坂本龍一 《アメリカの食文化の変化/
こどもの頃の思い出の食卓》
米カリフォルニア州のサンフランシスコ郊外、バークリー。ここは、全米で一番リベラルな都市で、1960年代にヒッピー文化が発祥したり、2002年には対イラク戦争反対決議を市議会が採決したり、としてきました。
そのようなライフスタイルを発信するこの地は、食でも「地産地消」や「食育」の文化を全米や世界にじわじわ広げ、ぼくが住むニューヨークでも多くの人が影響を受けています。
例えば、最近ニューヨークのレストランでは、ヨーロッパから空輸していたボトル入りの水をやめ、水道水を使い炭酸水まで自分の店で作る動きが活発なのもその延長なんでしょう。
火付け役は、オーガニック食材と調理法を約40年間提唱してきた女性シェフ、アリス・ウォーターズさん。バークリーのカリフォルニア料理レストラン「シェ パニーズ」の経営者で、ファストフードが広がる食文化に問題提起し、各地の学校に有機農法を教えたり、ホワイトハウス内の菜園化に影響を与えたことでも知られています。アメリカの食を引っ張ってきたすごく先進的な女性です。
ぼくもラッキーなことに、昨年40周年記念の夕食会に行くことができました。世界中にムーブメントを起こし続けているこの一軒のレストランは、こぢんまりとした店構えですが、地元の新鮮な食材が楽しめ、その味を十分引き出したものばかりです。そして、その哲学は多くのレストランに広がっています。
よく環境に配慮した消費者のことをグリーンコンシューマーといいますが、エコであればいいだけではなく、クオリティーの高さを求める消費者が出てくることが大切です。レストランはより向上しようと鍛えられ、お互いウィンウィンの関係を築くことができるからです。それは食に限らず、行政や企業など何にでもいえることではないでしょうか。
ぼくも若いころは、スタジオに一日中いることが多かったので、丼もののようにすぐおなかがいっぱいになるものをさっと食べて、次の仕事に入ることが多かった。食へのこだわりはそれほどなかったですね。
でも、年齢とともにそうはいかないので、いまは少しだけおいしいものを食べたい、という嗜好(しこう)になり、よりアリスさんの哲学には共感しています。
バークリーで生まれた食文化。それは、大味ばかりだったアメリカの嗜好を変え始めています。
誕生日は「カレーライス」
坂本龍一さんが子供のころ、好きだった母親の手料理はカレーライスとハヤシライスという。料理上手の母親は毎年、坂本さんの誕生日には仕事を休み、たくさん料理をしてくれるのが恒例だった。
「誕生日に食べたい料理を聞かれ、いつもカレーとこたえていましたね。すると母ががっかりして、『折角だから違うものをいって』と言われましたが、それでも毎年カレーを頼んでいました」(坂本さん)
(msn産経ニュース)
アメリカの食文化にはほとんど興味がないんですが、
ええこっちゃなー、と思いました。
それよりもインパクト(笑)があったのが、
坂本龍一さんに関すること。
教授のことを知っているわけではないけれど、
昔の思い出、的なものを、初めて知ったので、
微笑ましく思って、取り上げました。
お母さんはごく普通な優しい方で、
でも、誕生日に仕事を休んで、
息子にいっぱい料理を作る、
作ろうとするその心意気に、
愛情がたっぷり現れていて、素敵だなあと思いました。
ジャージ大嫌いで、
きらいなひとは有名人でもブロックしちゃう、
学生食堂にひとりで来るな、などという、
極端なエピソードが一人歩きしている教授ですが、
天才には奇行や伝説がつきもの。
ぬふふと笑わせていただきます。
末筆ながら、
「地産地消」は本当に大切なことだなあと思います。
食べ物の顔じゃなくてこころを知るというか。
できるだけ、近場のものを買うように努めたいです。