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競馬のスポーツとしての魅力や、感動的な人と馬とのドラマを熱く語ります。

第11回NHKマイルカップ

2006-05-07 18:54:01 | 競馬観戦記
先日、衝撃のニュースが競馬界を駆け抜けた。
現役トップダートホースの電撃トレード。

移籍先は世界の競馬界を席巻し続けている中東の巨大競馬グループ。
お膝元であるドバイでの圧勝劇。
あの走りが殿下の目に叶ったのは言うまでも無い。

オーナーは種牡馬としての将来性を鑑みて決断した。
調教師も自分の息子が出世するような気持ちと喜んだ。
だが、この馬を毎日世話してきた厩務員は複雑な気持ちだった。

2歳の頃から6歳まで一緒に歩んできた。
スランプに陥り惨敗を繰り返したときも。
交流重賞で様々な地方競馬場へ遠征したときも。
そして、もちろん海外遠征でも。

苦楽を共にした相棒が突然居なくなってしまったのだ。
喜びよりも寂しさの方が大きい事は想像に難くない。

そんな姿を気に留めていた男が居た。
その厩務員のもう一頭の担当馬でレースに出走する騎手である。
気を落とす彼に「今回は勝ちます」と約束した。
そのレースが今日行われたG1レースだった。

道中は中団馬群の真っ只中につける。
4コーナーではいつの間にか内ラチ沿いを上がってくる。
そして、先に抜け出した馬に馬体を併せ叩き合いを制する。
騎手の腕がものを言ったかのようなこの結果。
それは有言実行の勝利だった。

馬が地下馬道へ引き上げてくる。
それを迎える厩務員は鞍上の男の手を握った。
そのときの二人は満面の笑顔だった。

第18回かしわ記念

2006-05-05 19:51:30 | 競馬観戦記
さつき晴れの暖かな日差し。
陽気に誘われ競馬場まで歩いてみる。

ダミ声を張り上げる予想屋。
売店で売られているもつ煮。
ここはホームグラウンド。
訪れる度にそんな感慨を受ける。

昨年より始まった交流G1。
ホームのこの場所ではやはり地元の馬を応援したくなる。
ましてや今日は地方のエースが出走する。
中央のエリート達に負けて欲しく無い。
そんな気持ちにさせられる。

パドックで馬を待つ傍ら、横断幕に眼をむける。
そこで思わず笑ってしまった。

「にげうまだもの」
「つまづいたら 不利じゃないか にげうまだもの」
「はなにたつただひたすらに にげうまだもの」

著名な書家にして詩人の作品のパロディ。
キチンと筆跡も真似てある。
同じような名前を持つあの馬への応援メッセージ。
ほのぼのとしていて心が温まる。
そうこうしている間にパドックに出走馬たちが現れた。

13頭がどこを歩いていても見える小ささ。
手を伸ばせば届きそうな馬との距離。
馬が身近に感じられるのが地方の醍醐味。
やはりここはホームグランドなのである。

雄大な馬体を誇る地元のエースは頼もしく見える。
中央馬相手でもきっと負けない。
そんな期待を抱かせてくれる。

騎手を乗せ全馬本馬場へ向った。

外ラチ沿いでダクを踏む。
地方馬はそうして落ち着かせてから調教を始める。
うろ覚えだが昔、どこかでそんな話を聞いた気がする。
その為か本馬場入場時も地方馬はスタンドの近くに来てくれる。
地元のエースはチャカチャカしながら目の前を通り過ぎる。
一方、中央馬は直ぐに返し馬に入りあっという間に居なくなる。
このシーンだけ取っても、地方馬に愛着が沸いて来る。
やはりホームでは地元の馬なのだ。

スタンドはこの競馬場らしからぬ人込み。
こんな光景は一年にこのレース一度きり。
多くの人が待ちわびたゲートが開いた。

内々の2番枠から地元のエースが飛び出す。
直ぐ外の地元の強豪逃げ馬はややもたつき加減。
その隙を突き一気にハナを主張し前へ。
1コーナーを先頭で回る。

そのまま小細工無しの早いペースで馬群を先導する。
来るなら来いと言わんばかりのこの戦法。
頑なで不器用なレース運びはどこか郷愁を感じる。
そんな力勝負の戦いは胸躍る。

向正面の後方馬群から一頭もの凄い勢いで追撃を始める。
中央馬の筆頭格にして短距離ダート界現役最強馬。
昨年、名古屋での交流G1を制した時と同じように仕掛けて来た。
3~4コーナーでは更に加速し2番手まで押し上げる。
4コーナーでは逃げ馬を遂に捕らえるかという勢い。

交わされる。

一瞬、私はそう覚悟した。
だが、先頭を行く人馬はそんなことは微塵も思わなかっただろう。
なぜなら、抜群の手ごたえで手綱を抑えたままだったのである。
4コーナーを回ったところで満を持して追い出しに掛かった。

雄大な馬体が躍動する。
大きなストライドで力強く前へ進む。
全身で強さを誇示するかのように。
並ばれたかと思われたそのとき。
一気に突き放した。

負けじと足を伸ばそうとする中央のダート短距離王。
だが、その差は詰まらない。
G1を制したあの時と同じ脚を使っているはず。
それでも前を行く地元馬を捕らえられない。
やがて、負けを認めたように内側に寄れた。
まるで力尽きたかのように。

地元のエースが先頭を走る。
地元のG1という大舞台で。
地元の人たちの大声援に後押しされて。

鞍上がその手に握る鞭と共に右腕を高らかに上げた。
そして、皆が見守るゴール板を駆け抜けた。
その瞬間はスタンド全体が祝福ムードに包まれた。

レース後、スタンドの片隅に人が集まる。
中央とは比べ物にならない小さなウィナーズサークル。
皆、地元の馬が勝ったのが嬉しそうに表彰式を見守る。

「よくやってくれた」
「がんばったなー」

そんな歓声が聞こえてくる。
こじんまりとしたセレモニー。
だが、充実感は中央のそれに決して負けてなかった。
その光景は今日の陽気のように暖かかった。

第133回天皇賞(春)

2006-04-30 22:16:21 | 競馬観戦記
桜の鮮やかな緑がまぶしい。
ついこの間、満開を迎え儚く散っていったのが幻かのように。
季節の移ろいは驚くほど早く、そして毎年変わらない。
いくら歳月を重ねても新たな季節はどこか胸躍る。
特に厳しい冬を乗り越えたこの時期は尚更。
これから何かが始まるような、そんな期待に満ちている。

競馬に於いてもそれは当てはまる。
寒い時期を戦い抜き選ばれし精鋭が一同に会するクラシック戦線。
3歳戦を終えた強豪がそれぞれの冬を過ごし始動する古馬戦線。
この季節からドラマが始まり、夏を越え秋でクライマックスを迎える。
あの馬の第二章も最初の山場を今日迎える。

半年振りに訪れる京の都。
あの日と同じように電車の中吊りに眼を向ける。
今日の主役を下から見上げた感じの姿とこんなコピー。
「感性だけで観て欲しい」
「200秒のLIVE」
あの日と同じようにしばし眼を奪われてしまった。

車窓の景色を何気なく眺める。
人込みに溢れる正門が見えてきた。
そこで、私は違和感を覚える。
駅から競馬場は距離があったはず。
あんな風景を電車から見られるのだろうか。
ホームに降り立つとその違和感が間違いでは無いことが分かった。

明らかに以前と違う広々とした新しいホーム。
それどころか駅の場所が明らかに違う。
直ぐ目の前に競馬場がある。
京都競馬場といえば古びた小さな駅から住宅街を抜けて辿り着く。
その道のりはどこか懐かしい匂いが漂っていた。
そんな景色も姿を変えた。

正門を潜り抜けるとスタンドの階段が眼に入った。
そこには三冠達成を記念したゴールシーンが描かれている。
当然、半年前には無かったもの。
競馬場も日々姿を変えてゆく。

だが、変わらないものもある。
淀を愛し淀に散った孤高のステイヤー。
彼を祭ったこの場所は今も変わらない。
静かにターフを見守っている。
私は前と同じように全馬の無事を祈った。

スタンドには溢れかえるほどの人、人、人。
春の陽気に誘われたのかあの馬に惹かれたのか。
その両方なのだろうがこの光景はいつ観ても圧倒される。
やはり、スーパースターには大歓声が良く似合う。
それを味わうために現地に足を運んでいるのだから。
その雰囲気は昔から変わらず私の心を震えさせる。

歴史と伝統を誇る春の盾。
かつてはこのレースこそ古馬最高峰。
そう言っても過言では無かった。
誤魔化しの利かない過酷な距離。
そこには紛れは存在せず力と力の勝負となる。
そして、その争いの勝者は最強馬として称えられる。
過去の歴史、なにより自分の記憶がそう物語っている。

しかし、ここ数年は違ってきている。
もはやそんな話は過去のもの。
このレースはその役目を終えつつある。
そんな時代の流れを感じてしまう。

だが、今年は違う。
早くからここを大目標として照準を定めてきた。
一度失った栄誉を回復し胸を張って次の一歩を踏み出す。
その舞台として歴史と伝統を誇るこのレースを選んだのである。
長く競馬を観ていると、その選択に喜びを感じてしまう。
やはり、春の盾は古馬最高峰であって欲しい。
そして、その勝者は彼であって欲しい。
たとえ古い時代の考え方であったとしても。
私の想いを託した馬がターフビジョンに映し出された。

独特の円形のパドックを周回し始める。
最初に少しチャカつき、尻尾をブンブン振り回す。
相変わらずの元気の良さと、その後の落ち着いた姿。
いつもと変わらぬその光景に今日も行けると確信を深める。
調教での動きの悪さなど関係無いと言い切れる。
相変わらず増えてこない馬体ももう気にする必要は無いのだろう。

思えば淀を愛したあの馬も小柄な馬だった。
だが、ひ弱な馬という記憶は無い。
余分なものをそぎ落とした、研ぎ澄まされた鋭さがあった。
そう、体の小ささは決して弱点では無い。
小柄な馬体を含めて彼の個性なのだ。
そして、強いだけではない彼の個性に私は惹かれているのである。
パートナーが跨り列の最後に回って地下道に消えていった。

ターフに彼が姿を見せると大歓声が巻き起こる。
だが、そんなものを意に介せずにサッと返し馬に入る。
首をグッと下げ、ゆったりと脚慣らしを行う。
既に古馬としての貫禄を醸し出している。
その姿には安心感すら感じさせる。

やがて、最高格付競争の始まりを告げるファンファーレが鳴り響いた。
古馬最高峰への扉となるゲートが開いた。

「ピョン」という表現が一番しっくりくるようなスタート。
つまりは出遅れである。
ほぼ最後方の位置取りとなった。

そのままの隊列で一周目のコーナーを回り直線へ入る。
後方から二番手に付けた彼の姿を追う。
そこには今までで一番リラックスして走る姿があった。

あぁ、これなら大丈夫だ。
今までで一番強い走りが観られるのでは。

この時点でそんな予感を感じた。
そして、それは現実のものとなる。

向正面を流す馬たちを前から順番に映し出す。
ようやくこの馬の姿を捉えたと思った瞬間、いつものように始まった。
馬群の外を音も無く、スーッと上がって行く。
その勢いは寧ろいつも以上だ。
あっという間に全馬を抜き去り先頭に踊り立つ。
その位置は何と3~4コーナー中間。

いくら何でも早すぎる。

そんな常識が私の頭に浮かんだ。
それをあざ笑うかのように彼は気持ち良さそうに先頭を走る。
4コーナーを回った。

早すぎる。差される。

後ろから来る実力馬の姿に私は一瞬、狼狽えた。
だが、後続との差は全く詰まらない。
その光景を観て私はこんなことを思った。

この馬には常識なんて関係ないな。
だって、羽が生えているんだから。

彼は飛んでいた。
どこまでも遠くへ。
古馬最強という目標に向って。

いや、そんなものは関係無いな。
飛びたいから飛んでいるのだろう。

それくらい彼は楽しそうだった。
そして、歴史と伝統あるゴールを簡単に飛び越えて行った。

電光掲示板にはレコードの赤い文字。
もはや呆れるしか無かった。



彼は一体どこまで飛ぶんだろう。
あの海の向こうまで飛べるだろうか。
その行方を見守り続けよう。
日本の英雄が飛び続ける限り。
いつまでも。
どこまでも。

第66回皐月賞

2006-04-16 21:17:16 | 競馬観戦記
クラシックレース。
それはサラブレッドの一生に一度の夢。
競走馬として生を受けし者が最初に目標とする晴れ舞台。
近年はそれに相応しい馬たちが活躍している。

競馬界の血統図を全て塗り替えてしまったスーパーサイヤー。
産駒はスピード、瞬発力に優れ次々と大レースを制してきた。
その種牡馬を繋養する巨大牧場グループは次々と活躍馬を輩出。
もはや、クラシックはここの生産馬を無くして語れない。

そんな馬たちは育成時代から英才教育を施される。
厩舎陣営も大舞台を意識してレースを使う。
豊な素質を消耗させないように狙い済まして勝ちに行く。
故に少ないキャリアで本番に臨む馬も少なくない。

そういう馬はレース振りも鮮やかである。
才能溢れる走りで勝負を決める。
いかにも良血馬らしい華のある勝ち方をする。
今年のクラシック候補生も煌びやかな馬たちが有力である。

有力馬の背には当然トップジョッキー。
今年は数多くのお手馬からどの手綱を取るのか注目を集めていた。
だが、有力候補ながらがそんな喧騒とは全く無縁の人馬が居た。

馬は浦河の小さな牧場出身。
当然、あの大種牡馬の血は入っていない。
デビューは夏の小倉。
その後もコンスタントに使われ続け2歳だけでキャリア7戦。
今の流行とはかけ離れた全く地味な馬である。

その背中にはいつも同じ男が居た。
デビューから全てのレースで手綱を取るその男。
レースだけではなく日々の調教もこの人馬は一緒だった。
手前の変え方、コーナリング。
ベテランの経験を活かし焦らず気長に教え込んだ。
入厩当初はひ弱だった馬は徐々に力を付けてきた。

人馬二人三脚でたどり着いたクラシックの舞台。

そのゲートが開いた。


最内から先行体制に入ったのは芦毛の2歳王者。
この馬とは何度も戦いその度に苦杯を飲まされてきた。
だが、その敗戦を糧にし前走ではついに一矢報いた。
もう二度と負けるわけにはいかない。
この馬の少し後ろの先行集団に取り付いた。

他の有力馬たちは後方を進んでいる。
勝負どころで一気に外を進出。
直線で爆発的な脚でまとめて差しきる。
そんな鮮やかな勝ち方を狙っているのだろう。

この馬はそのような派手な脚は使えない。
それは鞍上の男が一番良く分かっている。
毎日のように手綱を握っているので長所も短所も知り尽くしている。

だから、この位置取りなんだ。
だから、早めに前を捕らえに行く。
並んでからの驚異的なしぶとさ。
その長所を一緒に磨いてきたのだから。

直線ではいつものようにジワジワ脚を伸ばす。
華やかさは無いが力強く一歩一歩確実に。
残り100mでついに前を行く2歳チャンプを捕らえた。
この馬が先頭に立った。

その瞬間、内から鋭く脚を伸ばしてきた馬が居た。
この馬とも何度も戦い何度も苦渋を舐めさせられた。
だが、もうあの頃とは違う。
それは前走でも証明している。

鞍上の男は一生懸命馬を追った。
この馬の力をを信じて。

馬はそれに応えるように粘り続ける。
後続に差を詰めさせない。

一体となった人馬は先頭でゴール板を駆け抜けた。


燻し銀。

磨き上げられた華やかさは無い。
だが、そこには深い落ち着きのある渋みがある。
ありきたりだが、正にこの人馬に相応しい表現だろう。

使い込むほどに味わいの出る。
そんな走りをこれからもこの人馬に期待している。
時を経て纏う侘び寂びの美しさを。

地方の強者

2006-04-13 01:08:56 | 競馬観戦記
地方にも強者は存在する。
時に中央の最強馬クラスとも互角の争いが出来るほどの強者が。
南関東にもそんな地方の雄が居る。

気分良くハナを切ればとてつもない強さを発揮する。
地方、中央のダートG1を次々に制した砂の首領。
そんな中央ダート最強馬をギリギリまで追い詰めるほどの力を持つ馬。
反面、大惨敗を喫するような脆さも同居する。

そして、そんな個性派の強豪をさらに上回る馬も存在する。
私はその馬の走りを見るために夜の競馬場へ足を運んだ。

幻想的に光り輝くイルミネーション。
コースを照らすカクテルライト。
地方でしか体験できないナイター競馬は独特の雰囲気がある。

彩られた光が消えるのは戦いの合図。
やがて、夜空に響き渡る生演奏のファンファーレ。
お月様も見守る中、ゲートが開いた。

内枠を利して飛び出す個性派の強豪。
スピードを活かしそのままハナを切る。
得意の単騎逃げの展開へ持ち込んだ。

この形ならばこの馬は相当にしぶとい。
逃げ切りもありうると思われた。
事実、2番手以下はそのスピードについて行くので精一杯。
ある一頭を除いては。

その馬もスピードを生かした逃げを得意としている。
だが、ハナを切れなくても力を発揮することができる。
今日も無理には行かなかった。
虎視眈々と前を見ながらの先行策。
そして、3コーナー手前で満を持して進出を始めた。

他の馬が早い流れに戸惑う中、楽な手ごたえで先頭に並びかける。
得意の形に持ち込んだ個性派も先頭を譲らない。
勝負どころの3~4コーナーをピッタリ馬体を併せて走り抜ける。
そのままの状態で4コーナーを回った。

直線入り口で満を持して両馬追い出しに掛かる。
一瞬、マッチレースになるかに思われた。
しかし、逃げた馬はあっという間に置き去りにされた。
2馬身、3馬身。
見る間に差が開いて行く。

大きなストライドで更に加速する。
直線半ばにして既に勝負は決した。
そのくらい絶望的な差を広げて行く。

3歳にして古馬混合の交流G1を制覇。
地方馬ながら世界最高峰の戦いにも挑んだ。
帰国後は中央のトップクラスと戦い続けて交流G1をさらに2勝。
やはりこの舞台では、このメンバーでは格が違う。
そんなことを言わんばかりに独走でゴール板を駆け抜けた。

レコードタイムで2着に5馬身差。
圧勝としか言いようのない走りだった。

強い馬が強い勝ち方をする。
勝った馬が強いのでは無く、強い馬が勝つ。
これぞ競馬の醍醐味だろう。

こういう競馬が観られるのなら地方も中央も関係無い。
今年も観たいレースはどこへでも行こう。
そこに競馬があるのならば。
そこに強者がいるのならば。

第66回桜花賞

2006-04-09 19:00:50 | 競馬観戦記
世の中に たえて桜の なかりせば
春の心は のどけからまし

平安の時代にこんな歌が読まれるように日本人は桜が大好きである。

この世の中に桜が無ければ春は心穏やかであろう。
逆に言えば桜があるから胸躍るというわけである。

そして、競馬と桜は切っても切れない関係にある。

桜を冠するレースで春の訪れを感じる。
このレースでいよいよ本格的な競馬の季節の到来を実感する。
満開の桜の下で行われる乙女の争いに胸躍らすのである。

今年は百花繚乱の大混戦。
どの馬にもチャンスがある。
一生に一度のクラシックの晴れ舞台。
女王の座に輝くのはどの馬か。
桜の異名は夢見草。
全馬の関係者、ファンの夢へのゲートが開いた。

内から飛び出したのは東のトライアル勝ち馬。
その再現を狙い果敢にハナを切り2コーナーへ。
この独特のコース形態が魔のハイペースを作り出す。
内外の有利不利が大きいこのスタート地点は色々な不満の声がある。
だが、それも今年で見納めかと思うとどこか切ない気持ちになる。

フルゲートが18頭の現代では無謀な先行争いはほとんど無い。
もはや魔の桜花賞ペースは昔の言葉になりつつある。
今年もやはりそれほどペースは上がらず馬群は固まり加減。

西の最終トライアルを制し目下4連勝中の馬が二番手に。
やや口を割り頭を上げて掛かり気味。

前に付けた有力馬はもう一頭。
大種牡馬のラストクロップにしてセリで高値を付けた良血馬。
外枠を利して外々を上がって行く。

その他の有力馬は皆中団。
オーナーの往年の名曲の名を持つ馬は馬ごみの真っ只中。
その後ろに雑草魂の2歳牝馬女王。
その外側には一番人気の良血馬。
いつの間にか外から被せられない絶好のポジションへ。
この辺りは天才の巧みな手綱捌きというところか。

勝負どころの3コーナー。
中団待機の馬が徐々に差を詰め馬群は更に縮まる。
4コーナーでは有力どころが外に持ち出し前へ進出。
大混戦らしく勝負は直線の追い比べとなった。

逃げた馬が直線入り口で後続を突き放す。
その脚色は一向に衰えない。
だが、その外から脚を伸ばして追ってくる馬が二頭。
真ん中からは東の歌姫。
その外から天才の選んだ恋人。
逃げ馬を交わし東と西のトップジョッキーの一騎打ち。
そう思った瞬間だった。

さらに外から小柄な馬が飛んでくる。
鞍上の豪快なアクションに白いシャドーロールが踊る。
並ぶ間もなく競り合う三頭を交わし去った。
ゴール直前、鞍上の右手が力強く上がり勝利を確信。
そのまま桜の女王への扉を潜り抜けた。


桜には手向草という異名もある。

若くして散った亡き父。
現在の競馬界を牽引する大牧場グループの創始者たる馬主の亡き夫。
偉大なる歴史を築いた亡き大種牡馬は母の父。

今日の出来事。
それは天国へいるものへの口づけ。
この勝利を手向けの花として。

そんな夢見心地な言葉で締めくくっても良いのでは無いだろうか。
他夢化草を冠するレースなのだから。


散ればこそ いとど桜は めでたけれ
うき世になにか 久しかるべき


文頭の歌にはこのような返歌がある。

散るからこそ桜は魅力的なのである。
この無常の世の中に永久に留まっているものなど何もない。
今、この時しかないと思えばこそ、その美しさを愛でるのだと。

やはり競馬と桜は近しい存在なのだろう。

だからこそ春は胸踊る。
だからこそ競馬は胸躍る。
一瞬の輝きだからこそ。

ヒロイン達の春

2006-04-08 17:29:05 | 競馬観戦記
今年から新設された古馬牝馬限定G1。
開催時期やレース条件。
様々な意見があり賛否両論。
私も言いたいことは山ほどある。

だが、何事も始めてみなければ分からない。
野球のWBCもそうだった。
やる前はあれほど盛り上がるとは誰も予想できなかっただろう。
やってみれば良い面も悪い面も見えてくる。
やることに意義があるのだ。
そして何よりも、もうやると決まったいる。
だったら、それを楽しもうではないか。

まずは今日の前哨戦。
本番でも人気を二分するであろう二頭が顔を合わせた。

昨秋の3歳牝馬戦線を盛り上げたこの二頭。
あの壮絶な戦いを思い出すと今でも胸が高鳴る。

圧倒的なスピードで押し切ろうとする。
それを、道中溜めに溜めた爆発力で追いかける。
本当にゴールの直前までどちらが勝つのか分からない争い。
もはや宿命のライバル対決といっても過言ではないだろう。

満開の桜の中、女たちの戦いのゲートが開いた。

一方は抜群のスピードを活かし前へ。
一方はそれを最後に差しきらんと脚を溜めるように後ろへ。
それぞれ昨秋と同じ戦法。
それぞれの武器で相手に挑む。
今度はどちらに勝利の女神が微笑むのか。

4コーナーを回り早くも先頭に立つ。
そして、早めに後続を引き離しにかかる。
スピードを最大限に活かした正攻法。
相手に合わせるのではなく自ら勝ちに行く。
それを追いかけるのはもちろんあの馬。

道中はいつものように完璧に折り合う。
勝負どころでは鞍上の指示に完璧に応えて進出。
4コーナーでは完全に前を射程圏に捕らえる。

残り200mでは両者の差は約2馬身。
また、同じように後ろから差しきるのか。
一瞬そう思わせる展開。
だが、今日はあのときとは違うのだ。

前を行くスピードは全く衰えない。
寧ろ更に加速し後続を離す勢い。
短距離と言えるこの条件。
昨秋と違い今度はこの馬が得意とする舞台。
水を得た魚の如く活き活きとゴール板を駆け抜けた。
満開の桜の下で艶やかな女王の走りをライバルに見せつけたのだった。

本番の舞台は府中のマイル。
純粋なスピードだけではこなせない舞台。
今日は適性の差が勝負を分けた。
しかし、次はどちらも同じように力を発揮できるのだろう。
そんな舞台ができたことは良いことではないだろうか。
そんな勝負をG1として見られることは嬉しいことではないだろうか。

ここ数日で強い古馬牝馬の戦線離脱が相次いでいる。
新設レースのG1としての格が保てるのかが心配だった。
だが、この二頭がいれば大丈夫だろう。
また手に汗握るような争いを見せてくれるに違いない。

そして、明日誕生する桜の女王。
一年後にはこの馬たちと同じように華やかな走りを見せてくれるだろう。
女たちのスピード比べ。
そんな舞台があるのだから。

そうして歴史は刻まれて行く。
伝統のレースとして定着して行くのか。
それを私たちが見守って行こう。

第36回高松宮記念

2006-03-27 22:02:21 | 競馬観戦記
競馬新聞を読んでいると思わず噴出してしまうことがある。
馬の名前を一目見ただけで。
そんな珍名を付け続ける名物馬主は競馬ファンには有名である。

命がけで走る競争馬に変な名前を付けるなんて不謹慎だ。
そう思う人も居るだろう。
私も最初はそう思っていた。

だが、このオーナーは単に面白がっているだけでは無い。
ちゃんと願いを込めて名前を付けているのだ。
そして、その馬名を聞くことになる競馬ファンのことも考えている。

「イヤダイヤダ」という馬が居る。
これは負けるのが嫌だという願いが込められている。
オーナー自身のことかも知れない。
また、サラブレッドの負けというのは時に生命の危機にさらされる。
そんな所有馬へのエールが込められているかも知れない。

そして、この馬名を聞いた競馬ファンは思わず笑ってしまう。
もし、この馬の馬券を買って外れたにしても笑ってこんな話をするだろう。
イヤダイヤダは走るのがイヤダから負けちゃったよ。
その馬のせいで大切なお金を失ってもどこか憎みきれない。
勝っても負けてもその馬の話で笑顔になる。
このオーナーはそんな光景を思い浮かべて名前を付けている。

この人の思いが伝わるこんなエピソードがある。
ある競走馬のトレーニングセンターで厩舎火災が起こった。
これにより22頭のサラブレッドの命が失われた。
犠牲になった馬の中に重賞を2勝しているこのオーナーの馬が居た。

大切な馬を失った馬主。
預かった馬を死なせてしまった調教師。
この両者の関係が気まずくなっても仕方は無いだろう。
だが、オーナーは新たな馬をこの厩舎に預けた。
「ゲンキヲダシテ」と名前を付けて。

このオーナーと調教師の関係は今でも続いている。
そして、ついにこのコンビでG1レースを勝利した。
相変わらず聞くと笑顔になる名を付けられたその馬。
奇しくも火災で亡くなったあの馬の弟だった。

厩舎のG1勝ちはこれが初めて。
このオーナーのビッグレース勝ちはこれで2つ目。
初めて勝ったときの鞍上は騎手時代のこの調教師だった。
厩舎にタイトルを獲らせることができて嬉しいとオーナーは語る。
騎手、調教師と初のG1を勝たせてもらってありがたいと調教師は涙ぐむ。
この二人は他人には窺い知る事の出来ない絆で結ばれている。

見事にG1を勝利した馬の名前の由来は昭和の大スターのヒット曲。
おじさん世代に昔を思い出して、もっと元気を出してもらいたい。
そんな願いが込められていると言う。

だが、このオーナーのファンはこう解釈している人も居る。
「お前も、姉ちゃんと同じくらい、強く愛される馬になれよ。」
「そうなる日を俺は待ってるからな。」


競馬に於いてのチャンピオンを決めるG1レース。
その歴代優勝馬に変な名前が残ってしまう。
そんなことがたまにあっても良いんじゃないか。
それで笑えるのならば。

きっと名物オーナーもファンに対してこう思っているだろう。
「笑顔を見せて」と。

ドバイワールドカップ

2006-03-26 23:31:39 | 競馬観戦記
長く楽しい夜もいよいよ終わりを迎える。
最終戦にしてメインレースだけとなったドバイワールドカップデー。
ダートのチャンピオンディスタンス2000mの争い。
正真正銘の世界最高賞金レースである。

このレースの歴史とドバイへの日本の挑戦の歴史は同じ。
第1回からほぼ毎年挑戦し続けているのだ。
そして、その度に世界の壁に跳ね返され続けてきた。

このダート最高峰の舞台を制する資格のある馬。
それは米国馬と地元ドバイの馬のみ。
歴史がそう語っている。

過去に2着に逃げ残った日本の牝馬が居た。
その時点で世界の頂点が見えたかに思えた。
だが、それ以来好走すら適わない。
世界との差をまざまざと見せ付けられている。

日本のダート最高峰と世界のダートの頂点。
その距離はとてつもなく離れている。
やはりそう思わざるを得ない。

そう思いながらも新たなダート王が現れる度に期待してしまう。
今度こそドバイで勝てるのではと。
今年のダート王もそう思わせるほどの走りを見せてくれた。
懲りずにやはり期待が膨らむ。
そして、今年は世界的なスーパースターがここには居ない。
そんな事情からも色気が出てくる。

今日の最有力と目されている馬。
それは意外な馬であった。

昨年夏の欧州競馬。
本場英国のG1レースに日本のチャンピオンホースが挑んだ。
ゴール前勝ったかと思った瞬間に外から飛んできた馬。
その馬が今度はダートの舞台で日本馬に立ちはだかる。

当時はイタリア馬で今はトレードされ地元ドバイの馬。
勝つ資格を手に入れてのここへの挑戦。
初ダートとなった前哨戦を7馬身差の圧勝という実績を携えて。
日本馬にとっては不思議な因縁を感じてしまう。

地元のエースに日本の馬が再び敗れるのか。
欧州の雪辱を中東の地で晴らすのか。
不安と期待が入り混じる今夜最後のゲートが開いた。

内から3番目の好枠からのスタート。
好発進から積極的に前へ出て行く。
前の止まらないナドアルシバのダート。
それを経験で分かっている鞍上の判断だろう。
ハナを奪う勢いで前々の競馬となる。

一方のライバルの動向を追う。
最有力馬と言ってもダートは今日で2戦目。
そんな経験の浅い馬が最内枠からのスタート。
土を浴びない為に逃げるしかないのでは。
そんな発言もジョッキーから出ていた。
だが、そんな弱気な台詞は無かったかのような位置取り。
馬群の中団で内に包まれ、前の馬のキックバックも受けている。
鞍上の世界最高ジョッキーは気にせずそこに留まっている。

展開はこちらに有利だな。
少し勝利に近づいたと思ってしまった。

レースは中盤に差し掛かり日本のダート王は4番手に控えた。
逃げ馬ではないから、行きたい馬は先に行かせて良し。
馬なりで前について行けてるからチャンスはある。
ここでもまだ色気を感じていた。

ふと気がつくと最内にいた筈のライバルが外側のすぐ後ろに居る。
不気味に感じながらも最終コーナーの前から追いどおし。
その手ごたえから怖さは感じなかった。
そして、最終コーナーに差し掛かった。

ずっと内目を進んでいた我が日本代表馬は外に持ち出すことはできない。
自然と内に進路を取り内ラチ沿いから抜け出しに掛かる。
しかし、前には馬の壁が邪魔をする。

一方で直後につけていた地元のエースはコーナーで外を回す。
そして、一瞬の馬群の切れ間を付いて外に持ち出す。
後に何度も確認するとその絶妙なタイミングが分かる。
だが、普通に見ていた時には気がつかなかった。
いつの間にか外に居た。
まるで狐に包まれたような感じだった。
これが世界最高騎手の技術なのだろう。

ここでの明暗が日本にとっては致命的だった。

外に持ち出した地元のエースが一気に脚を伸ばしてくる。
道中あれほど手ごたえが悪かったのにも関わらず。

先頭争いはやはり前に行った馬が止まらない。
直線入り口で先頭だった3頭がそのまま抜け出している。
やがて一頭が脱落し2頭が先頭争いを繰り広げる。
そこを目掛けて外から脚を伸ばす地元のエース。
日本は脱落した馬の更に後ろ。
もはや先頭争いに加われそうも無い。

このまま逃げ切ろうと先頭の馬は決して止まっては居ない。
だが、それ以上の脚を地元のエースが繰り出だす。
そして、ついに先頭を捕らえ並ぶ間もなく交わし去る。

ゴールの瞬間、馬上に立ち上がるほどの勢いで鞭を振り上げ大きくガッツポーズ。
後続には2馬身ほどの差をつけた完勝だった。

日本代表馬は5番手の入線。
勝ち馬とは決定的な差をつけられていた。

人馬ともに完敗だった。

やはり世界最高峰の舞台。
そう簡単には行かない。

それでも挑戦を止めてはいけない。
何度壁に跳ね返されても。

そこに行かなければ勝つことは無い。
当たり前のことである。

長い夜もこれで幕を閉じる。
今年は特に長い夜だった。

久しぶりにこの地での勝利を味わえた。
全てのレースで夢を見させてくれた。
こういう夜ならばどんなに長くても気にならない。
どんなに眠くても最後まで応援し続ける。

こんな熱い日はいつもこう思う。

競馬ファンをやってて良かったと。
これからも競馬を見続けて行こうと。
競馬はやっぱり最高だ!!

ドバイデューティーフリー

2006-03-26 23:29:36 | 競馬観戦記
長い夜もそろそろ終わりに近づいてきた。
セミファイナルの第5戦目となったドバイワールドカップデー。
芝の1777m戦となる。

何とも中途半端な距離ではある。
だが、マイラーも中距離路線の馬も走れる。
そんな路線がクロスオーバーするこのレースは常にメンバーが集まる。
さらに、今年はアジア・マイル・チャレンジの一戦となった。
そして、芝の世界最高賞金レース。
世界の競馬シーンに於いてもはや欠かす事のできないレースと言えよう。

ここには暮れの香港と同じく日本のマイル王2頭という最高の布陣で臨む。
実際、そのときは秋のマイル王が脅威の末脚で勝利を収めた。
この馬はもはや世界のトップマイラーの一頭と言えよう。
世界戦に顔を出すのは寧ろ当然なことなのだとも。

よくもここまで成長したものだ。
この馬は幼少の頃を知る人はそう思うだろう。
1歳の秋には原因不明の病魔に襲われた。
栄養吸収ができなくなり日に日に体が衰弱して行く。
生命の危機に直面した。

それを何とか克服し馬体が回復した頃、再び逆境が訪れた。
調教中に左後脚を骨折。
ボルトを入れて固定しなければならない程の重傷だった。
1ヶ月以上も馬房で過ごし筋肉も日に日に衰えて行く。
だが、それも克服し競争馬としてのデビューを果たしたのだ。
そして、今もボルト入っているその脚で世界への挑戦を続ける。
本当に頭が下がる馬である。

2度目の世界戦となるゲートが開いた。

やっぱりまたか。
そう思わせるようなスタート。
出遅れてしまい最後方からの競馬となる。
だが、これはいつものこと。
最後にはロングスパートから脚を伸ばしてくる。
そう楽観視して先行争いへと目を移す。

すると先頭に並ぶように昨年春のマイル王。
大分水を撒いて時計が掛かる馬場になっている。
それを読んでの判断か積極的な競馬を試みている。
だが、その更に外に併走馬が現れる。
先頭に3頭ならんでその真ん中という体制。
これでリズムを崩されてしまう。

内の馬がフラフラと外に膨らみ馬体に近づく。
かと思えば今度は外の馬が内に近づいて来る。
何度も鞍上が左右を確認するほどの際どい走りに幻惑されてしまう。
そして、少し怯んで後ろに下がった瞬間、内と外の馬で挟み込まれる。
進路が無くなり一瞬クビを上げて嫌がった。
そこから手ごたえが一気に悪くなり追いどおしに。
それでもポジションは上がって行かない。

そして、最終コーナー。
ここで完全に後ろから来た馬群に飲まれてしまった。
レースがここで終わってしまったのだった。

一方の後方待機の我等が日本馬は大外に持ち出す。
この時点で追いどおしだがそれはいつものこと。
きっと追えば追うほど伸びてくる。
この長い直線ならばどこまでも伸びてくる。
そう期待をしながら走りを見つめる。
残り400m。

思ったとおり一瞬伸びかけてくる。
やっぱり来たかと思ったのも束の間、そこからが伸びてこない。
先頭争いを映す画面から消えてしまう。

欧州の中距離王が内から脚を伸ばして行く。
後続を引き離して独走態勢に入る。
もはや勝負は決まった。
末脚は不発に終わったのだ。

負けることにより今まで積み上げたものが消えてしまう。
実績を残した馬はそんなことを恐れてしまう。
だが、そんな事を考えることなく挑戦を続けて欲しい。

不運を全て背負っていたような幼き頃。
その頃からすれば今のこの状況は奇跡のようなものなのだから。
ボルトの入った脚で繰り出す、その末脚は奇跡のようなものなのだから。
その奇跡は我々に勇気を与えてくれるから。