『ルパンの消息』横山秀夫／著

唐突ですが(笑)、実はわたしの実家は東京は府中市なんです。。そう、あの３億円事件のあったすぐ近所です。

事件のあった府中刑務所裏の通称「学園通り」というのは、まさしく実家前の路地を出た表通り
それで母に電話で当時のことを何か覚えているか聞いてみたわけです。
（こんな用件で電話する娘っていったい…笑）

どうやらその当時はまだ府中には住んでいなくて、でもそのころ隣町にある会計事務所に勤めていたことは鮮明に覚えているそうな。
なぜかと言うと…
当時、その会計事務所に刑事が来たらしいんです！
それも、事務所に勤めている若い男の子のアリバイを調べに！！！

その事務所には他にも若い税理士志望の男性が何人かいたらしいんですけど、その彼だけ調べられたそうです。。
なぜなら彼が東京経済大学出身だったから。。



犯人像としてはいろいろ上がっていたようですが、その彼が調べられた頃（おそらく初動捜査の頃）は「東経大出身の２５歳前後の若い男」がローラー作戦でしらみつぶしに調べられたそうなんです。
まぁ東経大と言えば武蔵小金井で、↑上の３億円事件をクリックすると地図が出て来ますが、犯行ルートもわりかし地元な感じですしね。

わたしなどは、１度でいいからそんなドラマみたいな出来事に遭遇してみた～い♪なんて思うけれど(^^;)、当事者にしてみれば大変なことですよね。
きっと彼は同僚達に、しばらくは奇異な目で見られたはずです。
当時は国民１億総推理作家のごとく、犯人当てっこが流行った？らしいですから。
彼のように容疑者リストに載っていろいろ調べられた“被害者”は、当時１１万人もいたそうですね。（@_@;）

それにしても、真犯人はいったい今どこでどうしているんだろう。。
誰も死んだわけじゃないし、なんかカッコイイじゃん！
なんて、地元で起きた事件だっただけに、幼い頃からずっと気にかかっていた事件だったのでした。。


で、前置き長くなりましたがここからが本題です。(爆)

『ルパンの消息』はこの３億円事件が題材になってます。
といっても真相を暴くというものではなくて、３億円事件はあくまでサイドストーリー。
でもこれが微妙にうま～く絡んでくるわけなんですよね。

メインストーリーの発端は、１５年前３人の不良高校生が学校に忍び込み、期末試験のテスト問題と回答用紙を盗み出すところから。
“ルパン作戦”と名付けられたこの作戦の決行最終日に、それまでと同様金庫を開けたら女教師の死体が入っていた！
しかも翌日、なんとその遺体は校舎の中庭から発見され、屋上から飛び下り自殺したとして処理されてしまう…
殺人事件のはずなのに、なぜ？！
とはいえ、自分たちも盗みに入った手前警察には事情を言えず、時とともにいつしか彼らも忘れていく。。
ところが１５年後、１本のタレコミから突然警察の手が彼らに伸びたのだった。。

彼らだけが知る不可解な殺人事件だった女教師殺人事件が、はたして３億円事件とどう絡むのかが見どころです。
３人の高校生の当時のワルぶりも生き生きと描かれていて青春小説としても面白いし、時効寸前という緊迫した警察署内の動向も臨場感たっぷり。
謎解きもどんでん返しも、おまけに最後にはポロリとさせられるところもあって、最後までグイグイ読めちゃいます！さすがは横山秀夫！！！
かなり読みごたえのある正当派の本格ミステリーになっているので、ミステリー好きにはたまらない１冊になるのではないでしょうか？

ルールーのお気に入り度
★★★★（※５段階評価４）



この本は、今や超売れっ子ミステリー作家、『半落ち』の横山秀夫さんがデビュー前に書いた“幻の処女作”です。
今はなくなってしまったサントリーミステリー大賞の佳作を取って、著作のプロフィール欄に必ず名前が載っていたこのタイトル…
刊行を望む声が多かったものの、１５年経った今年ようやく改稿を経て世に出ることになったわけです。
くしくも物語も１５年前の殺人事件の時効寸前という切羽詰まった状況が舞台で、つくづく因縁を感じると、筆者あとがきに書かれてました。

そしてわたしもまたこれを読んで、遠い昔の地元の事件に思いを馳せることができました。
この小説もまた映画化とかされるのかなと思うと、誰がキャスティングされるかなんてことにも妄想が脹らみます。（笑）

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