徒然映画日記。

食わず嫌いは卒業し何でも観よう。思い切りネタバレありの「観た帳」です。

赤線地帯

2008年07月09日 | ★★★★



赤線地帯
おすすめ度
製作:1956年 日本
製作:永田雅一
監督:溝口健二
脚本:成澤昌茂
出演:若尾文子 三益愛子 町田博子 京マチ子 木暮実千代 川上康子 進藤英太郎 沢村貞子 浦辺粂子 十朱久雄 加東大介 多々良純 田中春男

売春防止法制定前後の社会情勢を描いた溝口健二の「赤線地帯」です。この作品は彼の遺作でもあります。若尾文子、三益愛子、町田博子、京マチ子など豪華な女優たちの競演は華やかでとっても生々しい!少女の悲しい行く末を暗示するラストシーンもしょっぱくて良いです。

社会の情勢も不安定な折、国会では「売春防止法」が可決されようとしています。様々な事情で借金を負った女達は今の生活から抜け出そうと必死です。どんなにもがいても一度体を売る商売を始めるとなかなか堅気には戻れない。そんな女達に焦点を当てた群像劇。


舞台は吉原の「サロン夢の里」。
娼婦たちは、それぞれの事情を負って生きています。


不良娘のミッキー(京マチ子)も加わり「夢の里」は今日も大繁盛。


やすみ(若尾文子)は金の亡者。
父親の保釈金20万円が払えずに吉原へ来た過去があります。
彼女はサロンで客を騙しては金を無心します。
そればかりか仲間の娼婦にも金貸しをし利息で貯金を更に増やしていく財テクぶり。

サロンの最年長のゆめ子(三益愛子)は離ればなれで暮らしている一人息子との同居を夢見ています。


手前で涙しているのがより江(町田博子)。彼女は普通の主婦に憧れを抱いています。赤ちゃんのおしめを変えている眼鏡の女性がハナエ(木暮実千代)。彼女は病気の夫と幼子を抱える一家の大黒柱です。

うむむ…。
人生は甘くない。とは良く言ったもので…。

どうにかしたくてもどうにもできない(ならない)のが観ていてとてももどかしい。それでも女達は強く、逞しく、しなやかに生きていくんですね。
うむむ…。

売春防止法が4度目の流産したときのサロンの主人の言葉。
「おれたちはね、政治の行き届かないところを補っているんだ。政府に変わって社会事業をやってるんだよ。演説やって食いっぱぐれない連中にはお前達の苦労なんて分かっちゃいないんだ。お前たちの味方はおれたち以外あるかい。わかったな。じゃあ、明日からひとつ腰を据えて働いてくれ。」

そんな事ない!と言い切れないのがまたしょっぱい…。


赤線地帯@映画生活
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呪怨 パンデミック

2008年07月08日 | ★★





呪怨パンデミック
おすすめ度
原題:The Grudge 2
製作:2006年 アメリカ
製作総指揮:サム・ライミ ジョー・ドレイク他
製作:ロブ・タパート 一瀬隆重 他
監督:清水崇
脚本:スティーヴン・サスコ
出演:アンバー・タンブリン アリエル・ケベル ジェニファー・ビールス エディソン・チャン サラ・ミシェル・ゲラー テレサ・パルマー サラ・ローマー 宇野実彩子 石橋凌 田中碧海 藤貴子 松山タカシ
キャッチコピー:ついに始まる、恐怖の爆発感染。

DVD観賞会の日頃観ないシリーズ。第2弾は「呪怨 パンデミック」です。2004年に公開された「THE JUON -呪怨-」の続編です。

東京のインターナショナル・スクールに通うアリソン(アリエル・ケベル)は友人のヴァネッサ(テレサ・パルマー)とミユキ(宇野実彩子)に連れられ、呪われた幽霊屋敷といわれる有名な心霊スポットに行きます。ヴァネッサとミユキはふざけてアリソンを二階の押入れに入れると扉を閉めて彼女を閉じ込めます。しかし手を放しても扉が開かなくなってしまいます。驚いた二人は慌ててその場を去ります。

一方カリフォルニアに住むオーブリー(アンバー・タンブリン)は姉のカレン(サラ・ミシェル・ゲラー)が入院したと聞き日本にやってきます。しかし病院でカレンはオーブリーの前で自殺を図ってしまいます。そこでカレンを助けてくれた香港人記者のイーソン(エディソン・チャン)と出会います。そして彼と姉が怯えていた呪われた家での事件と姉の死の関連性を調べはじめます。

シカゴのアパートでは住民が異常な行動をとるようになります。日本のある一軒家からはじまった怨念はやがて世界へと爆発染していくのでした。

微妙〜〜!!!
どうもこの作品、オリジナルストーリーらしいです。
そして続編は今年公開予定だとか。
一応観るとは思いますが、このぶんだと期待薄ですね。


軽い肝試しのノリで例の「お家」へ…。
よせばいいのに…。
って言ってたらホラー映画は成立しませんね。


まずは、みゆきちゃん死亡〜。


お次はヴァネッサ〜。


3人娘の最期の生き残り、アリソンも帰国後に…。
彼女が帰国した事で、伽椰子&俊雄がアメリカに上陸!(ぶはは。)
飛行機に乗ったかやこ&敏雄を想像するとちょっとおもろい(ぷぷっ。)


こちらは前作の続きの一派の関係者。
カレンの死により来日した妹のオーブリーと日本で活動する記者のイーソン。
この二人が呪の家の秘密を調べはじめますが…。



今回もいっぱい死んじゃうんで、ちょっと癒しの画像を。
俊雄君のサービスショット♪
この俊雄君は前回の子とは違います。
もう成長しすぎたんですね〜。

怖いって言うか、もうちょっとおもろくなってきてる…(笑)。
さてさて。
このオリジナルストーリーにどんなオチがつくのでしょうか?
次回DVDのリリースを待ちたいと思います。


呪怨 パンデミック@映画生活
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カンナさん大成功です!

2008年07月07日 | ★★★★





カンナさん大成功です!
おすすめ度
原題:200 POUNDS BEAUTY
製作:2006年 韓国
監督:キム・ヨンファ
原作:鈴木由美子「カンナさん大成功です!」
脚本:キム・ヨンファ ノー・ヘヨン
出演:キム・アジュン チュ・ジンモ イ・ハヌィ キム・ヒョンスク キム・ヨンゴン ソン・ドンイル イム・ヒョンシク
キャッチコピー:整形、OK?過去と脂肪を捨て、愛を手に入れられるのか?

定期的に開催している、友達とのDVD観賞会。なので、久々に日頃観ないシリーズ行かせていただきます。まずは「カンナさん大成功です!」。この作品は韓国のアカデミー賞・大鐘賞を受賞し、その年の最多の12部門にノミネートされたそうです。

身長169cm・体重95kgのダイナマイトボディを持つカンナ(キム・アジュン)。彼女は素晴らしい歌唱力を活かし韓国の人気歌手AMI(ソ・ユン)の“ゴースト・シンガー”をしています。実は彼女には密かに想いを寄せる男性がいます。それはプロデューサー・サンジュン(チュ・ジンモ)。いつもカンナに優しいサンジュンにカンナはメロメロです。そんなある日偶然にサンジュンとAMIの会話を聞いてしまいます。「不細工はカンナに嫉妬をする方がおかしい。せいぜい彼女の才能を利用して、もうしばらく自分にもセレブな生活をさせてくれ。」という屈辱的な会話。それを機に彼女は、一大決心。命がけの“全身整形”をするべく皆の前から姿を消しますが…。

「整形天国」韓国で、全身整形美人というテーマ。リアリティがあって実はちょっぴりブラックな一面もあるんですね。女性の「見た目」を巡りゆれ動く乙女心も切なく描かれています。「見た目」が変わる事で彼女の環境は大きく様変わりしていきます。



95キロの「巨漢」なアンナ。
彼女は歌が好き。
そしてサンジュンが大好き。

その淡い恋心が無惨に砕け散る「事件」が勃発。
そして全身整形&ダイエット!
ただひたすら美しくなるために過ごした1年間。


そして、パーフェクトボディ&モテ顔に大変身!!


恋するサンジュン。
彼は彼女をカンナだとは知りません。



カンナもジェニーとして本格歌手デビュー。
はじめてのテレビ出演にどきどきです。
そして2人の恋の行方にどきどきです。


心優しい主人公のアンナが優しくて、明るくて、とってもキュート!
泣いたり笑ったり彼女のクルクル変わる表情がかわいらしく、観ている内に思わず彼女を応援したくなってしまいます。

とっても楽しい作品でした。
こういう作品は友達と一緒に観るのに本当にぴったりですね!

カンナさん大成功です!@映画生活
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犬神家の一族

2008年07月06日 | ★★★




犬神家の一族
おすすめ度
製作:2006年 日本
製作:黒井和男
監督:市川崑
脚本:市川崑 日高真也 長田紀生
出演:石坂浩二 松嶋菜々子 尾上菊之助 富司純子 松坂慶子 萬田久子 深田恭子 中村敦夫 仲代達矢 葛山信吾 池内万作 奥菜恵 岸部一徳 螢雪次朗 中村敦夫 永澤俊矢 大滝秀治 草笛光子 加藤武
キャッチコピー:金田一さん、事件ですよ

2006年バージョンの「犬神家の一族」です。30年前の作品と同じ監督と主演で完全リメイク。市川監督の遺作でもあります。

うーん。
こういうのを完全リメイクっていうんでしょうねえ。
ほぼ完コピですねっ(笑)。
1976年バージョンは、父親の佐兵衛の生前の物語がしっかりと描かれていましたが2006年バージョンは父親は娘たちを呪縛する存在として亡霊のように描かれています。

キャスティングは当初から賛否ありましたが、石坂浩二、大滝秀治、加藤武をはじめとしたベテラン役者さんの「老い」が気になっちゃいました。新たにキャスティングされた松竹梅の3姉妹がちょっとミスキャストな気がするし…。意図した演出なんでしょうが、台詞回しも何だかちょっと微妙…。ラストも前作のがよかったなあ。



一族を集めての「遺書」発表のシーン。
演者は日本を代表する豪華な顔ぶれ。
なかなか迫力があります。



きゃーっ。
松竹梅3姉妹!
やってもうた(爆)!!


そして!
インパクト大のシズマの名シーン!!
今回も豪快に刺さってます。



ヒロインは松嶋奈々子。
清楚な雰囲気はいいんですが、この方昭和サイズじゃないんですよ。
ぶっちゃけでかすぎます。
猿蔵いなくても大丈夫そう…。



加藤武氏。へいちゃん。みんな老いました。
大滝秀治が台詞を言う場面は、何故かどきどきします。
台詞がもうギリギリなんですもん(笑)。



それでもへいちゃんは走ります。


1本の映画としてはうーん。な感じですが、旧作を観た後に比較して観るにはとっても面白かったです。


犬神家の一族@映画生活
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犬神家の一族

2008年07月05日 | ★★★★





犬神家の一族
おすすめ度
製作:1976年 日本
製作:角川春樹 市川喜一
監督:市川崑
原作:横溝正史
脚本:長田紀生 日高真也 市川崑
出演:石坂浩二 高峰三枝子 三条美紀 草笛光子 あおい輝彦 地井武男 川口晶 川口恒 金田龍之介 小林昭二 島田陽子 坂口良子 小沢栄太郎 加藤武 大滝秀治
キャッチコピー:金田一さん事件です!

横溝正史の同名小説を映画化した市川崑監督の「犬神家の一族」です。2006年にリメイクされた作品を観る前に復習の意を込めて、1976年バージョンです。

犬神財閥の創始者、犬神佐兵衛(三國連太郎)は、自分の死後の惨劇を予期したかのような不可解な遺言状を残して他界します。犬神家の顧問弁護士、古館恭三(小沢栄太郎)の助手、若林は、金田一耕肋(石坂浩二)に助力を得るために呼び寄せますが、金田一と顔を合わさない内に、何者かに毒入り煙草で殺害されてしまいます。佐兵衛は生涯妻子を持たず、松子(高峰三枝子)、竹子(三条美紀)、梅子(草笛光子)という腹違いの三人の娘があり、松子には佐清(あおい輝彦)、竹子には佐武(地井武男)と小夜子、梅子には佐智(川口恒 )という息子がいます。そして、犬神家には佐兵衛が事業の成功を手助けした大恩人である野々宮大式の孫娘、珠世(島田陽子)も住んでいます。問題の遺言状は佐清の復員を待って公開されることになっていましたが、戦争で顔を負傷した佐清は、仮面をかぶって一族の前に現われました。遺言状の内容は、犬神家の全財産と全事業の相続権を意味する三種の家宝、斧(よき)、琴、菊を佐清、佐武、佐智のいずれかと結婚することを条件に、珠世に譲渡する、というものでした。

子どもの頃、何度かテレビで観ていた1976年版。ただただおどろおどろしい印象しか残ってない…(呆)。って事でこの度久しぶりに観ました。今回観て改めて思ったんですが、初めて観た時はストーリーを殆ど理解出来てなかったんじゃないかと…。主要登場人物が多いし、その相関も今観てもなかなかややこしい。内容も結構「大人」だし(笑)。

とりあえず感想は

脚本も、キャストも、演出も。どれをとっても無気味で怖い!よく出来た作品だな〜。フラッシュバックやスローモーションを効果的に取り入れたり、回想シーンにモノクロ画像の挿入するなど市川監督らしい実験的でスタイリッシュな映像は素晴らしく、とっても見応えがあります。



犬神佐兵衛。
揉め事を作った諸悪の根源はこの人。
生涯正妻をもたず、女を取っ替え引っ換え。
やりたい放題。
しかも死んでからもまた揉ます揉ます。



改めて一族が集まり「遺言書」の発表です。
みんな自分が幾ら貰えるのか??と固唾を飲んで見守ります。
でも、でも、でも、でも!弁護士が発表したのは驚愕の内容。
「珠世が3ヶ月以内に佐清、佐武、佐智のうちのいずれかと結婚すれば全財産を相続する。珠世が死去などにより、相続しない場合は佐清、佐武、佐智が1/5ずつ、青沼静馬が2/5…。」
そりゃ死人も出るって話です。
こわいこわい。



出ました!佐清!
怖いですね〜。このマスク。
市川監督の佐清マスクは気合いが入っています。



ヒロイン珠子は島田陽子。
あーかわいらしい。



珠子の後ろに猿蔵あり。
土ワイの悦っちゃんみたいです。
こわいこわい。



菊人形に据えられた生首の胴体(佐武)。
湖にぷっかと浮かんでます。




この手形。
戦争に行く前に神社に奉納された佐清の手型。
こういう「小道具」がいちいち不気味です。



若き日の佐兵衛の「過ち」が子や孫の世代の運命まで変えてしまいます。


激しい情念を燃やす一族の姿が愚かで悲しい。人間の心の中に潜むどろどろした感情や闇がとてもよく表現されています。そんな息が詰まるような緊張感と、事件の行方を見守る(?)金田一耕助のどこかとぼけた雰囲気の緩急も絶妙で良いですねえ。湿度の高い邦画らしい邦画だなあ。こういう濃い愛憎劇、大好きです。

犬神家の一族@映画生活
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カプリコン・1

2008年07月04日 | ★★★★


カプリコン・1
おすすめ度
原題:Capricorn One
製作:1977年 アメリカ イギリス
製作:ポール・N・ラザルス三世
監督:ピーター・ハイアムズ
脚本:ピーター・ハイアムズ
出演:エリオット・グールド ジェームス・ブローリン ブレンダ・バッカロ サム・ウォーターストーン O・J・シンプソン ハル・ホルブルック テリー・サバラス
キャッチコピー:300億ドル・・・世界初の有人火星宇宙線が秒読みに入ったとき3人の宇宙飛行士が消えた!

私、都市伝説やらオカルトめいたモノが大好きです。(←小学生かっ!)幾度となくテレビで取り上げられている「アポロ計画陰謀説」もそのひとつ。というわけで今日は、「アポロ計画陰謀説」と並んでよく紹介されるSF映画「カプリコン・1」です。

人類史上初の有人火星宇宙船カプリコン・1の打ち上げが目前に迫り、機内には、ブルーベーカー(ジェームズ・ブローリン)、ウィリス(サム・ウォーターストン)、そしてウォーカー(O・J・シンプソン)らが乗り込みました。ところが発射5分前、突然ハッチが開き、1人の男が乗組員3人を船外に連れ出しジェット機で連れ去ります。そして5分後、カプリコン・1は、人々の見守る中、無人のまま火星へ向かって飛び立ちました。一方、3人を乗せたジェット機は砂漠にある閉鎖された軍の基地に到着します。そしてそこには、NASAのケラウェイ所長(ハル・ホルブルック)が。そして3人にカプリコン・1の生命維持装置に故障が発見されたが、我国の議会や世論を宇宙計画へ注目させるには、今さら計画の中止は出来なかった、という衝撃の事実を告げます。家族を人質にされた3人は、基地内に組まれた火星表面のセットで世紀の大芝居を決行することとなりますが…。


ない話では無さそうなのがリアリティがあっていいですねっ。
SFというより、むしろ社会派サスペンスドラマな感じでなかなかどきどきさせられます。


この手の作品は、やっぱり映像がお粗末だとつまんないですが、火星のセットや宇宙船のセットなどもリアルに作られているので見ごたえがあります。この火星の赤〜いセットはすごく印象的です。


水も滴るイイ男。「M★A★S★Hマッシュ」でトラッパー役を演じたエリオット・グールド。本作では、ちょっとチャラい記者役を熱演。車で、飛行機で。体を張ったシーンが目白押し!


3人のクルーはこの3人。左からサム・ウォーターストン、ジェームズ・ブローリン、O・J・シンプソン。
O・J・シンプソンかあ…。うーん、時代を感じますねえ。


ちなみにこれがよく問題になるアポロ11号が月面着陸した画像。
月面で撮影されたはずの写真なのに空に星が写っていない
光源は太陽だけのはずなのに影の向きがバラバラ
っていうのが疑惑のポイントらしいです。


この画像は月面でポーズを取るバズ・オルドリン。
ニール・アームストロングがヘルメットの遮光板に映った自分とオルドリン両方を撮影したものです。


そしてこれはカプリコン・1のジャケット。
うぷぷ。
なかなか遊び心がありますね。

「カプリコン・1」は31年ぶりにリメイクも決定しましたねえ。
監督は「オーメン」(2006年)のジョン・ムーアだそうです。DVDが出たら観てみようかな〜。

カプリコン・1@映画生活
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王と鳥

2008年07月03日 | ★★★


王と鳥
おすすめ度
原題:Le Roi et l'Oiseau
製作:1979年 フランス
製作:ポール・グリモー 
監督:ポール・グリモー
原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン「羊飼い娘と煙突掃除人」
脚本:ジャック・プレヴェール、ポール・グリモー
キャッチコピー:気をつけたまえ。この国は今、罠だらけだからな

2006年にスタジオジブリによって劇場公開された「王と鳥」です。この作品の基盤となった「やぶにらみの暴君」は高畑勲や宮崎駿らに多大な影響を及ぼしたそうです。

タキカルディ王国の高層宮殿。この国の王は、民衆から嫌われ、また民衆を嫌う孤独な暴君。そんな彼の楽しみは、秘密の部屋に籠り、美しい羊飼い娘の絵を眺めることでした。実は、羊飼い娘は、隣に飾られた絵の煙突掃除の青年と愛し合っています。ある夜ふたりは、絵の中から逃げ出します。そこへもう一枚、王の肖像画から飛び出した暴君が、本物の王になり代わり、国を挙げて捜索を始めます。一羽の鳥に導かれ逃げ続けるふたりですが…。

なんてシュールなんでしょう。
ラストの頃にはもう口が空いてました(笑)。
なんていうんでしょう、この感じ。
いやね。
お話は難しくないんです。
絵も構図も美しく
言葉も詩的で美しい。

でも
でも
多分私
この作品を
消化できてません(汗)

そして突っ込み所は満載です。
こんな時はネタバレ気にせずに最後まで書いちゃいます。
てへ。


砂漠の中の近代的な建物。
その主人である王様。なかなかのオモロフェイス!


この王様。
ちょっとでも気に入らない事があると「ポチッ」とボタン押して、その人を地下に落としちゃう。
生死は不明。
実は暴君なんですね。
顔はオモロいのに…残念です。


そんな人でなしな王様にも楽しみがあります。
超高層ビル(城ですが)の最上階の秘密部屋で絵の中の羊飼いの少女にうっとり。どうもお気に入りの様子。
なんだか切ない表情をしてますね。


でも、少女はイケ面がお好き。いつしかお隣の煙突掃除の青年と相思相愛に。

そして肖像画の中の王様は2人を見てジェラシー!
目が覚めた本物の王様は、その場のただならぬ雰囲気を察し警察を呼びますが、彼らの到着前に本物の王様は「ポチッ」と地下へ落とされます。肖像画の王様は本物の王様と成り変わり、逃げ出した二人を捜索しはじめます。

……って!
その人本物じゃないから!絵だから!!
誰も気付かないのでしょうか。



一方、鳥さんに助けられながら逃げるふたり。
どんどん階段を降りていきます。



そして王様の最終兵器である「巨大ロボ」が登場。
あ。
これ、どこかで見た事ありますね。
そうそう「あのアニメ」です。

で。
一度はみんな囚われて、2人と1羽は大ピンチ!そこで少女は青年の命を救うために泣く泣くお妃様になる事を約束します。が。王様は約束を反古にし、青年と鳥さんは強制労働を強いられます。

彼らは大人しく言う事を聞くはずもなく、仕事中に王様の製品に悪戯をした1人と1羽はお仕置きでライオン部屋へGO!
このままだと食べられそうな空気です。
なので鳥さんはとんちを効かせるわけですね。
「羊飼いの少女はライオンさんの為に羊を丸まると太らせていたんです。(←ええええっ??そうだっけ?)なのに王様は羊飼いの少女と煙突掃除の青年を無理矢理引き離しちゃったわけ。その間にあなた達の羊は狼にやられて全滅したんですよっ!(←ええええっ??うそーん。)ひどいでしょっ?」的な事を言います。

食べ物の恨みは恐ろしい。

お腹がぺっこぺこな
ライオン達は鳥と青年と一緒に結婚式の会場に殴り込みです。


最後は鳥さんが「巨大ロボ」を操縦して城をめっちゃくちゃに破壊します。
そしていよいよ最後の最後に鳥かごに閉じ込められた鳥さんのお子を放した後、巨大ロボは考える人のポーズをとったまま動かなくなります。

ちゃんちゃん。

最後みんなはどうなったんでしょう?
王様は?
少女と青年は?
城の人たちは?
ライオン達は?
鳥たちは?

実は鳥がいちばん質が悪いと感じたのは私だけでしょうか??


王と鳥@映画生活
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復讐するは我にあり

2008年07月02日 | ★★★★





復讐するは我にあり
おすすめ度
製作:1979年 日本
製作:井上和男
監督:今村昌平
脚本:馬場当 池端俊策
出演:緒形拳 三國連太郎 ミヤコ蝶々 倍賞美津子 小川真由美


佐木隆三の同名小説を今村昌平監督が映画化した「復讐するは我にあり」です。このタイトルは、新約聖書に出てくる言葉で、「悪に対して悪で報いてはならない。悪を行なった者に対する復讐は神がおこなう」という意味なんだそうです。うーん。タイトルひとつとっても興味深いですね。

昭和39年10月日豊本線築橋駅近くで専売公社のタバコ代の集金に回っていた柴田種次郎(殿山泰司)と馬場大八(垂水悟郎)の惨殺死体が発見され、現金41万円余が奪われる事件が発覚。やがて、タバコ配給に従事していた運転手・榎津厳(えのきづいわお/緒形拳)が容疑者として浮かび、いよいよ警察の捜査がはじまります。

この作品は実在する<西口彰連続殺人事件>がモデルになっているそうで、犯人の生い立ち、犯行の手口、そして事件発覚後の76日に及ぶ逃亡生活を描いています。リアリティを追求するために作中に登場する殺害シーンは実際の事件現場で撮影されたんだそうです。


巌の父親(三國連太郎)と母(ミヤコ蝶々)と妻(倍賞美津子)の関係。
これがなかなか危ういんですね。

息子が可愛くて仕方がない病弱な母親。
父親はストイックで心優しい敬虔なクリスチャン。
妻は義父に対して尊敬を超えた愛情を抱いています。
もともと父親にあまり良い感情がなかった巌。
父子の確執はますます深まって行きます。

何故厳は凶行を繰り返したのか?父親に対する「反抗心」からなのか?それとも「ただそうしたかったから」なのか?作中では、結局これという答えは描かれていません。というか、巌にもその答えは明確に分からなかった、というのが本当のところなのかな?とにかく、彼はなんの躊躇もなく人を殺します。お世話になった旅館の親子ハル(小川真由美)とひさ乃(清川虹子)でさえ例外ではありませんでした。

巌の家族たちの逃げ場のない混沌とした感じ。
明確な動機がないぶん、無気味さが増します。

1979年の映画賞を数多く受賞した本作。
俳優陣の演技が本当に本当に素晴らしいです。巌に関わる女性はこの作品の中でかなり重要な役割を果たしています。小川真由美のチャーミングだけどどこか影のある売春斡旋宿の女主人。義父を愛してしまう巌の妻役を演じた倍賞美津子。決して「若くない」女優たちが繰り広げる扇情的なシーンは切なくて心に残ります。

にしても。
この作品ってば独特なエネルギーがありまして…
観た後どっと疲れます。
泥臭くて、湿度が高くて、観た後疲れますが、(←しつこい?)名作です。


復讐するは我にあり@映画生活
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東京オリンピック

2008年07月01日 | ★★★★★



東京オリンピック
おすすめ度
Tokyo Olympiad
製作:1965年 日本
製作:田口助太郎
監督:市川崑
脚本:市川崑 和田夏十 白坂依志夫 谷川俊太郎

平和の祭典オリンピック。今年はオリンピックイヤーでございます。来月には北京で華やかに開催される事でしょう。という訳で今日は1964年に初めて日本で開催されたオリンピックの記録映画「東京オリンピック」です。市川崑が総監督を務めています。

ちなみに私が観たのはディレクターズカット版。オリジナルは約3時間(170分)に及ぶかなりの長尺。「記録映画」としての定義で、必ず1種目あたり1つ映像を収めなければならなかったということが原因らしい。なので、この作品は「映画」として監督が当初ベストだと考えていたバージョンな訳ですね。

国立競技場をはじめ巨額な国家予算を投じて様々な施設を整えアジア初の“東京オリンピック"がいよいよ近付いてきました。オリンピックの火はギリシャから太平洋を渡って、いよいよ日本に近づき東京はすっかりオリンピックモードです。羽田空港には、アメリカ選手団をはじめとして、各国選手が到着。万国旗のひらめく中、聖火は点火され平和を象徴する鳩が放されいよいよ東京オリンピックの開幕です。


1964年東京オリンピック開会式。画像は日本選手団の入場シーンです。
オーストラリア、フランス、イタリア、インド、メキシコ…などなど。国により制服にも個性があり、見ているだけでとっても楽しいです。

あと、(どうでもいいところなんですが)2名だけで参加したカメルーンの選手にアナウンサーの「まったく健気であります。健気であります。」っていうエールのような実況。何だか妙にハマっちゃいました(笑)。


私はスポーツ観戦が好きです。(もっぱらテレビですが…。)
アスリートのドキュメンタリーなんてもう大好物です。
そんな私にとっては、この作品はこの上ないおご馳走なんですね。

何てったって、スポーツにはドラマがあります。
感動があります。
人生そのものです。
全身全霊をかけて勝負するアスリートの姿は本当に美しいです。

この作品が素晴らしいのは、ただの「記録映画」ではないところ。実験的な手法を積極的に取り入れながら、緊張・疲労・興奮…。限界に挑戦するアスリート達の心情をつぶさに捉えた演出や、鍛え上げられた肉体をスローモーションで見せたり、103台のカメラを使用し多角的に捉えたダイナミックな映像などなど…躍動感溢れる表現はもう鼻血ものです!

ちなみに、私のお気に入りは…いっぱいあり過ぎて困りますが、

柔道の無差別級決勝。
神永昭夫選手はひとまわり体の大きなオランダの選手A・ヘーシンクに負けてしまいます。試合終了後に胴着を整えて、握手。そして最後に互いの健闘をたたえ合うかのように爽やかな笑顔を見せるのです。なんて素敵なスポーツマンシップ!たまりませんな。思わず涙線がゆるゆるです。

他にも、観客の声援を贈る姿や、プレスルームの記者団たちの仕事ぶり、競技スタッフの様子など競技とは直接関係ないギャラリーや、オリンピックに携わる裏方が取り上げられているのも興味深いです。

若干好き嫌いが別れるジャンルだと思いますが、スポーツ観戦好き、昭和好き、ドキュメンタリー好き、オリンピック好きの方にはたまらない作品だと思います。


東京オリンピック@映画生活
前田有一の超映画批評



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