ルールーのお気に入り

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映画『靖国 YASUKUNI』

2008-05-14 16:19:23 | 恋する映画
実は、幼少時から小学校低学年くらいまで、よく靖国神社にお参りに行っていたのです。

当時、近くにある九段坂病院に月に1度喘息の治療のため赴いていて、そのついでに帰りに時間がある時に主に父とお参りしていました。
それは幼いわたしにとっては例えば旅先で神社があればお参りしてしまうのと同じようなもので、単に「神社があるから」という感覚以上の何ものでもなくて、実際ずっとそう思っていたのだけど、今思うと父はどうしてわたしをよく連れて行ったのだろう??何か特別な思いがあったのだろうか???
果たして今は亡き父にもう真意は訊けないけれど、かすかに覚えているオーバーコートに身を包みながら靖国の前で映っていた父の写真とともに、そんなことを思い出しながら映画を観ていたのでした。。

もっともA級戦犯とされる14名が合祀されたのは1978年なので、わたしがよくお参りしていた頃はまだ合祀されていなかったわけで、一般的には戦争で亡くなった人々が祀られているという認識だったと思うのですが。
もしくは、知り合いが戦争で亡くなっていたのかな。(身近な親戚の中には確かいなかったはずだけど・・・)



そんなわけで、昔はよくお参りに行っていたのに、九段坂病院に行くこともなくなってからかそれ以降全然ご無沙汰だったので、毎年8月15日があんなことになっているとは、この映画を観るまで全く知りませんでした。


映画は大きく分けるとすると2つのパートがあって、その1つがこの終戦記念日の靖国神社の姿を10年にわたって中国人監督李纓氏が取材したドキュメンタリー映像なのですが、その光景はとても特異な空間に見えました。

右翼の人々、まるでコスプレのようにかつての陸軍や海軍の軍服を着て参拝する集団、小泉元首相の靖国参拝を批判する人々、逆にわざわざアメリカから来て小泉元首相を支持すると星条旗とともにメッセージボードを掲げるアメリカ人、純粋に戦死した家族を哀悼している人々、たぶん外国から見物に来ているような人、興味津津でカメラを向ける人たち・・・

様々な立場の人がごっちゃになって、靖国神社の肯定派、否定派、それぞれの考えがぶつかり合う様は、普段の穏やかでうららかな靖国神社と全く違ってとても現代の日本とは思えない光景で圧倒されてしまった。。
わたし的には、了承得て撮ってるのー??と気になるほど、皆顔出ししているわけですが、実際皆さん撮られることに慣れている人たちも多いのだとか。
(でも政治家達はどうなんだろう??という疑問はあり・・・試写を経ているのだから了承しているのかな?)


この靖国神社でのドキュメンタリー部分は、後半には不本意に日本人であるかのように一緒に合祀されてしまった台湾人遺族や韓国人遺族が「合祀された魂を返せ」と詰め寄るシーンや、日本人遺族の中にも、無理やり戦争に駆り出されしかも侵略戦争だったのに英霊として祀られるのは了承できないと、名前を削除するよう訴える遺族たちなど、靖国問題が抱えるいろいろな側面も映し出しています。
基本的にはすべてを客観的に、ありのまま淡々と撮っている気がしました。。



もう1つのパートは、公開間際に出演シーンのカットやクレジット削除を求めて話題になった、靖国神社のご神体の1つであるらしい「靖国刀」を製作した刀匠刈谷直治氏などを取材及びインタビューするシーン。
特に日本刀に関する取材は、最初から靖国神社のシーンの合間合間に繰り返し登場します。

この問題は解決したのかしてないのか、なんとなくうやむやになっているし、本当のところはよくわかりません。
ただ、刀を創るプロセスを写すシーンはとても神々しいし、和やかなムードの中でインタビューするシーンにも、日本の美意識に非常にリスペクトを示していたような気がしました。。

とはいえ、多少取材対象に言葉で語らせようと誘導しているような、意図して質問していたような気もしないでもないこと、そして見方によっては李監督が刀を単に人を斬るための道具として捉えているように受け取られかねない部分は気になるところ。。
そのあたり、監督はインタビューなどで「武器であると同時に日本人の美意識と武士道の象徴であるからこそ両面を見なければならない」と語っていたので、少し説明不足かなーとは感じます。


・・・刀匠がときどき沈黙する場面は非常に印象的でした。
語れない、言葉にできない想いというのを想像するとき、靖国という日本人にとっては単なる神社ではない場所について、より思いを馳せるような気がします・・・


インタビューを受けた方の中のもうお一人、浄土真宗の僧侶である菅原龍憲氏が語った「遺族は合祀されることに本意ではないのに、国策で勲章まで与え、誉め称えて国に文句を言わせない・・・“倒錯した構図”と言える」というような意味の言葉がとても説得力があり、わたしはなんとなく心にストンと納得しました。

あと気になったのは、昭和天皇はA級戦犯が合祀されたことが明らかになって以降は参拝されていないのに、描かれ方が曖昧だったところでしょうか。



映画を観ていて一番感じたのは、いろんな問題を根深くしている一因には、様々な局面での、言葉足らず・説明不足・コミュニケーション不足、があるんじゃないかということでしょうか。
合祀したときも、元首相が「心の問題」と言ったことも、出演者が削除を求めるようなことになったのも。。


映画は資料や文献として観ていた感覚でした。
心が揺さぶられるような感動の場面があったかというと、ちょっと微妙です。
でも決して上映時間の2時間強は飽きることはなかったし、劇場でも皆食い入るように観ていたようでした。
もっとも劇場のシートの段差がゆるくて、前の席に座高の高い人が座った日には、乗り出さないと見えない部分もあったのですけども。(苦)



・・・ということで、今回は映画としての評価は見送ります。
ただ、おそらく日本人の大半が知っているようで正確には理解していないであろう靖国問題を、改めて考えるきっかけになる映画ではあると思います。。


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6 コメント

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こんばんは♪ (ミチ)
2008-05-22 23:18:20
ルールーさん、見てきましたよ!
いつも空いてるミニシアターなのでノンビリと見に行ったら、なんと整理券発行されるほどの超満員!
今日で公開6日目なんですけど、相変わらず超満員みたいです。
あの上映ボイコットが逆に宣伝効果になったよね~。

なかなか上手く感想も書けなかったし、あと、映画としての評価も出来かねる作品でした。
ルールーさんはちゃんと書いておられるけど、あの浄土真宗のお坊さんの言葉はかなりストンと納得できましたね~。
私なんて単純だから、「魂を返せ」と仰っている方々にはちゃんと返してあげたらいいし、戦犯は削除して欲しいなと思うのだけど・・・。もちろんそんな単純な問題ではないのだけどね(汗)

あと、日本刀がいかにも虐殺の道具みたいな編集はあまり好ましくなかったし、天皇のイメージもあまり良くなかったと感じました。
うーん、なんとも難しいですよね~。
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ミチさん♪ (ルールー)
2008-05-24 09:49:47
こんにちは~☆
ミチさんち方面でも相当盛況だったようですね。
東京もキャパの狭い上映館なので、大変みたいです。
みたいですと他人事なのは、夕方の整理券をわざわざ正午頃取りに行ったのはダーリンだから。(^^;;;
あと、こちらでは映画館の外部に警官と警察車両が待機していたり、劇場内にも強面の警備員と係員が上映中ずっと劇場内を監視していたり、物々しい雰囲気でした。

なかなか上手く感想書けなかったというの、なんとなくわかります。
「映画としてどう感じたか」という素直な感想と、この映画が上映されるにあたって問題になっていることや、あるいは靖国問題そのものとなんだかごっちゃになりそうで。

>私なんて単純だから、「魂を返せ」と仰っている方々にはちゃんと返してあげたらいいし、戦犯は削除して欲しいなと思うのだけど・・・。もちろんそんな単純な問題ではないのだけどね(汗)

そうなんですよねー。
合祀は国策だから、国のやってきたことを正当化するために、今後も誰も責任を取らないままうやむやになる気がします。。
そもそもA級戦犯が合祀されたことも、ひっそりといつの間にかされたことで、このあたり十分に協議されないままだったのが今になってこんな問題になっているわけで、本当に日本人てコミュニケーションとか下手なんだなーと思いますわ。

日本刀の部分は、最初に作る過程は非常に芸術に対するリスペクトが感じられたけど、最後のいろんな写真の編集はどうかなーという感じでした。
言葉による説明も少なかったし、外国人の方々が観たら鵜呑みにしそうなところはありましたね。
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異様 (kossy)
2008-05-25 20:39:31
コスプレも異様な雰囲気でしたが、映画館内も異様な沈黙。でも隣のおっさんは開始5分してイビキをかきはじめていた・・・
俺的にはむちゃくちゃ面白かったです。パンフも非公式ガイドブックも買っちゃったし、俺も異様な反応なのかも・・・
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kossyさん♪ (ルールー)
2008-05-27 00:36:40
こんばんは☆コメントありがとうございます。

東京では警官が待機していたり、なかなか物々しい雰囲気でしたが特にな~んにもありませんでした。
隣のおじさんは、右翼系の人々の行動にいちいち大笑いしていましたけど、全体的には皆さん食い入るように観てましたね。

それで非公式ガイドブックってなんですかー?
混雑していてパンフレットすら見なかったんですー

映画に関しては、記録映画を観ている感覚でしたけど、靖国問題を改めて考えるキッカケになって、なかなか見応えありましたね。
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TBありがとうございます (ryoko)
2008-06-01 12:25:41
はじめまして。
大阪出身なので靖国は遠い存在でした。
普通の日に行ったので鳥居の大きい普通の神社でしたが、8月15日はこんなことになっちゃうんだと驚きました。
A級戦犯合祀からいろんなことがごっちゃになって、それぞれの主張を伺うと…う~ん、解決できそうにありませんね。

>いろんな問題を根深くしている一因には、様々な局面での、言葉足らず・説明不足・コミュニケーション不足、があるんじゃないか
そうですね、戦後処理をうやむやにしてきたことと、折角落ち着いても政治家の失言(ご本人は本心で正しいと思っているからたちが悪いですが)で振り出しに戻っていますね。

よろしくお願いいたします。

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ryokoさん♪ (ルールー)
2008-06-03 00:34:35
はじめまして☆コメントありがとうございます♪

わたしは小さい頃靖国神社はとても馴染み深い場所だったのですけど、近年とんとご無沙汰していたのであんなことになっているとはとびっくりしました。
それぞれの立場の人のいろんな意見を聴いていると、すべての人が納得するような解決法は永遠にありえないような気がしてきますよね。
哀しいことですが・・・

本当に日本はいろんなことをうやむやにして来て、そのツケが今膨大な問題となっているんだと思いますわ。
政治家たちの失言には、ホント閉口しちゃいますね。
危機管理がなさすぎるのか、確信犯なのか、はたまた本気でそう思っているのか・・・
たぶん映画にも出てきた例の議員などは、本気でああいう思想なんでしょう。

ということでこちらこそこれからもよろしくお願いします。
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