Lに捧げるちいさな図書館

≪ L ≫至上主義の図書館へようこそ。司書は趣味嗜好のまま、気の向くまま、あちこちへと流浪しますゆえー♪

せつなさもってるひとって・・「サイドカーに犬!」

2007-02-06 | 本・映画・ドラマのレビュー&気になる作品
主人公は小学4年生、女子。
夏休みのある日、母が家出した。
父の愛人がやってきた。


こうゆうときの父の愛人っていうのは、ぶっとんでる場合が多いもんです。

そういうのが読者に驚きをもって迎えられるからね。

常識のないとっぴな行動に出て、こどもをうんざりさせるタイプ。

やたらとけんかをふっかけ、こどもの目前で平気でわめくタイプ。

全身、ぬめつくような牝の匂いを充満させ、男に君臨するタイプ。
(山田詠美系ですな。すべての男がひれ伏すと思ってる勘違いちゃん)


長嶋有 「サイドカーに犬」(文春文庫)

ところが薫の父の愛人・洋子さんは違うのです。

まあ、ちっとは読者をびっくりさせるようなところもあるけどね。

なんせ、夜中に山口百恵の家を見に行こうって薫を連れ出すし・・。

ところがさ、まず、薫の母が家出しちまったところから、物語は

始まるのだけど、薫の暮らしがどんどん楽になってくわけですよ。

お菓子でも果物でも、洗ったカレー皿に盛ってしまうようなひとで、

いつもぴりぴりしていた母の価値観から解放されてゆくんです。

洋子さんはてきぱきと家事をこなすんですよ、アバウトな感じで。

でこの洋子さん、果物を食べながら突然、脈絡なく泣いてしまったり

するんです、薫の目の前で。何がどうなった?なんて野暮な説明は

いっさいなしで。母が帰ってきて、洋子さんをビンタし、洋子さんは

出て行ってしまうのだけど、すったもんだもないのよね。

女性をていねいに微妙に心理描写してて何処にも無理がないのに、

この作者は男性作家だというので、びっくりしました。そこには女性にはこうあっ

てほしいというような願望はないし、皮肉もないし、幻想もないですし、・・

等身大の女性なのです。(薫も含めて)

父親をはじめとして、父とだらだら過ごす仲間の男たちはだらしなくて、

何の役にもたたないんですよ。愛人とだって進展があるのか、破局にむかって

いるのだかの動きも、ちらりとも見えなくて。

だから薫にとっては、乾いてて、さわやかですらある、

ひと夏の異文化体験のような生活だったのですよ。

母親が帰ってきたときの、薫の目がいいです。

大人へと階段をのぼってますから。

この母親が心配になりました、私。







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