

 思わず顔を上げたレイに言い聞かせるように微笑んで。まことのその言葉に、レイは言葉でなく体で反応した。衣服の中身がひくりと跳ねて、自分が知らず知らず腰を動かしていたことを知った。日頃は寝起きでも乱れていない寝巻きはとっくにはだけ、膝も太ももも胸元もまことに見えるほど開いていた。羞恥に頬を染めるレイを、まことがぐっと引き寄せる。

「・・・キスして」

 して、というわりにまことは自分から唇を寄せてきた。自然、レイは吸い寄せられるようにそこに向かった。すでにべとべとになった唇で、粘着性の強い水音を響かせ、唇をつつきあい、舌を絡めあった。先ほど噛みつかれたときの恐怖はもうない。犬歯の先を舌先が滑ったときも、もう痛みより特別な感覚に思えて被虐的な喜びが強かった。濡れた臓腑同士が絡み合うという思考も現実も、ひどく興奮を煽るばかりで。
 そうするして間にまことは下から先ほど同様レイの胸元に手をやり、レイとは違ってやさしく器用な手つきでレイの衣服を剥がしにかかった。帯は、ワインで煮込んだ骨から簡単に外れる肉のように儚く解ける。抵抗はしなくとも積極的に脱がされることを受け入れているわけではないのに、ふしぎとレイの衣服はほどけるようにレイから離れ、ばらりとベッドの下に落ちた。

 料理上手は床上手なんて俗説をレイは知る由もなかったが、料理でもベッドの中でも器用なものだと、羞恥と熱に支配される頭の中どこか他人事のように感心する。

 もうお互い上半身は隠せていない。レイは下着だけ、まことは袖こそ通していたものの肩まで見えるほどに開いた上着と、下の寝巻きをやや乱して向き合っている。まことは肩からレイの胴体に指を滑らせ、自分は寝そべったままでレイを自分の胴に腰かけるような姿勢にさせた。

 そんな姿勢で、レイは改めてまことを見下ろす。べとべとの胸部に赤が散って、それよりももっと赤い先端が濡れて尖っていて、白い肌にレイの欲望の軌跡がしっかりと刻まれている。優越感と所有欲、そしてもっと深くからこみあげてくるものをこらえきれずレイは両手を伸ばした。柔い肉の中心の先端を、今度はきちんと形を確かめるように指先で挟み、皮膚の微かな凹凸も逃すまいとなぞる。まことはそんなレイの手首に指を添えて、ほんの少しだけ呆れるように、しかし確かにうれしそうに見上げた。

「・・・レイ、ほんとそこ好きだよねえ」
「・・・わるい?」

 レイは開き直った。いまさらやめろと言われたところで止められない。まことに刺激を与えているというより、自分の指先が性感帯になったみたいで、ふるふると揺れるその場所から離れられないのだ。

「だめじゃないけど」

 まことはレイの手首に手を添えたものの、特に止めるようなことはしない。お墨付きをもらってそのまま指先に集中するレイにまことは少しだけ困ったように身をよじり、そのままにレイの下半身に手を伸ばした。

 薄く頼りない布に包まれただけの下腹部。あまりに無防備なそこは、まことの指先が撫でただけでレイに電撃を走らせる。

「・・・っ、あ!」
「・・・レイ、濡れてる」

 衣服越しにまことの薬指が、足の間にある筋をなぞるように往復する。どうなっているかはまことに言われなくてもわかっていた。さらに、前から後ろに、後ろから前に指一本が動いているだけなのに、単純に摩擦のせいではない熱が溢れてくるのが自分でわかる。擦れる音は、決してシーツのように乾いてなどいない。

「あたしに触って、それでこんなに感じてくれてるんだ」
「・・・ば、かっ」
「うれしい・・・んだ。もっと・・・」

 まことが手を引いて、レイの愛液で濡れた指を、見せつけるように指の間で糸を引かせ、またレイのところに持って来た。始める前に誘ったみたいに、レイの唇に紅を引くみたいに。

 それが自分から分泌されたものと頭でわかっていたのに、嫌悪感を感じる間もなく本能的に受け入れていた。逃げようもなく舌に染み込むその味は妙に甘くて、苦いような酸っぱいような気もして、複雑な滋味を感じる。だが、それはまことが始めに起こしたものとは確かに違う味だと気づいて。

 それに気づいて湧きあがったのは、とてつもない欲望の塊。最初にレイを誘った起爆のあの味が。まことがもたらすものが。張りつめるような渇望に、あいまいに動いていた腰ががくりと震えた。せめて気の利いた返事でも返せたらいいのに、口を開いたらまともな言葉が出て来なさそうで、レイは顔を伏せた。
 肋骨から引き締まった体のラインをなぞり、まことの下半身の衣服を剥ぎ取りにかかる。まことがくすぐったそうに笑みをこぼしながらも腰を浮かせるのが、レイの心情としてもくすぐったい。寝巻きの下と下着をまとめて引きおろしたが、完全に取り除くのが妙にもどかしくて、おかしなところでまことの足の長さを実感する。白熱の下にさらされる腿のラインが、赤く染まる膝が、くるぶしの骨が作る影が、美しく揃った指の筋肉が、先ほどレイに絡みついていた足が素肌同士で触れ合うことで、レイにまた新たな快感をもたらす。

 まことの足がまた絡みついてくる。手だけでなく足も器用なのか、関節を駆使してまことのふくらはぎがレイの頬を撫ぜる。できなくはないのに普段考えもしないその非日常的な行為が、しなやかでふかふかですべすべのその感触が、それ自体は性的な接触ではないのに妙な背徳感となりレイを煽った。レイの髪をさらうように流れた足首はそのままレイの胸に流れ、指先で乳首を弄びながらさらに下、レイの骨盤の辺りにたどり着く。くねった親指はそのまま下着の端に引っかかった。レイがまことの意図に気づきほんの少し姿勢を前にやると、水気を含み重くなった下着は意外なほどあっけなくレイの膝辺りまで落ちた。
 もう、まことの器用さに感心する余裕もない。羞恥も半端に落ちた下着も自分を動きを拘束する邪魔ものでしかない。レイは先ほどのまことを脱がした時よりも性急に下着を足から抜くと、床に脱ぎ捨てた。そのままレイの体を愛撫するまことの足を掴むと、膝を前傾の姿勢で押し付けた。もともと体の柔らかいまことに体勢的な負担はさほど大きくないのか、大したきしみもなく、難なく股関節が開き膝が腹部につくほどに折り曲がった。

 そのままレイはまことの腹筋の筋を鼻先でなぞるように頭をスライドさせて、ゆるやかに下腹部の茂みにたどり着く。さらに膝を押し付けてしまったせいかあるいは羞恥のためか、レイの頭上でまことが息を漏らした。触れる皮膚がぴくりぴくりと動くのが、まこともレイ同様欲望を滴らせているのかと思うと、期待に崩れそうになる。気がつけば舌をはみ出させ、すん、すんと鼻を鳴らして、もうわかりきった目的地を探す。ふわふわの髪質の持ち主とは思えないちくちくした毛の流れを舌先で撫でつけ、逸る気持ちを抑えきれないままゆるやかな曲線を下り、焦がれたように窪みに舌を差し入れた。

「・・・っあっ・・・」

 これまでにないほど、まことの体が跳ねた。その勢いでレイの舌先が外れ、レイは大きく息をついて舌先に広がる味を確かめる。さまざまなものを混ぜ込んだような複雑な滋味が染みている、形容しがたいその味は、それでも確かに甘くて、まことに煽られてレイが心底から待ち焦がれたものだ。びくびくと震えているまことの体を押さえつけ、唇に触れるみたいに触れ、中をめくれ上がらせた。幾度も触れたことはあるが、これほど煌々とした光の下で見たのは初めてかもしれない。少し歪な形に赤く充血して膨れたその部分はてらてらと蜜に濡れて、先ほどたくさんくちづけを交わした唇を連想させる。
 だから、当たり前のように顔を傾けくちづけた。唇で柔い肉をめくれ上がらせ、隙間に舌を差し込んだ。粘膜がこすれる感覚は舌を絡ませたときに感じた快感に似ている。

「はっ・・・はっ・・・」
「あ、う・・・っ」

 うつぶせの体勢で必死に息をしながら、舌を限界まで伸ばして、蜜を掻き出すように啜った。まことはたべてと言って、レイは食べたくて仕方なかった。首が痛くなるほど何度も角度を変えて、その都度鼻先に当たる肉芽を構いもせず、口から自分のものかまことのものかわからない分泌物を垂れ流した。あとからあとから溢れてくるから、その都度、ぴちゃぴちゃ、ずるずると音を立てる。自分で立てている音なのにそれがひどくレイを煽って、レイの太ももにもあとからあとから伝い落ちた。

「っう、レイ、レイっ・・・」
「・・・っは・・・ふ・・・」

 自分がまことを犯していながら、必死にまことの体液を飲み下すうちに、内側からまことに犯されている感覚すら覚える。思えば料理だってそうなのだ。食べたもので自分が構成されていくのなら、まことが作ったものでそうやってゆっくりゆっくり、一生かけて全身を犯してほしい。さっきみたいに引いた指がもたらす味がいつか同じになるくらいに。それなのに今こんなに性急なのは、すぐにでもまことのすべてが欲しくてたまらないからだ。

 レイの頭の横で、白い太ももががたがたと揺れている。積極的に開きはしなくとも必死に閉じないようにしているのは、頭を挟むことでレイを痛い目に遭わせない配慮と思うと腹立たしい。犯してほしいのはレイだって同じなのに。レイは腹立たしさに、それまで掻き出すようにしていた舌の動きをやめ、力任せに唇で音を立てて吸った。

「っぁ・・・!あっ・・・ああっ・・・!」

 ぎゅ、とシーツを握りしめる乾いた音が、濡れた音ばかりのベッドの中にはっきり響く。ここでレイの肩を掴んだり手を握るという行為をしてこないまことにさらに苛立って、レイは名残惜しさを感じながらも顔を離した。少し距離を取ることで見えるその場所は先ほどよりもずっと赤く充血して、周りの肉やシーツをとろとろに汚している。ぽってりと膨れて物欲しげにひくついて、レイの舌の形に開いているように見える。

 そうやって、レイの形に収まって、完全にレイのものになればいい。そうやって、お互いに、相手のものに内側から変わっていけばいい。レイは呼吸を整えながら、まことの体を見下ろしつつ、激しい欲求の中の己の中のほの暗い願望を見つめる。だが、唐突に愛撫が止まったのに不審を抱いたのか、まことが微かに顔を上げた。もう真っ赤に染まった顔に瞳は性器のようにぐずぐずに濡れ、それはそれで、先ほどみたいに余裕をもって誘う言葉以上にレイの中をかき乱すのだ。

「っはー・・・レ、イ・・・?」

 レイはその声に呼応するよう、まことの足の間から体を滑らせるようにし、まことの手を取り形で再びまことの顔のところに顔を持ってくる。今度は互いに素肌同士、乳首同士が触れ合ってつぶし合って、息が詰まるような快楽に腰が浮く。レイはそのまままことの愛液で濡れた唇で口づけた。

「・・・んー・・・!」

 有無を言わせないような強引なキス。角度を変え漏れる呼吸音が激しくなって、まことの腹部の動きも先ほどより大きいのがわかる。男女の性器の結合のような姿勢を取りながら、レイは探るように左手でまことの右の手のひらを開かせ、自分の指と絡ませた。
 指の股と股が触れるように重ねて、ぐっとベッドに押しつける。関節を絡めて、決して外れないよう、力を込めて握りしめた。ふたりではふはふとみっともないくらいに呼吸を乱して、レイはまた右手をまことの体に這わせる。そして、先ほどたくさん舐めたその部分にたどり着いた。

 茂みを過ぎ、柔い粘膜に指先をからめると、ひどく熱っぽい。感覚を追うことを体がすでに覚え敏感になった指先は、とても性急だった。これもまことに触れることで身についた感覚だ。
 欲求でもう頭の中がぐらぐらと沸騰しそうだったレイは、それでも今夜、ようやくまことに対して自分から言葉をつむぐことにした。

「・・・まこと、ぜったい、はなさないで」

 中指を、いちばん長い指をまことの最奥まで押し込むと同時に、ぎゅ、と絡めた指を握る。
 まことは力が強いから、そんな自分が好きじゃないから、こういう風に必ずしも理性的でい続けることができない場で、こんなにがっちりとレイと接触を持ちたがらないから。へらへらと冗談とも本気とも取りがたい欲望を口にすることはあっても、そういうことは普段のレイ以上に固く口をつぐんでしまうから。
 それにずっと気づいていて、それでもこんなときにしか本音を吐露できない自分がもどかしいけど、まことに文字通り丸裸にされてプライドも引き剥がされて羞恥も捨てて、ようやく完全に剥きだしになったレイの欲望は、実は、こんなことだ。

「ああっ・・・」

 レイの体の下で、大きくまことの体が動く。レイが押さえつけ握りしめた手のひらが一度ぎゅう、とレイの神経を締めつけるように指を食いこませ、やがて力の置きどころに迷うかのようにさまよった。もう片方の手だって、いまだにベッドに沈んでいる。
 それにレイが苛立つ反面、先ほどはレイの舌の形に開いていた下の粘膜が、今はレイの指の形に開いてぬるぬると絡みついてくる。さすがのまことも、ここばっかりは頭より言葉よりずっと素直だ。
 ぐずぐずになったその場所に、さらに人差し指に薬指を立て続けに挿入する。舌でふやかしたその場所は難なくレイを受け入れる反面、内壁が収縮しレイを逃さないように食いついてくる。ぎしぎしと締めつけられる。こっちはレイの言葉通り離してくれなくて、潰れそうな感覚と囚われている実感に、食べられているのも犯されているのも自分のほうだと強く思う。
 レイは狭い中難儀して指を動かす。指の関節をつっぱらせ、掻いても掻いてもレイに合わせ包み込んでくる内臓の凹凸を、指先に神経を集中させて探る。

「あぅ、れい、れ、い・・・!」

 舌を差し入れたときみたいに、奥に、奥に。舌より繊細で強引な動きでかき回す。とぷとぷと愛液がレイの指に絡み伝う。まことの腰がひどく動いて、レイの腰も踊りだしそうに動いて、ふたりでびくびくと震えた。冬なのに肌に玉のような汗が浮いて、呼吸が白く染まる。握りしめた手をさらにきつくきつく、さらにきつく握りしめる。まことがうなじを反らせ白い喉がむき出しになって、レイはまことの絶頂が近いことを悟る。必死に膣壁をかき回しながら、体が反ることによって、また胸が突き出される形になって、そこに意識が飛んで。

「うあぁっ・・・」

 か細い声だったが、すぐ頭上だったからはっきり聞こえた。我慢が利かなくなったレイが思い切り乳首に噛み付いて、指を奥の奥まで押し付けて、まことが真っ赤になって大きく震えて、指がちぎれそうなくらい締めつけられて。膣でも、手のひらでも。
 まことが果てた。レイは痺れた。指先から神経を伝って激しい電流のような感覚が全身に弾け、鼻の奥が弾けるような感覚がして、眼前がちかちかと雷のように明滅した。

 指先でも快楽は得られる。刺激を与えられる方も、与える方も。

「あぁ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 まことの荒い息が徐々に落ち着いていく中、レイは先ほどの激情とは違う、妙にぼんやりとした感覚を味わっていた。内臓の感触の余韻に浸りながらゆっくりと指を引き抜くと、ぐしょぐしょになった指が行為の激しさを物語っていた。レイには余韻に浸るようにぼんやりとしながら指先を舐めとり、体に残る感覚に耳を澄ませていた。まことに触れてもらうことで起こる失神するような激しい絶頂感とは違う。達成感にも似た満足感と、指先や舌先から全身に甘い疼きが広がっていくのを感じていた。
 全身の力が入らなくてまことのすぐ隣に寝そべったが、既にまことは目を閉じている。もう意識もないのかもしれない。レイは重い体と重いまぶたに鞭打って、なんとか掛布団を引っ張る。もう衣服を身にまとう気にもならなくて、レイはまことに寄り添い目を閉じた。

 まことの中の熱さとは違う布団の中の温もりと微睡の中、レイはぼんやりと今夜のことを思う。まことはやっぱり酔っていた。誘うにしてもずいぶん積極的であったし、いつもよりずいぶん反応も良かったように思う。ただ、それでもレイを力いっぱい抱きしめたり、強く噛みついたりと言ったことはしてくれなかった。
 ただ、その片鱗は見られた。痛みこそないものの舌に歯を立てたり、手を少しは握り返してくれたり。

 まことに激しく性感帯を刺激されたわけでも、自分がオーガズムに達したわけでもないが、レイの満足感はそこから来ている。だが、そんなまことの態度がお酒のせいだというのなら、次を許す成人後まで、あまりにも先は長い。

 それまでに、お酒の力なんて頼らなくても、お互いがワインでくたくたに煮込んだみたいに愛し合えれば。

 そんな日がいつか。一日でも早く。でも、今日は、まことがすでに眠りについていてもほどけない、固くつないだ手があればレイはもう満足だったから。

 明日は平日で学校があるとか、体もシーツもべどべとだとか、あちこちに散らしてしまった跡だとか、そういう思考はまだ湧いてこない。それは明日の自分がやることだ。ふわふわの思考回路と安心感と満足感と、目の前のまことの寝顔。そして、つながる手。
 いまだにまこととつながることで続く甘い痺れに身を任せ、レイは自分もまことの手を握り返すとゆるやかに意識を手放した。










                   *****************************************


 一週間遅刻のワイン解禁ネタでした。
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2 コメント

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マー坊さんお久しぶりです (ragdolliris)
2017-03-10 03:56:23
ですので、子供は飲酒すべきである!(笑)
マー坊さんお久しぶりです。
今度もまこレイ養分をいただきました。
大学に入ってからさすがに色々忙しくなりました。ブログチェックも少なくなってしまったが、マー坊さんはずっと更新していますね。すごいです。
まこちゃんの誘い方、うん、やばい、うんやばいです。「レイに酔ってる」なんて、ドキドキしちゃうわ...まこちゃんの素直なところは、どんな場合でもかわいいなと思いますね。
で、レイちゃんは本当に最初セーラームーンを見る時一番好きなキャラです。彼女なら誰とカップルにしても全然平気ですが、マー坊さんが書いていたレイは大人のところ、乙女の一面、ねじけているところ、不器用とか、素直になれない部分など、色んな姿が見えてくる。そして、まあ、まこちゃんならレイのどんな姿も受け入れること(身体上も)は愛が感じられます(笑)
日本語は下手すぎで、今日はここまでです。
まこレイ万歳、いつもありがとうございます。

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ありがとうございます! (マー坊)
2017-03-13 01:52:06
 おひさしぶりです!

 妄想が止まらないのでちょっとずつですが更新させてもらってます。お勉強でお忙しい中、目を通していただけてうれしいです^^

 まこちゃんの誘い受け!と思って書いた作品です。まこちゃんはかっこいいところもありますが根が乙女なので、誘うときの素直なセリフはお酒の力を借りました。そんなまこちゃんにドキドキしたり戸惑ったり結局欲望に負けたり(笑)するレイちゃんの、好きだから悩んだり迷ったりやっぱり欲望に負けたり(笑)そんなめんどくさいレイちゃんを心身ともに受け入れるまこちゃんの関係が好きなのです。レイちゃん好きな方に受け入れていただいて、とてもうれしいです。

 まこレイお好きな方に声をかけていただいて、ほんとうにパワーをもらっています。ありがとうございます!

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