村内まごころ商法 & 剛毅の経営

昭和53年に出版された本と、ホームリビングに掲載された記事でたどる、村内道昌一代記

接客教育、ウソをつくな

2007年04月26日 | Weblog
2.プロ社員の養成

▽(前略)従業員教育も綿密に行なわれ、今年度の新入社員には、最初、短期間に最低限の必要事項が教育され、その一ヶ月後には、接客、商品知識などの専門分野について教育システムが組まれている。また従来からの一般社員については、山中湖畔にある寮での泊り込みで実施される専門教育など、充実した取り組みがなされている。(後略)

専門誌「家具マンスリー」昭和四十九年五月号の村内ホームセンターに関する記事の上部分である。社員教育の部分だけ抜き出したものだが、大要はおわかりになったと思う。柱は接客技術と商品知識の二つである。

まず接客だが、出発点は商人とは何かという基本論から入り、しだいに細分化し、こういうケースはこうすべきだという方法論を詰めていく。基本論、方法論については、これまでも各章でふれてきた。読者の方々はすでによく理解されていると思うが、整理のためにもう一度、筋道を追って確認してみよう。

 1 村内ホームセンターは田舎の家具店から出発した。そのため、根本思想は百姓商法である。
 2 百姓商法とは地元と共存共栄の商法であり、地元と利害の対立する商法ではない。
 3 共存共栄の商法とは消費者の利益を第一と考え、消費者の利益をはかる商行為によって村内も生かしてもらうということである。
 4 消費者の利益をはかる商行為とは、良品廉価、つまり良い商品をどの店よりも安く売ることである。
 5 安く売るからといって、商人の立場を見失ってはならない。商人にとって、お客様は常に神様であり王様である。

以上が基本論である。次に各論すなわち方法論に入ろう。

 1 店の内外、駈車場の隅々にいたるまで徹底的な清掃を常に行なう。明るくさわやかな店づくり。
 2 笑顔で元気よく挨拶し、お客様と商人というはっきりした関係を最初に確立する。
 3 買う人の都合を第一に考え、できる限りよい助言者になろうと努力する。そのためには勉強を忘れてはならない。
 4 商談、伝票の作成等のビジネス上の作業は的確に、手早く行なう。
 5 商談が終わったら、お茶を差上げ、「お疲れさまでした」と必ずいう。
 6 送迎の手配を確実に行ない、車まで手荷物を持つ。お客様に荷物を持たせてはいけない。
 7最後に心をこめて挨拶し、車が見えなくなるまで頭を下げて見送る。

これだけ完全にできればすでに接客面では一人前である。あとはケースバイケースで対応のしかたを考えていくわけで、そのカリキュラムを説明しだすときりがないからここでは省略させてもらう。接客に関する本格的な専門書でも読んでいただければ、そこに出ていることとあまり差はないはずである。

ただし、村内は当初からウソをつかないという基本理念でやってきた。したがって専門書に出ているような接客法でも、消費者の心理的な盲点を狙ったようなトリック話法や、そんな性格の強いセールス方法は社員に教えない。お客様のうちの五人に一人でも、あとで「アッ」と気付いてくやしい思いをするような小ざかしい商法は結局は有害だからである。

さて、第二の社員教育の柱である商品知識だが、これは地味に時間をかけて行なわなければならない。簡単に並べると、項目は次の通りである。

 1 家具及び関連商品の種類を細かく分類して覚える。
 2 家具及び住まいの商品全体にわたって、メーカー産地を知る。できれば直接出かけていって視察する。
 3 商品の材質、工程を知る。
 4 商品の流通経路を知る。この場合、村内の場合だけでなく業界全体の流れをつかんでおく。
 5 できるだけ安く消費者に提供するという目的のために、コストダウンの余地はないかどうか常に考える。
 6 新しい商品、消費者に喜ばれる商品の開発も考える。

ここまですべてマスターすればもう一流であろう。どこの会社へ行っても、同じ業界ならすぐ管理職である。商品知識のより深い部分は自発的に勉強してもらわなければならない。

できるだけ質のよい戦力を養成するためには、このように高度な社員教育を継続的に行なっていかなければならないのだ。 次へ