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lightwoブログ

競馬のスポーツとしての魅力や、感動的な人と馬とのドラマを熱く語ります。

DIVA

2006-01-03 07:33:54 | 心に残る名馬たち
昨年、春の盾に挑んだ豪州の牝馬。
豪州最大のレース、メルボルンC連覇の実績を誇ったこの馬。
人気を集めながらも上位争いに加わることは出来なかった。

日本での結果を見れば特別凄い馬だとは思えない。
しかし、彼女は多くの人々の記憶に名を刻んだ歴史的名牝なのである。

日本遠征から帰国後、約4ヶ月の休養を挟みレースに復帰する。
3戦叩きコックスプレートに挑む。

豪州最大のレース、メルボルンCはハンデ戦。
いわばお祭り色の強いレースである。
ワールドシリーズにも名を連ねるコックスプレート。
別定戦のこちらは事実上の豪州最強馬決定戦とも言えよう。

一線級の牡馬が顔を揃える中、圧倒的人気に応え圧勝。
南半球の数え方では7歳となる彼女。
7歳牝馬による勝利は61年振り史上2頭目の快挙であった。
また、この勝利により豪州の歴代最高賞金収得馬となった。

こうして迎えたメルボルンカップ。
レース当日は「国全体がストップする日」とも言われる国民的イベント。
歴代優勝馬が街中をパレードしたりと何日も前から街は大賑わい。
開催地のヴィクトリア州では、その日が祝日となる程である。

145回の歴史を誇るこのレースを3連覇した馬は居ない。
その歴史的快挙に彼女は58キロという酷量のハンデを背負い挑んだ。

最後の直線で馬群を力強く抜け出す。
58キロの斤量などものともせずに。
圧倒的人気と国民の期待に応えるように。
13万人の観衆が歓喜の声を轟かせる。
そのまま彼女は先頭でゴールし歴史は作られた。

レース直後に行われる馬上でのインタビュー。
手綱を取った騎手は感極まっていた。

「もの凄く感動して言葉にならない」
「彼女が私に自身を与えてくれた」

震える声でそう語った。

観客は何度も何度も彼女の名を連呼し彼女を讃える。
騎手は体全体で何度も何度も喜びを表し歓声に応える。
その喧騒はいつまでも止むことは無かった。

レースの20分後に行われた優勝馬主のスピーチ。
そこで再びレース直後と同じ歓声が上がった。

「これ以上を彼女に求めるのはフェアではありません」
「今日をもって彼女は現役を退きます」

誰もが予想だにしなかったこの発言。
陣営も予定していなかったこの決断。
この鮮やかな引き際を観衆は涙と拍手と喝采で祝福した。
それは彼女が歴史的名牝として人々の記憶に名を刻んだ瞬間だった。