Officer's '70s Theater

'70年代の恐竜的ハイパワー車ファンが昔を懐かしむブログ

The Red Baron

2011-12-09 18:57:30 | 映画(航空)
The Red Baron - Trailer

原題:The Red Baron
邦題:レッド・バロン
主演:マティアス・シュヴァイクホファー
2008年ドイツ映画

言わずと知れた「定冠詞付きの」赤い男爵=マンフレート・フォン・リヒトホーフェンを描いた映画です。
第一次世界大戦の撃墜王として有名であり、白黒映画の時代から何度も映画化されました。
1966年の「ブルー・マックス」には「主人公が憧れる英雄」として登場しています。
1971年に「Red Baron」としてカラー映画化された事がありますが、そのときは上層部との対立は控えめに描かれていました。最後の死因は英国機の銃弾によるものと言う歴史解釈でした。

本作品の特徴は下記4点です。
1)リアルな空中戦
2)リアルで悲惨な地上戦と野戦病院
3)軍上層部への反感
4)看護婦とのラブ・ストーリー
この映画には「今までとは違う切り口で、玄人好みの芸術作品を作る」というような意気込みが感じられます。というのは、下記の目玉シーンがバッサリ削られているからです。
1)ラノー・ホーカー少佐との45分に渡る激闘
2)ロイ・ブラウン大尉との最後の空戦
日本で例えるなら「坂本竜馬の映画を作ったが、新撰組との殺陣をカットし、近江屋での暗殺場面をカットしている。」ようなものです。
アメリカ映画であれば、このような削り方は絶対にしません。他国に輸出した場合に「予備知識の無い一般市民」から『面白くない』と言われてしまうからです。
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 彼の生い立ち、性格、戦果、負傷入院歴等、それこそドイツ国民は「まるで親戚のことのように」良く知っています。

 彼の最大の特徴は「空の騎士道」とも言うべき高潔さ、ストイックさ、真面目さです。彼は部下に『不時着して地上を逃げる敵パイロットを撃つな。我々の仕事は撃墜することであって、殺人ではない。』と命じました。その精神は第二次世界大戦のルフトワッフェにも引き継がれました。(個人的恨みや錯乱による違反者は存在する。)

 残念ながら敵である英米仏の連合軍は第一次世界大戦でも第二次世界大戦でも『不時着した敵パイロットは撃ち殺せ。』そして『敵の落下傘は躊躇わずに撃て。』と命令していました。(特に第二次世界大戦の英国兵は怨念に基づいて正確に実行した。)
理由・根拠は『そいつがいずれ戦線復帰して、味方を殺すから。』と『代換パイロットを育てるのに1年以上の期間と大きな手間と費用を要するから、一人でも多く殺せばボディーブローのように敵国の継戦能力を奪う。』というものです。

 敵空軍にとっては正に死神のような存在だったレッド・バロン(英軍の呼称。フランス軍は Diable Rouge「赤い悪魔」と呼んだ)ですが、その死に際しては敵軍からも惜しむ声が上がりました。

 彼の撃墜記録については敵味方を通じて何度も検証され、いつ・どこで・誰を撃墜したか、その結果は負傷か死亡か等、かなり正確に記録されています。
映画「ブルー・マックス」で主人公が「確かに撃墜したのに、残骸が見つからないから認定されない」という場面があります。ドイツ軍の撃墜認定事務は非常に厳格であり、「墜落した敵機の機体番号を切り取って持ち帰る」というリヒトホーフェンの行動は、狩猟者的な収集癖というよりも「手っ取り早い事務処理の為の証拠提出」の側面がありました。
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 同時期の敵空軍のエースについて日本では全く報じられませんが、フランス軍にも3名の英雄的エースが存在します。
フォンク:見越し射撃の上手な職人的中年パイロット
ギンヌメール:その若さから「ベイビー」と仇名された肉迫攻撃が得意なパイロット
ナンジェッセール:敵が多かろうが勇猛果敢に突進し怪我が絶えない「空の無法者」
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 空中戦のエースには2つのタイプがあります。
ひとつは「肉迫攻撃型」。空中衝突寸前まで敵に肉迫し、「弾を当てて落とさなければ衝突してしまう」という状態に自分を追い込み、極限の集中力を搾り出します。角度も高低差も遠心力も関係なく、発砲さえすれば当たる位置まで接近する。非常に単純明快ですが勇気の必要な戦法です。
リヒトホーフェン、ギンヌメール、ナンジェッセールがこのタイプで、第二次世界大戦ではエーリッヒ・ハルトマンが有名です。
このタイプの欠点は「敵機の破片に当たって自機が損傷しやすい。また、前方に集中しすぎて他の敵から撃たれやすい。」という点で、ハルトマンは16回も不時着又は落下傘脱出しているし、リヒトホーフェンはそれで致命傷を受けました。

もうひとつは「射撃の天才型」。敵機の未来位置を正確に予測し、「今は何も存在しない空間」に向けて発砲すると数秒後に敵機がその弾幕に飛び込み、何がなにやら判らないまま被弾・墜落するのです。
第一次世界大戦ではフランス空軍のフォンクがその筆頭で、ドイツ空軍ではウーデットの名が知られていました。第二次世界大戦では「アフリカの星」ハンス・ヨアヒム・マルセイユが有名です。
「空軍大戦略」で撃墜されて基地に戻った英国人パイロットが飛行隊長から『戦闘空域では同じコースを飛ぶなと指示しただろう!?』と叱責される場面がありますが、まさにこの事(敵の見越し射撃の標的になりやすい)を言っているのです。


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