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lightwoブログ

競馬のスポーツとしての魅力や、感動的な人と馬とのドラマを熱く語ります。

嫌いな馬

2005-11-07 22:14:06 | 心に残る名馬たち
好きの反対は嫌いではない。
本当にどうでも良い相手には無関心になるはず。
寧ろ好きと嫌いは紙一重である。

私はその馬が嫌いだった。
その年のクラシック戦線は三強と言われる馬たちが凌ぎを削っていた。
それぞれにタイトルを分け合い、来年もレベルの高い争いが観られるものと思っていた。
しかし、翌年の古馬戦線は三強の中の一頭に独占されてしまう。
その戦犯とも言えるのがこの馬だった。

三頭の内の一頭は脚部不安で早々に戦線離脱した。
よって二強のライバル対決になるはず。
だが、何度戦っても勝者は変わらずとても好敵手とは呼べない状況。
秋には後から台頭してきた上がり馬にその座すら奪われてしまう。

何度走っても勝つことができず。
そんな成績から秋の王道路線のG1を除外され。
確勝を期した王者不在のレースすら勝ちきれず。
そんな情けない姿が私は嫌いだった。

次の年、この馬は復活を遂げる。
得意の距離でのブッチ切りのレコード勝ち。
王者への挑戦権を再び手に入れたと言えるその勝利。
私の中でこの馬に対する風向きが少し変わった瞬間だった。

続く春の盾。
王者は前哨戦で敗れ嫌な流れ。
一方、この馬は前走久々の勝利で勢いがある。
勝つならここしかない。

だが、無常にもこの馬の苦手とする雨に祟られる。
それでも4角で先頭に立つ勢いの積極的なレースで勝ちに行った。
最後に差されてしまったが、戦って敗れたその姿は男らしさを感じた。

その年の秋は散々だった。
落馬のアクシデントに見舞われ盾を使えず。
昨年除外されたレースは満足とは言えない状態での出走。
レースでもこの馬らしくない後方からの競馬。
完全に運に見放されたような流れ。
それでも直線よく追い込んで3着に入って見せた。
その走りに胸が熱くなった。

結局、古馬になってからはライバルに一度も勝てず。
大きく水を開けられたまま先に引退されてしまう。
現役に留まったこの馬をもはや主役と呼ぶものは無く。
台頭してきた新しい世代が翌年の古馬戦線では注目されていた。

そんな時代の流れに異を唱えるようにこの馬は勝った。
重い斤量を背負いながらも。
新しい世代の代表格の年度代表馬相手でも。
引退したライバルの名誉を守るためにも負けるわけにはいかない。
そんな意地を見せ付けられ私はこの馬を応援せずにいられなかった。

その後、結局大レースを勝つことができなかった。
それでもその堂々たる走りは清々しかった。
私の中でこの年の古馬戦線の主役はこの馬以外考えられなかった。


今日、私の大好きだったこの馬がこの世を去った。