やや矢野屋の棚上げ棚卸し

アニメの感想と二次創作小説・イラスト掲載のブログ
「宇宙戦艦ヤマト」がメイン 他に「マイマイ新子と千年の魔法」など

パロディマンガと「セロ弾きのゴーシュ」レビュー

2009年10月31日 07時50分00秒 | 宇宙戦艦ヤマト



カタい話ばかりでも何なので、ちょっと毛色を変えて。
タイトルはpixivにアップしているマンガです。

<iframe style="background:transparent;" width="380" height="168" frameborder="0" marginheight="0" marginwidth="0" scrolling="no" src="http://embed.pixiv.net/code.php?id=6846257_e7b6fb6d2e3b4e81f561eae1a6eec351"></iframe>

タイトルでおわかりだとは思いますが、宮澤賢治の「セロ弾きのゴーシュ」のパロディです。
というより、「高畑勲監督の同名アニメ映画が元ネタ」と言った方がいいかもしれません。
こちらをご覧になった方が、話の内容もわかりやすいかと。


セロ弾きのゴーシュ [DVD]セロ弾きのゴーシュ [DVD]
出演:佐々木秀樹
販売元:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
発売日:2006-07-07
おすすめ度:5.0
クチコミを見る



この作品は「OH!プロダクション」というアニメの下請けプロのスタッフが、テレビや映画の作画を務めるかたわら、自主制作作品として7年の歳月をかけて作り上げた映画です。
「アルプスの少女ハイジ」や「母をたずねて三千里」で知られた高畑勲さんを監督に迎え、「自分たちが本当に作りたいアニメ映画を作ろう」「アニメーターとしての技量を最大限に生かして作品作りをしよう」という気持ちで作られたものだとか。
劇場公開の目処が立たないまま制作されたようですが、折からのアニメブームの中で高畑監督らの名前が一般のアニメファンにも浸透してきており、また映画自体の質の高さもあって、自治体等が主催する上映会でよく取り上げられていました。
「ルパン三世・カリオストロの城」もそうでしたが、ビデオの普及していない当時は、こうした自治体主催の上映会が名作アニメに触れる貴重な機会でありました。
タウン誌やアニメ雑誌をチェックしては、電車を乗り継いで知らない町のホールや公民館に足を運んだものです。

さて、この作品の凄さは「宮澤賢治の原作にある台詞や動作を忠実に生かしながら、原作以上の説得力と臨場感を表現している」ところです。
読んだことのある人ならおわかりでしょうが、賢治の文章には言い回しや過剰な感情表現に独特のクセがあって、少し一人合点に走っている印象を受けるときがあります。
それが映像に移し替えられた時に、観客の目から浮いてしまうところがあるのではないかと思ったのですが、高畑監督の透徹したリアリズムはそれをけどらせません。
「ゴーシュ」という外国風の名前から想像されるように、話の舞台は賢治が岩手県に重ねて夢想した「イーハトーブ」という幻想世界ですが、高畑氏はそれを徹底して大正~昭和初期の東北の一地方都市として描きました。
冒頭の夕立で雨を避ける人々の描写、登場人物の服装やゴーシュの暮らしぶり、どれも地に足のついたものです。
また、夜な夜なゴーシュのもとを訪れる猫やかっこうなどの動物達の仕草も、各々の「らしさ」と擬人表現の絶妙なブレンドが施されており、物語の中での「リアリティ」が見事に構築されています。

物語の中での「リアリティ」といえば、声優さん達の演技に負うところも大きいですね。
賢治独特の「気負い」が感じられるあのセリフが、原文とまるで同じだというのに、あれだけ自然に聞こえるというのは驚きです。
特に楽長の雨森雅司さん、猫の白石冬美さん、かっこうの肝付兼太さん……
アニメの絵と動きに見あったテンションを保ちながら、その中に「キャラクターの心からの感情」を滲ませる巧みな声調は、さすがとしか言い様がありません。
佐々木秀樹さんのゴーシュも、ちょっと硬い声質が意固地な性格によく合っていました。

私見ですが、この映画最大のキモは「音楽に関する演出」ではないかと思います。
ゴーシュが作中で演奏する二つのオリジナル曲以外は、すべてベートーベンの第六交響曲「田園」が使われています。
この曲の各楽章が、オーケストラの練習場面だけでなくゴーシュの生活描写のBGMとしても流れているのですが、それがもう何と申しますか、「この場面にはこのフレーズしかない!」という圧倒的な説得力。
あたかも、ゴーシュとベートーベンの孤独な魂が作品の中で音楽を通じて交錯するような、そんな感興を呼び起こしてくれます。
特に、導入部とラストシーンの選曲には、よく知っているはずの「田園」交響曲をまったく新しい視点から示されたような衝撃を受けました。
実際、この映画を観たあとで何度となく「田園」を聴き直すことになるのですが……
高畑監督の構成力の凄さを思い知らされました。

そんなわけで、個人的にはこの映画、「劇場用アニメ映画のオールタイムベスト1」だと思っています。
「イデオン発動編」や「さらば宇宙戦艦ヤマト」も大好きなんですが、これらは前作やテレビシリーズという前提があっての作品ですから。
一作品としての完成度を考えると、「セロ弾きのゴーシュ」を超えるアニメ映画はそうそう無いのではないかと思います。
敢えて挙げるなら原恵一監督の「クレヨンしんちゃん」劇場版作品くらいかな?
いずれにしても、「私が観たことのある映画」という限定条件は入ってしまうんですけど。

……て、長くなってしまった(汗)
オマケに「結局カタい話に終始してしまった」ような(大汗)
いやまあとにかく、「セロ弾きのゴーシュ」、お勧めです。


慌てず急いで正確にな!

2009年10月28日 22時48分00秒 | 宇宙戦艦ヤマト


タイトルは、たぶん一番知られている斉藤始の台詞。
「さらば宇宙戦艦ヤマト」、都市帝国動力室入り口に仁王立ちで銃を構え、内部で爆発物を設置する真田技師長に掛けた言葉。

この時、すでに斉藤はその身に何発も敵弾を浴びている。
この描写がとにかく秀逸。
飛び散る血飛沫、激痛に歪む顔。
衝撃でバランスを崩しそうになるところを必死の思いで立て直し、脂汗を滲ませながら応戦している。
イラストにあげたカットの直前の表情も素晴らしい。
目に宿る光だけで、彼が受けたのが致命傷であることを観客に悟らせる横顔となっている。
DVDやビデオをお持ちだったら、ぜひコマ送り再生で見てほしい。
一枚たりとも力を抜いたコマのない、まさに入魂のシーンだということがおわかりいただけると思う。

WEBアニメスタイル掲載のインタビューによれば、斉藤の死ぬ場面は湖川さんが原画も描かれたとか。
http://www.style.fm/as/01_talk/kogawa03.shtml
たしかに、このシーンは湖川さんにしか描けない絵だと思う。


ヤマトの劇場版DVDは高額商品だったので、なかなか人に勧めづらかったのだが、来月は2000円を切るスペシャルプライス版が発売される。
もっと早く出してくれれば……とは思うが、この値段ならば「せっかくだからもう一枚買っておこうかな」という気にもなってくる。
ジャケットを公開当時のポスターに戻してくれればもっと良かったのだけど。
そちらはBlu-ray版発売まで待たなければならないのかな。


pixiv始めました

2009年10月28日 21時22分00秒 | 雑記・雑感
アカウントを取ったままずっと放置していたpixivに、昨日からイラストをアップし始めた。
きっかけはヤマト。
復活篇の予告編を観て、滾ってきた気持ちを何かにぶつけたくなったんだと思う。

ヤマト復活篇。
正直、「今更ファンの気持ちに波を立てるようなことはしてほしくない」と思っていた。
近年の商品展開にあまりいい印象を持っていなかったこともあり、期待よりは不安の方が大きかった。
だが、去年の制作発表で「作画監督は湖川友謙さん」と知って、不安から期待へと気持ちが一気に動いた。
湖川さんのキャラクターで「ヤマト」を観る。
それは私がずっと望んでいたことだ。

PV段階ではあちこちで酷評されていた。
今でも「受け入れがたい」という声は多い。
だが、私は「ヤマトを現代に蘇らすのは湖川さんをおいて他にない」と思う。
ヤマトが誕生してから、35年。
その間に、日本という国も私自身も、様々な曲折を経ながら屈託を抱えてきた。
それでもなお前を向こうとする人間を表現するのなら、記号的な表情に妥協せずキャラクターを動かせる人に絵を描いてほしい。
湖川さんには、キャラクターに血肉を与え、奥深い感情を面に表すことの出来る力がある。
私が「さらば宇宙戦艦ヤマト」という作品に衝撃を受け、斉藤始というキャラクターを好きになったのは、湖川さんのその力に因るものだと思う。

湖川さんだって万能じゃない、それはその通りだろう。
松本キャラの約束事(顔からはみ出し前髪を突き抜ける女性キャラの睫毛とか)から外れた絵柄に、「あれはヤマトキャラじゃない」という意見を持つ人がいるのも宜なるかな、とは思う。
だが、それでもやはり、湖川キャラを通じて紡がれる「ヤマトの物語」へ、私の期待は日々高まっている。

試写会まであと一ヶ月、それから公開まで二週間。
いよいよ、ヤマトが発進する。