歌詞を味わうブログ

1980年代から1990年代の日本のポップスの歌詞を味わうブログ

『ファイト!』 作詞:中島 みゆき

2021-09-04 09:20:00 | 歌詞を味わう
リリース:1994年

今週も当ブログを訪問いただきありがとうございます。
今回は中島みゆきさんのヒット曲『ファイト!』を取り上げます。
さっそく1番の歌詞を見てみましょう。

「あたし中卒やからね 仕事をもらわれへんのやと書いた
女の子の手紙の文字は とがりながらふるえている
ガキのくせにと頬を打たれ 少年たちの眼が年をとる
悔しさを握りしめすぎた こぶしの中 爪が突き刺さる」

「私 本当は目撃したんです 昨日電車の駅 階段で
ころがり落ちた子供と つきとばした女のうす笑い
私 驚いてしまって 助けもせず叫びもしなかった
ただ恐くて逃げました 私の敵は 私です」

「ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ」

女の子は転がり落ちた子どもと突き飛ばした女に遭遇してしまったのですね。
それで助けもせず、叫びもせず恐くて逃げたんですね。
確かに子どもを助けたり、駅員に知らせるなどできたでしょう。
そうできなかった自分を「私の敵は私」と責めています。
ただ恐くて逃げた。そう判断をせざるを得ないほど、女の子はハラスメントや暴力を体で覚えてきた。
一体誰が女の子を責められるだろうか。
続いて2番の歌詞を見てみましょう。

「暗い水の流れに打たれながら 魚たちのぼってゆく
光ってるのは傷ついてはがれかけた鱗が揺れるから
いっそ水の流れに身を任せ 流れ落ちてしまえば楽なのにね
やせこけて そんなにやせこけて魚たちのぼってゆく」

「勝つか負けるかそれはわからない それでもとにかく闘いの
出場通知を抱きしめて あいつは海になりました」

「ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ」

魚に例えた比喩的表現ですが、鮭の遡上なんかを思い浮かべれば状況がわかりやすいかな

「薄情もんが田舎の町にあと足で砂ばかけるって言われてさ
出てくならおまえの身内も住めんようにしちゃるって言われてさ
うっかり燃やしたことにしてやっぱり燃やせんかったこの切符
あんたに送るけん持っとってよ 滲んだ文字 東京ゆき」

「ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ」

「あたし男だったらよかったわ 力ずくで男の思うままに
ならずにすんだかもしれないだけ あたし男に生まれればよかったわ」

「ああ 小魚たちの群れきらきらと 海の中の国境を越えてゆく
諦めという名の鎖を 身をよじってほどいてゆく」

「ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ」

「ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ」

「ファイト!」

ここでは、田舎での疎外のエピソードと、男に生まれれば力づくで男の思うままにならずにすんだかもというエピソードが語られています。
どちらも深刻なハラスメントや暴力がまかり通った状態とも言えます。

こうした身近なハラスメントに立ち向かうのに、「ファイト」と背中を押してあげるのも必要でしょうが、ハラスメントを受けた方は恐怖体験がプログラミングされてしまっているから積極的なサポートが必要だと思うの。

しかし、もっと広い視点で見てみると、貧しい者どうしが分断され争わされているという見方も必要。その裏で誰が漁夫の利をむさぼっているか、特に争っている者は気づいてほしい。

今週も最後までお読みくださりありがとうございました。
コロナ禍はまだまだ続きそうです。
どうぞご自愛くださいね。

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