俺って成長してないなあ。
もういい年のはずなのに、まだそんなことを感じる。
若いころ理想に描いていた大人の自分に未だになりきれていない。
それに比べて彼は成長した。
この秋の堂々たる競馬振りは風格すら漂う。
以前はどこか頼りなかったのに。
彼のことは若いころから見てきたので今の姿に戸惑いすら感じる。
パドックで寝転がってしまうような幼い気性。
雄大な馬格から繰り出すスピードを上手く活かせないレース振り。
素質はあるけどいつまでも子供じみている。
彼のことをずっとそんな風に思っていた。
天皇賞馬としてG1に堂々と1番人気で望む。
そんな彼の晴れ舞台なのにどうもピンとこない。
それは彼がそんなに成長したように見えないからだろう。
いつものようにパドックは3人体制。
2人引きで歩く彼の内側でもう1人眼を光らせている。
そんなに見張られているのにどこ吹く風で彼はのんびり歩を進める。
マイペースな感じは昔と何も変わらない。
本馬場入場では引き手を振り払うように横っ飛びをして走り出す。
走るのを待ちきれない子供のような仕草だ。
やはり、私が以前から思い描いてきた彼と何も変わらない。
本当に彼は成長したのだろうか。
それを確かめられるのはやはりレースなのだろう。
その時が訪れファンファーレが鳴り響いた。
ゲートが開き持ち前のスピードでスーッと前に出る。
そのまま、すぐ内の逃げる馬を行かせてピタリと2番手につける。
このあたりのセンスの良さは昔から変わらない。
そのまま淡々とその位置をキープして勝負どころを迎える。
抑えたままの抜群の手ごたえで逃げ馬に並びかけに行く。
4コーナーでは馬場の良いところを選ぶように大きく外を回った。
直線入り口で早々と先頭に立った。
内外から後続が迫るが気にもかけずに馬群から抜け出す。
馬場の真ん中を堂々と我が道を行く様に。
このまま楽勝かと思ったところで外から一気に迫る影。
春のマイル女王が切れ味を溜めに溜めてここで爆発させたのだった。
この勢いなら交わされる。
私はそう思った。
だが、彼はそこから伸びた。
半馬身まで迫られてもそれ以上は差を詰めさせない。
その力強い走りは風格が漂っていた。
ああ、彼は強くなったんだ。
本当に彼は成長した。
もう、あの頼りなかった彼は居ないんだな。
私はようやく彼が大人になったことを認めた。
彼はそのまま後続に抜かせることなくゴール板を駆け抜けた。
彼はどうしてここまで成長できたのだろうか。
病を克服し困難を乗り越えたから。
それとも相性の良い人と巡り合えたから。
でも、そんなことは大なり小なり誰にでもあるような気がする。
だったら、日々の生活を大切にしていれば彼のようになれるのかな。
一見変わって無くても、大事なところで踏み留まれるような大人に。
そう問いかけた彼は優勝レイを掛けるのを少し暴れて梃子摺らせていた。
やっぱりコイツ変わって無いや。
私も成長できるような気がしてきた。
もういい年のはずなのに、まだそんなことを感じる。
若いころ理想に描いていた大人の自分に未だになりきれていない。
それに比べて彼は成長した。
この秋の堂々たる競馬振りは風格すら漂う。
以前はどこか頼りなかったのに。
彼のことは若いころから見てきたので今の姿に戸惑いすら感じる。
パドックで寝転がってしまうような幼い気性。
雄大な馬格から繰り出すスピードを上手く活かせないレース振り。
素質はあるけどいつまでも子供じみている。
彼のことをずっとそんな風に思っていた。
天皇賞馬としてG1に堂々と1番人気で望む。
そんな彼の晴れ舞台なのにどうもピンとこない。
それは彼がそんなに成長したように見えないからだろう。
いつものようにパドックは3人体制。
2人引きで歩く彼の内側でもう1人眼を光らせている。
そんなに見張られているのにどこ吹く風で彼はのんびり歩を進める。
マイペースな感じは昔と何も変わらない。
本馬場入場では引き手を振り払うように横っ飛びをして走り出す。
走るのを待ちきれない子供のような仕草だ。
やはり、私が以前から思い描いてきた彼と何も変わらない。
本当に彼は成長したのだろうか。
それを確かめられるのはやはりレースなのだろう。
その時が訪れファンファーレが鳴り響いた。
ゲートが開き持ち前のスピードでスーッと前に出る。
そのまま、すぐ内の逃げる馬を行かせてピタリと2番手につける。
このあたりのセンスの良さは昔から変わらない。
そのまま淡々とその位置をキープして勝負どころを迎える。
抑えたままの抜群の手ごたえで逃げ馬に並びかけに行く。
4コーナーでは馬場の良いところを選ぶように大きく外を回った。
直線入り口で早々と先頭に立った。
内外から後続が迫るが気にもかけずに馬群から抜け出す。
馬場の真ん中を堂々と我が道を行く様に。
このまま楽勝かと思ったところで外から一気に迫る影。
春のマイル女王が切れ味を溜めに溜めてここで爆発させたのだった。
この勢いなら交わされる。
私はそう思った。
だが、彼はそこから伸びた。
半馬身まで迫られてもそれ以上は差を詰めさせない。
その力強い走りは風格が漂っていた。
ああ、彼は強くなったんだ。
本当に彼は成長した。
もう、あの頼りなかった彼は居ないんだな。
私はようやく彼が大人になったことを認めた。
彼はそのまま後続に抜かせることなくゴール板を駆け抜けた。
彼はどうしてここまで成長できたのだろうか。
病を克服し困難を乗り越えたから。
それとも相性の良い人と巡り合えたから。
でも、そんなことは大なり小なり誰にでもあるような気がする。
だったら、日々の生活を大切にしていれば彼のようになれるのかな。
一見変わって無くても、大事なところで踏み留まれるような大人に。
そう問いかけた彼は優勝レイを掛けるのを少し暴れて梃子摺らせていた。
やっぱりコイツ変わって無いや。
私も成長できるような気がしてきた。