歌詞を味わうブログ

1980年代から1990年代の日本のポップスの歌詞を味わうブログ

『モノクローム・ヴィーナス』 作詞:松本一起

2021-05-29 14:18:00 | 歌詞を味わう
リリース:1986年

今週も当ブログを訪問いただきありがとうございます。
今週の歌詞は、久々の登場、松本一起さんです。
この歌の歌手は、アルトのCMでおなじみの池田聡さんです。

まずは歌詞の最初の部分から見ていきましょう。

「忘れたくて 楽しんで

忘れたくて 偽りの恋をしてた今まで

走り過ぎた 車には

あの日よりも ほっそりとした横顔

確かに君だったよ」


私もこの歌詞にハッとさせられた思い出があって、相手を大切に思うのではなくて、恋をしたいがために恋をしてた。

そんなことを感じながら生きてたんですね、当時の私は。

それで歌詞は続くのだけど…

Back-mirrorに僕は飛び込んでも

君は気づかないまま 街に消えた

寂しさを憎しみに変えても

もう一度 君に逢える日 心のスミで

信じていたけど」

主人公の男性は、一瞬、彼女を見かけたんですね。

それで会いたい気持ちを「Back-mirrorに僕は飛び込んでも」という比喩で表現しているんですね。


静か過ぎた 毎日が

騒ぎ出した 突然のめぐり逢いががツラくて

それでモノクローム・ヴィーナスたる所以の歌詞の部分に入っていきますが、


「胸に閉じた 君はヴィーナス

きっと二人 あの日まで帰れるなら

前より愛し合える

Show-Windowに映る 僕は一人

古い写真のように君はいない

たとえ今 何かを求めても

遠すぎて 見つめ合えない二人になった

季節は変わって」


本当に、あの日まで帰れるなら前より愛し合えるのか?とというと疑問符が付きますね。

だって彼が愛してるのは偶像化された彼女だから。

まずは生きた彼女に声をかけてみないと。


今週も最後まで読んでいただきありがとうございます。

個人的には生着もし、すこしずつでも回復しつつあります。

これからも当ブログをよろしくお願いします。




『Bye Bye my love』作詞:桑田佳祐

2021-05-23 17:49:00 | 歌詞を味わう
リリース:1985年

今週も当ブログを訪問いただきありがとうございます。
さて今週はサザンオールスターズの名曲だと私の主観でそう思っている『Bye Bye my love』を取り上げますが、何せ難しい。
わからないところは素直にわからないと認めて、当ブログの趣旨は歌詞の解釈ではなく歌詞を味わう原点に立ち返って書いて見たいと思います。

まずはイングランド調のイントロから、

(はっと見りゃ湘南御母堂)

この言葉は桑田佳祐さんの造語で、母なる湘南の海よ、といったところでしょうか。
続いて1番の歌詞ですが、

華やかな女が通る まぼろしの世界は
陽に灼けた少女のように 身も心も溶ける
Every night & day ひとりきり君待つ Rainy Day
Oh my dear one 忘られぬ物語

水色の天使が舞う あの虹の彼方に
夢出づる人魚のような 思い出が住むという
I can be your love この気持ちわかってるのに
抱きしめたいほどに 愛してた

「Oh Oh いいことだよね You are the one
You are the love you are the world
遥か遠くに女晴れ いいもんだよ To me」

これは別れの物語なのに、Oh Oh いいことだよねと続く意味がわからない。
続いて2番の歌詞、

「悲しみの雨が降る この街のどこかで
人々が眠る頃 俺は泣きつづける
I'll be home again 心から見つめられたい
Oh my dear one 君だけをこの胸に

Oh Oh いいことだよね You are the one
You are the love you are the world
我はカモメ 恋に鳴く Yes you belong To me」

ほら、やっぱり泣いてるじゃないか。それなのに。いやYou are the oneはまだ理解できるのよ。
でもいいことだよねって何なの?
そして歌詞は起承転結の転の部分に入っていきます。

「言葉と裏腹に 涙がこぼれてく
声にならぬほど 愛しい

波音は情事のゴスペル あの夏よいずこへ
酔いざめのヌードで今 誰かに抱かれてる」

言葉と裏腹だから、いいことだよねと言いながら涙がこぼれるんですね。
その気持ち、よくわかります。なかなか吹っ切れない時期ってあるのよね。
今週も最後までお読みくださり感謝します。



『あんた』 作詞:佐々木好

2021-05-15 10:09:00 | 歌詞を味わう
リリース:1984年

今週も当ブログを訪問いただきありがとうございます。
佐々木好さんは1982年にCBSソニーからデビューされたシンガーソングライターです。

この『あんた』は、アルバムでは1985年にリリースされた『暖暖』に収録されていますが、シングルとしては先行して1984年にリリースされた曲です。

ちなみに編曲は鈴木茂さんが担当しています。

「やっぱり あたし あんたが好きだ」のリフレインが、鈴木茂さんの素敵なアレンジメントでゆったりと流れるように仕上げられた特徴的な歌です。

「やっぱり あたし あんたが好きだ
短パン姿で怒っている
時々抱きしめてくれた人
この世で一番あんたが好き
男は後でわかるもの
別れた後でわかるもの
もっと抱きしめてもらえばよかったなんて、後の祭り」

短パン姿で怒っていようと好きなんですね。でも、2番の歌詞でわかるのですが、「あんた」はもう結婚しているので後の祭りなのですね。

「やっぱり あたし あんたが好きだ
ほんとに好きだったのかしら
おんなじテレビを見ていても
笑うところが違ってたでしょう
噂ではこの3月に結婚したと聞きました
あたしでなくても誰でもよかったなんて嫌なんです」

この『あんた』では好きだという気持ちをうちに秘めて心の中でつぶやいているだけだと思いたいんですが、佐々木好さんの作品には「あんた」と呼ぶ作品がもう一つあります。
それが『カニさん卯月』です。こちらの方はつらくて今が早く通り過ぎてほしいといった感じになっています。

この当時日本はバブル絶頂期で、金曜日の妻たちに代表されるような、私の周りでもタガが外れた浮かれた空気が支配してたように思います。

でも、その代償というものはとても高くついて、当事者だけではなく周囲の人たちをも苦しめることになるということを肝に銘じておく必要があると思います。

佐々木好さんの後期の作品には、そういう自我の狭い関係性から一皮むけた作品も見られますので、ぜひ他の作品も味わって見てください。

今週も最後までお読みくださり感謝します。



『セシル』 作詞:麻生圭子

2021-05-08 12:54:00 | 歌詞を味わう
今週も当ブログを訪問いただきありがとうございます。
この曲は浅香唯さんのヒット曲なので、多分皆様ご存じなのではないかと思います。

サビの部分の…

恋は楽しい時より 悲しい時に
そっと始まった方が 長く続くね
きっと誰でも一人は 味方がいるの
いつも私がそれに なれればいいのに

もう、ここのフレーズだけで充分。歌詞を味わうなら余計な説明などいらいない、そう思うのは私だけでしょうか?

でも作詞家はこの歌詞に込めた恋への思いとセシルの恋のあり方を、題名に入れてまで対比させているんですね。

「映画で見たセシルのように嘘は言いたくない」の映画とは、フランスの作家サガンの『悲しみよこんにちは』の同名小説をアメリカとイギリスの合作で映画化したもので、フランス南部が舞台となっているにもかかわらず英語でライトに交わされる会話が軽薄さに拍車をかけているようにも思えてなりません。

簡単に説明しますと、裕福な父レイモンドとその娘セシル、そして愛人のエルザ(セシルの母は亡くなっている)の3人で気ままに暮らしていたところへ、亡き母の親友アンナが入り込んで来てレイモンドと婚約していることをセシルが知ることとなります。このままでは、今までのような気ままに暮らしが失われることを危惧したセシルは一計を講じて、青年フィリップスとエルザの交際を演じさせレイモンドの嫉妬を買わせるのでした。これによりレイモンドとエルザはよりを戻したかのように見えたのですが、今度はそれに失望したアンナが自動車事故で死んでしまうのです。果たしてレイモンドもエルザ愛し合っていたのか、セシルもフィリップスの事をどれだけ本気で愛していたのか?全てが軽薄さと計略に満ち満ちていて私にはわかりまん。

そういう軽薄さが対比にあってのこの『セシル』という歌詞の意味というのを大切にしたいと思います。


今週も最後までお読みくださり感謝します。


『電車』 作詞:岡村孝子

2021-05-01 12:08:00 | 歌詞を味わう
リリース:1987年

今週も当ブログを訪問いただきありがとうございます。
今回の歌詞を味わう前に、『あみん』の前史について少し説明しておきたいと思います。

岡村孝子さんと加藤晴子さんのデュオは1982年7月25日に『待つわ』でレコードデビューしていますが、これに先立つ二人の出会いは椙山女学園大学で、岡村さんが入学時に加藤さんへ履修届の書き方を尋ねたのがきっかけで、その後も岡村さんが加藤さんに自作の曲を聞かせたことで意気投合しデュオを結成するに至ったのです。

しかしファーストアルバムをリリースしようとしたところで、他のアーティストからの提供曲も歌わせたいレコード会社側の意向と、できるだけ自作曲を歌いたいあみん側の意向が合わずリリースが延期になったばかりでなく、この頃から加藤さんが活動を辞める意思を示し始めたのです。学業に専念したい気持ちに加えて芸能界は自分のいる場所ではない、そう思うようになったのです。これに対し岡村さんは同意を示し、自身は大学を中退し、ソロとして歩むことになったのです。
なお、加藤さんは大学を卒業しテレビ東京に就職したのでした。

それでは歌詞のサビの部分を見ていきましょう。

何を求めて 明日を探せばいいのか
大きな海を漂う木の葉のようだわ」

あなたを失くしてまでも決めた道を
悔やむほど弱くなった私をしかって」

「あなたを失くしてまでも決めた道を
悔やむほど弱くなった私をしかって」

「あなたを失くしてまでも決めた道を
進むほどずるくなって明日を変えたい」

こう見てくると、一般的にはあなたとは彼氏という見方もできないわけでもないのだけれども、前段で書いた『あみん』の事を重ね合わせて考えると、岡村さんがしかってほしいのは、他ならぬ加藤さんだという仮説もあながち否定できないんです。

だからこそ2番の歌詞にある
けじめと名のついた卒業証書がほしい」
この卒業証書は観念的なものではなくて、椙山女学園大学の卒業証書だとも言えるんです。

岡村さんはよく「OLの教祖」とか言われたりもしたんですが、

「混み合う電車に押し込まれ
ガラスに額をつけたまま
大きなため息をついたら
なお気がめいる」

「どんなに悲しい夜ばかり
過ぎても会社に着いたなら
笑顔を振りまいて
jokeの一つもとばす」

同世代のOLたちの傷つきやすい心を共感力で癒やしてもいたんですね。
でも、岡村さんはどんなjokeを飛ばしていたんでしょう?
「こ~んなに直筆メッセージばかり書いてたら、明日には手が豆だらけになって豆味噌ご馳走したるわ~」…なんて意外とアメリカンジョークを真顔で言ってたりするかも。

冗談はさておき、一度はCDを聞いてみてください。とてもいい曲なんで。
今週も最後までお読みくださり感謝します。

◆追記◆
先週ご紹介した本田美奈子さんと岡村孝子さんはある病気を闘われました。実は私も同じ病気で療養中で体調不良と闘いながらブログを更新しています。不見識な点があるかもしれませんが、どうかご理解ください。