Officer's '70s Theater

'70年代の恐竜的ハイパワー車ファンが昔を懐かしむブログ

トップガン

2010-03-20 13:56:16 | 映画(航空)
当時最先端の米国製豪華戦闘機「F-14トムキャット」を取上げた事で話題となった映画で、主役トム・クルーズの出世作です。
大ヒットしたので「ホットショット!」などのパロディー映画もたくさん作られました。
男性向け戦争映画と誤解されがちですが、ストーリー自体は「愛と青春の旅立ち」的なラブロマンス要素も入っているので、女性を連れて観に行ける映画でした。
1986年作品。
Top Gun - Danger Zone (Music Video)

私のような航空マニアの関心は「最高軍事機密のコックピットはどう描写されるのか?」でしたが、蓋を開けると「旧式のF4ファントムの計器盤と操縦幹」が写っていたので、「そりゃーそうだ罠」と妙に納得したのを覚えています。

敵機役は単座と複座のF5フリーダムファイターが勤めています。個人的にこの機体は好きなのですが、開発目的が「軽量安価な戦闘機」だったので常に「脇役」扱いで、対地攻撃・訓練・偵察・連絡・仮想敵機(飛行特性がミグ21に似ていた為)などに使われました。
米国内で大量採用されなかったので会社は外国(後進国・西側同盟国)への販売に注力せざるをえませんでした。短い滑走路で大げさな支援設備無しで簡単に運用できる点が評価され、スイスは「秘密基地から高速道路を利用して発着する防空戦力」として採用しました。帰還→給油→武器再装填→再発進のターンアラウンドタイムが短い事も利点でした。
映画の後半で「アイスマンのトムキャットが5機の敵機に追い回され、マーベリックが援護に向かう」シーンがありますが、プロのパイロットが高速でロール・シザース機動を行いながら複数機が乱舞する実写映像はF5の軽快性を証明しており、一見の価値があります。

F-14トムキャットの最大の売りは「自機のレーダーで同時に24目標を認識しながら、そのうちの6目標に同時にミサイルをロックオンして誘導できる」フェニックスAAMシステムでした。でもこの映画にはそんな最高軍事機密は一切出て来ません。旧式の赤外線誘導サイドワインダーミサイルだけを使用しています。ロックオン時のマーカー画面もF4とF5のものが使われています。
細かいことを言うと、最大6発のフェニックスを搭載すると「発射せずに帰還した場合」着艦時に重量オーバーでアプローチ速度が高くなり、タッチダウンで脚が折れる危険性があるので、せいぜい一機あたり4発(左右のバランスをとる為に偶数装備が基本)しか搭載・使用できない制限がありました。
安全な帰還の為にはミサイルを海に投棄すれば良いのですが、一発十億円以上もするフェニックスミサイルを捨てるのは税金の無駄使いであり、もし敵国に拾われたら軍事機密が漏れるので、それは事実上出来ません。

F-14のもうひとつの目玉は「速度や姿勢に応じて無段階にスムーズに動く自動式可変翼システム」でした。固定翼のF-15イーグルとの模擬空中戦ではその優位が証明されましたが、「常に潮風を受け、離着艦時に強い応力を受ける空母艦載機」としては部品点数が多く複雑な機構は「整備士泣かせ」だったようです。
結果として、空母の倉庫に「部品取り(ハンニバリズム)用の予備機」を複数抱えておかないと、まともに運用できない事態に陥りました。例えば空母に16機搭載していても、そのうち4機は部品欠品のため動作不能状態といった具合です。

更に「泣きっ面に蜂」で肥大化した重量に対してエンジンが出力不足のためパイロットは空中戦の最中に失速・墜落しないように神経を使わねばならず、米国議会の公聴会で「欠陥機だ!」と問題になる事態に発展。映画でも戦闘中のエンスト・墜落で相棒が事故死する姿が描かれています。
双発機は片方のエンジンが停止しても片発で飛行可能でなければなりませんが、上昇旋回中だと速度低下→空気流入量減少→残った片発も停止→墜落となります。
(※エンジンは初回分が耐用年数に達する頃にはより強力な新型に換装する予定だったが、開発遅延で旧型を増産しなければならないうえに新型の開発費高騰に拍車がかかる悪循環になった。)
重量増加に起因する設計変更と新型エンジンの開発失敗の結果、その価格は当初見積もりの一機150億円から納入価格400億円にまで高騰し、結果的にその超高価格が米国議会で再三問題になりF-14の退役を早めてしまいました。(2006年に全機完全に退役)
そのような様々な不利益に懲りた米海軍は、その後は可変翼戦闘機を一切採用していません。
また、このF-14の価格高騰問題を契機として比較的安価な軽量戦闘機F-16やF-17(後のF/A18)の開発と配備が加速されることになりました。

ちなみにロシアもミグ23フロッガーという可変翼機を作って配備しましたが、これは3段階の位置固定で、しかもパイロットが自分で判断して手動で角度をセットするという簡易な(比較的安価で壊れにくい)方式でした。
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 劇中で敵機を撃墜するミサイルはサイドワインダーと呼ばれる短距離型自動追尾式空対空ミサイルです。これはベトナム戦争時から存在する製品で、何度も改良を加えながら長く使われています。だからその操作方法も広く知られています。
 簡単に言うと敵機の発する熱をセンサーで感知し、その熱源に向かって突き進みます。上下左右に航路をとる動翼が付いているので、標的が逃げ回っても執拗に追いかけます。そして衝突直前に自爆して散弾銃のように破片を敵機に浴びせて墜落させます。
<操作方法>
まず敵機に接近し、出来れば背後にまわって攻撃位置につきます。敵機のエンジンの排気口が見える位置が最良ですが、最新のサイドワインダーは対面航行状態でも発射可能なほど精度が上がっています。
1.コンソールの武器選択スイッチで複数のミサイルのどれかを選択。
2.トリガーを半分引くと、リモートでミサイル先端のセンサー(シーカー)が動作開始し、「ピ・・ピ・・」というサーチ音が聞こえはじめます。
3.センサーが敵機の熱源を捕らえると音の感覚が短くなってゆき、「ピーーーー」という連続音になったらロックオン完了なのでトリガーを最後まで引き、リリース(発射)します。パイロットは「シーカーのトーンが良くなったので発射した。」という風に表現します。
4.もしもミサイルが外れた場合、トリガーに機関砲発射タブを被せます。トリガーを半分引くと機首のレーダーが敵機をロックオンできる状態になり、サーチ音が出ます。敵機の距離・方向・速度をコンピュータが計算し、敵機の未来位置にマーカーが表示されます。自機をそこに向ける(銃の照準点とマーカーを一致させる)と、ロックオン完了です。トリガーを最後まで引けば発砲されます。