goo blog サービス終了のお知らせ 

lightwoブログ

競馬のスポーツとしての魅力や、感動的な人と馬とのドラマを熱く語ります。

芦毛の最強ステイヤー

2006-04-03 22:22:46 | 心に残る名馬たち
私の競馬の原点。
この馬のことを考えるとそんな言葉が思い浮かぶ。

私が初めて観たレースは競馬界の祭典。
皇帝の息子が父の足跡を追うように圧勝したあの場面。

次に観たのがこの馬の圧勝劇。
いや、幻の勝利だった。

泥んこの馬場を力強く抜け出し、後続をどこまでも突き放す。
実況では「強すぎると」言われたその走り。
ここで初めて降着という言葉を知ったのだった。

その後も世界を相手に決め手の無さを露呈したレース。
思いも寄らない伏兵に脚元を掬われたグランプリ。
古馬の最強とはこんなものかと思ってしまった。

その翌年の春の盾。
私が初めて観たレースを勝った馬は無敗で駒を進めてきた。
当然私はその馬が勝つことを期待していた。

だが、芦毛のステイヤーはそんな希望を木っ端微塵に打ち砕いた。
3コーナーからスパートしての真っ向からの力の勝負。
堂々とした王者の走り。
史上初の天皇賞・春連覇。
この時、初めてこの馬の強さを思い知った。

それからはこの馬を常に応援し続けた。
距離不足かと心配した復帰戦での持ったままの圧勝劇。
三連覇に挑みながらも関東の刺客に敗れた三度目の盾。
役者が違うと言わんばかりの春のグランプリ。

どれも主役で勝っても負けてもその存在感を示し続けた。

そして、あの世紀の大降着を払拭するための前哨戦。
いつものように競馬の王道とも言える正攻法。
3コーナーからスパートし、4コーナーでは先頭。
直線では後続に影をも踏ませない。
競馬界の主役とはこういうものだと。
言わんばかりに強さのみを見せつける。
そして、それはゴール後に再び思い知らされる。
勝ちタイム2分22秒7。
スタミナだけではないスピードまでもまざまざと見せ付けたのだった。

遅咲きのステイヤーは6歳秋にして完成された。
絶対に今年こそこの馬が秋の盾を制する。
3年越しの雪辱を果たす。
そう思っていた。

だが、秋の盾への追い切り直後。
左前繋靭帯炎を発症。
即座に引退が決定した。

これを聞いたときに私は呆然としてしまった。
心に穴が空いてしまったような。
映画の主役が突然居なくなってしまったような。
とにかく彼の走りがもう観られないのが寂しくて仕方が無かった。

それからは彼の仔に期待していた。
脈々と続く内国産の血。
親子四代天皇賞制覇の夢。
観客に夢と希望を与え続ける。
ターフを去っても彼は私の心の名優だった。

あれからいつの間にかかなりの年月が流れた。
お互いに若いつもりが年をとった。
もう、こんな日が来てもおかしくは無かったんだよね。

ステイヤーという言葉はもはや時代遅れかもしれない。
春の盾の権威も随分と廃れてきた。
それでも君の残した足跡は決して色褪せることは無い。

古き良き時代。
それを懐かしく感じるときはいつも君を思い出すから。
私の競馬の原点は君だから。