今日で夏休みが終わる。
最後に私は彼に会いに行く。
私の原点であり忘れられない存在である彼に。
空港から程近い場所にある閑静な地。
そこで彼は暮らしている。
この時期は暑さと虫対策で放牧をしていない。
でも、我々のために一日二回、近くまで来てくれる。
私は自然の空気を吸いながらのんびりと待つことにした。
ふと気づけば彼が歩いてきた。
この閑静な雰囲気に溶け込むように。
穏やかな空気を身に纏い近くに来るまで気配を感じなかった。
彼は涼しげな視線を時折遠くに向けゆっくりと私の前に来てくれた。
彼の前にたちまち人が集まってくる。
皆、彼の姿を写真に収めている。
彼は立ち姿のまま静かに佇んでいる。
今、自分がすべき事を分かっているようだ。
やがて、我々へ体を向け悠然と草を食む。
時折、顔を上げてこちらへ視線を移す。
手を伸ばせば届く位置に彼の顔が近づく。
会いたくてたまらなかった彼。
その彼が今、目の前に居る。
不思議と胸の高鳴りは無い。
ほっとした気持ちで胸が満たされて行く。
あっという間に時が過ぎ彼が帰る時間になる。
彼がゆっくりと来た道を歩いて行く。
現役時代と変わらぬ雲の上を歩くような足取りで。
別れが惜しいとか哀しいという気持ちは沸いてこない。
彼はここに居る。
私の中にも居る。
これは別れでは無い。
心からそう思える。
彼の姿が遠ざかって行く。
少しずつ彼が小さくなって行く。
私は彼が見えなくなるまで見つめていた。
いつまでもいつまでも彼の背中を見つめていた。
彼の姿が見えなくなっても。
いつまでもずっと。
つかの間の休息が終わろうとしている。
私は何を求めてこの地に来たのだろうか。
私はこの地で何を得たのだろうか。
それは帰らなければ分からないのだろう。
旅の最後は必ず帰ることなのだから。
帰る場所があるから旅立てるのだろう。
終わりの無い旅では先が見えないのだから。
私は自分の場所に帰る。
今、自分の居る場所に。
例え自ら望んだ場所で無くても。
その場所に居るということが今の自分自身なのだから。
帰ってからは自分の場所を探し続けるのだろう。
見つかるのかは分からない。
初めから存在しないのかも知れない。
それでも私は探し続ける。
自分の帰る場所を。
最後に私は彼に会いに行く。
私の原点であり忘れられない存在である彼に。
空港から程近い場所にある閑静な地。
そこで彼は暮らしている。
この時期は暑さと虫対策で放牧をしていない。
でも、我々のために一日二回、近くまで来てくれる。
私は自然の空気を吸いながらのんびりと待つことにした。
ふと気づけば彼が歩いてきた。
この閑静な雰囲気に溶け込むように。
穏やかな空気を身に纏い近くに来るまで気配を感じなかった。
彼は涼しげな視線を時折遠くに向けゆっくりと私の前に来てくれた。
彼の前にたちまち人が集まってくる。
皆、彼の姿を写真に収めている。
彼は立ち姿のまま静かに佇んでいる。
今、自分がすべき事を分かっているようだ。
やがて、我々へ体を向け悠然と草を食む。
時折、顔を上げてこちらへ視線を移す。
手を伸ばせば届く位置に彼の顔が近づく。
会いたくてたまらなかった彼。
その彼が今、目の前に居る。
不思議と胸の高鳴りは無い。
ほっとした気持ちで胸が満たされて行く。
あっという間に時が過ぎ彼が帰る時間になる。
彼がゆっくりと来た道を歩いて行く。
現役時代と変わらぬ雲の上を歩くような足取りで。
別れが惜しいとか哀しいという気持ちは沸いてこない。
彼はここに居る。
私の中にも居る。
これは別れでは無い。
心からそう思える。
彼の姿が遠ざかって行く。
少しずつ彼が小さくなって行く。
私は彼が見えなくなるまで見つめていた。
いつまでもいつまでも彼の背中を見つめていた。
彼の姿が見えなくなっても。
いつまでもずっと。
つかの間の休息が終わろうとしている。
私は何を求めてこの地に来たのだろうか。
私はこの地で何を得たのだろうか。
それは帰らなければ分からないのだろう。
旅の最後は必ず帰ることなのだから。
帰る場所があるから旅立てるのだろう。
終わりの無い旅では先が見えないのだから。
私は自分の場所に帰る。
今、自分の居る場所に。
例え自ら望んだ場所で無くても。
その場所に居るということが今の自分自身なのだから。
帰ってからは自分の場所を探し続けるのだろう。
見つかるのかは分からない。
初めから存在しないのかも知れない。
それでも私は探し続ける。
自分の帰る場所を。