私の競馬の原点。
この馬のことを考えるとそんな言葉が思い浮かぶ。
私が初めて観たレースは競馬界の祭典。
皇帝の息子が父の足跡を追うように圧勝したあの場面。
次に観たのがこの馬の圧勝劇。
いや、幻の勝利だった。
泥んこの馬場を力強く抜け出し、後続をどこまでも突き放す。
実況では「強すぎると」言われたその走り。
ここで初めて降着という言葉を知ったのだった。
その後も世界を相手に決め手の無さを露呈したレース。
思いも寄らない伏兵に脚元を掬われたグランプリ。
古馬の最強とはこんなものかと思ってしまった。
その翌年の春の盾。
私が初めて観たレースを勝った馬は無敗で駒を進めてきた。
当然私はその馬が勝つことを期待していた。
だが、芦毛のステイヤーはそんな希望を木っ端微塵に打ち砕いた。
3コーナーからスパートしての真っ向からの力の勝負。
堂々とした王者の走り。
史上初の天皇賞・春連覇。
この時、初めてこの馬の強さを思い知った。
それからはこの馬を常に応援し続けた。
距離不足かと心配した復帰戦での持ったままの圧勝劇。
三連覇に挑みながらも関東の刺客に敗れた三度目の盾。
役者が違うと言わんばかりの春のグランプリ。
どれも主役で勝っても負けてもその存在感を示し続けた。
そして、あの世紀の大降着を払拭するための前哨戦。
いつものように競馬の王道とも言える正攻法。
3コーナーからスパートし、4コーナーでは先頭。
直線では後続に影をも踏ませない。
競馬界の主役とはこういうものだと。
言わんばかりに強さのみを見せつける。
そして、それはゴール後に再び思い知らされる。
勝ちタイム2分22秒7。
スタミナだけではないスピードまでもまざまざと見せ付けたのだった。
遅咲きのステイヤーは6歳秋にして完成された。
絶対に今年こそこの馬が秋の盾を制する。
3年越しの雪辱を果たす。
そう思っていた。
だが、秋の盾への追い切り直後。
左前繋靭帯炎を発症。
即座に引退が決定した。
これを聞いたときに私は呆然としてしまった。
心に穴が空いてしまったような。
映画の主役が突然居なくなってしまったような。
とにかく彼の走りがもう観られないのが寂しくて仕方が無かった。
それからは彼の仔に期待していた。
脈々と続く内国産の血。
親子四代天皇賞制覇の夢。
観客に夢と希望を与え続ける。
ターフを去っても彼は私の心の名優だった。
あれからいつの間にかかなりの年月が流れた。
お互いに若いつもりが年をとった。
もう、こんな日が来てもおかしくは無かったんだよね。
ステイヤーという言葉はもはや時代遅れかもしれない。
春の盾の権威も随分と廃れてきた。
それでも君の残した足跡は決して色褪せることは無い。
古き良き時代。
それを懐かしく感じるときはいつも君を思い出すから。
私の競馬の原点は君だから。
この馬のことを考えるとそんな言葉が思い浮かぶ。
私が初めて観たレースは競馬界の祭典。
皇帝の息子が父の足跡を追うように圧勝したあの場面。
次に観たのがこの馬の圧勝劇。
いや、幻の勝利だった。
泥んこの馬場を力強く抜け出し、後続をどこまでも突き放す。
実況では「強すぎると」言われたその走り。
ここで初めて降着という言葉を知ったのだった。
その後も世界を相手に決め手の無さを露呈したレース。
思いも寄らない伏兵に脚元を掬われたグランプリ。
古馬の最強とはこんなものかと思ってしまった。
その翌年の春の盾。
私が初めて観たレースを勝った馬は無敗で駒を進めてきた。
当然私はその馬が勝つことを期待していた。
だが、芦毛のステイヤーはそんな希望を木っ端微塵に打ち砕いた。
3コーナーからスパートしての真っ向からの力の勝負。
堂々とした王者の走り。
史上初の天皇賞・春連覇。
この時、初めてこの馬の強さを思い知った。
それからはこの馬を常に応援し続けた。
距離不足かと心配した復帰戦での持ったままの圧勝劇。
三連覇に挑みながらも関東の刺客に敗れた三度目の盾。
役者が違うと言わんばかりの春のグランプリ。
どれも主役で勝っても負けてもその存在感を示し続けた。
そして、あの世紀の大降着を払拭するための前哨戦。
いつものように競馬の王道とも言える正攻法。
3コーナーからスパートし、4コーナーでは先頭。
直線では後続に影をも踏ませない。
競馬界の主役とはこういうものだと。
言わんばかりに強さのみを見せつける。
そして、それはゴール後に再び思い知らされる。
勝ちタイム2分22秒7。
スタミナだけではないスピードまでもまざまざと見せ付けたのだった。
遅咲きのステイヤーは6歳秋にして完成された。
絶対に今年こそこの馬が秋の盾を制する。
3年越しの雪辱を果たす。
そう思っていた。
だが、秋の盾への追い切り直後。
左前繋靭帯炎を発症。
即座に引退が決定した。
これを聞いたときに私は呆然としてしまった。
心に穴が空いてしまったような。
映画の主役が突然居なくなってしまったような。
とにかく彼の走りがもう観られないのが寂しくて仕方が無かった。
それからは彼の仔に期待していた。
脈々と続く内国産の血。
親子四代天皇賞制覇の夢。
観客に夢と希望を与え続ける。
ターフを去っても彼は私の心の名優だった。
あれからいつの間にかかなりの年月が流れた。
お互いに若いつもりが年をとった。
もう、こんな日が来てもおかしくは無かったんだよね。
ステイヤーという言葉はもはや時代遅れかもしれない。
春の盾の権威も随分と廃れてきた。
それでも君の残した足跡は決して色褪せることは無い。
古き良き時代。
それを懐かしく感じるときはいつも君を思い出すから。
私の競馬の原点は君だから。