探し物は・・・

何かを探して見つからない時、悲しくなるけれど
探すものがあるって、それだけで、すてきなこと 

謎の1カット

2007年02月15日 | Movie T.K.

『ウインター・ソング』の大陸版DVDを見ながら、ついつい映画館で気になっていたあれやこれやをチェックしてしまいます。その中の一つ、これはどういう意味があるんだろうと、首をひねる1カット。
10年前の北京の冬。女優になって上を目指すため、アメリカ人プロデューサーについて行くという孫納(周迅さん)は、林見東(金城さん)と二人暮らした部屋から出て行きます。「見送らないで」と言われ、暗い部屋の隅でうつむく林くん。
それでもあきらめきれず、半地下の部屋の小さな高窓から必死に外を覗くと、それに気付いた孫納が立ち止まります。やはり、彼女にもためらいがあるのかと思わせる一瞬の間のあと、彼女の足は、いきなりその窓に向かって雪を蹴散らすのです。映画館で見ている時、スクリーン越しにもその冷たい雪が飛んで来るように感じるほど、衝撃を受けました。

走り去る孫納の姿が見えなくなると、いきなり、黒い車のアップが飛び込んできます。これが気になる1カット。その車の止まったところは"民族飯店"の前。ぴかぴかの黒い車体に赤い文字が映りこんでいます。そして、暗転。また、林くんが高窓から雪の降る外を眺めているシーンへ。孫納の足あとを隠すように雪が降り積もっていきます。さらに暗転、今度は凍った川の上で凍える孫納。そこから、試写室でその場面を一人見ている10年後の孫納へ(彼女は、林見東を呼び出して、待っているところですね)。その回想のように、帰国するアメリカ人プロデューサーが、彼女を無視してホテルの前から車に乗り込むシーンに飛びます。
このあたりは、シーンごとに時間も視点も次々変わっていく感じですね。"民族飯店"というのは、アメリカ人プロデューサーが泊まっていたホテルだと思うんですが、あの車は、ホテルの外で彼を待っていた孫納の目の前に、スッと止まったのかもしれません。アメリカに行けば売れっ子女優になれるんだと、何もかも捨て、精一杯のおしゃれをしてきたけれど、そんな彼女に、あのぴかぴかの高級車は似合わない。あの車に彼女のためのシートはない。彼女をまるで存在しないかのようにあしらう、アメリカ人プロデューサーの、お金と権力の象徴のようです。

こんなにこだわる必要はないんじゃない?と自分でも思うのですが、膨大な撮影フィルムから106分だけを切り取った中に、こうして残してある1カットだけに、気になるんです。
ピーター・チャン監督は一体どんな意図で、こんなふうに編集したのか、聞いてみたいですね。


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2 コメント

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涙・・・ (nao)
2007-02-15 15:03:06
ゆきんこさん、こんにちは

車の場面は、車からすぐスンナーが追いかけていったホテルの場面にいくものだと、ゆきんこさんの文章を読みながら考えていました。
そんなに愛大にいろんな場面が入るなんて、本当にどんな意図があるのでしょう。

窓越しに雪をバサッとかけられるシーンは何度観ても泣いてしまいました。
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周迅さんの涙 (ゆきんこ)
2007-02-15 23:02:20
naoさん

窓越しに雪をけちらすシーン、初めて見たときは、ほんとうに息を飲みました。こんなことをするなんて、まるで犬以下の扱いじゃないかと・・・
でも、何度か見るうちに、孫納自身、罪悪感があって、こうでもしないと思い切れなかったのかもしれないと感じるようになりました。
この後のシーンで、アメリカ人プロデューサーに無視されて、それでも車を追いかける孫納を演じたとき、周迅さんは彼女が哀れでならなかったと言っていましたね。このシーンの撮影後、部屋で泣いてしまったという周迅さんの話を聞いたからでしょうか、あの雪を蹴散らす孫納にも、少し感情移入してしまいます。
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