Officer's '70s Theater

'70年代の恐竜的ハイパワー車ファンが昔を懐かしむブログ

ダーティハリー

2012-06-18 00:38:18 | 映画(銃)
DIRTY HARRY Trailer

1971年米国映画
原題:Dirty Harry
主演:クリント・イーストウッド
監督:ドン・シーゲル
音楽:ラロ・シフリン
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勧善懲悪のマッチョマン的ヒーロー映画のイメージがありますが、犯人スコルピオは結構な頭脳犯であり、ハリー刑事を翻弄し嘲笑います。サスペンス場面でラロ・シフリンの音楽が良い味を出しています。

「ダーティー・ハリー」を「汚いハリー」と直訳するのは間違いです。彼は信じる正義の為に犯人を殴って「違法捜査(拷問・自白強要)」の汚名をかぶる事が多いのであって、決して「犯罪組織から賄賂をもらったりする汚職刑事」ではありません。
本人は劇中で『犯罪者が(まるで野良犬のように)町中に犯罪という汚物を垂れ流すのを毎日追いかけて汚物処理をしているから、そう呼ばれるんだ。』と語っています。

このシリーズの有名な設定は「多数の犯罪者から恨まれて狙われるハリーは毎回生き残り、相棒になった刑事は必ず、死ぬか重症で引退の憂き目に会う」という点です。

彼の武器は官給品の38スペシャル弾リボルバーや9mmオートマチックではなく、大型で反動の強い44マグナム弾リボルバーです。火薬量を少な目にカスタマイズしていますが、それでも派手に連射すれば強い反動で手首を捻挫するので、発砲には慎重です。これは「米軍の45ACP弾正式採用」と同じ理由で、「麻薬で痛覚と理性が麻痺した怪力で獰猛な敵」に対しての大質量打撃によるストッピングパワーを重視しての事です。

 イーストウッドもマックイーンも西部劇の馬から近代的な自動車に乗り換えて刑事役で当たりましたが、正義感に溢れるゆえに時には上司と対立したり、現場を知らない事務屋(市長や上院議員)から責められたりします。
 市長や議員などの事務屋は「市民の生命財産を守るよりも、選挙の為に自己の名声を上げる事が優先」で、弁護士に迎合して容疑者の人権保護を優先(被害者の人権は無視)した法律が続々と成立した時代背景が影を落としています。
 西部劇の時代と比べて文明の進歩が「正義の味方」を取り巻く環境を複雑化させる中、新時代のヒーローは様々な制約の中でストレスに晒されながら懸命に悪と戦わなければなりません。

スリラー映画的なサスペンス。イーストウッド独特のユーモア。ラロ・シフリンの秀逸な音楽・・・掛け値なしの名作です。

<豆知識>
ハリーは第一作ではヒラ捜査官(inspector)ですが、第三作では主任捜査官(chief inspector)に出世しています。英語を直訳すると「警視正」になります。
制服警官からはルーテナン(小尉又は警部補の意味)と呼ばれる事もありますが、要は中間管理職です。

狼よさらば

2012-06-14 00:57:52 | 映画(銃)
Charles Bronson vs. Muggers

1974年米国映画
原題:Death Wish
主演:チャールズ・ブロンソン
監督:マイケル・ウィナー
音楽:ハービー・ハンコック
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Death Wishとは心理学用語で「死の願望」です。意訳すると自分の死を望む「自殺志願」ですが、逆に他人を殺したがる「殺人狂」の意味もあります。

Death Wishシリーズの特徴として、第一作と第二作は悪党によるレイプシーンが非常に尺が長くてリアルですが、第三作以降は「模倣犯を防ぐ為の自主規制」なのか陵辱場面と虐殺場面が短くなってゆきます。

<時代背景>
 ニューヨークの治安が悪化していました。一週間で950件もの強盗・誘拐・強姦・殺人事件が発生します。
(シカゴやロサンジェルスも似たような状況)
安価な粗悪品の拳銃(サタデーナイトスペシャル)を買った犯罪者が土曜日の夜に一斉に拳銃強盗をするので警察の手が回らず、被害が続出する。今では考えられない無法地帯です。

<あらすじ>
娘を嫁に出し、妻と幸せな暮らしを送っていた主人公カージーは真面目で平凡な設計技師です。
ある日、スーパーの配達を装った悪党3人組が母娘二人きりの部屋に侵入します。
娘はレイプされ、その目の前で母は殴り殺されます。娘の命は助かったものの、重度の精神障害が残り精神病院に隔離。
警察は処理能力を上回る犯罪数のため、いつまで経っても犯人を逮捕起訴出来ません。

一人残されたカージーは兵役拒否者ですが、実は父親が狩猟マニアで銃には詳しく、朝鮮戦争で軍医として従軍した経験が有ります。
田舎に出張した際に拳銃をプレゼントされた彼は「銃を手に、ニューヨークの街を徘徊して、犯罪者をおびき寄せては処刑」しはじめます。
これは当時の「警察を信頼出来ず、犯罪被害に怯える小市民たち」の願望を具現化したものです。

しかし「衆目の中で金を見せびらかし、自分を餌に誘き寄せる」彼の方法では、たいていは犯罪者のほうが数的優勢なので「銃やナイフで反撃されて負傷」する危険性が高く、このハイリスクな復讐方法はまさに自殺志願と言えます。

マスコミは犯罪発生率の半減をとりあげ、主人公を「自警団:Vigilante」という名の英雄に祭り上げます。
目撃者の市民はカージーを庇い、嘘をついて逃がそうとします。
警察は(悪党を捕まえるよりも速く)カージーを容疑者として特定し、尾行し始めます。
犯罪者たちは銃で武装し徒党を組んで襲うようになります。

はたしてカージーは生き残れるのか?あるいは逮捕されてしまうのか?そして彼は「心の安らぎ」を得られるのか?

<チャールズ・ブロンソンという役者>
この映画では「高収入の設計技師」役を演じていますが、彼には「強度計算」などの頭脳労働は似合いません。
無口で真面目。ハンサムでもスマートでもない庶民派でタフな善人。日本人に例えると三船敏郎や高倉健のポジションでしょう。
「メカニック」という映画ではクールな職業殺人者を演じ、「荒野の7人」では元農夫のガンマン役でマッチヨな筋肉を見せました。
本国よりも日本で彼の人気が出たのは判る気がします。彼の死の一報に接したときは、大きな喪失感を感じました。

怒りの荒野

2009-10-16 21:55:41 | 映画(銃)

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邦題:怒りの荒野
原題:I GIORNI DELL' IRA
英題:DAYS OF WRATH
1967年度作品
監督: トニーノ・ヴァレリ
音楽: リズ・オルトラーニ
主演: ジュリアーノ・ジェンマ(スコット)
     リー・ヴァン・クリーフ(タルビー)
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クリフトンの町で罵られ、蔑まれながら最底辺の生活を送る私生児スコットは、町に現れた流れ者ガンマンのタルビーに憧れ、「弟子にしてくれ!」とつきまとう。
町を逃げ出し、面白半分に過酷な訓練を課されながらも不屈の闘志で耐え抜いたスコットは、一人前のガンマンとなってタルビーと一緒にクリフトンの町に帰還した。
タルビーは「旅には飽きた。ここに落ち着く事に決めた。」と言うが、それは「町の有力者を脅し、逆らう者は殺して、自分が絶対君主として君臨する。」という意味だった。
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オープニングムービーを前衛的なものにしたいという意図は判りますが、小学生の切り絵みたいな大雑把さが「手抜き」「安っぽさ」を強く感じさせて逆効果。悪い見本です。

2大スターの初共演作品ですが、スコットの登場シーンが、とにかく酷いものです。
父親は不明。売春婦の私生児。母は泥酔の末に事故死。孤児院で育ち、仕事は便所の汲み取り(!)
誰からも必要とされない天涯孤独の身で、街における身分が最下層という悲しく惨めな境遇です。

もちろん、女の子(金持ちのお嬢様)を好きになっても全く相手にされず、その親から「近づくな!」と暴力を受けます。
それがガンマンになって帰ってきた途端に、その「お嬢様」から色仕掛けで誘惑されます。まさに弱肉強食の世界です。
でも、それには裏があって、誘い込まれた暗闇で待ち伏せ攻撃を受けて負傷します。・・・これじゃ、女性不信になっちゃうよ!(笑

ガンマン心得その1!・・・とタルビーが面白半分にスコットに講義をする場面が宣伝や感想でピックアップされがちですが、私にとってその内容は如何にも軽薄に思えます。アニメのCANAANのほうがよっぽど為になりますw

師匠は今は強いものの、年老いて衰えてゆく運命には逆らえないという事を知っています。一見、頭が良さそうに見えますが・・・
実は「流浪の旅を止めて定住しよう」という発想自体がネガティブな「滅び行く者の守りの思考」です。
弟子を強いガンマンに育てれば育てるほど、反抗されたときに抑えられない危険が増大しますから、全部のノウハウは教えません。
シスの暗黒卿と弟子のダース・ベイダーの関係もこんな感じかな?

Il Ritorno di Ringo (1965)

2009-10-10 12:36:37 | 映画(銃)

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邦題:続・荒野の1ドル銀貨
原題:IL RITORNO DI RINGO(リンゴーの帰還)
英題:The Return of Ringo
監督:デュチオ・テッサリ
音楽:エンニオ・モリコーネ  
主演:ジュリアーノ・ジェンマ (モンゴメリー・ウッド)
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南北戦争が終わって復員兵となった北軍大尉モンゴメリー・ブラウンは、またの名を「早撃ちリンゴー」と呼ばれていた。
生まれ故郷に帰り着いたリンゴーは、愛する妻がメキシコ人一味の首領パコの囲いものになっていることを知り、呆然とする。
リンゴーは身元を隠すためボロをまとい復讐の機会を狙うのだが、その風体から泥棒と間違えられて理不尽な制裁を受けてしまう。
右手をナイフで深く刺されて銃を撃てなくなった彼は、パコ一味を倒すため、左手で早撃ちの訓練を始めるのだった。
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 ジェンマ演じる主人公の名前がリンゴーの西部劇は「夕陽の用心棒」UNA PISTOLA PER RINGO という作品があり、シリーズものと考えて良いでしょう。

 イーストウッドの「ユーモア路線」、フランコ・ネロの「ハードボイルド路線」と比べると、ジェンマの演じるキャラクターはメロドラマ路線です。
 悪女の嘘に簡単に騙されたり、悪者の計略に簡単に引っ掛かったりします。何度も重ねて純情さを演出しているのが、ちょっと鼻につきます。

 でも、プロの兵隊でもある早撃ちガンマンが「自分の銃の残弾を間違えて、空撃ちした所を残った敵に撃たれてしまう。」というシーンは非現実的すぎて笑えます。プロならば、残弾が半分以下になったら盾にする遮蔽物を探して再装填に備えるのが当然です。当時の弾薬には不良品(不発)も多かったのですから。
 観客をハラハラさせる為に、わざと主役を危機に陥らせるという演出手法は「昼のメロドラマ」そのもので、この監督はそういう嗜好があるようです。

ともあれ、この作品のテーマソングは私のお気に入りです。主に女性客を意識した叙情的な歌詞が続きますが、最後は「Because we are Fear-less-Men」で締めくくるのが如何にも西部劇的です。

UN DOLLARO BUCCATO

2009-10-02 14:06:35 | 映画(銃)

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邦題:荒野の1ドル銀貨
原題:UN DOLLARO BUCCATO
監督:カルヴィン・J・パジェット
音楽:ジャンニ・フェリオ   
主演:ジュリアーノ・ジェンマ
    (モンゴメリー・ウッド)
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物語は、南北戦争で南軍に所属し敗戦したゲイリーとフィルの兄弟が、捕虜収容所を出たら別々の道を歩むと決め、再会を約束してそれぞれの1ドル銀貨を相手のものと交換するシーンから始まる。
お互いに拳銃の腕前には絶対的な自信がある名手同士だ。既婚者のゲイリーは故郷に帰るが、独身のフィルは西部に行って一旗あげるという夢があった。
捕虜開放の日、北軍は鹵獲したピストルの銃身を乱暴に短く切り落としたものを南軍捕虜たちに返却した。それは「絶対に当たらない、見せかけだけの銃」にすぎなかった。(注1)

故郷の農場が困窮しているのを知り、ゲイリーは妻を田舎(南部)に残して西部に仕事探しに出た。腕前を買われて用心棒の仕事を得た彼は「一人の無法者を退治してくれ」と依頼される。
しかし、顔も知らないその相手は、実は正義の味方:弟のフィルで、しかも「両者相討ちで死亡」となるように巧妙に仕組まれた罠だったのだ!
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イタリア製西部劇(米国ではスパゲッテイ・ウエスタン)がまだ一般的でなかった頃、無名のイタリア人役者は「アメリカ人っぽい芸名」を名乗るのが一般的でした。
このジュリアーノ・ジェンマは元体操選手(TVでその競技が放映されるほど有名)という異色の経歴から、「隠しトランポリン」を使ってジャンプしながらの空中アクロバット撃ちが売り物でした。
良く見ると彼の頬には消えない傷が有るのですが、それは俳優業に入る前の体操選手時代の負傷の跡です。
彼はその甘い顔立ちとスリムな体型、身軽な動きから、「エンジェル・フェイス」と言われて女性に圧倒的人気がありました。
西部劇はもともと男が観る映画でしたが、彼の登場で映画館には女性客が一気に増えました。
有名になってからは恋愛映画に出たり、「ザ・ビッグマン」などのクライム・サスペンスに起用されたこともあります。

(注1)
ライフリング付きの銃身は、弾丸の軌道を安定させる為に精密に設計された「ねじり溝」(例:12インチで1回転etc.)をもっている。
それを中途で切断したら、必要な回転を弾丸に与えられないので射程が落ちる。元から短銃身の銃は、それ専用に設計された「ねじり溝」を持っているのだ。
また、弾丸が銃口を出る際に発射ガスの流れを乱さないように、銃口には直角・平滑に精密な加工が必要。少しでも斜めに切断したら、弾丸は真っ直ぐには飛ばない。
散弾銃は「ねじり溝」の無い平滑な銃身なので、銃身を短く切断して「ソウド・オフ・ショットガン」の形にしても使える。しかし拡散パターンが変わってしまう上に短距離限定武器(屋内や路地で人間を撃つ専用)になってしまうので、何も良い事は無い。