いよいよ秋競馬だ。
この府中開催になるといつもそう思う。
そして、秋競馬の開幕といえば盾への前哨戦。
毎年豪華なメンバーが集まり超G2と呼ぶ人もいる。
今年も素晴らしい馬たちが集まった。
その出走馬と秋の陽気に誘われ東京競馬場を訪れた。
久しぶりの府中は色々と変わっていた。
駅からの連絡通路が綺麗になり正門も改装されていた。
そして、何より目を惹いたのは世界最大のターフビジョンである。
レースとパドックとオッズというように三つのスクリーンとして使える。
もちろん三つをつなげた超ワイドな映像も映し出せる。
だが、やはり馬は直接見たいのでいつものようにパドックへ向かった。
これだけの豪華メンバーだからと色々な馬に視線を向ける。
でも、ついつい彼のところで視線が止まってしまう。
いつものようにのんびりとした様子で時折尻尾を振る。
秋の日差しで栗毛が輝き、薄い皮膚には血管が浮かび上がっている。
競馬を使っているからか体も引き締まって見える。
次に繋がるレースをしてくれれば。
それを一番に願い、今日はあまり過度な期待をしないことに決めていた。
それでもこの姿を見るとこのメンバーでもと思ってしまう。
騎手を乗せて地下馬道に姿が消えた。
本馬場入場では前走と同じようにポストパレードを行う。
ややテンションが上がりそうになる自分を抑えるように。
今日も行きたがらずにいけるよな。
心の中で彼に語りかけた。
ターフビジョンにスターターの歩く姿が映し出される。
同時に早くもゲート入りを始める姿も映し出される。
このビジョンでしか見られない映像と共にファンファーレが響き渡る。
G2とは思えない歓声と共にゲートが開いた。
ターフビジョンには二つの映像が映し出される。
通常の映像が左側。
真ん中と右を繋げたワイドな画面に引きの映像。
この府中独自の引きの映像で中団に控えた彼を観ていた。
前走は振り返ってみると掛かりそうになっていた。
だから最後方まで下げざるを得なかった。
まだ、完全に自分を抑えられているわけではない。
彼の折り合いだけを心配しながらビジョンを見つめる。
馬群の外目を進んでいるのを確認しドキッとした。
前に馬を置かずに暴走するのではないかと。
だが、そんな私の動揺を他所に彼はスムーズに競馬を進めている。
極端に控えることも無くごく自然に。
しかし、3~4コーナーの勝負どころで前に上がっていった。
ああ、やってしまった。
また引っかかって暴走してしまった。
恐れていたことが現実になったかに見えた。
でも、よく見るとそんな感じではない。
前には春のマイル女王も同じタイミングで上がって行っている。
器用なレース運びをする彼女と同じレース運びをしているのだ。
あの一生懸命走りすぎる不器用な彼が。
4コーナーでは先行集団にスーッと並びかけに行く。
このレース振りは差し馬のそのものである。
よし行ける。
ここまでの理想的な走りに今日初めて勝ちを意識した。
直線入り口からグイグイ追われ前の馬に並びかける。
ここから突き抜ける。
そう思ったとき前の馬たちが満を持して追い始める。
そこから一気に突き放された。
瞬発力の違い。
本来はこういう脚が使える馬が後ろから行くのだろう。
彼は平均的にいい脚を長く使うタイプ。
だからずっと前で競馬をしていた。
こういう形になれば不利なのは分かっている。
それでも彼は突き抜けられるんじゃないかと思ってしまう。
だって、彼は全く諦めていない。
前の馬を抜き去ることしか考えていない。
レースを自分で止めていた彼はもう居ない。
彼は自分に勝ったのだ。
結局、前を捕らえることはできなかった。
しかし、私には彼が勝ったかのような満足感があった。
もう彼は大丈夫。
そう自信を持って言えるから。
次はいよいよ本番となる。
勝てるかどうかは分からない。
でも、彼はきっと勝ちに行くだろう。
どんなに絶望的な状況でも勝利を諦めないだろう。
それが一番大事なことなんだ。
勝ち負けよりも、もっと、ずっと。
この府中開催になるといつもそう思う。
そして、秋競馬の開幕といえば盾への前哨戦。
毎年豪華なメンバーが集まり超G2と呼ぶ人もいる。
今年も素晴らしい馬たちが集まった。
その出走馬と秋の陽気に誘われ東京競馬場を訪れた。
久しぶりの府中は色々と変わっていた。
駅からの連絡通路が綺麗になり正門も改装されていた。
そして、何より目を惹いたのは世界最大のターフビジョンである。
レースとパドックとオッズというように三つのスクリーンとして使える。
もちろん三つをつなげた超ワイドな映像も映し出せる。
だが、やはり馬は直接見たいのでいつものようにパドックへ向かった。
これだけの豪華メンバーだからと色々な馬に視線を向ける。
でも、ついつい彼のところで視線が止まってしまう。
いつものようにのんびりとした様子で時折尻尾を振る。
秋の日差しで栗毛が輝き、薄い皮膚には血管が浮かび上がっている。
競馬を使っているからか体も引き締まって見える。
次に繋がるレースをしてくれれば。
それを一番に願い、今日はあまり過度な期待をしないことに決めていた。
それでもこの姿を見るとこのメンバーでもと思ってしまう。
騎手を乗せて地下馬道に姿が消えた。
本馬場入場では前走と同じようにポストパレードを行う。
ややテンションが上がりそうになる自分を抑えるように。
今日も行きたがらずにいけるよな。
心の中で彼に語りかけた。
ターフビジョンにスターターの歩く姿が映し出される。
同時に早くもゲート入りを始める姿も映し出される。
このビジョンでしか見られない映像と共にファンファーレが響き渡る。
G2とは思えない歓声と共にゲートが開いた。
ターフビジョンには二つの映像が映し出される。
通常の映像が左側。
真ん中と右を繋げたワイドな画面に引きの映像。
この府中独自の引きの映像で中団に控えた彼を観ていた。
前走は振り返ってみると掛かりそうになっていた。
だから最後方まで下げざるを得なかった。
まだ、完全に自分を抑えられているわけではない。
彼の折り合いだけを心配しながらビジョンを見つめる。
馬群の外目を進んでいるのを確認しドキッとした。
前に馬を置かずに暴走するのではないかと。
だが、そんな私の動揺を他所に彼はスムーズに競馬を進めている。
極端に控えることも無くごく自然に。
しかし、3~4コーナーの勝負どころで前に上がっていった。
ああ、やってしまった。
また引っかかって暴走してしまった。
恐れていたことが現実になったかに見えた。
でも、よく見るとそんな感じではない。
前には春のマイル女王も同じタイミングで上がって行っている。
器用なレース運びをする彼女と同じレース運びをしているのだ。
あの一生懸命走りすぎる不器用な彼が。
4コーナーでは先行集団にスーッと並びかけに行く。
このレース振りは差し馬のそのものである。
よし行ける。
ここまでの理想的な走りに今日初めて勝ちを意識した。
直線入り口からグイグイ追われ前の馬に並びかける。
ここから突き抜ける。
そう思ったとき前の馬たちが満を持して追い始める。
そこから一気に突き放された。
瞬発力の違い。
本来はこういう脚が使える馬が後ろから行くのだろう。
彼は平均的にいい脚を長く使うタイプ。
だからずっと前で競馬をしていた。
こういう形になれば不利なのは分かっている。
それでも彼は突き抜けられるんじゃないかと思ってしまう。
だって、彼は全く諦めていない。
前の馬を抜き去ることしか考えていない。
レースを自分で止めていた彼はもう居ない。
彼は自分に勝ったのだ。
結局、前を捕らえることはできなかった。
しかし、私には彼が勝ったかのような満足感があった。
もう彼は大丈夫。
そう自信を持って言えるから。
次はいよいよ本番となる。
勝てるかどうかは分からない。
でも、彼はきっと勝ちに行くだろう。
どんなに絶望的な状況でも勝利を諦めないだろう。
それが一番大事なことなんだ。
勝ち負けよりも、もっと、ずっと。