goo blog サービス終了のお知らせ 

リートリンの覚書

古事記 中つ巻 現代語訳 七十五 住吉三神の神託



古事記 中つ巻 現代語訳 七十五


古事記 中つ巻

住吉三神の神託


書き下し文


 尓して驚き懼りて、殯宮に坐せまつり、更に国の大ぬさを取りて、生剥・逆剥・阿離・溝埋・屎戸・上通下通婚・馬婚・牛婚・鶏婚・犬婚の罪の類を種々求め、国の大祓をして、また竹内宿禰沙庭に居り、神の命を請ふ。是に教へ覚したまふ状、具に先の日の如く、「凡そ此の国は、汝命の御腹に坐す御子の知らさむ国ぞ」とさとしたまふ。尓して竹内宿禰大臣白さく、「恐し。我が大神、其の神の腹に坐す御子は、何れの子か」とまをす。答へ詔りたまはく、「男子なり」とのりたまふ。尓して具に請ひまつらく、「今かく言教へたまふ大神は、その御名を知らまく欲し」とこへば、答へ詔りたまはく、「是は天照大神の御心ぞ。また底筒男・中筒男・上筒男三柱の大神ぞ。此の時に其の三柱の大神の御名は顕れぬ。今まことに其の国を求めむと思ほさば、天神地祇、また山の神と河・海の諸の神に悉に幣帛を奉り、我が御魂を船の上に坐せて、真木の灰を瓠に納れ、また箸と葉盤を多に作りて、皆皆大海に散らし浮けて、度るべし」とのりたまふ。


現代語訳


 尓して、驚き懼(おそ)れて、殯宮(もがりのみや)に坐(いま)せまつり、更に、国の大ぬさを取り、生剥(いけはぎ)・逆剥(さかはぎ)・阿離(あはなち)・溝埋(みぞうめ)・屎戸(くそへ)・上通下通婚(おやこたわけ)・馬婚(うまたわけ)・牛婚(うしたわけ)・鶏婚(とりたわけ)・犬婚(いぬたわけ)の罪の類(たぐい)を種々(くさぐさ)求め、国の大祓(おおはらえ)をして、また竹内宿禰(たけしうちのすくね)は、沙庭(さにわ)に居(お)り、神に命(みこと)を請(こ)いました。ここに、教え覚(さと)しになられる状(さま)は、具(つぶさ)に先の日の如くで、「凡そ、この国は、汝命(いましみこと)の御腹(みはら)に坐(いま)す御子(みこ)の知(し)らしめる国だ」と諭しになられました。尓して、竹内宿禰大臣が、申し上げることには、「恐(かしこ)し。我が大神、その神の腹に坐(いま)す御子は、何れの子ですか」と申しました。答えて、仰せになられて、「男子だ」と仰られました。尓して、具に請いになられて、「今、かく言(こと)を教になられる大神、その御名を知らせて欲(ほ)しいです」と請いたところ、答えて、仰せになられて、「これは、天照大神 (あまてらすおおかみ)の御心である。また、底筒男(そこつつのお)・中筒男(なかつつのお)・上筒男(うわつつのお)三柱の大神だ。この時に、その三柱の大神の御名は顕(あらわ)れました。今まことに、その国を求めると思うのなら、天神地祇(てんじんちぎ)、また山の神と河・海の諸の神に、悉に幣帛(みてくら)を奉り、我が御魂(みたま)を船の上に坐(いま)せて、真木(まき)の灰を瓠(ひさご)に納(い)れ、また箸(はし)と葉盤(ひらで)を多く作り、皆皆(みなみな)大海に散らし浮(う)かべて、度るように」と仰られました。



・殯宮(もがりのみや)
天皇・皇族の棺を埋葬の時まで安置しておく仮の御殿
・大ぬさ
大幣・1・祓(はら)えのときに用いる大串につける幣帛(へいはく)。祓えのあと、人々がこれを引き寄せてからだを撫で、罪やけがれをそれに移した
・生剥(いけはぎ)
馬の皮を生きたまま剥ぐこと
・逆剥(さかはぎ)
天つ罪の一。馬の皮を尻の方から剥ぐこととされ
・阿離(あはなち)
田に張っている水を、畔を壊すことで流出させ、水田灌漑を妨害すること
・溝埋(みぞうめ)
田に水を引くために設けた溝を埋めることで水を引けないようにする
・屎戸(くそへ)
祭場を糞などの汚物で汚すこと
・上通下通婚(おやこたわけ)
親子の相姦
・馬婚(うまたわけ)
獣姦
・牛婚(うしたわけ)
獣姦
・鶏婚(とりたわけ)
獣姦
・犬婚(いぬたわけ)
獣姦
・沙庭(さにわ)
1・神を招いて、お告げを聞く清浄な場所2・神のお告げを承る人。 霊媒者。 さにわびと
・真木(まき)
良材となる木。杉・ 檜など
・瓠(ひさご)
ヒョウタンの果実を、内部の果肉を取り去って中を空にして、乾燥させ、容器としたもの
・葉盤(ひらで)
柏の葉数枚を綴り合わせた器


現代語訳(ゆる~っと訳)


 このような出来事に、驚き恐れて、仲哀天皇の遺体を埋葬の時まで安置しておく仮の御殿に安置し、儀礼を執り行い、

さらに、国中から罪やけがれを移す大幣を取り寄せ、獣の皮を生きたまま剥ぐ罪、獣の皮を尻の方から剥ぐ罪、田の畦を破壊する罪、田に水を引くために設けた溝を埋める罪・祭場を汚物で汚す罪・親子の相姦の罪、馬・牛・鶏・犬との獣姦の罪など、あらゆる罪を求めて、国家としての罪・穢れを祓う儀式を行いました。

そしてまた、竹内宿禰が、お告げを聞く清浄な場所に居て、神託を求めました。

ここに、神が教え諭すありさまは、すべて漏れなく先日のとおりで、神が、
「もはや、この国は、皇后の胎内にいる御子が統治する国である」といいました。

そこで、竹内宿禰大臣が、
「恐れ多くも。我が大神。大神が憑りついていらっしゃる皇后の胎内におられる御子は、どちらの子ですか?」とたずねました。

大神が答えて、
「男子だ」といいました。

そこで、
竹内宿禰大臣は詳しくたずねて、
「今、このように教え諭してくださる大神の御名前を知りとうございます」といいました。

大神が答えて、
「この神託は、天照大神の御心意である。また我は、底筒男・中筒男・上筒男の三柱の大神である。

この時、その住吉三神の御名が明らかになりました。

今、まさに、その国を求めると天皇が思うのなら、天神地祇、また、山の神と河・海の諸々の神に、ことごとく、お供え物を奉納し、我が御魂を船の上に鎮座させて、真木の灰をヒョウタンに入れ、また、箸と木の葉の器をたくさん作り、すべてを大海に散らし浮かべて、海を渡るように」といいました。



続きます。

読んでいただき
ありがとうございました。







ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

最近の「古事記・現代語訳」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事